
7月17日に行われたcamp2期生を決めるピッチに参加してきました。さまざまなスタートアップが集まり、熱気に満ちたイベントとなりました。本記事では、当日の様子と感じたことをまとめています。
寺田倉庫「Creation Campfire 2025」参加レポート
Creation Camp TENNOZは、寺田倉庫が天王洲を「創造の島」にするビジョンのもと立ち上げた、プレシード・シード期スタートアップ向けのインキュベーションプログラムです。
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選抜された企業に対し、倉庫をリノベーションしたオフィスを2年間無償提供するなどの連携支援を通じて、事業成長と共創を後押しします。
<主な支援内容>
1.インキュベーション施設の利用料は2年間無償
2.支援企業からのアドバイスやアセットの提供
3.VCからのアドバイス、追加出資検討
4.メンターからのアドバイス
5.定期的なイベント、勉強会の開催
6.寺田倉庫からコンバーティブル・エクイティによる出資(1社1,000万円)
<各種アドバイス、サポート体制>
デイリー:同居する投資家、事業家にいつでも相談できる体制
マンスリー:ファイナンスや事業開発の勉強会、先輩起業家による講演
随時開催:資金調達、人材獲得に向けたピッチ機会、大企業の課題を解決するリバースピッチ
この度、2025年3月よりCamp第2期生の募集をしていた、約300件の応募の中から、最終選考ピッチ「Creation Campfire 2025」に進んだ22社によるプレゼンの結果、10社の入居が決定しました。
二期生紹介
株式会社ディッシュウィル / 代表取締役 中村明生
植物工場発、未来を変える大豆食品の開発・製造
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UpToU株式会社 / 代表取締役 荒木茉衣
美容医療ユーザーと医療者を支援するリボンプラットフォーム
株式会社and Jam / CEO 三條龍弥
バーチャルヒューマンによるデジタルタレントプロダクション
eMotion Fleet株式会社 / 代表取締役社長 白木秀司、代表取締役副社長 デニス・イリッチ
事業者向け商用フリート電動化ワンストップサービス
株式会社Kiviaq / 代表取締役CEO 岡田俊
調剤薬局運営と医薬品SCM事業
株式会社Smooth / 代表取締役社長 泉房之介
カメラを置くだけで空き地を時間貸し駐車場に!インスタントパーキング「Smooth」
株式会社ハリイ / 代表取締役社長 池野順子
ズレにくく快適なスポーツウィッグと高機能キャップの製造販売
株式会社HELPUSH / 代表取締役CEO 寺田湧将
移動の困りごとを解決し人生を広げる外出支援プラットフォーム
リベロント株式会社 / 代表取締役社長 大河淳司
バイバック保証を通じた循環型購買体験の実現
Reloca / 代表 入江晋太朗
住みたい賃貸物件の「次の住人」として事前に契約できるリレー物件サービス
当日の様子
△当日の会場ライブハウス「KIWA」
どの会社もそれぞれの課題意識や想いが明確で、非常に熱量の高いピッチでした。
審査員は、寺田倉庫代表の寺田航平氏、サムライインキュベートの榊原健太郎氏、X Techベンチャーズの鈴木かおり氏、ジェネシア・ベンチャーズの祝 煜洲氏、NES株式会社の石川智明氏が務めました。
各審査員は本質を捉えつつも挑戦者を鼓舞するような質問で、ピッチを盛り上げました。厳しい審査で選ばれた10社の多様なアイデアが、今後どのように社会実装されていくのか、今から楽しみです。
二期生のコメント
二期生に選出された10社に「Creation Camp TENNOZの2年間で取り組みたいこと」をインタビューさせていただきました。
UpToU株式会社 / 代表取締役 荒木茉衣
大手美容クリニックでマーケティング職として勤務し、通年で内面外面を美しくするプロジェクト「整形シンデレラ」に携わった経験や自身の体験から、美容医療が人生に与える影響を実感。より納得感ある選択を届けるため2023年に同社を創業。美容にも“美やアートの感性”が欠かせないと考え、これまで寺田倉庫のアート展にも多く訪れている。
【コメント】
美容医療専用の記録管理アプリ「W/Beauty」を運営しています。記録と可視化を通じて、ユーザーと医療従事者がともに納得感を持って美容医療と付き合える仕組みを構築し、サービスの社会実装を進めます。
天王洲という感性豊かな場所から、美容医療の新しい在り方を探求し、そのアート性と社会的意義を発信しながら、未来のスタンダードを共に描いていきたいと考えています。
株式会社and Jam / CEO 三條龍弥
ニュージーランドでアート系制作会社を共同創業・売却後、ソフトバンクでPepperのAI開発とタレント活動を両立。博報堂アイ・スタジオでは国内外の大型案件を技術面で主導し、楽天では三木谷氏・佐藤氏直下で全社ブランディングを統括。2024年に創業したand Jamでは、バーチャルヒューマン×XR技術で日本文化の新しい魅力を世界に発信する次世代クリエイティブIPを創出します。
【コメント】
Creation Camp TENNOZにバーチャルヒューマン実証ラボを開設したいです。また、AI対話やライブ配信機能を検証し、企業タイアップやイベント出演を通じて次世代アーティストの表現力を強化したいと考えています。
2年間で複数のバーチャルヒューマンのアーティストグループIPを発表し、国内外で活動を広げていきます。
eMotion Fleet株式会社 / 代表取締役社長 白木秀司、代表取締役副社長 デニス・イリッチ
白木秀司
MBA取得後、2005年に三菱ふそうに入社。社長室及び事業構造プロジェクト部において業務改善に従事し、国内販売戦略の強化に貢献。その後、米系企業再生コンサルのAlixPartnersにて日系豪州製造業の黒字化に貢献。2016年日産自動車入社、グローバルセールス本部でディーラーネットワーク戦略の立案・推進に携わり、自動車小売の新たなビジネスモデルを確立。2020年ストリートスクーター・ジャパン代表取締役社長就任。2023年9月eMotion Fleetを創業。
デニス・イリッチ
2013年、シュトゥットガルト大学在学中にDaimler AGにてメルセデスベンツのプロトタイプ車両研究開発に携わる。大学院修士課程修了後、2017年より電動モビリティの研究助手として、製造工学と付加製造の研究をリード。研究プロジェクトのリーダーとして人員計画、財務も担当。2019年StreetScooter GmbHに入社、日本事業責任者に就任。2020年ストリートスクーター・ジャパン代表取締役に就任。2023年9月eMotion Fleetを創業。
【コメント】
eMotion Fleetは、商用EV導入のワンストップサービスを通じて、運輸部門のCO2排出量の7割以上を占める商用車の電動化を支援し、商用EVの社会実装と再生可能エネルギーの活用により、物流・交通領域の脱炭素化と経済性を両立させるモビリティのGXを目指しています。
特に市場の9割を占める中小事業者では、導入の複雑さや初期費用の高さが障壁となっており、当社はその課題解決に取り組んでいます。
Creation Camp TENNOZでは、天王洲を実証拠点として脱炭素型EVハブの運用モデル構築とサービスの高度化を進めるとともに、GX/ESGに知見を有する寺田倉庫やパートナー企業と連携し、地域交通と環境課題を同時に解決する持続可能な輸送モデルの確立を目指します。
株式会社Kiviaq / 代表取締役CEO 岡田俊
KPMGロサンゼルスで監査業務に従事。アマゾンジャパンで事業戦略・財務部長として物流・サプライチェーン事業の戦略立案・立ち上げを推進。2023年にミナカラ代表取締役社長を経てKiviaqを創業し、医薬品流通の改革に取り組む。
【コメント】
プログラム期間の2年間で、次世代薬局モデルと医薬品サプライチェーンの基盤を確立します。首都圏で複数店舗を展開し、そのハブとしての大規模物流倉庫型薬局を開局。地域のクリニックと連携し、来局不要・30分即配を実現。将来的に全国展開を見据えたネットワークを構築するため、営業利益黒字化によってモデルの持続性を立証し、医療アクセスの再設計に挑みます。
株式会社Smooth / 代表取締役社長 泉房之介
2009年から2019年まで観世流能楽師の息子として舞台経験を積む。2022年にはミナミインキュベート株式会社でVCソーシングとリサーチに従事し、スタートアップ分析を実践した。翌2023年、古典芸能向けMRソリューションを開発するGreipを創設しCEOに就任したが、市場規模の制約を踏まえて同年11月に事業整理を決断した。同年夏にはEast Venturesのインターンで大企業リサーチを担当し視座を拡張した。2025年5月に駐車場DXを推進する株式会社Smoothを創業し、代表取締役として事業開発と組織運営を統括している。主な受賞歴として、Microsoft Japan主催IDactive Japanエンタメカテゴリ最優秀賞、East Venturesインターンデモデイ最優秀賞、Rocket Pitch Unlimitedオーディエンス賞、TORYUMON 2023 winter Gaiax企業賞を有する。
参考:https://note.com/ikuraizumi00/n/n610be2c33bf2
【コメント】
株式会社Smoothは、2025年より向こう二年間、目前のお客様一人ひとりに真摯に向き合う姿勢を徹底してまいります。現在、当社はプロダクトの正式リリース前であるプレシード段階にございます。
弊社は、日本の駐車場市場に貢献し得るプロダクトを構想しており、お客様にご提供しながらご意見を頂戴し、継続的な改善を重ねてまいります。ロック板や精算機を必要としない新しい駐車環境を創出し、日本社会をよりシームレスにすることを目指して、弊社一同全力でPDCAサイクルを回し、お客様のニーズに徹底してお応えしていく所存です。
ぜひ、株式会社Smoothの事業活動に注目していただけると幸いです。
株式会社ディッシュウィル / 代表取締役 中村明生
新卒で東証一部の上場企業に入社するもリーマンショックによる倒産を経験。倒産前に配属されていた食品関連のグループ会社でMBO、9期連続の赤字事業の黒字化に1年で成功し当時最年少の部長となる。食品生産者向けのコンサルティング事業を立ち上げ、日本全国の様々な食品事業者の支援を行う。その後、スタートアップのCOOを経て、2022年7月にディッシュウィルを創業 。植物工場からプラントベースフード加工までを行う垂直統合モデルで、日本の食品技術を活用した食料危機課題の解決に挑戦している。
【コメント】
プラントベースのBtoCのビジネスを作りこんでいきたいと考えています。プラントベースは食料危機や地球環境の課題から必要性は認識されているものの、自分事として取り組むには難しい問題だと思っています。
ディッシュウィルはまず「食品として美味しいこと」を追求して、プラントベースだから選ばれるから抜け出し、食品全体で選ばれる製品づくりを目指し、結果として社会課題の解決をします。まだ一般消費者との接点が少ないので、2年間PoCを続けて認知の高いブランドを作ります。
株式会社ハリイ / 代表取締役社長 池野順子
東京都東大和市生まれ。文化服装学院アパレルデザイン科卒業。国産カジュアルブランド、株式会社ラコステジャパン、アディダスジャパン株式会社、株式会社ゴールドウインの商品企画に従事。2018年に汎発性脱毛症を患い毛髪を失う。既存のウィッグの使いづらさに落胆し、自分で作る事を決意。大手ウィッグメーカーのバックヤードのアルバイトをしながらウィッグのケアを学び、2021年からウィッグの開発を開始。2023年2月株式会社ハリイ設立。2022年-2024年富山県主催T-startup3年連続採択。
【コメント】
これからの2年間、天王洲を拠点に、東京でのスポーツウィッグの営業基盤を築き、ブランドの認知度の拡大に力を注ぎます。ビジネスとしての展開にとどまらず、アートの力を借りて、「ヘアロス」に対する偏見を少しずつやわらげていきたいと考えています。そのためにも、harihの想いに共感し、ともに未来をつくる仲間を集めたい。ようやくスタートラインに立った今、ここからが本当の挑戦です。思い描いた未来をかたちにし、一人でも多くの方に、少しでも早く、自由で快適な日常を届けたいと願っています。
株式会社HELPUSH / 代表取締役CEO 寺田湧将
寺田ユースケ(本名:寺田湧将)
株式会社HELPUSH 代表取締役CEO。車椅子YouTuber「寺田家TV」(登録者9.5万人)。1990年、愛知県名古屋市生まれ。先天性の障害により車椅子ユーザー。関西学院大学卒業後、英国留学を経て、車イス芸人・ホスト・ヒッチハイク日本一周・YouTuberなど多彩な活動で注目を集める。CAMPFIRE勤務や長野移住を経て、2025年に外出支援スタートアップ「株式会社HELPUSH」を設立、CEOに就任。東京都主催ASACや寺田倉庫「Creation Camp TENNOZ」に採択され、活動の場を広げている。
著書『車イスホスト。』双葉社。
▼「寺田家TV」はこちら
https://youtube.com/@teradaketv?si=qkBRO2E6gu9ol9gS
【コメント】
天王洲のまちをフィールドに、当事者とサポーターがともに移動の体験を重ねるなかで、現場の声を拾い上げながら、プロダクトの検証とUX改善を進めていきます。
1年目は、地域の施設や公共交通機関、イベントなどと連携しながら、実際に価値が届き、ユーザーやサポーターに継続的に使われるサービスとなるかを検証し、プロダクトとしての基盤を整えていきます。
2年目は、多様な都市データと連携しながら運用実績と再現性を積み上げ、サービスの有効性を確立。価値が届く構造をもとに自治体・企業との連携を広げ、BtoB・BtoG向けの持続可能なビジネスモデルの構築へと展開します。
リベロント株式会社 / 代表取締役社長 大河淳司
慶應義塾大学卒業後、三井物産にて資源・エネルギー分野の事業開発に従事。その後、London Business SchoolでMBAを取得し、マッキンゼーでは国内外のサステナビリティ/資源循環プロジェクトを支援。「あらゆるモノが眠らず巡る、新たな資源循環社会を創造する」という構想を描き起業。現在は「バイバック保証」を軸に、循環経済の社会実装に取り組んでいます。
【コメント】
資源循環を前提とした消費体験「バイバック保証」の社会実装に向け、今後2年間で、拡大する事業に対応した検品・保管・出荷を含む物流機能の整備と最適化に取り組みます。
あわせて、寺田倉庫様が提供するMinikuraを軸とする既存サービスとの連携可能性の検証とシステム実装を通じ、より滑らかで持続可能な循環基盤の構築を目指します。また天王洲という場の魅力を活かし、ブランドとの共創展示会やポップアップの開催、他テナント企業との合同採用イベントなど、リアルな接点を通じた発信・共創にも力を入れてまいります。
Reloca / 代表 入江晋太朗
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科修了後、イノベーション・デザインファームにてコンサルタントとして企業の新規事業や新価値創出の伴走支援業務に従事。その後広告代理店にて企画・マーケティング職を経て、株式会社本田技術研究所に入社。主に新規事業創出プログラムIGNITIONの運営や起案者のPMO・デザインの伴走支援業務に従事。その後、当事者として事業を起案したいと思い、Creation Camp TENNOZに参画。2025年10月に法人登記を予定。
【コメント】
今の事業アイデアを具体化及び社会実装し、売上を生み出すことです。そのためには、①サービスの具体化②関係各所との業務提携③営業及びマーケティングの実行④組織づくりの4つがあると考え、投資家や運営事務局のメンターからのサポートを通じて事業にしていきたいと思います。また、同じCretaion Camp TENNOZに入居しているメンバーとのネットワーキングをしながら困りごとの相談や成功事例の共有を積極的に行うことで、起業家としてのマインドセットも醸成していきたいと考えます。
ベンチャー.jpの今後の展望
本イベントを通じて、多くの刺激と学びを得ることができました。今後もこのようなピッチイベントに積極的に参加し、様々なスタートアップ、ベンチャー企業の価値をより多くの方に伝えていきたいと考えています。
インタビュー先も随時募集しておりますので、ご興味のある方はお問い合わせください。
寺田倉庫とは
寺田倉庫株式会社は、1950年創業、東京都品川区・天王洲に本社を構える倉庫・保管のリーディング企業です。
ワインや美術品など高付加価値物品の保管に加え、宅配型トランクルーム「minikura」やアート施設の運営、天王洲のまちづくりなど多角的に展開しています。「余白を創造する」を理念に、文化と物流の融合を図る先進企業として、またベンチャー投資の実績でも知られています。
2024年からは、天王洲にスタートアップを誘致し、水辺とアートの街をビジネスイノベーション拠点とするプロジェクト「Isle of Creation TENNOZ」を始動。「Creation Camp TENNOZ」はその一環としてスタートしています。
社 名:寺田倉庫株式会社(Warehouse TERRADA) |
代表者:代表取締役社長 寺田航平 |
所在地:〒140-0002 東京都品川区東品川2-6-10 |
設 立:1950年10月 |
U R L :https://www.terrada.co.jp |
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