ノウンズ株式会社 代表取締役 田中 啓志朗

「あらゆる人に、データという武器を。」をミッションに掲げるノウンズ株式会社。世の中のあらゆるブランド・タレント・エンタメ作品などを網羅した消費者の意識データを提供し、企業の事業成長を支援しています。利他主義を軸とした組織文化で、世界最大の消費者意識データプラットフォームを目指す代表取締役の田中 啓志朗氏に、事業内容や今後の展望なども含めて詳しくお聞きしました。

 

事業を加速させる消費者データを5秒で提供

事業の内容をお聞かせください

消費者の意識データを大量収集し、サブスクで提供するサービスを行っています。

 

世の中のあらゆるもののデータを網羅しています。例えば、お酒、外食、ファッションなど800個のカテゴリーがあります。美容カテゴリでいえば、スキンケア商品やメイク用品などさらに細分化したカテゴリもありますし、ブランドもデパートで売られているものからドラッグストアのコスメなど幅広く扱っています。


また、タレント起用を検討している際に、ターゲット層に適しているかどうかなども調べられます。俳優、お笑い芸人のような一般的に知名度のある方だけでなくVTuberなどインフルエンサーのデータも入っており、エンタメ分野では、昔から最新のものに渡る幅広いアニメ作品、漫画、人気キャラクターまで分析可能です。

 

例えば、ある歯磨き粉について調べたい場合、インターネット上に存在する情報はいまやAIで簡単に取得できるようになりましたが、消費者がその商品をどう思っているかなどのデータはインターネット上に存在しないため簡単に分析はできません。

 

通常は大きな費用と長時間をかけて調査を行いますが、私たちはすでにデータを収集しているので、5秒でその商品の現状を分析できます。

 

当社のデータはアプリユーザーに毎日ランダムにブランドやタレントの調査を実施して収集しており、どのブランドでも1万〜2万人ほどが回答しています。そのため、様々な角度からマーケティングに必要な分析が可能です。
   

貴社のデータを活用するとどのようなことができますか?

様々な分析ができますが、特におすすめなのがカテゴリーエントリーポイントという分析手法です。これは、従来の認知度や購入履歴を重視するマーケティングとは違い、消費者が特定のシーンで最初に思い浮かべるブランドになることを重視する考え方です。

 

例えば家でご褒美に食べるアイスと、暑い時にコンビニで食べるアイスでは、同じアイスを食べる行動でもシチュエーションが異なります。重要なのは、特定のシーンでアイスを食べたいと思った時に、真っ先に想起されるポジションを築くことです。

 

このように「ファネル」といわれる、認知から始まるマーケティングの考え方だけでなく、シーンや感情などを起点としたマーケティングの考え方へのニーズが広まってきていると感じています。

 

また、仮説立案と検証のPDCAも簡単にできます。例えば、当社の豊富なデータによる口コミ分析、男性と女性の意見の違いなど、すでにあるデータを色々な切り口で分析することで簡単に仮説を立てることができます。

 

仮説を立てたあと、我々のサービスの機能であるカジュアルリサーチを利用することで簡単に仮説を検証することもできます。カジュアルリサーチはアンケートを自分で作成し、収集することができる機能で、例えば「男性化粧品で、〇〇目的のためのアンケートを取りたい」と入れると、AIがアンケートの設計案を提案してくれます。

 

それを微調整して必要な人数を設定し、ターゲットを絞って配信すると、数百人規模であれば1〜2時間後には結果が出ます。集計や加工、グラフ作成も全て自動なので、エクセルを開く必要もありません。

 

このように仮説の立案から実際に検証するまでのスピードが、従来のリサーチ活動に比べてとてつもなく早く実施することができます。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

リクルートで、新サービス立ち上げやマーケティング戦略を担当していた時、消費者調査の課題を痛感したのがきっかけです。

 

消費者調査を行う際、単発でも多額の費用がかかり、それでも納品までに1ヶ月かかるということがよくありました。事業のスピードが速くなりどんどんPDCAを回していかなければならない中、お金の面と時間の面でハードルが高いと感じたのです。


そのうえで、これは自分だけではなく、多くの人が抱えている課題なのではないか、と思いました。もし誰かが代表してデータを集めて分析まで済ませ、数秒で手に入る環境を提供したら、多くの人が助かるのではないかと考えたのです。

 

リクルート卒業後、スタートアップ2社で経営やAI、ビッグデータに関する業務を経験し、データビジネスの感覚を身につけ、現在の事業をスタートしました。

 

会社の軸は「利他主義」であること

仕事におけるこだわりを教えてください。

利他主義であることです。当社のカルチャーにも通じるのですが、自分以外の誰かのために働くことに喜びを感じられるか、ということを意識して仕事をしています。クライアントはもちろん、それと同じくらい社内で困っている人を何があっても助けられるかということを重視しています。

 

当社では、転職いただき入社された方に1ヶ月間のブートキャンプを行っているのですが、ブートキャンプを受けている社員がその場で、「次に入社する人が自分よりスムーズに立ち上がるために」という考えで社内Notionの内容を拡充してくれています。

 

これは誰かが指示したわけでもなく、皆が自発的にやっているのですが、このように、自分のためではなく他の人のために何ができるか、という考えを持っている人が多いです。

 

また、独特な取り組みとして、入社後のブートキャンプの一環で自分史を書いてもらいます。生まれてから現在までどのような人生を送ってきて、何を大事にして今ここにいるのかを社員みんなに理解してもらうことが重要だと考えているからです。

 

フルリモートで直接会える機会が少ないからこそ、お互いをもっと理解することができるよう工夫をしています。社員のキャリアや性格はバラバラですが、利他主義やチャレンジ意識など価値観の軸は合致しています。最初は私のこだわりでしたが、今では完全に会社のカルチャーになっています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

最初の壁は、「サービスを世に出す」ことでした。今では当たり前のようにKnownsのサービスが存在しますが、当然最初は何もなかったわけです。それに、当社のビジネスは比較的難易度が高いことを行なっていると自負しています。

 

当社のビジネスを立ち上げるには、アプリ、ビッグデータ処理基盤、SaaSの3つを同時に立ち上げて成功させる必要があり、これが非常に大変でした。エンジニアリング観点でもこの3つを最初から同時に立ち上げるのはなかなか大変ですし、ビジネスモデル観点で考えてもなかなか難易度は高いです。

 

アプリが広がっても、SaaSが軌道に乗らなければ、収益は上がりません。逆に、SaaSがうまく機能しても、アプリを使う人が少ないとデータは集まりません。また、データは加速度的に増えるため、これを高速に処理する高度なデータベース基盤を構築することも同時に行う必要があります。

 

この3つが絶妙なタイミングで成功しなければいけなかったので、きちんとサービスが立ち上がるかどうか、ということを日々ドキドキしながら推進していました。結果的には紆余曲折がありながらも、緻密な計算と運にも助けられ、無事にサービスを世に出すことができました。

 

世界最大の消費者意識データプラットフォームになる

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

事業面では、自分が取り組んでいることにどれだけ信念を持てるか、その先にどういう未来を描けるかどうかという点です。私たちのサービスがどう進化していくかを明確にイメージしながら進めています。

 

人の役に立っているかどうか、さらに大きなイノベーションを届けたいという思いもモチベーションになっています。

 

ですが、個人的には社員から受けるモチベーションの方が大きいです。当社の社員はみんなが活躍していて、一人ひとり強みや個性もありとても尊敬できる人たちです。従業員意識調査でも「入社してよかった」の数値が高く、会社への愛着も強いです。

 

ビジネスは思った通りに行くこともあれば、そうじゃないこともあります。だからこそ、尊敬できる社員と日々一緒に前に進んでいることが、大きなモチベーションになっています。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

世界最大の1st Partyの消費者意識データを持つプラットフォームになることです。


日本ではすでに1st Partyデータでは最大級レベルまで成長しており、2024年からはアジア10カ国の現地住民の方のデータを取得できるようになりました。アンケート(サーベイ)は世界共通なので、日本以外の地域でも展開しやすいです。

 

日本企業が日本でのマーケティングするためにKnownsを使うのはもちろん、2024年に海外展開がはじまってからは日本企業がアジア進出のために私たちのサービスを使うケースが多かったのですが、最近はインドネシアの企業が日本進出のために当社の日本人のデータを活用してくれました。

 

今後、日本企業が日本人を分析するということだけでなく、韓国企業が台湾を分析したり、アメリカ企業が日本進出のために日本のデータを活用したりと、クロスボーダーでの利用が増えていくと思います。「その国の人が何を考えているか」「文化をどう理解するか」といった部分でデータを活用することで、海外市場への参入ハードルが下がっていくと思います。


また、AIの進化も重要です。AIは、インターネット上のオープンデータをまもなくすべて学習しきるのではないかと言われています。AIはデータをどんどん学習して進化していきますが、オープンデータを全部食べ終わったあと、これからは企業が保有するクローズドな1st Partyデータが重要になってくると思います。

 

私たちは1st Partyの消費者意識データを大量に持っているので、AI会社や各種サービス会社にとって価値のあるデータを提供できます。AIの普及によりダイナミックに状況が変化する中ではありますが、AIの進化を先読みし未来予測をしながら、適応していくことを常に考えています。

 

採用を強化されているそうですね。どのような人材が理想でしょうか?

利他主義であり、好奇心と成長意欲が強い人です。利他主義についてはすでにご説明の通りです。

 

その他、当社では、「無知はチャンス。既知にもまたチャンス。」をバリューの1つに掲げています。つまり、知識や経験がなくても構わないということです。仕事で重要なのは経験の有無ではなく、やりたいという気持ちです。成長したい、挑戦したいという意欲が最も大切だと考えています。

 

また、スタートアップの魅力はスピード感にあります。大手企業にも良い面はたくさんありますが、スピード感やダイナミックさ、自分が会社を変える一員であるという実感は、少数精鋭だからこそ得られるものです。

 

そうしたダイナミックな環境で働きたい方には当社は最適だと思います。

 

▽お問い合わせはこちらから

https://corp.knowns.co.jp/recruit

解決したい課題があるなら起業家に

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

まず、私は起業家タイプではありません。ですが、起業家タイプじゃなくても起業はできます。「起業したい!」とか、「これをやりたい!」という人はまさに起業家タイプなわけですが、起業家タイプでない私の場合はこんな考え方をおすすめします。

 

「自分はこれが嫌で、しかもそう思っている人は世の中にたくさんいる気がする。誰かがなんとかしてくれないだろうか」ということに思い当たるものがあれば、その時点で起業の一歩手前に来ていると思います。あとはそれを誰かがやってくれるのを待つか、自分がやるかのどちらかなので。

 

自分でやると決めたとしても、色々不安なこともあると思います。ただ、会社を自分で創業して社長を経験したことがないのはほぼ全員同じです。みんな不安なのです。この不安を乗り越えるために大事なのは、解決したい課題へのこだわりとそれを解決したいという熱い気持ちがあることです。

 

世の中の課題を解決するスタートアップは、社会的にとても尊い存在だと思います。みんな「誰かが解決してくれないかな」と思っていることにわざわざリスクをとってチャレンジしている時点で、世の中の代表者なのです。

 

起業しようとしている時点でとても素晴らしいことなので、ぜひ世の中をもっと良くするためにチャレンジされることを期待しています。

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:田中 啓志朗

慶應義塾大学卒業後、株式会社リクルートに新卒入社。ライフスタイル領域のマーケ、事業企画、新規事業企画を担当。その後、AI領域のスタートアップ、クリエイティブ領域のスタートアップにて取締役CMO/CFO/新規事業責任者などを担当。2019年12月にノウンズ株式会社を創業し、現在に至る。

 

企業情報

法人名

ノウンズ株式会社

HP

https://corp.knowns.co.jp/

設立

2019年12月

事業内容

ビッグデータ分析ツール開発・消費者調査

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