【#469】人も端末も要らない!手軽な決済サービスで文化を変える|代表取締役社長 グループCEO 梅村 圭司(SWAPay株式会社)

SWAPay株式会社 代表取締役社長 グループCEO 梅村 圭司
多様な決済手段に対応したマルチ決済端末「PAYGATE」シリーズの開発で知られる、株式会社ロイヤルゲートの創業者・梅村圭司氏。「自らが作った決済文化をディスラプトしたい」という梅村氏が現在手掛けるのが、サービス利用者が自身のスマートフォンで決済を完了させる「SWAPay」のサービスです。今回はこの決済サービスに至るまでの経緯、そして今後の展望について梅村氏にお聞きしました。
事業者側の負担を大幅に軽減!新しい発想の決済サービス
事業の内容をお聞かせください
我々が手掛けるSWAPayは、店舗スタッフによる操作も端末も不要で、どの事業者の方にも手軽に導入していただける決済サービスとなっています。
お店の利用者が自身のスマートフォン上で金額などを確認して決済を完了させるため、迅速かつ安全な決済が可能です。
利用者はアプリをダウンロードしたり、アカウント登録をしたりといった手間もなく、スマートフォンでQRコードを読み取るだけでダイレクトに決済画面に進むことができます。
単一のQRコードであらゆる決済方法に対応し、PayPayやクレジットカードなど利用者が好きな決済手段を選べるのもユーザーの利便性を高めるポイントとなっています。
OCR機能の搭載で、カメラで伝票の写真を取れば数字を読み込むことができ、手入力による金額の間違いを防ぐこともできます。
同じ機能を大手ベンダーに独自開発してもらおうと依頼すると、数千万円の費用がかかります。そういった意味でも事業者側の負担を大幅に抑えたサービスとなっています。
このように各種の大きな費用負担を抑えることができるのは、SWAPayが主に決済手数料で利益を得る収益モデルだからです。
また、従来の決済端末では単一のレートしか適用できませんでした。例えば個人の購入と法人の購入では本来レートが変わるはずのところを、高いほうのレートに合わせて決済を実行していました。
しかしこれは事業者の方々にとっては大きな損失でもあるため、SWAPayでは簡単にレートを切り替えられるシステムを採用しています。
すでに大手外食チェーンや物流大手での導入が決定しており、利用者側のスマートフォンを使用しての、レストランでの会計や荷物受け取り時の代引き決済などが近く実現する見通しとなっています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
元々幼い頃からスポーツが好きで、16歳でスノーボードを始めてカナダに留学をしました。
しかし留学先で大怪我をしてプロの道が断たれてしまい、私はそこから大きく舵を切り、怪我の3日後にはカナダで学生起業しました。
その後日本に戻って大学を卒業し、商社での勤務も経験しますが、2004年にもう一度日本で会社を設立しました。
もともとは旅行業からスタートしましたが、理系出身でHTMLやデザインの知識があったことから、自社のWebサイト制作に力を入れていました。
ちょうどEコマースが台頭し始めた時期で、自社サイトの完成度は業界内でも高く評価されました。この実績がきっかけとなり、タレントの公式サイト制作を依頼されるようになり、徐々にWeb制作やIT分野へと事業を展開していきました。
その後、サブスクという言葉もない中で、芸能界のファンクラブ向けに継続課金の仕組みも提供しました。
そんなあるとき、、私はプロのアスリートとして名前を大きく残すことはできなかったけれど、ITの力で社会に新しい文化を1つでも2つでも残せたら、嬉しいと感じる出来事があり、IT事業に焦点をあてた会社をつくることを決意しました。
新しい会社では、日本で初めての技術開発をいくつも手掛けました。
その後もAndroidの決済端末で、Suicaなどの交通系ICカードが利用できるシステムを開発するなど、最先端の技術を追求してきました。
その当時の決済の業界においては、あらゆる課題が山積みになっていました。
これらを打開するべく、端末やスタッフ不要で顧客自身のスマートフォンを使った決済を実現させようとして立ち上げたのが、SWAPayのサービスです。
「どうすればできるようになるか」を考える
仕事におけるこだわりを教えてください。
できない理由を考えるのではなく、「どうすればできるようになるか」を常に考えることです。
できない理由はいくらでも見つかります。何か言われたときに、真っ先にできない理由から話し出す人がいますが、実際にはそういう思考そのものが可能性を潰しているのです。
これをできるようになるには何をすればいいのかと考えられるようになると、決策が見えてきます。
他にも可視化することも重要です。私は学生時代に流体力学を専攻していて、見えないものを可視化する研究に取り組んでいました。
ビジネスもこれと同じで分からないことをとにかく可視化していけば、問題の糸口が掴めるようになります。
今はAIに聞けば簡単に答えが得られる時代です。ですが昔は開発にあたって分からないことがあると、大変な労力をかけて調べ上げる必要がありました。
私自身もオーストラリアから第一人者を呼び寄せ、エンジニアと実現の方法を徹底的に追究したこともありました。
それもすべて、私が「できるようになるには、どうすればいいか」だけを追い求めてきたからです。
起業から今までの最大の壁を教えてください
新しいものを創造するベンチャーの仕事は、サービスやプロダクトから収益が上がるまでの間、どのように資金調達をするかが常に壁となり、私も苦労しました。
その解決策としては、世の中に何か意義のあるものを生み出そうとしているので、その点で株主・投資家・ベンチャーキャピタル・事業会社の共感を引き出し、納得してもらう能力を身に付けることです。
特に新しい文化を世に根付かせるまでには、長期的なスパンで考え、数億規模の資金調達が必要となるでしょう。
通常の資金繰りとは全く違うため、私自身も何度もその壁につき当たってきました。
加えて、新しいものを世に生み出す場合、自社で生産を担い在庫を抱えなくてはならないという問題にも直面します。
私の祖父は観光業の新しいビジネスモデルを作った経営者なのですが、その祖父は常々「在庫を抱えないから利益が出るのだ」と口にしていました。
私は本来その教えを守るべく、在庫の必要がないIT事業に入ったのです。
しかし世の中に未だ無いものを作るということで、中国に出向いて何万台もの機器を作り、結果的に何億もの在庫を抱えることになりました。
経営者とアスリート、両輪の夢に支えられて
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
会社における事業の実現だけでなく、プロのアスリートになるという夢も両軸で追いかけてきたからこそ、今の自分があると思っています。
元々は20代でスノーボードの夢を一度諦め、そこから起業の道へと進む形になりました。しかし、そこからもう一度スポーツの世界を志して42歳でプロになるという夢を実現し、日本チャンピオン、アジアチャンピオンの称号を得ることもできました。
もちろん会社の経営を手がけながらプロアスリートになるというのは生半可な努力では不可能で、肉体的にかなり自分を追い込んだのも事実です。
けれど、仕事だけの人生ではなく、2つの夢を追いかけてきたからこそ高いモチベーションが維持できたのだと思っています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
現在のSWAPayの事業を成し遂げた後には、20年以上に及ぶ決済業界での仕事の集大成として、CBDCのプラットフォーム開発に乗り出したいと思っています。
中央銀行の責任のもとで流通され信頼性が高いCBDCは、すでに中国、ナイジェリア、ノルウェイなどでは実現しています。
そしてアメリカでは2030年、日本でも2027年に向けて通過のデジタル化が進められているところです。これが実現すれば、海外渡航時にも円から米ドルなどのデジタル通貨へとスムーズに変換し、そのまま現地で自由に利用できるようになります。
ただし、現状ではその横軸となるべきプラットフォームアプリケーションが存在していません。私は現在そのプラットフォームの研究開発を手掛けており、CBDCが一般にも普及するであろう2030年までに完成させたいと思っています。
私がこのプラットフォーム実現の最終的な目的として見据えているのが、宇宙における人類の消費行動です。
将来、人類が宇宙空間の居住地において生活を営むようになれば、そこには必然的に消費行動が生まれることでしょう。国境という概念のない宇宙においては、世界共通の仕組みに基づく、中央銀行が発行する共通通貨のようなものが用いられるようになると考えています。
そのような新たな時代において、人類の経済活動を根幹から支える決済の仕組みを構築し、未来に遺すことができれば本望です。それが、私の人生における大きな願いです。
対処可能なリスクはリスクではない
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
起業したいという想いは実現したほうがいいと思います。ただ実際には起業に興味があっても、リスクを気にして踏み出せない人が多いのでしょう。
私自身の経験から、自分が対処可能な範囲のリスクであれば、それはもうリスクと思わずに一歩踏み出すべきだと思っています。例えば300万円の投資をして失敗したとしても、しっかりとした収入があって来年には返済できる見込みがあれば、それはもはやリスクではありません。
それがもし1億円という金額で自分では返済できないという状態になって初めてリスクと呼べるのです。
起業を考えるのであれば、自分で解決できることはリスクなどと考えず、決断力とスピード感で進めていく必要があるでしょう。
何かサービスを作るときも、リサーチを入念にしすぎたり完璧なサービスの形を追求したりしていると、時間もお金もかかりすぎてしまいます。
まずは一歩踏み出して行動を起こすことを意識して欲しいです。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:梅村 圭司 氏
2005年に学生起業し、2022年にSWApay株式会社を設立。現役アスリートとしても活躍中。
企業情報
法人名 |
SWAPay株式会社 |
HP |
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設立 |
2022年4月15日 |
事業内容 |
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