【#477】ファンラーニングで「すべての日本人が英語を話せる」社会を目指す|代表取締役副社長 山中 裕斗(ミントフラッグ株式会社)

ミントフラッグ株式会社 代表取締役副社長&COO 山中 裕斗
「楽しくなければ続かない。続かなければ身につかない」。そう語るのは、アニメやゲームを活用したAI英語学習アプリを開発するミントフラッグ株式会社代表取締役副社長&COOの山中 裕斗氏です。日本の英語教育を根本から変える取り組みに挑む山中氏に、事業を始めた経緯や今後の展望を伺いました。
学校で大流行の英語ゲームアプリ
事業の内容をお聞かせください
当社の事業は主に2つあります。ひとつは、「マグナとふしぎの少女」というAIを使った英語学習ゲームアプリの開発・運営。もうひとつは、このアプリを活用したオンラインスクールの運営です。
アプリ「マグナとふしぎの少女」の主なユーザーは小中学生です。20万以上のユーザーが利用しています。レジェンズというキャラクターを集めるゲームで、キャラを集めるためには英語を学ぶ必要があります。英単語やフレーズを覚えたり、キャラとのAI英会話を楽しんだりします。
一見お遊びで、実際ゲームなのですが(笑)、がっつり英語を学べるのが特徴です。
たとえば「発音バトル」は、ネイティブの音声を耳コピして、上手に発音できると敵に大きなダメージを与えるゲームです。これをやっているだけで発音はとても綺麗になります。
英単語は英検2級レベルの3,000単語まで習得でき、フレーズも中学卒業レベルの1,400の文型をこれ一つで身につけられます。AI英会話は、キャラクターと会話をするゲーム形式で、会話のハードルを下げたくさん話が続くよう、日英ちゃんぽんでもOKです。
当社のアプリは学校現場でも副教材として活用されており、メディアでも注目され、TBSさん、フジテレビさんなどに、この半年間で3回テレビで取り上げていただきました。
補助教材としての位置づけですが、授業の冒頭などで5〜10分ほど使うだけで英語への興味や自信を引き出すことができると好評です。
もう一つの事業であるオンラインスクールのコンセプトは、「楽しくて毎日英語を学んじゃう英会話スクール」です。アプリと人間の講師のハイブリッド型のスクールで、「マグナとふしぎの少女」を使って、「もっと英語を学びたい!」という方のためのサービスです。
英語教室って基本は週1回、けれどそれではなかなか話せるようになりません。毎日英語を学ぶって、モチベーション的にも、金銭的にもハードルがとっても高くって。だから上達しないんです。
けれど、ゲームであれば毎日できますよね?当社の「マグナとふしぎの少女」であれば、楽しいので英語の習慣化が簡単にできてしまう。人間の講師との週に1回レッスンで学んだ成果を褒められ、次の目標を決め、自信をつけていく。そうするとアプリだけを使うより30倍に学習量が増えるんです。
私たちは「ファンラーニング」と呼んでいるのですが、最初は「ゲームの楽しさ」で始めた英語が、いつの間にか「成長する楽しさ」になっていきます。
大きな特徴は、「子供たちがやりたい!」と言い始めること。入会者の9割が「子供がやりたがるから入会を決めた」と言って入会します。我々が目指すのは、「コミュニケーションとしての英語」を身につけるスクールです。
日本人は学校で何年も英語を学んでいるにもかかわらず、実際に使いこなせる人は数%もいないと言われています。なんなら英語の試験で点数がよくても英語が話せない、なんて報われない学問なんだろうと思います。
完璧な英語を目指してごく少数の人しか話せないよりも、完璧な英語じゃなくてもいいので、日本人すべてが堂々臆せず英語を話せるようになったらいいなぁと思うんです。ファンラーニングを通じて、こんな社会を目指しています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
2003年に新卒でソニーに入社しました。新興国でのソニーの立ち上げをやりたい、と言って入社したものの、当時は「ソニーショック」と呼ばれる業績悪化の真っただ中にあり、最初の配属先では経営企画部門での構造改革を担当しました。その後、念願叶って、まだ立ち上げ期にあったソニーチャイナに赴任し、現地オペレーションの立ち上げを経験しました。
10年間ほど在籍した後、海外展開を積極的に進めていた楽天に転職し、M&AやPMIなどを担当しました。ニュースにも取り上げられる案件も多く、非常にやりがいを感じていました。
その一方で、30代も半ばになり、あるきっかけもあり、自分が生涯かけてやりたいことは何か、改めて考えるようになりました。それこそ三木谷さんや楽天の創業者の方たちはどんな思いで楽天を立ち上げたのだろう、自分にとってそれはなんだろう、と。自分は、学生時代に4年間中高生向けの英語ボランティアをしていた経験や、高校時代に初めて海外に行ったことで人生が大きく変わった高揚感が、ずっと忘れられず、英語や教育に携わることを心に決めました。そして教育分野への投資に積極的だった孫泰蔵氏が立ち上げたベンチャーキャピタルMistletoeに参画しました。
教育系スタートアップへの投資や支援を担当する中で出会ったのが、新会社の立ち上げを目指していた当社の前身、旧ミントフラッグ社です。
代表の片山とはじめての打ち合わせ後、食事に行ったのですが、一緒に会社をやろうと話がまとまり、ファンファンラーニングを共同創業しました。家族にも相談せず、勢いでしたね。
ミントフラッグとファンファンラーニングが2023年に経営統合し、現在の体制となった次第です。
すべての日本人が英語を話せるように
仕事におけるこだわりを教えてください。
私たちのゴールは、「日本人全員が英語を話せるようになること」。
けれど、英語に苦手意識を持つ日本人は9割にのぼるといわれています。この大多数の方たちが、どうすれば英語が好きになれるのか、英語を学ぶのが楽しくて、私にもできると感じられるのか。
それを徹底的に考え、やり抜くことが、我々の存在意義だと思っています。
ほとんどの英語サービスは、英語にやる気のある人向けのサービスです。それはそうですよね、英語にやる気のない人に向けたサービス、大変ですから。やる気ない人たちがお金を払ってくれるの?ビジネスとして成り立つの?って思いません?
けれど日本人の誰もが英語を好きになって、話せるようになったら・・、すごくありません?これまで多くの人たちが諦めてきた英語を話せるようになったら、ビジネスとしても必ず大きなものになるはずです。そしてその予兆はもう出始めています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
一番の壁は、英語学習に対する皆さんの「認知」でした。
「勉強は苦しいもの。それは仕方ないよ」と思っている方が多いんです。だからうちのマグナをみて「本当にゲームで英語ができるようになるの?」「これはただの遊びじゃない?」と。
思ったようにユーザーさんが増えていかなくて、大変でしたね・・。
教員養成の名門・東京学芸大学との共同研究を始めたり、経産省、文科省の推奨サービスとして掲載頂いたりと実績を積み上げていきました。
そしてやはり大きいのは、実際のユーザーさんたちが長く続けてくださり、英語が話せるようになっていることですね。そうした成長の様子をユーザーさんのご協力を得て、公開させて頂いて、そうしているうちに学校でも使われるようになって。
初期から支えてくださっているユーザーさん、パートナーの皆さん、株主の皆さんには本当に頭が上がらないですね。
英語教育をアップデート
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
苦しい中でも、支えてくれた仲間たちがいました。ユーザーさん、パートナーさん、投資家の皆さんです。
我々が取り組む課題は、スタートアップ1社だけで短期間に解決できるものではありません。仲間を増やしながら、社会全体を巻き込む形で取り組む、その手応えこそが大きなやりがいです。
我々のビジョンに共感し、社会課題に対する熱意を共有し、一緒に日本の教育を変えるムーブメントを起こす同志です。
我々は投資家の方たちにも大変恵まれているんです。日本を代表する起業家、エンジェル投資家である孫泰蔵さん、島田亨さん、楽天の共同創業者である杉原章郎さん・由佳子さんご夫妻、 日本の教育をアップデートしようとされている熊平美香先生、竹村詠美さんなどなど、たくさんの方が「日本の英語問題、ファンラーニングで解決しようよ!」と集ってくださっています。資金調達は私たちにとっては、資金集めというだけでなく、一緒に日本の教育を変える仲間を集めることなんです。
そしてユーザーである子どもたちの存在も大きいです。「マグナのおかげで英語が好きになった」「英語が得意になった」と笑顔で話してくれる姿を見たときにはやってきてよかったと心から思えます。
“学校で友達と、家で家族と一緒に楽しむ”英語ゲームアプリ
今後やりたいことや展望をお聞かせください
先ほどお話しした通り、我々の目標は日本人みんなが英語を話せるようになることです。アプリはもちろん一人でもプレイできますが、友達や家族と一緒に使うユーザーが増えています。
英語学習で一番大事なのは、習慣化です。毎日コツコツ、楽しく続けることが何よりも効果的で、習慣化を後押しするのが友達と家族の存在なのです。
対戦中の会話が自然と英語で交わされたり、家族間のコミュニケーションも増えたりと、さまざまな相乗効果もあります。
これからも、学校と家庭の両方を巻き込みながら、子どもたちが楽しく学べる環境を広げていきたいです。
そして将来的には、日本発の英語学習プロダクトを海外展開したいと考えています。アニメやゲームといった日本ならではのエンタメ要素を生かしたプロダクトを、世界に届けていきます。
小さな一歩から始めよう
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
人生は一度きりです。だからこそ「やりたい」と本気で思えることに挑戦してほしいです。
ただ、家族がいるなど、すぐに大きなリスクを取ることが難しい方もいるでしょう。そんな方には、副業や週末起業からなど、まずは小さく始めてみることをおすすめします。
ちょっと気になる、やってみたいと感じるものがあるなら、まずは一歩踏み出してください。そこから得られる経験や出会いが、次の道につながります。
まずはやってみること、それが一番大事だと思います。
御社に興味のある企業に向けて一言お願いします
当社は、ファンラーニングを通じて、日本の英語教育をアップデートしようとしています。
AI時代に必要なのは、テストのための英語ではなく、リアルな対人コミュニケーション力としての英語です。
そんな英語を強制されて勉強するのではなく、学校では友達と、家では家族と一緒に楽しく自ら学んでいく。そして経済格差も教育格差もなく無料ではじめられる。こうして日本の、そして世界の英語教育をアップデートしていきます。
事業会社の方、メディア関連の方、投資家の方、この志に共感いただける方はぜひお声がけください。
日本の英語教育と未来を、一緒に変えていきましょう!
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:山中 裕斗氏
ソニー経営企画部門にてキャリアをスタート。のちにソニー中国に赴任し数々の改革プロジェクトを推進しソニーアクティビティアウォードを受賞。2014年より楽天(現楽天グループ)に参画し、副社長直下にてグループ戦略、M&A、海外事業のPMI等をリードした。楽天後は、孫泰蔵氏率いる社会課題解決を目指すVC・Mistletoe株式会社へ移籍し、教育スタートアップへの投資を担った。 2018年よりファンファンラーニング株式会社を設立し代表に就任、体験型オンライン英会話 マグナパーティを立ち上げた。2023年7月にミントフラッグと経営統合し現職。
企業情報
法人名 |
ミントフラッグ株式会社 |
HP |
|
設立 |
2018年1月31日 |
事業内容 |
エンターテインメント型教育サービスの企画・開発・販売・運営 |
関連記事
RANKING 注目記事ランキング
- 【#063】すべての人に目標達成の喜びを伝えたい|代表取締役 李 佑記(イ・ウギ)(株式会社Humans)起業家インタビューインタビュー
- 【#176】継承と革新―給食サービスの家業を守り、進化させる3代目の挑戦|専務取締役 荻久保 瑞穂(株式会社東洋食品)インタビュー事業承継/役員インタビュー
- 【#353】目指すは「世界で活躍するヒーロー」。ビジネス教育にも注力する幼児園を都内で展開|代表取締役 福嶋 一郎(株式会社ヒーロープロデューサー )起業家インタビューインタビュー
- 【#242】強みは新規事業を生み出す創造力。顧客ニーズを捉えた勝てるサービスを提供する。|代表取締役CEO 森口 達也(株式会社2Hundred)起業家インタビューインタビュー
- 【#462】TikTokマーケティングのリードカンパニーが創る、クリエイターの才能を最大収益化する仕組み|代表取締役 若井 映亮(株式会社TORIHADA)起業家インタビューインタビュー