カボシア株式会社 代表取締役 中都智仁 /代表取締役 小池 陸

カボシア株式会社は、企業のマーケティングデータを一元化し、AIによる高度な分析を提供する企業です。GoogleアナリティクスからECプラットフォームまで、あらゆるデータを統合して分析結果を提示し、経営者や企業の意思決定を支援しています。代表取締役の中都智仁氏、代表取締役の小池 陸氏に、事業内容や今後の展望なども含めて詳しくお聞きしました。

 

あらゆるマーケデータを一元化したAIが経営判断をサポート

事業の内容をお聞かせください

中都氏:事業内容は大きく2つあります。

 

1つ目は、企業のデータを一元管理し、AIと連携することで実現するデータ分析を行うAIエージェントの開発です。2つ目は、そのAIエージェントを企業ごとにデータ分析周りからカスタマイズして納品する受託業務です。

 

扱うデータは、マーケティングデータに特化しています。具体的には、GoogleアナリティクスやSearch Consoleなどの分析ツール、Google広告やMeta広告などの広告データ、AmazonやShopify、楽天、YahooショッピングなどのECプラットフォームのデータを収集・分析しています。将来的には企業のあらゆるデータを統合したいと考えています。

 

2025年6月に会社設立した後、テストユーザーを募集し、40社以上に試用していただいています。「このようなツールをずっと求めていた」といった反響をいただきながら、サービスの改善を進めているところです。

 

小池氏:私たちが今後提供を予定しているサービスとして「参謀AI」があります。参謀AIは戦略コンサルタントの役割を担い、経営者が悩んでいる時間を事業を前進させる時間に変えることを目的としています。

 

現在の経営コンサルティングは属人化と高額費用がネックとなり、中小企業では導入が難しくなっています。

 

参謀AIでは、マーケティングデータに加えて定性的・定量的なあらゆる企業データを統合し、その会社に最も詳しい状態を作り出します。さらに、経営顧問・コンサルティング・コーチとしての機能をAIに組み込み、社内データや社内コミュニケーションデータも蓄積します。

 

これらの要素により、経営顧問として最適な参謀AIを実現できると考えています。従来の経営コンサルティングの課題を解決し、圧倒的に低コストで導入可能になります。

 

競合他社にはない御社ならではの強みを教えてください

中都氏:私たちが事業を始めた当初は競合がいませんでした。AIによるデータ分析は以前からやりたいと思っていましたが、技術的に困難でした。しかし、『Model Context Protocol(MCP)』という新技術の登場で実現可能になり、ビジネスチャンスを見出して法人化したのが2ヶ月前です。ただAIの変化は早く、その後は先を争うように、次々と競合が現れました。

 

その中で私たちの強みは、データ収集の幅の広さです。私たちはGoogleアナリティクスのデータ連携だけでなく、国内の主要なECサイトのデータも取り込むことができます。

 

それぞれのデータを個別に扱うツールはありますが、これらすべてを1ヵ所に集約するサービスは日本にほぼ存在しません。データは集約され、統合して分析できるからこそ価値があると考えます。だからこそ、ここが最大の差別化要因ではないでしょうか。

 

  

AIに会社情報を入れることに抵抗がある企業も多いと思いますが、どのようなセキュリティ対策をしていますか?

中都氏:対策としてまず、Google Cloud Platform(GCP)を採用し、データがプラットフォーム外に出ない形で運用しています。

 

重要なのは、ChatGPTやGeminiなどではなく、APIを使用していることです。一般的なサービスでは履歴がサービス提供者側に格納され、モデルの最適化に使われる可能性がありますが、APIでは機能部分のみを利用し、データベースは私たちがGCP内に用意しています。

 

また、受託の場合は、企業様のGCP上にシステム全体を構築するため、データは完全に自社環境内に留まります。

 

組織的には、今後メンバーが増えても顧客データにアクセスできる権限は基本的に付与しません。また、個人情報が特定でき、かつマーケティングに不要な情報である電話番号、顧客名などの情報はハッシュ化処理を行ったり、そもそも除外をしています。これらの対策により、現在の企業様にも納得し導入していただいています。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

中都氏:現在は2人で会社を運営していますが、実はその前から1年間ほど一緒にビジネスをしていました。

 

私は上場企業でマーケティングの経験を積んだ後、個人事業主として独立し、Googleアナリティクスのコンサルをしていました。そこに小池がクライアントとして依頼してきたのが出会いのきっかけです。年齢も近く、お互いを補完できるだけではなく、「1+1=2以上」の相乗効果を生み出せると考え、一緒にビジネスをやることになりました。

 

事業を進める中で、データ分析ができる企業が少ないといった課題が見えてきました。データはあくまで事実の集合体にしかすぎません。その事実を”解釈”して”ネクストアクションにつなげる”ところまで再現性を持って伝えることができませんでした。そこで悔しい思いをし、「それをできるようになりたい」と話し合っていたところ、AIの技術が追いついたので事業化しました。

 

根本的な思いとして、EC事業者はせっかくこんなにも良いものを作っているのに、データ分析やマーケティングといった部分が足りず、世の中に出せていない商品がたくさんあると知り、とても勿体なく感じました。私たちがそこを支援し、お客様は良いものを作ることに注力してもらえれば、より日本が発展すると本気で考えています。

 

小池氏:データ分析の部分は、AIができる数学的な領域だと思っています。しかし現場では、AIが進歩しても活用できていない状況があります。

 

企業には商品開発やお客様への価値提供といった本質的な部分に集中してもらい、データ分析やマーケティング手法などの技術的な作業はAIに任せられる仕組みを普及させたいと考えています。

 

 

徹底的な本質主義を貫く

仕事におけるこだわりを教えてください。

中都氏:「本質主義」に尽きます。情報や選択肢があふれる中で、1点に集中しないと時間がなくなってしまいます。「これは本質か」を常に意識しています。

 

マーケティングでも本質を追求することが重要です。SNS発信やイベント出展など手法は無数にありますが、私たちは「要は(開発しているAIの)体験をしてもらう」という1点に集約しました。私たち自身がAIに感動しているので、この体験を伝えるだけでいい。そこに注力すれば非常にやりやすくなります。

 

小池氏:人よりも仕組みを疑うことです。うまくいかない時に「モチベーションが足りない」「もっと頑張れ」で終わらせるのではなく、仕組みや構造、環境が整っていないのではないかと考えます。

 

フローや自動化で流れを作り、それでもダメなら仕組みを改善する。今後組織が大きくなった時のことを考えると、やりたいことを確実に実行するために、人を責める前に構造を疑うことが重要だと思っています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

中都氏:壁だらけというのが現状です。データベースとの接続や権限周りの複雑な設定、検証の困難さ、AI部分のアウトプット品質の向上など、楽な部分はありません。一方で、壁が高いということは、参入する人が少なく、やる価値があると思っています。

 

小池氏:私は基本的に、自分がやりたいこととやるべきことが明確に見えたら、方法はどうにでもなると考えているタイプです。作業を進める中で困難な状況が出てきた時は、「これだけ難しいなら、他社は簡単には参入できない。自分たちが乗り越えれば、それが他社にとっての参入障壁になる」と論理的に考えます。

 

 

 AIにより経営者の創造的な時間を生み出す

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

小池氏:特にモチベーションを意識していません。ですが、日々やることや考えることが山積みで、競合も出てきて不安になることもあります。

 

しかし、1ヶ月前の自分を振り返ると圧倒的に違うことに気づきます。考え方も手段も全く異なり、確実に成長していますし、成長サイクルを短いスパンで感じられています。辛いこともありますが、確実に前進していることは間違いないので、継続することで遠くまで行けると実感しています。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

小池氏:AIにより、創造的な時間を生み出す世界を実現したいと考えています。

 

現在のAIは効率化や業務の圧縮が多く、しんどいと感じています。私たちが目指すのは、AIが当たり前になる世界で、人がどう生きていくか、何に重心を置くかを考えられる環境を作ることです。

 

事業者は売上向上のためにデータ分析が必要ですが、適切な方法が分からない方が一定数います。AIができる数学的な部分は早く置き換えて、本質的な創造や生き方を考える時間を作りたいと考えています。

 

具体的には、3ヶ月後までに現在のマーケティング分析AIと受託案件を軌道に乗せます。6ヶ月後には参謀AIをSaaSとして販売開始し、受託収入と開発を両輪で回します。1年後には月商1,000万円を目指し、その後はコミュニティ作りやファン化を進めて販促を拡大していきます。

 

中都氏:有料化の壁を乗り越えることが最優先です。一般的なAIツールが最高でも3万円程度という中で、私たちは10倍程度の価格を目指しています。この価格で価値を感じてもらうのは大きな挑戦です。

 

そのためには、AIのアウトプットの品質など、一つひとつの要素にこだわっていかなければなりません。現在テストで使っていただいている方々のフィードバックを積極的に取り入れ、ブラッシュアップすることが注力すべき点です。プロダクトの本質的な品質向上を継続していくことが重要だと考えています。

 

 

答えは外にない。自分の答えを見つける。

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

中都氏:2人で起業していると、周りからさまざまな意見を言われます。「絶対に揉めるよ」「覚悟が足りていないんじゃないか」といった否定的な声もあれば、「2人で起業するって面白そうだね」といった肯定的な意見もあります。

 

結局のところ、答えは自分の中にしかありません。外部の意見に惑わされず、自分がどう考えるかが重要です。起業はマイナーな道だからこそ、まず自分なりの答えを見つけてほしいと思います。

 

小池氏:起業を考えているなら、ぜひ連絡してください。一緒にお話ししましょう。弊社のホームページに連絡先を載せているので、メールでも電話でも構いません。私も皆さんの話を聞いて刺激を受けたいですし、何らかの形で力になりたいです。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:中都智仁氏

トヨクモ株式会社にてセールスを経験後、アドプランニング部の立ち上げに従事。プロモーショングループの広告運用責任者として億単位のWeb広告費運用を指示。退職後、デジマの窓口を設立し、GA4計測環境構築とWeb広告運用の両軸で1年間で50社以上を支援。2,500人以上のオンラインサロンでGA4/GTMの講師を担当。

 

起業家データ:小池 陸氏

新卒で株式会社パソナグループに入社するも、コロナ禍での業界変化を機に退職し、自己探求の旅に出る。旅先でウェブ制作を独学し、ECサイト構築及び運用サポートで独立。その後法人化し、30社以上の新規ECサイト構築と100社以上の改善・リニューアルに携わる。豊富な開発実績とビジネスサイドの知見を活かし、参謀AIの技術開発全般を統括する。

 

企業情報

法人名

カボシア株式会社

HP

https://cabocia.jp/

設立

2025年6月

事業内容

AI×データ分析のプロダクト販売・受託開発

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