CANARI株式会社 代表取締役 草木佳大

CANARI株式会社は、主に店舗・POPUP・展示会などの空間演出や、そこに紐づく什器・家具などのプロダクトのデザイン、製作を中心に行っている企業です。そのプロセスの中でより深く入り込み、本質的な意義を紐解きながら伴走していくスタンスから派生して、企業のブランディング支援など業務の幅は多岐に広がっています。今回は、CANARI株式会社の事業内容や今後の展望について、代表取締役の草木佳大氏に詳しくお聞きしました。

 

“構想・具現・実装”を一気通貫で支え、ブランドの”らしさ”を形にするものづくり

事業の内容をお聞かせください

主に小売業界向けに、店舗やイベント、ポップアップ空間などのデザイン・製作施工をしています。当社では良い「体験」を実現するため、プロジェクトの構想・具現・実装までを一気通貫して行っています。

 

「ブランドらしさを届けたい」「商品の魅力を最大限に引き出したい」などのご要望に対し、まず最初に何をすべきかを一緒に考えるのが構想です。

 

次に「どのようにしたら伝わるのか」を具体的にデザインするのが具現化です。そして実際に形作る職人たちと組み、具現化したデザインを実際のモノや店舗に落としこむことを実装と呼んでいます。

 

今までは、主に店舗においてデザインをしてきましたが、培ってきたデザイン思考を活かし、現在はコーポレートサイトの制作やコンサルティング寄りのブランディング支援など、幅広いクリエイティブのお手伝いをしています。

 

構想する人、具現化する人、そして実装する人は、本来分かれることが多いですが、当社では一気通貫で対応が可能です。一社で完結することで情報の粒度が高く保たれ、結果それが高い精度のモノ作りに反映されている点は、特にお客さまから評価をいただいていると感じています。

 

しかし、自社工場があるわけではないので、実際にものづくりができる工場を探して足を運ぶなど、様々なネットワークを持つために開拓にも力を入れています。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

私は美大でプロダクトデザインを専攻し、卒業後に地元の印刷会社へ入社。営業とグラフィックデザインの仕事に従事しました。

 

2年程度仕事をしているうちに、デザイン業界でしっかり経験を積みたいと思い、上京しました。

 

上京後は、アパレル業界のディスプレイデザインに関わる仕事に就き、デザインはもちろん、VMDや設計に関する経験を積みました。その後に転職をしたのですが、転職先の会社では什器のデザインの他にコスト管理や生産管理など、ビジネスに必要な全体の流れをより広く自分で完結させるポジジョンを経験をしました。

 

また、PANECO®️という繊維リサイクルボードの開発に深く携わりました。ファッション業界に長く携わっていたので世の中で想像以上に衣類が捨てられている現状にモヤモヤを持っていたのですが、それを自分たちが”使える素材”にアップサイクルできないか?と代表と話していたことがきっかけで開発が始まり、構想と実験を繰り返して運よくPANECO®️は生まれました。

 

たくさんの工場やパートナーに相談して、断られることやうまくいかない事も多かったですが、嬉しいご縁が重なり製品化できました。

 

この開発を通した経験は今の自分に大きな影響を与えており、本当にたくさんの挑戦をさせていただいたので感謝しています。
またPANECO®️を世の中に広めていく中で本質的なサスティナビリティに関する知識や考え方に触れることができ、それらを多少なりとも吸収できたと思います。

 

次のキャリアを考え出した際、今まで自分が携わってきた「デザイン領域」と「サステナビリティ領域」のどちらか一方を手放すことをしたくないと思い、どちらの領域でも活躍できるような会社を自分で作ろうと思ったのが事業を始めたきっかけです。

 

 

”感覚”と”素直さ”を大切に

仕事におけるこだわりを教えてください。

サラリーマンをしていると、片目を閉じて白を黒と言わなければいけないタイミングはあると思うのですが、私はそれが苦手でした。

 

例えば廃棄物を有効活用する案件を相談されたとき、表向きは環境に良いことに見えるけれど、実際は環境に悪影響を及ぼしてしまう話がありました。業界ではグリーンウォッシュと呼ばれます。売上を上げるためには受注するべきでしたが、ブランドとしてこういう事はするべきではないと強い意志を持ってお断りした経験があります。

 

無理に共感するのではなく、自分の物差しを持ち「本質的に大事な事は何か」「本当にお客さんのためになることは何か」を考えた上で、忖度せず素直でいることを大切にしています。

 

なので時にはご相談いただいた案件でも、ブランドにとって意味がない取り組みならやめたほうがいいと、提案する事もあります。感謝と思いやりを持つことは大事ですが、自分の心の声に素直でいることを大事にするよう社内でも話しています。

 

また、デザインに関しては、やはり一番の売り物は感覚だと思っています。

 

感覚が最初から優れている人は少なく、実際はどれだけたくさんの良い物を見て触れてきたか、試行錯誤してきたかといった経験などから研ぎ澄まされていく物だと思います。

 

もちろん知識を身につけたり、ちゃんと伝える力、自分の描くものに対するプライドも大切です。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

生意気ですが(笑)、今まででいうと大きな壁は感じていません。おそらくこれから事業を拡大していく上では出てくると思います。

 

強いていうなら、採用活動時に自分たちより若い世代の人たちに入社したいと思ってもらいたかったので、まずは自分たちの価値観を見直しました。

 

CANARIがどのような価値観やカルチャーを持っているか、それらがどんな言葉で語られれば一緒に仕事をしたいと感じてもらえるのか、などを考えるのは少し苦労しました。

 

年齢が10歳も離れれば時代も価値観も違うので、「素敵」と感じる考え方、人物像や会社像は変わるはずです。

 

私達の大事にしていきたいカルチャーと、時代に合わせて価値観を再構築していく部分のバランスをとるためにすごく慎重に話し合いを重ね、結果的により良い空気感が出来上がっています。

 

 

「一生、青春しよう」“今日の楽しい”を明日につなげる挑戦

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

起業してから今まで、「今日も楽しかった」と思える日が多いので頑張れています。自分だけでなくチームのみんなが「今日も楽しかった」を得るために、メンバーや仕事に向き合うことを心がけています。

 

一番嫌なのは儲ける事に必死になってしまうことです。そうなってしまうと人をお金(損得)で見るようになってしまったり、やりたくない仕事もやらなければならず、どんどんなりたくない組織像に変化してしまいます。

 

持続可能な組織であり続けるためには売上も必要ですが、メンバーや関わる人達の心の充実度が大切です。心の充実度を高めるためにはどのような種をまけるのかを考え、実践し続けて今があります。

 

だからこそ、毎日必死になって挑戦しています。ただ、若いメンバーに対しては背中も見せなければならないので、どういう背中を見せられるかも大切にしています。

 

当社のメンバーは、全員が全力です。仲間同士でも厳しい言葉をかけたり指摘をしたりしています。しかし、すべて明日を楽しくするためにやっていることです。

 

また、企業の経済力は自由力だと思っているので、売上を上げることで自由が増えると思っています。自由な会社なら、何かをやりたい事業があったり、メンバーが挑戦したい時に実行しやすくなると思うので、売上を上げる仕組みを作ることにも力を入れています。

 

私の座右の銘は「一生、青春」です。夢中で過ごす日を続けることが結局楽しく、「明日もがんばろう」と思えるモチベーションになっています。

 

 

“プライベートを犠牲にしない”共働き世帯へ余白を届けたい

今後やりたいことや展望をお聞かせください

クライアントワークはもっと広げていきます。当社が提供できる価値は、たしかに世の中にあるという確信は持っているので、CANARIの強みを活かせるマーケットを更に模索し、今まで出会っていないクライアントとの接点を増やしていきたい。

 

そのためには自分たちの強みをもっと伝わりやすい形で見える化し、世の中に発信していくことが最初のステップかなと考えています。

 

さらに今後挑戦しようとしていることの一つに、自分たちで問題視している社会問題に対して 仕掛けるBtoCのビジネスを展開しようと考えています。

 

例えば問題提起として共働き世帯にとって「自分の時間」を確保することは大きな課題であり、子育てが生活の中で重くのしかかる制約になってしまっていると感じます。私自身も子育てで日々奮闘しているので、本当に解決したい問題です。

 

このような人たちが少しでも生きやすい社会を実現すべく、今まさに動き始めています。

 

 

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

遠慮しすぎたりせず、また難しく考えすぎてはいけないかなと思います。周りを見てみるとかっこよくて実力もある経営者は多いですし、メディアの多様性も相まってスーパーマンみたいな人を目にする機会が増えており、そんな風になれるのだろうかと腰が引けてしまう方は多い気がしますが、絶対にそうならなければいけない訳ではありません。

 

やってみたらどうなるか、うまくいくのか、失敗するのかは本当に動いてみないとわからないですし、「動くかどうか」より「動いてから更にどう動いていくか」の方が重要です。もし起業前のシュミレーション精度をできるだけ上げてから動きたいなら、自己評価と他者評価のギャップをしっかり見極めるべきと考えています。

 

自己評価より他者評価が高ければ思ったより仕事が続きますし、自己評価より他者評価が低ければ苦しくなるものです。

 

思ったよりも周りの人は見てくれています。自分が今まで感謝と思いやりを忘れず、誠実に仕事をやってきたのならまず動いてみては?と、起業しようとしている方に伝えたいです。

 

当社のサービスを検討している方へ

これまでお話ししてきた通り、当社は空間やプロダクトのデザインを中心に、幅広い領域で事業を展開しています。しかし、私たちが目指すのは「単なるデザイン会社」ではありません。

 

デザイン思考を軸に、お客様のさまざまな困り事を解決する“萬屋(よろずや)”のような存在でありたいと考えています。

 

たとえば「靴屋を始めたい」人には、ブランドづくりの初期段階からサポートしますし、「20代向けのスニーカーショップを作りたい」という具体的なイメージはあるけれど、「どんなお店にすればよいかわからない」といったケースでも、企画の段階から当社が伴走いたします。

 

具体的な構想が固まっていなくてもお手伝いできます。

 

▽お問い合わせはこちらから
https://canari-e.com/contact/

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:代表取締役 草木佳大

1989年生。京都芸術大学(旧:京都造形芸術大学)空間演出デザイン学科プロダクトデザインコース卒業。リテール分野での什器・家具・空間デザイナー、そしてサステナブル事業開発を経て、CANARI株式会社を設立。現在は、リテール分野の什器・家具のデザイン・製作、POPUPなどの空間デザイン事業を展開。さらに、サステナビリティを軸としたプロダクト・空間のデザイン、ディレクション、企画に加え、ブランディングやコンセプト開発、事業企画も手掛ける。プロダクトデザイナーとして参画した資源循環インフラPASSTO(パスト)が2024年グッドデザイン賞を受賞。

 

企業情報

法人名

CANARI株式会社

HP

https://canari-e.com/

設立

2023年8月22日

事業内容

CANARIはデザインの力と様々なクリエイティビティを掛け合わせ、「場」や「モノ」を生み出すリアルフィールドを中心に展開しています。

  • 店舗、POPUP、展示会などの空間デザイン・製作
  • 什器、家具などのプロダクトデザイン・製作
  • サステナビリティに関わるデザインや商品開発、アドバイザリー
送る 送る

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