
株式会社InnoBell 代表 渡辺奈菜
Googleの検索結果やSNSの画面上に表れるWeb広告。今や企業の認知拡大や商品・サービスの宣伝手段として欠かせなくなったこれらの広告を専門で取り扱うのが、広告代理店の株式会社InnoBellです。今回は代表の渡辺奈菜氏に、同社が強みとしている伴走型の広告運用や、顧客と誠実に向き合う信念について詳しくお聞きしました。
広告数値の達成で終わらない、購入やリピーター獲得という結果まで追い続ける
事業の内容をお聞かせください
弊社はWeb広告専門の広告代理店として、お客様の広告の作成と配信、運用を担っております。Web広告はアクセス数やユーザーの属性などがすべてデータとして可視化されるため、配信後にそれらのデータを分析して数値を改善していく運用のフェーズが非常に重要です。
特にアクセス数などの広告の数値だけを見るのではなく、「購入につながったか」「リピーターを獲得できたか」といった、お客様が本当に求めるゴールに結びついているかを見ることが大切だと思っています。
代理店の中には広告の目標数値を達成するまでが仕事と捉えるところも少なくありません。しかし弊社では購入や認知拡大など、お客様の本来の目的が達せられるまで一緒に追いかけていくという姿勢を貫いています。お客様が広告にかけた費用に対して「納得していただける仕事をしたい」という想いがあるからです。
ときに、「これは広告を出しても効果が出ずにお客様が苦しむことになる」と判断すれば、広告という手段は最適でないとお伝えすることもあります。もちろんそれでは弊社の利益にはならないのですが、大切なのは利益よりもお客様に真摯に対応することです。
また、お客様の状況に合わせた柔軟できめ細やかな対応も心がけていて、固定の料金プランを提示して話を進めることはあまりありません。それよりもお客様のご予算と目的に合わせて、広告効果の目標を定めていくという形です。
特に中小企業様の場合、反響が大きすぎても人手不足で対応しきれないといった問題も生じてくるため、ときに予算を抑えてもお客様の実状に合わせたご提案をするようにしています。そうやって密にコミュニケーションをとりながら進めていくため、お客様からは「丁寧」「レスが早い」といったお声をいただいています。
現在お取引させていただいている企業様の業種業態は様々で、人手が足りないという広告代理店様からも多くご依頼をいただいています。前職の会社で、多様な業界の広告案件を取り扱っていたため、各業界の案件に対応可能です。
もちろん業種が同じでも企業様ごとの広告戦略が必要になるため、画一的なテンプレートは用いず、広告の方向性はお客様との打ち合わせの中で定めていきます。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
私は元々経営者になるつもりは全くなく、定年までどこかの企業に属して働くのだと思っていました。最初のきっかけは、前の職場で転職を考えるようになったことです。
新卒2年目でリーダーに抜擢され、マネジメントスキルが身に付いたことは嬉しかったのですが、チームのメンバーが広告運用のスキルを習得していく中で、自分だけ取り残されるような焦りを感じました。私はプレイヤーを卒業するのがあまりに早かったのではないかと考え、そこから転職を考えるようになりました。
当時は周りも次の進路で悩んでいる人が多く、「個人事業主として独立しようか」「経営者をやってみたい」という話が耳に入るようになり、そのとき初めてそういった選択肢があるのだと気づかされました。
そこで実際に会社を立ち上げることを考えてみたとき、あまりデメリットがないと感じたのです。たとえ事業が上手くいかなくても、起業経験があることを面白いと思って雇ってくれる会社はあるでしょう。
何よりも、これから先もしも結婚や出産という話になったときは、起業したくてもできない状況になるだろうと想像しました。「今なら何もない。やるなら今しかない」という考えで、思いきって踏み出すことにしました。
まずは会社を設立する前の準備として、私個人として稼げるかどうかを試す必要があると考えました。前職の案件を引き継いでそのまま収益にしても、それは自分の実力とはいえません。そのため、完全な新規開拓で「月30万円」の目標を立てて、クラウドソーシングサイトなどで案件を獲得していきました。
このときに受注した案件の多くは、会社設立後に法人契約に切り替えていただいて、今も取引が続いています。そうして自力で顧客を獲得できることも分かり、気づけば同じ広告業界で実績を上げていた仲間も集まってくれて、今の会社を無事立ち上げることができました。
コミュニケーションにかかるコストは惜しまない
仕事におけるこだわりを教えてください。
最も大切にしているのは「誠実であること」です。せっかくお金をかけて広告を配信しているのですから、皆が納得できる仕事をしたいですし、お客様と二人三脚で精一杯売上を上げていきたいと思っています。
よくお客様がおっしゃるのは「実際に何をやっているのか分からない」ということです。説明の書かれた資料や管理画面を共有されても、それが何を意味するのか理解できないままに広告運用をされているケースが非常に多いのです。
だからこそ我々は、お客様が理解できるまで精一杯、丁寧にコミュニケーションを取るようにしています。何をしているのかお客様が正しく理解したうえでお金を払っているという状態にするためです。
会社としては、コミュニケーションを増やすとそれだけコストがかかるのは事実です。けれど、そのコストを惜しんで誠実に向き合わない会社では、お客様と長くお付き合いさせていただくのは難しいでしょう。
弊社は「二人三脚」を掲げていますから、お客様と一緒に目標に向けて努力するスタイルを大切にしています。その分、「我々も頑張りますから、お客様にもぜひ頑張っていただきたいです」ということはお伝えします。
広告は魔法の道具ではありません。改善しても改善しても、なかなか効果が上がらないことは現実にありますから、そのときに我々と一緒に打開策を考えてくださる企業様と長期的な関係を築くのが理想です。
起業から今までの最大の壁を教えてください
これまで多くの壁があったと思うのですが、私は過ぎたことを振り返ったときに「むしろ楽しかったかもしれない」と考えるタイプです。起業に限らず、これまで中学受験に失敗したり、浪人したり、就職活動でもうまくいかなかったりと色々苦しい出来事がありました。
就職してからも職場で5回程泣いた経験がありますが、それらのどれをとっても「壁だったか?」と聞かれると「そんなことはない」と答えると思います。これまで同様、今後もおそらく色々大変なことはあると思いますが、乗り越えていけるでしょう。
日々新しいことへの挑戦であるのが楽しい
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
続けられるのは、純粋に「楽しいから」です。経営者でいる限り、常に分からないことや新しいことがやってきます。悩みは尽きず、安定は決してありません。それが大変であると同時に楽しいのです。
他の経営者の方々が辞めないのも、同じ理由ではないでしょうか。どれだけ大きな会社であっても、いつでも問題は多発していますから。
私は元々が飽き性で、会社に属していると同じ仕事しかできないのがつまらないと思っていました。その点、経営者であれば何にも囚われずに自由に仕事を選べますし、広告代理店ならあらゆる業種に関わることができます。
制限がなく、自分の力で毎日新しいことに挑戦できるのが非常に面白いと感じ、仕事のモチベーションになっています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
私の経営の主軸は「人」にあるので、この会社で働く人が幸せで、なおかつクライアントに誠実に向き合うゆとりがある事業規模で、今後もやっていきたいと考えています。
現状でも、メンバーがある程度自分の裁量で自由な働き方を選択できるように気を配っています。副代表も現在子育て中で、お子さんの送り迎えが必要なときは午前中テレワークにするなど、家庭と仕事をうまく両立してくれています。
家族サービスにもしっかり時間を使ってもらったり、社内でメンバーのお誕生日をお祝いしたり、そういう職場の雰囲気を維持するには、従業員数10人程度が理想です。
クライアントの数にしても、無闇に拡大して利益を増やしたいという気持ちはまったくなく、質の高い関係性を維持できる取引数に抑えたいのが本音です。
10人くらいのメンバーが、それぞれのお客様としっかり向き合って丁寧にコミュニケーションを取ることができるようにし、広告運用を通して既存のお客様と末長くお付き合いさせていただける会社にしたいと思っています。
また事業の展望としては、将来的にはお客様ご自身で広告運用をしていただけるように「運用の内製化支援」のサービスができないかと検討しているところです。
会社のことを一番よく分かっているのはお客様自身ですから、もしもお客様が我々プロの広告運用のノウハウを習得できれば、その企業にとってベストな広告運用者となれるでしょう。
当事者意識を持って自分で運用するほどに社内にノウハウが蓄積されますし、内製化できれば代行する企業に手数料を払う必要もありません。それがお客様にとって最適な運用のスタイルなのではないかと考え、内製化に向けた支援ができるサービスを実現できればと考えています。
踏み出したあとは、きっと将来の自分が何とかしてくれる
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
失敗したからといって死ぬわけではありません。一歩踏み出してみれば「あとは将来の自分が何とかしてくれるはず」と信じてやってみればいいじゃないかと思っています。
実際のところ、最近では起業しやすい環境が整っています。少し前までは「起業するなんてちょっと変わっている」というイメージがあったと思いますが、今は個人事業主やフリーランスも一般的になり、会社に就職する以外の働き方が普通のこととして受け入れられるようになりました。そのため起業もやりやすくなっていると思います。
私自身、起業というよりも習得したスキルで独立を果たした形です。ゼロから新しいことを学んで事業を立ち上げようと考えている人たちのほうがずっとパワーがあり尊敬しています。
一番もったいないのは、「やりたい」という気持ちがあるのに動かないことです。そもそも何かをやろうとする強い意志のある人は少ないので、起業に興味がある人には「一度やってみようか」くらいの気持ちで挑戦してほしいと思っています。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:渡辺奈菜 氏
新卒で札幌のWeb広告代理店に就職し、2年目にリーダーに抜擢、3年半後に退社し、個人事業主を経てInnoBellを設立。
企業情報
法人名 |
株式会社InnoBell |
HP |
|
設立 |
2025年1月 |
事業内容 |
広告代理店 |
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