【#492】人と人をつなぐ空間連動型プラットフォームを開発。目指すのは「会うべき人と人とが出会い話ができる世界」|CEO 前田 絵美(株式会社Cominal)

株式会社Cominal CEO 前田 絵美
インキュベーション施設やシェアオフィスといった場で人との出会いを効率よく実現する、ビジネスマッチングサービス「Koino」の開発・販売を手がける株式会社Cominal。「素晴らしい技術やアイデアを持つ人が、それを形にしてビジネスを広げていける世界を作りたい」──そう語る、株式会社Cominal CEO・前田絵美氏に「Koino」開発の経緯や起業への想いについて伺いました。
空間連動型ビジネスプラットフォーム「Koino」
事業の内容をお聞かせください
当社はビジネスプラットフォーム「Koino」の開発・販売を行っています。
「Koino」は、イベントやシェアオフィスでの出会いを作るサービスです。インキュベーション施設やシェアオフィスなどで、共通のキーワードをきっかけに近くにいるニーズや趣味の合う人をリアルにつなげます。現在、導入していただける施設を増やしている段階です。
よくあるビジネスマッチングサービスはタグなどを使ってビジネスの成果が必ず出せるような100%のマッチングを狙いますが、「Koino」が作るのは”ゆるい”つながりです。「せっかく同じ場にいるなら、共通のトピックで10分くらいお話ししませんか?」といった、気軽でカジュアルな出会いを作ります。
「Koino」はBtoBのサービスで、現在複数のインキュベーション施設やシェアオフィスに「Koino」を導入していただいております。ユーザー側はKoinoのアプリに、名前や肩書き、興味関心があること、どんな人に会いたいのか等の情報を音声で入力し、その情報からAIが、その場にいる相性の良さそうな人を探し出し、紹介します。
紹介されたカードをクリックするとチャット画面が開き、そのチャット画面で直接出会って話すための調整を行います。
たとえば、「今日はこのオフィスに3時までいますので、お時間があればコーヒーマシン前で10分ほど、お話しませんか?」のような形でやりとりができるようになるのです。
もちろん、施設側にもメリットがあります。イベントの参加者やオフィスユーザーやオフィスを訪れた人がどんなバックグラウンドの人で、どんな人たちが繋がったのか、どのような満足度だったのか等、詳細な情報を収集、分析することができ、イベントやシェアオフィスの運営に関わるデータを定量的・定性的に蓄積することができます。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
私は以前、東芝で知的財産の仕事をしていました。当時は、「素晴らしい技術があり、この技術守っていけば日本のビジネスは世界で大きくなる」と信じ、頑張っていました。しかし実際は、仕事をするにつれ技術をどれだけ守っても、結局、売れなくては世界に勝てない、という事実を目の当たりにすることになりました。
私自身、理系出身ということもあり、それがとても悔しく、どうしたら日本のビジネスが世界でマーケットを広げることが出来るのかを真剣に考えるようになりました。
その後、イギリスに留学して経済学や越境ビジネスを学び、その後アメリカやイギリスの企業でマーケティング業務に携わってきました。
その経験の中で確信したのが、「人と会う」ことが、ビジネスを広げるのにもっとも重要な要素であり、日本人はその「人と会う」ことにあまりに消極的すぎるということです。これを解決しなくてはいけないと思ったのです。
優秀な研究者や技術者、サービス開発者達が一生懸命開発をして、素晴らしいものを作り出しているのに、その技術やサービスがお金にならない。それは、率直に言えば、コミュニケーションが不得手だからです。
素晴らしいアイデアや優れた技術を持っている人たちが、ちゃんと世の中に出ていける。マーケットを広げて、経済や技術を発展させることができる。そんな世界をずっと作りたいと思っていました。
ビジネスの世界では、「人と会うこと」が肝となる。そう強く感じたことが、「Koino」の開発を始めたきっかけであり、私がCominalを立ち上げた理由でもあります。
目指すのはみんなが幸せになるサービス
仕事におけるこだわりを教えてください。
「関わった人、みんながWin-Win-Winになること」が私のポリシーです。
多くのイベントのマッチングシステムは、営業職の方たちにとって使いやすいシステムになっています。そのため、利用者は相手側の需要や必要性、状況が考慮されずに、関係のない商材の営業をされてしまうなどの双方にとってプラスではない事例が多く発生していました。
人と人を紹介するサービスはイベントに参加している人やシェアオフィスを利用している人でメッセージを送った人、受け取った人の双方の人にとって使い心地が良く、メリットがあるサービスであるべきだと思います。
またそのサービスを施設側やイベント側が提供することにより、、イベントやシェアオフィスの信頼度や満足度は格段に上がり、その場を選択して行く、大きな理由になると思います。
また、イベント主催者やシェアオフィスの管理者が提供する心地の良い紹介サービスとして稼働するように、「Koino」にはレビュー機能をつける予定です。「Koino」ではマッチして話し始めた24時間後にレビューできるようにし、その人のビジネスマナーに関して「よい/問題あり」といった評価ができるようにする予定です。
レビューの情報が蓄積されることで、施設側は要注意人物を認識することができます。
「Koino」はみんなが幸せになるサービスにしていきたい。そのために、ユーザーにも導入する施設にもメリットをもたらす設計を心がけています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
現在、Koinoを導入していただく施設を探しているところですが、まさにそこに難しさを感じています。
台湾やアメリカなど、海外で「Koino」のサービスコンセプトを説明すると、「試しに使ってみたい」「機会を逃さず出会いを提供することは、とても大事なので是非導入したい!」など、気軽に導入していただいております。
しかし、日本だとどうしても、個人情報やセキュリティなど、マイナス面を気にされることがとても多く、テストでも導入は難しいとの回答が多いのです。
Koinoは、日本人がもっともっと出会いを行うことによって強いビジネスを作り出してほしい、という思いから作っているサービスですので、是非日本のシェアオフィスやインキュベーション施設で使ってもらいたいと考えています。
「今ここにいる人と人とが出会い、その出会いからイノベーションを生み出していく」という世界観に賛同してくださるインキュベーション施設やシェアオフィスさんに、導入していただければと思っています。
作りたいのは素晴らしいアイデアをビジネスにできる世界
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
近年AI技術が進み、プレゼンテーション資料の作成やクリエイティブの制作などは、1人でPCさえあれば一瞬でできあがってしまいます。しかし、実際にビジネスを進めていくためには、今後も人と人との”繋がり”は避けて通れません。
人とのかかわりが苦手であればあるほど、ビジネスにおくれを取ってしまうのは、残念ながら間違いないのです。
性格が内向的なだけ、ネットワークが無いだけ、あるいは、世に出す方法がわからないだけで、素晴らしいアイデアをもっている人はたくさんいます。これは本当にもったいないことです。
素晴らしいアイデアを持った人たちが、そのアイデアを形にして、ビジネスを広げていける世界をつくりたい。これが、私が持ち続けているモチベーションです。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
まだまだ100点満点のプロダクトとは言えない状態です。今後もテストとヒアリングを繰り返しながら、皆さんの使い勝手を上げられるよう、さらに機能を充実させていきたいです。
そしてなにより、日本や世界で「Koino」の世界観やサービスを「いいね」と言ってくださるインキュベーション施設やシェアオフィス、イベンターの皆様やユーザー様自身を増やしていくことが目標です。
Koinoは日本をはじめ世界各国の人々が使いやすいように設計しています。日本人が世界各国のオフィスやイベントに行ったとき、世界各国の人が日本のシェアオフィスやイベントに来たとき、どちらの場合でも「Koino」を使って、新しい人に会い、そこからビジネスやキャリアを加速してもらえる、そんな世界にしていきたいです。
今後「Koino」を使ってみて拡散してくれる人、いわゆる最初のきっかけになってくれる人たちを募集しています。インキュベーション施設やシェアオフィスの方で、ご興味のある方はぜひご連絡をいただければと思います。
またこのサービスは今まだまだ成長途中のサービスなので、この世界観に共感し一緒にサービスを作って行ってくださる方も、ご連絡していただければ嬉しいです。
起業に重要なのは「健康」
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
私自身は、起業したい!と思って起業した人間ではないので、良いアドバイスができるかわかりませんが、「自分を含め誰かが必要としていて、それでいてまだ存在しないもの」があれば、起業というかたちで世に出すチャレンジを行う事は良いことだと思います。
また、健康にも気をつけてください。過去にVCやアクセラプログラム等で多くのスタートアップとお話してきました。そこで思うのが、ビジネスを成功させるには健康がとても重要ということです。
起業するには体力もメンタルも「健康第一」だとお伝えしておきたいです。是非運動を行ったり、人と話したり相談したりしながら、健康第一で”起業”にチャレンジしてください。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:前田 絵美氏
大阪大学理学部化学科量子化学及びMSc Strategy of International business Aston Business School (UK)専攻。日本及び海外マーケティングの専門家。オーストラリアでアメリカ企業Vistaprintの日本マーケットローンチ、シンガポールでUKの広告代理店Essence digital(GroupM)に転職、Google Playの日本マーケティング、Google CloudのJAPACマーケティングを担当。その後、日本へ帰国しSAASスタートアップ、SiderのCMOとしてジョイン。その後、Monozukuri Venturesでマーケティング担当として活動したのちに、PITTAN ex-co founder & CMOとして事業を進めた。現在Cominalを創業準備中。
神奈川県のベンチャー企業の成長促進拠点「SHINみなとみらい」コミュニティサポーター
Linkedin:https://www.linkedin.com/in/emi-maeda-21399455/
企業情報
法人名 |
株式会社Cominal |
HP |
|
設立 |
2024年5月30日 |
事業内容 |
ソフトウェア(Koino)開発、販売 |
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