株式会社アクティブスペシャリスト 代表取締役社長 松澤寿典

NTT、ドコモ、三井住友海上を経てサイバーセキュリティとAIガバナンスの専門家として従事し、2024年アクティブスペシャリスト設立、サイバーセキュリティとAIガバナンスの課題解決を支援しています。代表の松澤寿典氏に詳しい事業内容や今後の展望をお聞きしました。

50代の役職定年が転機に。4つの柱で未来を拓く

事業の内容をお聞かせください

事業は大きく分けて四つあります。一つ目は、サイバーセキュリティとAIガバナンスに関するコンサルティングです。これまでの経験で培ってきたノウハウを、企業様向けに提供しています。

 

二つ目は、サイバーセキュリティ関連の商品やサービスを市場に展開したいと考えている企業様への、セールスおよびマーケティング支援です。多くのセキュリティベンダー様は、お客様である企業側の実情を十分に把握されていないケースが見受けられます。

 

そこで、私自身の経験を活かし、具体的なアドバイスを通じて、その企業様の販売戦略やマーケティング活動を支援しています。

 

三つ目は、個人向けのキャリアコンサルティングです。新しい雇用形態に縛られない働き方を模索されている方々を支援したいという思いから、キャリアコンサルタントの資格も取得しました。

 

現時点では立ち上げ途中ですが、個人向けのキャリアコンサルティングサービスを提供したいと考えています。

 

最後に、最も力を入れたいと考えているのが、シンクタンク事業です。現在のサイバーセキュリティ対策は、すでに発生している攻撃への対応が中心ですが、おそらく数年後にはAIが多くの対応を自動で行うようになり、私たち専門家の役割も変化していくと思います。

 

また、自動運転やメタバース空間など、様々な未来が予測される中で、サイバーリスクは間違いなく存在し続けるはずです。

 

そうした未来のサイバーリスクを事前に予測し、今からその対策を考えておくことが、サイバーセキュリティ分野における私たちのキャリアデザインだと考えています。

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

事業を始めた大きなきっかけは、キャリアの転換期である役職定年に直面したことです。大手企業では、この時期に理事や執行役員といった昇進をしない場合、給与が大幅に減少し、将来の働き方に大きな不安を抱えることになります。

 

そうした同僚たちの姿を見て、60歳になったら必ず独立しようと強く心に決めていました。

 

当初は独立への漠然とした思いしかありませんでしたが、2年間ほど副業を続けた結果、継続的な案件の見込みが立ち、独立を確信できる手応えを感じるようになりました。

 

家族の同意を得るまでには時間を要しましたが、副業での実績とお客様からの反応が、独立を決意する上での大きな後押しになりました。

戦国時代の城のような防御を固めるセキュリティ

仕事におけるこだわりを教えてください。

こだわりは二つあります。

 

一つ目は、サイバーセキュリティの分野で主体的に対策を講じていくことを大切にしています。戦国時代のお城を設計するかのように、お客様の状況に合わせた最善の防御策を考えています。

 

二つ目のこだわりは、コンサルティング会社やセキュリティベンダーが行う、ホラーストーリーマーケティングとは一線を画すことです。

 

お客様の不安を煽り、必要以上の高価なソリューションを売りつけることはしません。適正な価格で最適なセキュリティ対策を講じていただくことも、私のこだわりです。

 

また、事業を続けていく上で気をつけているのは、常に一歩、二歩先の先手を打つことです。これにより、万が一の攻撃を受けた際にも、これは予想通りの攻撃であり、対策は十分であっても念のためさらに追加の投資を提案しようなどという対応が可能になります。

起業から今までの最大の壁を教えてください

最大の壁は、事業を組織化してスケールさせていくことと、サイバーセキュリティ人材の不足という2点です。

 

私一人で事業を展開するには限界があります。私が直接手を動かさなくても事業が回るような仕組みを構築しなければ、会社の器はこれ以上大きくならないと考えています。

 

例えば、副業で協力してくれるセキュリティの専門家を集め、私がプロジェクトマネージャーとしてチームを率いる形を目指しています。

 

しかし、この壁を乗り越えることは非常に難しいと思っています。コンサルティングのノウハウはマニュアル化が難しく、これをいかに可視化して多くのメンバーと共有し、チームとして仕事を進めていくかが、現在直面している大きな事業課題です。

 

もう一つの大きな壁であるサイバーセキュリティ人材の不足は、長年にわたり指摘されている問題で非常に深刻です。

 

セキュリティの仕事は、憧れを持たれる職業ではありません。そのため人材がなかなか集まらないのが現状です。この状況をどう変えていけるのかもまた大きな壁だと認識しています。

 

常に新しい発見を求め、学び続けるコンサルタントの姿勢

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

まず一つは、常に新しい発見があることです。コンサルティングの仕事では、資料を作成する機会が多く、その資料を一つの作品のように捉えています。元々理系出身のため、自然現象を数式で表現するような感覚に近いかもしれません。

 

世の中にある、組織的な対策の不備を、フローチャートやモデルとして分かりやすい良い絵として表現できた時、今日は良い作品ができたなと感じます。

 

また、難しい事柄を分かりやすくモデル化して伝えられることが、私にとって良い作品であると考えています。

 

お客様からお褒めの言葉をいただけると、それが何よりの原動力となり、とても元気が出ます。

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

複数の事業をポートフォリオとして持ちたいと考えています。具体的には、まずサイバーセキュリティに関わる仕事は最も収益を上げられる仕事です。

 

一方で収益性は低いものの地域貢献ができる仕事、さらにはボランティアのような形で取り組む仕事、そして趣味とをうまく組み合わせた仕事、といった複数の仕事をうまく組合せ、自分らしい働き方を確立したいと考えています。

 

10年程の期間で会社を大きくして、最終的に売却するのも選択肢の1つです。

 

将来的には同じような目標を持つ企業へ会社を売却することを考えています。そして、その後は顧問や相談役といった形で関わることを構想しています。

趣味も仕事も諦めない起業スタイル

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

まず、初期の出資金や設備投資がほとんど不要なビジネスモデルであれば、資金的なハードルは実質ゼロに近く、非常に始めやすいと思います。

 

例えば、カフェを開くには多くの準備が必要ですが、私が現在行っているコンサルティング事業のように、資金的な負担が非常に少ない事業はスムーズに事業をスタートできます。

 

また、現代は様々なサービスが充実している時代です。事業の立ち上げは驚くほど簡単になっています。会計の専門知識がなくても会計ソフトを使えば対応できますし、起業に関するノウハウも無料で手に入る情報が溢れています。

 

正社員を雇用しなくても、とても低いリスクと自分のペースで会社を成長させられる時代になったと痛感しています。

 

その意味では、格段に起業しやすくなったと言えると思います。正直に言って、もっと早く起業していればよかったと思うほどです。

 

そして何より、雇用に縛られない働き方は、非常に自由度が高いという大きな魅力があります。自分で時間を自由に配分できるのは、本当に素晴らしいことです。

 

もし、仕事だけでなく、趣味も含めて色々なことを充実させたいと考えているのであれば、早く独立することをお勧めします。

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:松澤寿典

NTTのR&D部門にて基盤的研究開発に従事し、先端技術を活用した新規事業をプロデュース。その後、NTTドコモにおいて情報セキュリティ部門の中核メンバーとして標的型攻撃対策やインシデント対応態勢の整備を推進。2019年に三井住友海上へ転職し、CISO直轄の情報セキュリティ部門の責任者としてセキュリティ戦略をリード。データガバナンスやAIガバナンスの強化にも貢献。2024年に株式会社アクティブスペシャリストを設立。

企業情報

法人名

株式会社アクティブスペシャリスト

HP

https://active-sp.co.jp/

設立

2024年12月12日

事業内容

  • サイバーセキュリティ・AIガバナンスのコンサル事業
  • 専門人材向けのキャリアコンサル事業
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