ikigAI株式会社 CEO 外所 祐香

ikigAI株式会社は、Z世代が自分らしく生きるサポートを行う、AI×Wellbeingスタートアップ企業です。独自のAIビジョンボード技術により、個人の価値観や夢を視覚化し、企業の離職率改善やエンゲージメント向上を実現しています。CEOの外所 祐香氏に、事業内容や今後の展望なども含めて詳しくお聞きしました。

AIを活用した自己探求プログラムで、Z世代の自分らしい働き方をサポート

事業の内容をお聞かせください

個人向け、法人向け、学校向けに対して、AIを活用した自分らしさや自己探求を促進するプログラムを提供しています。

 

当社の最大の強みは、AIによるビジョンボードという新しい自己体験プログラムです。一人ひとりのユーザーが持つ想いやビジョン、夢をビジュアル化し、その目標に向かってどう行動するかにアプローチできる点が特徴です。

 

視覚情報で人は認知するため、アートの要素を取り入れました。もともとコーチング事業からスタートしたのですが、無形商材で変化が見えづらいといった課題があり、AIでのビジュアル化を始めたところ反応が非常に良く、人の成長の変化を表現するのにビジュアルが有効だと実感しました。

 

個人向けサービスでは、3ステップでビジョンボードを作成し、AIでToDoリストや行動計画表を作成しながらコーチングを行い、継続的なサポートをパッケージ化して提供しています。

 

法人向けでは、マネジメント層が抱える離職率やエンゲージメント向上の課題に対応しています。従来のチームビルディング研修では盛り上がらない、1on1の対応が大変といった課題がありますが、ビジョンボードを用いることで普段の仕事では見えない人柄や価値観が見えるようになり、年代を問わず楽しくディスカッションができます。

 

学校向けでは、生成AIを使った探究学習が求められる中、AIを活用して自分のなりたい姿や人生の歩み方を描くきっかけを作る授業やワークショップを実施しています。

 

AIを使った自己のビジュアル化は具体的にどのようなものですか?

一人ひとりが自分らしいビジョンを視覚化するプロセスです。学校でのワークショップ、企業でのチームビルディング、国際的な場面でも、絵があることで誰でも参加できます。

 

 

 

生成されるビジュアルからは、強みやアイデンティティ、価値観、好きなこと、大切にしている個性などが読み取れます。企業や学校向けには、その人との関わり方、組織で活躍してもらうためのフィードバックもAIで出力するので、好評をいただいています。

 

ビジュアルのパターンは無限大で、様々な結果が出ます。全く同じものはありません。あえて類型化せず、一人ひとりの個性を大切にした表現を心がけています。

 

作成方法は、過去・現在・未来の3つの観点から価値観や個性、将来の理想をインプットしていただき、AIがそれを基に画像を生成します。

 

企業研修ではWebページで直接入力・生成できるプロダクトもあれば、スプレッドシートでまとめて処理することも可能です。個人向けではLINEでやり取りするなど、用途に応じて柔軟に対応しています。

 

 

どのような課題を抱える企業が利用していますか?

主な課題は、離職率の高さやZ世代のマネジメントの難しさです。退職代行サービスを使ってすぐに辞めてしまう、チームビルディングがうまくいかないといった課題を抱えている経営者やマネジメント層の方が多くいらっしゃいます。

 

効率的に全員の情報を把握したい、チームビルディング研修が盛り上がらないので活性化させるツールが欲しいなどのニーズがあります。

 

当社のサービスでは、個人のビジョンと会社のビジョンを接続することで、エンゲージメントが5倍に高まり離職率も下がったという統計が出ています。研修後はマネジメント層に取扱説明書やフィードバック表をお渡しし、継続的な効果検証も行っています。

 

際に使用された方からは満足度97%と高い評価をいただいています。思考が具現化される体験が新しくて楽しいなどの声をいただいています。

 

現在は10人程度の少人数から学校向けの100人規模まで対応しており、海外展開も進めています。これまで13カ国のユーザーに提供しており、シリコンバレーとカナダのトロントで大学でのワークショップも予定しています。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

大学4年生の時、起業したいと漠然と思っていました。そんな時に、起業家を支援するピッチイベントの長期インターンに参加しました。起業家の方がピッチしている瞬間の顔や輝きがかっこよくて、生き方が魅力的だと感じたのが最初のきっかけです。

 

ほぼ毎日、経営者の方々とFacebookでつながり、「なぜその事業をしているのか」「どんな想いを持っているのか」といった生き様に惹かれて、たくさんお話を伺ってきました。

 

その経験を通じて、自分の軸が定まっていない人、人生のビジョンや生きがいを持たない人が大多数で、挫折していることに気づきました。そこでこの課題なら解決できると思い、自分の軸を持って生きる人を増やすためのコーチングから事業を開始しました。

 

利益より社会貢献を優先させる

仕事におけるこだわりを教えてください。

利益至上主義ではなく、自分がどのような形で社会貢献したいかということを大切にしています。

 

教育領域はあまり収益性が高くないので辞めた方がいいと言われることがあります。ですが、自分が情熱を持って取り組めることなら、後から利益も売上もついてくると考えています。赤字でもやりたいことをやるという気持ちを大切にしながら、同時に確実に黒字化する方法も考えています。

 

この社会貢献への想いは、大学時代から被災地でのボランティア活動などを通じて、多くの方にお世話になってきたことから生まれた純粋な気持ちです。経営者の方々にインタビューをしていた時も、何のメリットもないにも関わらず、貴重な時間を割いてくださいました。

 

社会に育ててもらったという感覚が強いので、自分が受けた恩を次の世代に回していきたいと思っています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

常に大変なことはありますが、一番時間がかかったのはマネタイズの部分です。

 

届けたい相手である10代、20代の人たちはアルバイトで稼いでいる状況で、しかも日本には自己理解や自己啓発にお金を払う文化がありません。そのため、サービスの価値を適切に伝えて収益化することに、苦労してきました。

 

現在取り組んでいるのは、企業や学校、国や自治体と連携して、困っている人たちに価値を届けるためのマネタイズ方法を見つけることです。法人向けサービスへのピボットなども進めています。

 

実際に企業の中にいる20代の方々でも、これからどう生きていくかを悩んでいる人たちに、研修という形でサービスを提供できるようになりました。

 

 

生きがいを持って毎日楽しく暮らす人を増やす

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

お客様の成長や変化が見られることが一番のモチベーションです。

 

会社を立ち上げてまだ1年も経っていませんが、お客様の変化には日々驚かされています。たとえば、都心で望まない仕事を続けていた方が、自然や生きものに貢献したいという想いを実現するために、一緒に戦略を練り、実際に移住されました。

 

今では毎日がとても楽しそうで、見違えるほど元気な姿を見せてくれています。

 

こうしたお客様が少しずつ増えていくことで、自分のしていることには確かな価値があると実感でき、その瞬間が何よりの喜びとなっています。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

私は、日本発グローバルスタートアップとして、Z世代が「人生に希望を持ち、自分らしく歩める未来」を創りたいと考えています。

 

いま、世界には約20億人のZ世代が存在し、その51%以上が「人生のゴールを定められない」という課題に直面しています。これは孤独や自己喪失感につながり、結果としてメンタルヘルス分野で年間数兆ドル規模の社会的コストを生み出しています。

 

この現実を変えるために、AI技術を活用し、Z世代が自分自身の「未来の可能性」を見つけられるソリューションを世界に届けていきたい。

 

日本の強みである「人の心に寄り添う文化」と「テクノロジー」を掛け合わせ、世界のZ世代に「自分らしく生きる力」を提供していきます。

 

データ活用については現在検討段階ですが、個人に寄り添うサービスの提供だけでなく、収集したデータを適切に匿名化して、国や自治体が政策立案に活用できるようなデータビジネスへの展開も視野に入れています。

 

また、ビジョンボードには、企業が通常アクセスできない個人の本音が記録されています。何歳で子どもを産みたいか、誰と結婚したいかなどのデータは機密性が高いものの、適切に活用すれば悩んでいる人により良いサポートを提供できると考えています。

 

当面は企業や学校でのAIビジョンボードの利用数を着実に増やし、国や自治体との連携も深めながら、悩みを抱える次世代の人たちにサービスを届けていくことに注力していきます。

 

失敗の取り返しがつく若いうちに挑戦する

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

早めに挑戦することをお勧めします。自分で考えて挑戦して失敗した経験は、必ず財産になって将来に役に立ちます。

 

私は今25歳で経営者の中では若い方ですが、周りの方々が投資する気持ちで色々な言葉やサポートをしてくれます。バークレーに行く機会をいただいたり、青年版の国民栄誉賞のファイナリストに選んでいただいたり、様々なチャンスが広がっています。

 

特に起業するのであれば取り返しがつくうちに挑戦した方がいいと思います。

 

その上でおすすめしたいのは、質の高いコミュニティに参加して人脈を築くことです。私自身、Facebookを活用して積極的に経営者の方にアポを取って話を聞きに行った結果、今では数千人のフォロワーがいます。

 

経営者の方と繋がりたいときには、必ず誰かを通じてご紹介いただけるようになりました。

 

 

貴社のサービスに興味がある企業へのメッセージをお願いします

Z世代や20代の社員のマネジメントは、大変なことが多いと思います。

 

私はこれまで1,500人以上の方々と関わってきて、彼らがどんなことに悩んで、どうやって乗り越えているかを間近で見てきました。その知見を活かして、御社のチーム作りやエンゲージメント向上、20代の離職率の改善などの手助けができればと思っております。

 

そのような課題をお持ちでしたら、ぜひ気軽にお声がけください。Z世代の特性を理解した実践的なアプローチで、一緒に解決策を見つけていきましょう。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:外所 祐香

2022年立命館大学卒業。大学時代に「未来人材賞」を受賞し、個人事業主として地域留学事業を立ち上げ、学生の挑戦を後押しする仕組みを実践。2022年にソフトバンク株式会社へ新卒入社。法人営業に従事した後、法人向け生成AIプロダクトのマーケティングリーダーとして全社表彰を受ける。また、社内副業としてSTATION Ai株式会社に出向し、全国のスタートアップ企業の誘致に取り組み、誘致実績No.1を達成。ソフトバンクアカデミア選抜生、経済産業省「始動」プログラム選出、J-StarXインド派遣など、国内外の次世代リーダー育成事業にも多数参画。2024年9月にソフトバンクを退社し、「自分らしさに向き合うことで、挑戦できる人を増やしたい」という想いから株式会社ikigAIを創業。AIを活用した「自己理解×行動支援」プロダクトを開発し、Z世代を中心に展開中。起業後、Tokyo Startup Gateway 2024にて優秀賞を受賞し、JCI JAPAN TOYP 2025ファイナリスト選出。

 

企業情報

法人名

ikigAI株式会社

HP

https://ikigai96.studio.site/

設立

2024年9月12日

事業内容

  • 生成AIを活用した“自分らしさ”発見と行動支援のパーソナルサポートサービス。
    (AIビジョンボード・AIフィードバック・コーチング)

  •  法人向け「自分らしさ」から始めるチームビルディング研修・ワークショップ。
    心理的安全性・個の力の活用・Z世代マネジメントなどに特化。
    (例:マネージャー研修/自己理解ワーク/AI×対話型アクティビティ)

  • 教育機関向け生成AIを活用した「探究×自己理解」の次世代型キャリア教育プログラム。
    (例:高校・大学向けワークショップ、講義)

 

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