
GVA TECH株式会社 代表取締役 山本 俊
GVA TECH(ジーヴァテック)株式会社は「法とすべての活動の垣根をなくす」という理念のもと、テクノロジーの力で法務分野の課題解決に取り組んでいます。代表取締役の山本俊氏は2012年に法律事務所を設立した後、2017年にGVA TECH株式会社を設立し、法務業務を効率化するリーガルテックの事業を立ち上げました。今回は山本氏と経営企画部長の板倉氏に事業内容や今後の展望、さらに採用活動についてお話を伺いました。
テクノロジーの力で企業の成長を支える「法務ソリューション」を提供
事業の内容をお聞かせください
山本氏:現在、2つの柱で事業を展開しています。
1つ目は、主に大手企業や中堅企業向けに法務業務を効率化する法務オートメーション「OLGA」です。これは、事業部から寄せられる法務案件の依頼対応や、契約書のチェック、管理などの業務をトータルで支援するサービスです。
メールやSlack、Teamsと連携できるため、事業部門においては、普段使っているコミュニケーションツールの延長として使用できることが特徴です。これにより新しいツールを導入したという感覚がなく、導入のハードルを下げられる点が評価されています。
2つ目は、主に中小企業や小規模事業者向けに、法的な手続きをITで効率化する事業です。たとえば、本社移転に伴う住所変更や役員変更などの登記、商標の取得など、企業運営に欠かせない手続きをスムーズに行えるオンラインサービスを提供しています。
企業運営において、登記、商標、特許、労務、許認可など様々な法的な手続きがありますが、日本国内においてはそれらをサポートする士業が細分化され誰に何を依頼すればいいのかわからないと悩む方が多いです。また、それにかかる費用も、中小企業にとっては、安くありません。
そうした課題を解決するために、「GVA法人登記」や「GVA商標登録」をはじめとした様々なサービスを展開しています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
私は法律事務所時代、スタートアップの支援に携わっていました。その中で強く感じたのは、限られたリソースで最大の成果を生み出さなければならないという現場の厳しさです。特に法務の分野は重要でありながら、多くの中小事業者やフリーランスにとっては専門家に依頼するコストが大きな負担となっていました。
そうした課題を解決する方法を模索する中で、AIを活用すれば、より低コストかつ使いやすいサービスを構築できるのではないかと考えるようになり、現在の会社を立ち上げました。
テクノロジーを取り入れることで、これまで一部の大企業や資金力のある事業者にしか届かなかったサービスを、もっと幅広い人々に提供できる可能性があると確信したのです。
ユーザー視点を最優先にし、使いやすさを追求
仕事におけるこだわりを教えてください
山本氏:当社のこだわりは、何よりも「ユーザーの視点を大切にすること」です。ユーザーが抱える課題を確実に解決することを第一に考え、その姿勢はプロダクトの開発や提供方法の隅々にまで反映されています。
具体的には、サービスの立ち上げ前から徹底してユーザーの声を集めました。事前に約100社へのヒアリングを行い、どのような課題を抱え、どのような機能を求めているのかを丁寧に把握したのです。
リリース後も、実際にご利用いただいたお客様からのフィードバックを継続的に収集し、それをプロダクト改善に反映させています。
こうした取り組みによって、真にユーザーにとって価値のあるプロダクト開発を行うことで、高い継続率を実現できています。細部にまで配慮することで、利便性や信頼性を高めるだけでなく、結果として他社サービスとの差別化にもつながっていると考えています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
山本氏:最初にリリースしたサービスで、ターゲットを外してしまったことです。弁護士としての経験から、「こういう人たちに、こういうプロダクトがあればきっと使ってもらえるはずだ」と、自分の思い込みで開発を進めてしまいました。その結果、思うような売上を残すことができませんでした。
最初に提供したサービスは、契約書をAIでチェックするもので、小規模事業者やフリーランス向けに設計していました。実際にリリースしてみると、当時はその層には費用をかけてまで契約書のチェックサービスを利用するニーズがほとんど存在しないことが分かりました。
一方で、大企業であればAIによる契約書チェックの価値を理解してもらえ、ターゲットを完全に間違えていたと痛感しました。
そこで改めて約100社にヒアリングをおこない、その声をもとに作ったのが現在の「OLGA」に繋がります。「OLGA」は会社の成長の軸となり、最終的には上場までつなげることができました。最初の失敗があったからこそ、今の成長につながっているのだと思います。
社内のコミュニケーションを活性化
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
山本氏:私は、モチベーションを特に意識していません。必要だから進み続ける感覚で、使命感や責任感に突き動かされているといった方が近いかもしれません。
板倉氏:一方で、従業員のモチベーションという観点では、その目的のためだけではありませんが、社内でインフォーマルなコミュニケーションを増やす取り組みをおこなっています。
たとえば、代表の山本が主導して始めた「BAR山本」という企画では、山本を中心にカジュアルにいろんなテーマの話をする機会を設け、部門を超えた交流ができる場を作りました。
組織はどうしても縦割りになりがちですが、そうした気軽にコミュニケーションを取れる場を意図的に作り、いろんな情報に触れることが、チームの活性化につながると考えています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
山本氏:今後は、これまで以上に事業規模を拡大していきたいと考えています。
当社が掲げるパーパスは「法とすべての活動の垣根をなくすこと」です。法は本来、すべてのビジネスや日常の活動に密接に関わっているものですが、専門性の高さや手続きの煩雑さが原因で、多くの人にとっては距離を感じる領域となっています。
私たちは、その壁を取り払い、誰もがもっとスムーズに法務を扱える社会を実現したいと考えています。そのために、今後の事業規模の拡大においてはM&Aなども積極的に行い拡張していきたいと考えています。
起業したいなら、考えるよりもまず行動することが大事
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
山本氏:考えるよりも、まず行動することです。考えすぎると、細かいことに囚われてしまうため、考える前に始めた方が良いと思います。
以前設立した数十名規模の法律事務所を運営するなかで、売上を立てることや組織マネジメントの経験はありましたが、プロダクトを中心とした事業はまったくの未知でしたので、自分でできる準備はすべてやっていました。
AI開発会社の方や大学教授など、さまざまな方に会いに行って相談に乗ってもらったり、座学で学べることは自分で勉強したりしていました。
募集しているポジションや一緒に働きたい人物像を教えてください
板倉氏:現在、幅広いポジションを募集しています。特にエンジニアは、さらに増やしていきたいと考えています。
現在、プロダクトマネジメントを山本中心で行っておりますが、展開しているプロダクトが多くなってきているため、プロダクトマネージャーは特に採用したいです。
また人物像としては、スタートアップで働くこと・当社で働くことに意味を感じられる人を採用したいと考えています。もちろんスキルや経験も重要ですが、なぜここで働きたいのか、自分なりの理由や意義を持っている人を歓迎します。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:山本 俊氏
弁護士登録後、鳥飼総合法律事務所を経て、GVA法律事務所を創業。2017年にGVA TECH株式会社を創業して代表取締役に就任し、2024年に東証グロース市場へ上場。「法とすべての活動の垣根をなくす」を掲げ、法務オートメーション「OLGA」と法務手続クラウド「GVA 法人登記」「GVA 商標登録」を展開する。
企業情報
法人名 |
GVA TECH株式会社(ジーヴァテック株式会社) |
HP |
|
設立 |
2017年1月4日 |
事業内容 |
リーガルテックの開発・提供 |
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