
ZERO株式会社 代表取締役 沖杉大地
「地球上の貧困をゼロにする」をビジョンに掲げる「ZERO」が展開するのは、全国の食品メーカーから集めたフードロス食品を提供するサステナ自販機です。SDGsへの取り組み、さらに企業や病院の福利厚生や健康経営の推進サポート事業も注目を集めています。代表取締役の沖杉大地氏に、事業の概要や今後の展望について伺いました。
月間2万食のフードロスを削減
事業の内容をお聞かせください
自社で開発したサステナ自販機「ZERO BOX」に、全国の食品メーカーさまから集めたフードロス商品を入れ、利用者に提供しています。北海道から沖縄まで全国で140台展開しています。
商品の多くは食品メーカーさまから直接買い取っています。これらの商品の賞味期限は1カ月以上、長いものだと3カ月から半年以上残っているものも少なくありません。
買い取ったフードロス商品には利益を乗せず、基本無料で提供しています。フードロス全体の流通を促進することを目的としています。社名の「ZERO」もここからきています。
無料で提供できるのは、ビジネスモデルに理由があります。フードロスを削減し、CO₂削減に貢献したいと考える当社の活動に共感してくださる企業や大学、病院から、月額の固定利用料をいただいています。SDGsへの取り組みの一環として導入いただくことで、企業のブランディングにもつながる仕組みです。
また、当社は企業の福利厚生を通した健康経営にも貢献しています。例えば、昨年始めた「朝食サポートZERO BOX」は、朝食向けのフードロス商品を受け取れる仕組みで、朝食を食べずに出社する社員の健康課題を解決するために導入いただいています。利用データも取得できるため、人事・総務ご担当者が抱える社内課題と企業のSDGs推進を同時に支援できる点が強みとなっています。
当社ではフードロスを理由とした訴求はあえて前面に出していません。安いから、商品に魅力があるから、と自然に手に取ってもらい、結果的にフードロス削減につながる形を理想としています。知らず知らずにフードロスを削減することだけでなく、焼却時に発生するCO₂の削減や、製造過程で発生済みのCO₂を無駄にしない効果もあります。
日本のフードロス問題は、以前よりも改善傾向にあるものの、依然として重要な課題です。当社のサステナ自販機では月に約2〜3万個のフードロスを削減していますが、それでもメーカーさまから出るフードロスの1%にも届いていません。
まだ食べられるのに捨ててしまうのではなく、発生したフードロスを削減し、その成果を他国の支援につなげる責任があると考えています。そのためにも、まずは導入してくださる企業さまを増やすことが重要となっていきます。
今年の8月1日からは「冷凍サポートBOX ZERO」のサービスもスタートしました。現在は、冷凍弁当や冷凍フルーツなどを中心に提供していますが、将来的にはフードロスになりそうなさまざまな商品、フードロスを発生させてしまっている企業さまの商品を提供したいと考えています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
実は、私の1番の想いはフードロスを減らしたい訳ではありません。根底にあるのは貧困を解決したい想いです。学生時代にバックパッカーとして世界一周をしたとき、アフリカなどで深刻な貧困を目の当たりにしました。その経験から、貧困問題を解決するために起業しようと考えるようになったのです。
当初は日本で発生するフードロスをアフリカの子どもたちに直接届けられればいいのでは、と考えました。しかし、関税などの問題で現実的ではありません。そこで、日本のフードロスをビジネスに変え、その収益で貧困を解決しようと思いました。現在はフードロス削減を目的ではなく手段として捉えています。
共同代表の四辻は大学時代の同級生です。卒業する時に「10年後に一緒に起業しよう」と約束し、彼は金融の仕事を経て、10年後に当社を共同設立する運びとなりました。私が起業のビジョンを立て、四辻が金融の知識を生かし、二人で会社を成長させています。
起業当初は農作物のECサイトを立ち上げ、その後コンビニのフードロス情報を発信するサイトを立ち上げましたが、コロナ禍で事業が行き詰まりました。
そのときに、オンラインだけではなく、実際に販売できる場所が必要だと痛感し、そこで現在のサステナ自販機にたどり着いたのです。
「ZERO BOX」らしさにこだわる
仕事におけるこだわりを教えてください。
社員には働く量で絶対に負けたくないと思っています。我々についてきてくれる社員やスタッフがいることは本当に心強いです。
サステナ自販機を造る上でこだわったことは『ZERO BOX』らしさ、を打ち出すことです。一目でフードロス削減のための自販機だとわかる形や丸み、取っての持ちやすさなど、デザイン面に強くこだわりました。使いやすさや合理性を重視して改良を重ね、最新モデルはよりコンパクトでスタイリッシュになっています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
事業を展開していく中で最大の壁となったのは、やはりリソースの問題です。システム開発と商品の調達には、ある程度のコストが必要になります。また、従業員もまだまだ少ないため、リソース不足が課題です。
当社の事業モデルは、一定の損益分岐点を超えるまでにどうしても数年かかってしまうため、ここを乗り越えることが一番大切なことだと思います。
目標は3年後に1000台の導入・設置
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
起業のきっかけにもなった世界一周での経験が大きいです。ギブミーマネーと言ってくる子どもたちにコインを渡しても、それはそのまま大人に渡ってしまい、その子たちには一銭も残りません。その光景を見て、とても切ない気持ちになったことがあります。
エチオピア滞在時に、いつものようにギブミーマネーと女の子に声をかけられましたが、お金がなかったので冗談半分でビスケットをあげたことがあります。すると、彼女の目は輝きだし、食べていいの?と聞かれ、もちろんと答えると、美味しそうに食べ始めました。食べ終えると今までに聞いたことのなかった、感謝の言葉を伝えてくれました。
その時に、子どもたちが本当に必要としているのはお金ではなく、今日や明日の食べ物だったことに気づきました。クッキーを頬張った女の子の笑顔は、今でも脳裏に焼き付いています。つらいときも、目を閉じればあの子どもたちの顔が浮かび、それが現在の私のモチベーションになっています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
まずは、サステナ自販機事業をさらに加速させることが目標です。現在は全国に約140台を設置していますが、今期の終わりまでにあと200台、計300台は展開したいと考えています。3年以内に1000台の導入・設置を目指し、その先は海外展開も視野に入れています。
当社のサービスは、大企業はもちろん、人材の確保が難しい、離職率が高いといった課題を抱える中小企業さまにもぜひ検討いただきたいです。現在、導入・設置いただいているクライアントも従業員10人程度の企業から2000人以上の大企業まで、その規模はさまざまです。
また、企業だけでなく、病院や介護施設などでの導入事例も増えており、人材の定着や採用募集のきっかけの一つとして喜ばれていますし、福利厚生サービスとしてもご好評いただいています。
月額の契約で、要望に応じて配送回数を変えられます。中身は基本的にお任せいただいていますが、それぞれの会社様のリクエストにもお応えしています。
諦めずに挑戦しよう
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
やはり、諦めたらそこで終わりだと思います。
いつか起業したいと考えている方も多いと思いますが、やろうと思えば今すぐにでもできるはず。困難にぶつかって諦めてしまうかもしれませんが、やると決めたらやり抜くことが大切です。
そうすれば、きっと誰かが助けてくれます。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:沖杉大地 氏
企業情報
法人名 |
ZERO株式会社 |
HP |
|
設立 |
2022年3月 |
事業内容 |
|
関連記事