
NYC株式会社 代表取締役社長 中塚 庸仁
自己資金で投資し、中小企業の事業承継を成功に導く投資会社「NYC」。設立からわずか3年半で15社の事業承継を実現し、独自の経営サポートを続けています。代表取締役社長の中塚 庸仁氏に、事業内容や今後の展望について伺いました。
3年半で15社の事業承継を手がける
事業の内容をお聞かせください
当社は全国の中小企業を対象に事業承継・経営支援を行う投資会社です。北海道から沖縄まで、あらゆる業種を対象に支援しています。
ご依頼いただくケースの多くは後継者不在の企業で、創業50年以上の老舗企業の70代オーナー社長や、外部に譲渡したいと考える2代目社長からの相談も少なくありません。
最近では、事業の成長に悩む経営者からのご相談も増えています。市場の変化やAIの台頭など、環境変化が激しい中で独力経営の限界を感じ、私たちのネットワークや仕組みを活用しながら成長を目指すケースです。
この場合、現社長にそのまま経営を続けていただき、私たちは取締役や株主としてサポートに入ります。基本的なビジネスモデルは、事業承継後に中長期的な経営支援を行い、企業価値の向上を図ったうえで、次の株主や経営者にバトンをつないでいくスタイルです。後継者がいない場合は、外部から適切な人材を採用するなどして、事業承継を円滑に進めていきます。
後継社長候補には、現場経験が豊富で、組織に溶け込む力を持った方をお迎えしています。過去の肩書き以上に重視しているのは、社員と真摯に向き合えるかどうかです。その会社の文化や価値観を尊重し、地に足のついたリーダーシップを発揮できる方を選んでいます。
また、後継社長の選定だけでなく、その方が会社になじむまでの期間、全面的にサポートします。その一環として、当社では後継社長が安心して現場に入れるよう、独自の育成ロードマップも用意しています。
入社直後に取り組むことや、数ヶ月後の目標など、過去のつまずきやすかった事例をふまえて設計されており、「何をどの順番で進めればよいかが明確で助かった」という声もいただいています。
当社の事業スタイルは、一般的な投資ファンドとは大きく異なります。外部に投資家を持たず、自己資金で投資を行うため、純粋に中小企業に寄り添うことができるのです。
一般的なファンドでは、投資家へのリターンを前提とした「期限付きの支援」になりがちで、Exitのタイミングや経営判断に制約が生まれることもあります。
一方で私たちは、自社の意思と責任で判断できる立場だからこそ、企業ごとの状況に合わせて柔軟に支援内容を設計し、必要に応じて長期的に腰を据えて関わることが可能です。
こうした制約のない支援が、事業承継の現場では非常に重要だと感じています。同様のビジネスモデルに取り組む会社も少しずつ増えていますが、私たちはこれまでに15社の事業承継に携わってきました。
年間1〜2件が一般的とされる中、これは決して小さな数字ではないと感じています。一社一社と丁寧に向き合いながら、少しでも多くの企業に貢献できるよう努力を重ねてきた結果だと思っています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
新卒でソフトバンクに入社し、ベンチャー投資に携わりました。
国内のスタートアップからシリコンバレーの最先端企業まで担当し、仕事へのやりがいを感じる一方、ビジネスモデルには夢があるものの、どこか地に足がついていないと思うこともありました。
その後、M&Aコンサルティングを経て、より現実的で腰を据えて取り組める事業承継の世界にたどり着きました。また、両親が中小企業を経営していたこともあり、起業したいという思いもあったため、会社の立ち上げに踏み切りました。
今思うと、ベンチャー投資やM&Aコンサルティングでの経験は、すべて現在の事業につながっています。意外に思われるかもしれませんが、実は一番の土台になっているのは、学生時代に続けていた飲食店でのアルバイト経験です。
年齢も学歴も国籍も異なるさまざまな人たちと働く中で、「価値観の違う人と協力する」「現場の空気を読む」「相手の立場で考える」といった感覚が自然と身につきました。この経験は、経営者や現場社員など多様なバックグラウンドを持つ人々と向き合う中小企業投資の現場で、今も確実に活きています。
自社のカルチャーを貫く
仕事におけるこだわりを教えてください。
大事にしているのは「先手必勝」という考え方です。とにかくスピードを重視し、誰もやっていないことにいち早く挑戦することを意識しています。YouTubeの活用もその一例です。
YouTubeは今や、誰もが見るメディアですが、当時、同業他社で取り組んでいる企業はほとんどありませんでした。「誰もやっていないことをやる」それこそが、私たちのカルチャーだと考えています。
また、メディアを活用して会社の「見える化」を進めたいという想いもありました。事業承継を検討されている中小企業の経営者の方々だけでなく、採用候補者の方々にも会社の雰囲気や価値観を届ける手段として、メディアを戦略的に活用しています。
こうした姿勢の先に目指しているのが、「最速で100社の支援を実現すること」です。この規模感でそれを目指す投資会社は、他に類を見ないと自負しています。そのために欠かせないのが、中小企業のオーナー経営者との新たな出会い、自社メンバーの採用と組織づくりという2つの取り組みです。
特に、オーナー経営者の方々と向き合う場面では、信頼関係を築くことが何よりも重要です。相手を尊重しながらも、必要なことは率直にお伝えする。私たちはそうした誠実なコミュニケーションを大切にしています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
従業員の離職が続いた時期です。入社から数ヶ月で退職してしまう方も多く、一度に複数名を採用したにもかかわらず、短期間で次々と離れていきました。特に、会社のカルチャーに共感できずに辞めてしまうケースが目立ちました。その時、会社としての選択肢は二つありました。
一つは、同じことが起きないよう、会社の方針やカルチャーを変えること。もう一つは、方針は変えずに、このスタイルに共感してくれる人とだけ進むことです。どのようにすべきか悩みましたが、最終的には会社のスタイルを貫くことを選びました。
この経験から、採用では入社後のミスマッチを防ぐことが何よりも重要だと学びました。今では面接時にYouTubeの動画を見てもらうなどして、入社前に会社の雰囲気を知ってもらうようにしています。そのおかげで、カルチャーギャップによる離職はかなり減りました。
また、SNSは採用だけでなく、事業承継を検討されているオーナー経営者の安心感にもつながっています。「この会社なら大切な会社を任せられそう」と思っていただけるよう、等身大の社風を発信することを大切にしています。リアルな空気感が伝わることで、自然と信頼につながっていると感じています。
規模拡大のため、共同投資も視野に
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
事業承継はやはり責任の重たいテーマです。その中で、オーナー社長から感謝の言葉をいただけた時は、やはりうれしいです。
社長が交代することで、会社の空気が一変することがあります。歴史が長く、従業員の高齢化などで閉塞感が漂っていた会社に、新たな後継者が現れることで、一気に前向きなエネルギーが生まれる。その瞬間を見届けられることが、私にとっては大きなモチベーションになっています。
また、現在は15社もの企業と向き合っているという事実も、強い責任感につながっています。「ここで自分が折れるわけにはいかない」という覚悟は日々強くなっており、背負っているものの重みが、自分を前に進めてくれています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
日本には300万社以上の中小企業があると言われていますが、我々だけでアプローチできる数には限界があります。
現在は当社単独で投資をしていますが、事業承継に取り組みたいと考える個人や企業は増えてきています。そうした方々と共同投資を進め、より多くの中小企業の事業承継問題を解決したいと考えています。
そのためにもまずは、自分たちの資金で100社を支援するという目標を一番に達成したいと思います。
覚悟を決めて挑む
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
起業をする人は、周囲の空気や常識に左右されません。「仲間がいないから起業できない」という考えは手放し、自分の意思と行動で一歩を踏み出すことが大切です。
私がおすすめするのは、銀行の融資を受けることです。他人からお金を借りることで覚悟が生まれます。私たちも銀行から融資を受けたことで腹を決め、それが大きなモチベーションになりました。自分で自分を追い込む環境を作ることは大事です。
事業承継にお困りの方に向けて一言お願いします。
事業承継に悩んでいる方、あるいは現在、事業の成長に頭打ちを感じている経営者の方がいらっしゃいましたら、ぜひNYCにご相談ください。一緒に成長への道を歩むサポートをさせていただきます。
事業承継問題と向き合ってみたい方も、ぜひご連絡ください。我々と一緒に、より多くの企業の未来を創っていけたらと思っています。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:中塚 庸仁 氏
企業情報
法人名 |
NYC株式会社 |
HP |
|
設立 |
2022年3月 |
事業内容 |
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