
circus株式会社 代表取締役 矢部 貴志
新卒から人材業界一筋で歩み、業界の構造的問題を目の当たりにしたことで人材紹介プラットフォーム事業を起業。「HRに、New Standardを。」を掲げ、成長を続けるcircusAGENTを運営している。代表の矢部貴志氏に、事業の詳細や今後の展望についてお聞きしました。
後悔のない転職を全ての人に
事業の内容をお聞かせください
人を採用したい企業と人材紹介会社を繋ぐBtoBのプラットフォームを運営しています。
これまで企業間で行われてきた人材紹介の取引を一元化し、双方のコストを削減しながら、より最適なマッチングを実現しています。
採用を考える企業にとって人材紹介は採用手法の一つですが、人材紹介会社は全国で3万社を超えています。その中で企業が採用活動を行う際、紹介会社と一社ずつ個別につながっていくのは非常に大変で、時間もコストもかかります。
そこで私たちのプラットフォームを使えば、一括で複数の紹介会社に依頼や取引ができます。プラットフォーム内では、企業がより戦略的に採用施策を立てられるような機能を多数展開しています。
その中の一つに「他社効果データ閲覧機能」があります。これは採用企業が様々な採用施策を立てる際の分析ツールです。
これまでの採用分析ツールは自社の過去データとの比較が中心でしたが、私たちが開発したのは、他社や競合と比較した上で施策を立てられる分析ツールです。
自社だけのデータを見ていても、市場全体のトレンドの中で自社がどのポジションにいるのか、改善の余地がどれくらいあるのかは分かりません。同じ業界や職種の他社がどれくらい採用できているのか、そのぐらい応募があるのかなどの情報を可視化することで、より戦略的な採用活動が可能になります。
そしてこのツールには、比較と参考という2つのキーワードがあります。まず比較によって自社の状態を客観視します。そして参考によって、競合他社の採用状況から学び、どんな施策を打てばいいのかを具体的に知ることができるのも特徴です。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
人材紹介業界の実態を見ると、求職者の意思や考えが十分に尊重されていない場面が少なくありません。新卒から現在まで業界に携わる中で、求職者の本意とはずれた形で企業へのマッチングが進んでしまうケースを何度も見てきました。それを変えたいと思ったことがきっかけです。
また、求職者の働き方の選択肢が劇的に多様化しています。有効求人倍率の上昇、リモートワークの普及による地域制約の撤廃、キャリアチェンジの一般化など、求職者にとっての選択肢は無限に広がっています。
一方で、ブティック型の紹介会社では、こうした多様なニーズに十分応えきれないのが現実です。限られたリソースの中で、求職者の幅広い要望を全て満たすことは困難だからです。
その結果、売上や収益を確保するために、手持ちの限られた案件に求職者を無理やりマッチングさせるという構造ができてしまっているのです。
この現実を前に私は、疑問を抱くようになりました。当初は自分一人が変われば良いと考えていましたが、個人の努力だけでは業界全体の構造は何も変わりません。
それならば業界そのものを変えてしまった方が、事業としても意味があるし、社会的なインパクトもはるかに大きくなります。そう思った時、人材紹介プラットフォームという現在の事業形態に着想を得ました。

解像度を高め、未来を描く
仕事におけるこだわりを教えてください。
私の仕事におけるこだわりは現場を知ることです。トレンドや理論ももちろん大切ですが、事業の核となるのは現場なので、お客様やマーケットで実際に何が起きているかの解像度を高めることです。
circusAGENTも、私たち自身が人材紹介業を実際にやりながら事業を作り上げました。
エージェントの日常業務プロセスを深く理解し、現場の解像度を上げて事業に落とし込んでいきました。机上の空論では済ませず、議論やトレンドに流されない姿勢を大切にしています。
また、今の状況だけで判断せず、常に3年後、5年後を意識した判断をするよう心がけています。企業は成長し時代の変化も早いので、中長期的な視点での意思決定が重要だと考えています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
プラットフォーム事業特有と言える課題に直面したときです。
人材紹介会社と企業の両方が集まって初めて流通が生まれるプラットフォームでは、事業初期から両サイドのユーザーを同時に集める必要があり、これには相当なリソースと時間が必要になります。
多くのプラットフォーム事業がここで躓いてしまいます。私たちも例外ではありませんでした。
そこで私たちは、既存の人材紹介会社が持っている契約企業を、circusAGENT上でシェアしてもらう仕組みを構築しこの壁を乗り越えました。
人材紹介会社同士で案件をシェアできる機能により、短期間で大量の求人案件を確保することを可能にしました。

手触り感のある成長が力になる
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
私のモチベーションの源は、弊社のサービスがより大きくなった時の世の中へのインパクトへの期待感です。
今の状態からは想像もできないほどの規模とスケールで社会にインパクトを与えている未来を描くことが、一つのモチベーションになっています。
実際に事業は順調に成長を続けています。それ以上に実感として感じることは、circusAGENTを利用していると声をかけられる機会が増えてきたことです。
数字だけではなく、こうした身近な場面でサービスの浸透を実感できるようになり、大きな喜びを感じています。
自分が携わってきたサービスが世の中に広がり、実際に影響を与えているという手触り感は何物にも代えがたいモチベーションになっています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
circusAGENTは、まだまだ大きな成長余地があると確信しています。私たちが目指しているのは、求職者の転職・就職という意思決定を、後悔のないものにしていくことです。
このビジョンを実現するために、circusAGENTを通じてできることは、まだまだたくさんあると考えています。
しかし、私たちは人材紹介プラットフォームという領域だけにこだわっているわけではありません。今後は周辺領域で複数の新規事業を立ち上げていく計画があります。
まずは採用領域全体への支援を拡大していきたいと考えています。人材紹介以外の採用手法も含めて、企業の採用活動をトータルでサポートしていく事業を構想中です。
具体的には、3本の軸で事業展開を進めていく予定です。
1つ目は、求職者に対する「後悔のない転職意思決定」の支援です。これは現在のcircusAGENTの延長線上にある事業領域です。
2つ目は、企業に対する「後悔のない採用意思決定」の支援で、3つ目は、HR事業者の事業成長支援です。
これら3つの軸を通じて、最終的に目指しているのは人材紹介のインフラを構築することです。業界全体を支える基盤となるような仕組みを作り上げたいと思っています。

ブレない判断を支える「起業する意味」
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
ミッション・ビジョンを練る前の段階で起業する意味を明確にすることです。
具体的には、ファミリーカンパニー型を目指すのか、あるいは事業を通じて社会を大きく前進させるスケール型を志向するのかという方向性を早期に決めることです。
いずれを選んでも間違いではありませんが、どの道筋が最も再現性高くミッションを実現できるかが関わってくるため、重要であると思います。
私自身、会社を立ち上げた際にホームページのトップに「HRに、New Standardを。」という言葉を掲げました。
人材業界で新しいスタンダードになるくらいスケールの大きなことをやるために会社を起業したという、私の起業理由そのものを表した言葉です。
この方向性を最初に決めていたことで、その後様々な問題や選択に直面した時も、迷うことなく中長期スパンでの意思決定ができました。早い段階での方向づけが、ブレない判断につながると思います。
求職活動中の方へのメッセージをお願いします
私たちは既存事業もまだまだアップデートしていきますし、新しい事業も次々と手がけていく予定です。そのため、どんどん成長もしますし、変化もしていく会社だと思っています。そうでなければ私たちが目指している目標は実現できないとも考えています。
よく言えばチャレンジができて、色々な経験ができる職場ですが、すごく大変な環境でもあると思います。ですが、その分やったことのない領域にチャレンジをして成長できる環境は整っています。
だからこそ、新しいチャレンジを恐れない方、変化を楽しめる方に来ていただきたいと思っています。チャレンジを楽しみながら、一緒に人材業界の新しいスタンダードを作っていく仲間をお待ちしています。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:矢部 貴志 氏
慶応義塾大学総合政策学部を卒業後、株式会社キャリアデザインセンターに入社。法人向け営業および新規サービス開発に従事。2016年よりスタートアップ創業に参画し、HR領域における事業立ち上げを推進。2017年にcircus株式会社を創業。「HRに、New Standardを。」を掲げ、人材紹介プラットフォーム『circusAGENT』を立ち上げる。
企業情報
| 法人名 | circus株式会社 | 
| HP | |
| 設立 | 2017年7月 | 
| 事業内容 | 
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