株式会社JOYCLE 代表 小柳 裕太郎

株式会社JOYCLEは、「ごみを運ばず、燃やさず、資源化する」をテーマに、離島や地方などごみ処理が難しい地域で、ごみの収集から資源化までを現場で完結させ、再生可能エネルギーとして活用する循環型モデルに取り組んでいます。物流・産廃・人の移動を一体化し、地域課題の解決と持続可能な社会の実現を目指しています。今回は、代表の小柳裕太郎氏に、事業の特徴や今後の展望について詳しくお聞きしました。

 

カーボンネイティブな資源化で、ごみ処理インフラを変える

事業の内容をお聞かせください

私たちは「ゴミを運ばず、燃やさず、資源化する」新しいインフラを構築しています。

 

現在は、試作機段階の「JOYCLE BOX」を開発中で、ごみを100分の1〜5まで減容し、無機資源化できる仕組みを備えています。IoTセンサーで環境、経済、安全に関するデータを可視化し、完全に電熱で稼働させることで、再生可能エネルギーによるカーボンネガティブな資源化を実現します。

 

背景には、人口減少や焼却炉の減少があります。遠方の焼却炉までごみを運ぶ地域が増え、輸送費や処理コストが上昇しています。さらに運搬を担うドライバー不足も深刻化し、一部自治体では運搬や焼却ができず、ごみを埋める状況に陥っている例もあります。

 

こうした課題に対し、病院や工場、離島などの現場に直接装置を設置し、その場で資源化することで、運搬や焼却の必要を最小限にし、サプライチェーン全体を短縮することを目指しています。

 

処理技術は他社の優れた技術を取り入れつつ、電熱による温度管理で低酸素環境を作り出し、ごみを効率的に資源化します。これにより、ごみの種類や数量のデータを取得でき、省エネ化やダイオキシン、一酸化炭素分解などを最適化する独自の制御ソフトやハードの知財を蓄積しています。

 

導入対象は、感染性廃棄物を扱う病院や、焼却炉から遠い工場やホテル、ドライバー不足に悩む自治体などです。

 

初期費用を抑えた月額制で提供し、データ可視化サービス「JOYCLE BOARD」とセットでレンタルする形を想定しています。例えば、年間1,000万円の廃棄物処理コストがかかる病院であれば、当社の装置により7〜8割のごみを処理でき、大幅なコスト削減が見込めます。

 

私たちは、大規模焼却炉メーカーが対応しづらい離島や地方のニーズに応え、既存技術をより使いやすく進化させ、省エネ化、デジタル化、AI制御を取り入れることに特化した唯一のプレーヤーです。ハードとソフト両面のエンジニアリング力を活かし、持続可能で効率的なごみ資源化インフラを広げていきます。

 

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

以前から、環境エネルギー分野で事業を立ち上げたいと考えていました。理由は、グローバル規模で大きく事業展開できる領域だと思っていたからです。

 

起業を決意した後、環境エネルギー系スタートアップに入社し、業務時間の一部を起業アイデアの探索に充てました。その中で立ち上げた、環境エネルギーイノベーションコミュニティにて、環境系スタートアップと接点を持つことができました。

 

転機となったのは、コミュニティイベントで知った鹿児島県大崎町の事例です。ここでは老朽化した焼却炉を閉鎖し、28品目の徹底分別によってその場でリサイクルを実現しています。素晴らしいモデルですが、全国や海外で同じ取り組みを広げるにはハードルが高いと感じました。

 

そこで、ごみの発生現場で自動的に資源化できる装置があれば、運搬コストや手間を減らせるのではないかと考えました。既存装置は存在するものの知名度が低く普及していない状況を受け、まずはデータ可視化サービスのプロトタイプを開発し、やがて装置そのものの開発へと踏み切りました。

 

さらに視野を広げると、廃棄物処理マーケットは今後、離島が多く大規模焼却炉を持てない東南アジアで急拡大すると予測されています。現地ではごみが不適切に投棄されるか、船で運んで焼却されており、環境負荷とコストの両面で課題が山積みです。私たちは日本で先進事例を示し、それを東南アジアへ展開することを目指しています。

 

この課題は「ごみ処理のラストワンマイル問題」とも言えます。大規模焼却炉を維持し続けるのが難しく、運ぶ人材も不足する中、現場で処理を完結できるインフラは不可欠です。私たちは、送電線や水道管の末端維持と同じく、このラストワンマイルを支える仕組みを提供し、これからのごみ処理インフラを変えていきます。

 

 

義理・人情・恩で築く。運と縁を力に変えた挑戦

仕事におけるこだわりを教えてください。

当社のバリューは、「スピード、挑戦、GNO(義理・人情・恩)」です。私自身、仕事がうまくいくときは運と縁に支えられてきました。個人的には、義理と人情と恩を大切にすることで、運や縁も巡ってくると信じています。

 

もちろん、自分でもまだ至らない部分はありますが、反省しながら意識して行動してきたからこそ今があります。実際、当社には大企業の投資家の方々がパートナーとして入ってくださっており、そのサポートは心強いものです。事業の成長に本気で寄与してくれる方々に恵まれたと感じています。

 

私のキャリアも、運と縁の積み重ねです。偶然見たテレビ番組で双日に興味を持ち、面接で失敗したにもかかわらず人事の後押しで内定を得たのも、その一例です。

 

起業も同じで、迷っていた時期にかつての同僚から愛知県のビジネスコンテストに誘われ、出場したら優勝しました。これを機に、副業から本業へと舵を切りました。

 

どこで何がつながるかは分かりません。だからこそ常にアンテナを張り、人との関係を大切にしています。感じの悪い人に良い話は持っていきません。だから感じよくしているわけではありませんが、日頃のご縁は何よりも大事にしています。

 

今までの最大の壁を教えてください

私のキャリアは、正社員、大企業での副業、フリーランス、そして経営者と、それぞれの段階で異なる壁がありました。

 

正社員時代は、経験も力もない状態からのスタートで、とにかく成長するしかない状況でした。大企業では社内評価を意識しなければ昇進できない仕組みがあり、本当に自分のやりたいことができるのかという葛藤に苦しみました。

 

副業時代は、起業アイデアの種がないまま活動を続け、「このままで本当に起業できるのか」という不安がありました。JOYCLEの元案を思いついたときも、関心を示してくれる人は少なく、いかにブラッシュアップすれば事業として成立するのか模索していました。

 

起業後の仲間集めも、前職でつながった元経営者や、大学から紹介されたエンジニアなど、偶然のご縁が事業の土台になっています。

 

今後は、人材不足で正社員だけでは賄いきれないと実感しています。副業や業務委託をフレキシブルに活用できるスタートアップが伸びる可能性は高く、そうした出会いを生む仕組みづくりにも取り組んでいきたいと考えています。

 

 

資源と喜びが循環する社会を、日本から世界へ

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

JOYCLE BOXを搭載した車が、離島や地方を走り回り、集めたゴミをその場で資源化し、それをエネルギー源にして走るようになることです。

 

物流、産廃、人の移動を一体化することで、ドライバー不足の解消にもつながります。資源と喜びが循環する社会を、新しいインフラとして実現したいと考えています。映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場するデロリアンのように、ゴミをエネルギーにして走ることは、私たちの装置でも可能だと思っています。

 

現在は離島や地方に加え、陸路で長距離輸送が必要な北海道にも力を入れています。たとえば、アメリカでは今も多くのゴミを埋めていますが、いずれ本当に埋めてよいかの議論が起こるはずです。

 

その時に、北海道モデルをアメリカやアフリカへ、離島モデルはフィリピンやインドネシアへ活かすことができるので、日本から世界へ広げていきたいと考えています。

 

現時点では装置は手動で投入していますが、将来的にはボタンひとつで自動投入できる形にします。操作もシンプルにして、マニュアルを見れば誰でも使える設計にすれば、これまで危険で働きづらかったごみ処理の現場でも、ハンディキャップのある方が安心して関われるようになります。

 

そこで生まれる無機資源を使ったアップサイクルやアート制作も進めていくことで、障害者雇用にも貢献していきたいと考えています。

 

 

リーダーかフォロワーか。副業から始まる自己分析

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

起業したいと思うすべての人が、起業を経験してみてもいいと思っています。自分がリーダータイプなのかフォロワータイプなのかは人によって異なりますが、フォロワーとしての起業も立派な選択肢です。

 

私のキャリアを再現性のある形で考えるなら、まずは副業から始めることをおすすめします。副業や業務委託を通じて、スタートアップの経営者と一緒に働いてみることで、自分はフォロワーなのかリーダーなのか、組織運営で好きな部分や苦手な部分は何か、どのジャンルが自分に向いているかといった自己分析ができます。

 

こうした経験を持つ人が増えれば、日本のスタートアップ界隈にも大きなプラスになると考えています。

 

どのような人材を求めているか教えてください

私が求めているのは、泥臭くても自分のやりたいことを具体的な行動に移し、周囲を巻き込みながら、数字で成果を示せる人です。

 

現在はPMポジションとハード開発を募集しており、業界の常識を塗り替える変革に挑んでいきます。そうしたインパクトを残しながら人生設計を描きたい方に来ていただきたいです。

 

スピード感や当事者意識、巻き込み力はすぐに実感していただけるはずなので、副業や業務委託、将来の起業を視野に入れている方にもぜひ参加してほしいです。

 

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:小柳 裕太郎

小樽商科大学卒業後、双日株式会社にてレアメタルや無機化学品の化学品貿易営業・海外(パプアニューギニア)駐在で複数プロジェクトの立ち上げを牽引。その後、人材ベンチャーや電通にて新規事業の立ち上げ、アクセラレーションプログラムの運営に従事。現在、分散型循環エネルギー社会Utility3.0の実現をスタートアップ目線で目指すU3イノベーションズに参画。日本、世界の今後のごみ処理インフラのあるべき姿を見据え、小型IoTアップサイクルプラントをサービス型で提供し、産廃処理コストカット・環境貢献に寄与するビジネス立ち上げを決意。「死後100年後の社会を変えるビジネスを創る」ことを目的に「資源と喜び(JOY)が循環(CYCLE)する社会を創造する」分散型ごみアップサイクルインフラスタートアップ株式会社JOYCLEを創業。

 

企業情報

法人名

株式会社 JOYCLE(ジョイクル)

HP

https://joycle.net/

設立

2023年3月

事業内容

小型アップサイクルプラントに特化したコンサルティング・データプラットフォームサービスの提供

 

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