【#545】保険代理店専用の「四次元ポケット」で、街の保険屋さんから課題解決のプロフェッショナルへ|代表取締役 浅山 裕紀(株式会社SowZow)

株式会社SowZow 代表取締役 浅山 裕紀
「伴走者が変われば、中小企業、日本経済はもっと良くなる」を理念に掲げ、保険代理店専用のプラットフォームサービスを展開する株式会社SowZow。同社は保険代理店が「伴走者」=「中小企業経営者の良き相談相手」のポジションを担えると期待し、保険商品だけでは解決が難しい顧客の課題を解決するプラットフォームサービスを展開しています。代表取締役の浅山裕紀氏に、事業の立ち上げ経緯や起業への思い、今後の展望について伺いました。
保険代理店を飛躍させる四次元ポケット
事業の内容をお聞かせください
当社では、法人マーケットを主戦場とする保険代理店向けにプラットフォームサービス「SowZow(ソウゾウ)」を展開しています。
法人顧客メインの保険代理店は仕事柄、お客様の会社の事、ビジネスの事、従業員の事、家族の事、財産の事など多くの情報に触れる機会があります。時には銀行員や税理士などにも言えない相談を受けることだってあります。そのため、企業の社長からは保険以外にも、人材採用/相続/事業承継/M&A/補助金/節税/士業の紹介依頼など、さまざまな相談を受けることが少なくありません。しかし、その多くは、保険商品の枠組みだけでは解決できない課題なのです。
「せっかく相談してもらったのに保険商品ではお手伝いできない。でもお客様の役には立ちたい」、そんな現場(保険代理店)の声に触れて立ち上げたサービスが「SowZow」の仕組でした。
このサービスをわかりやすく言うと、「ドラえもんの四次元ポケット」です。困ったときには「餅は餅屋」のイメージで、プラットフォームにはさまざまな切り札、つまり専門家がスタンバイしています。人材採用に困る社長にはこのカード(専門家)を、事業承継に悩む社長にはこのカード(専門家)を、といった形で、保険以外の顧客の困りごとを解決するお手伝いをします。とはいえ、品質の高い専門家でないと大切なお客様に紹介するのは怖い、というのが保険代理店の気持ちだと思います。SowZowでは現在、保険代理店が活用しやすい高品質な専門家が約130社在籍しており、利用者は間もなく1,000ユーザーを超える見込みです。
ただ、四次元ポケットを持っていても、道具が多すぎると使いこなせません。そこで、当社の社員がドラえもん役となり、一緒に解決策を探します。SowZowはサブスクリプション型のサービスですが、感覚としては顧問料に近いかもしれません。
実はこのサービス、保険代理店にとっては、保険以外の収益を確保できる機会にもなります。保険業界のルールとして、どこで誰から商品を買っても同価格のため、商品での差別化はできません。その中で「保険の話しかしない人」と「保険以外の相談にも真摯に応えてくれる人」では、お客さまの見え方がまったく違ってきます。
当社のサービスを活用いただくことで、「保険の話しかできないただの保険屋さん」ではなく「保険以外の付加価値も提供できる経営支援型の保険代理店」として差別化ができるのです。お客さまのためになることをやればやるほど、保険+αの収益にもつながる。この新しい仕組で、保険代理店のビジネスモデルをアップデートしていきたいと思っています。

事業を始めた経緯をお伺いできますか?
祖父も父も小さな会社の経営者なので、いずれは自身でも商売をしたいなと思いつつ、新卒でメガバンクに入社しました。ただそこは、何よりも営業目標が重視される世界でした。新人の頃は必死に数字を追いかけましたが、ふと頑張りきったときに「なにかが違う」と感じたのです。
そんな時、公私ともにお世話になっていた融資先の社長が、実はがんのステージ4で余命宣告を受けていたことを知らされました。亡くなるわずか3週間前のことです。
「あんなに信頼関係があったのに、なぜ何も相談してくれなかったのか」と当時悶々としたことを覚えています。今振り返れば分かる事ですが、社長の気持ちに想いを馳せると、「病気のことを打ち明ければ返済を迫られるんじゃないか」、と怖さもあったんだと思います。銀行員は社長の右腕だと思っていたのですが、融資をする側とされる側の限界を感じた瞬間でした。
そんな折、タイミング良く某外資系生命保険会社からスカウトを受け、保険業界で約10年間働きます。保険代理店の皆さまを通じ、多くのお客様の人生や事業に深く関わらせていただき、とてもやりがいがありました。ただ一方で、社長が抱える悩みは採用や補助金、事業承継、家族関係など多岐にわたり、保険だけでは解決できないことも多くありました。
そこで、保険代理店が「社長の悩みを聞き出す役割」を担い、それぞれの課題に応じて専門家につなげられれば、もっと多くの問題を解決できるのではないかと考えるようになりました。多くの保険代理店の皆さまに共感いただいたことで、「これを事業として本格的に形にしよう」と決意しました。

顧客の成功がすべて。「四方良し」へのこだわり
仕事におけるこだわりを教えてください。
故郷の大先輩でもある松下幸之助さんも大事にしてきた近江商人の「三方よし」の理念が私も大好きです。「売り手、買い手、世間の3つすべてにとって良い商売を心掛けるべし」という考えですね。誰かが得をして誰かが損をするようなビジネスは、長くは続きません。当社では「三方よし」をさらに一歩進め、「四方よし」を掲げています。
プラットフォームを提供する立場として、まずは当社のサービスを利用する保険代理店の皆さまに喜んでもらうこと。そしてその先のお客さま、さらに中小企業が元気になることで、結果的に世の中全体が良くなっていく。そして最後に私たちが利益を得る。この順番です。
「四方よし」が担保できない事業は、たとえ儲かる話でも絶対にやらないと決めています。大きなビジネスチャンスが舞い込んでも、「自分たちは得をしても、ユーザーの信頼を損ねる可能性がある」と感じたら迷わず断ります。この考えは、幹部メンバーとは特に強く共有しています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
今、保険業界は大きな過渡期を迎えています。これから生き残るためにどうすべきか模索している保険代理店も多いです。もちろん大変なことは沢山ありますが、一方で応援してくれる人のほうが多いと感じています。
歴史ある業界ですから、若手の我々が新しいことに挑戦すると、当然ですが理解を得られない場面も多々あります。しかし、理念をお話しするうちに自分たちの思いが伝わり、賛同を得られることが本当に増えてきました。現在、大々的なプロモーションはほとんどしていませんが、ユーザー様の口コミだけで年々導入いただく保険代理店も増えています。本当にありがたいことだと思っています。
「保険業界出身の人間が作ったサービス」であることも大きな強みです。机上の空論で仕組みを描くことは誰にでもできますが、業界のリアルを知っているからこそ、保険代理店とその先のお客様への理解の解像度が違います。保険代理店の方々が最終的に目指すゴールを分かった上でサポートできるので、「一言えば十理解してくれる」と感じてもらえていることも弊社の強みだと思います。

悔いのない人生のために一日一日を全力で
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
私は今年35歳ですが、保険業界にいると「いつ何が起きるかわからない」という現実を突きつけられる機会が少なくありません。働き盛りな30代の方が突然事故で亡くなることもあれば、2歳の子どもが小児がんで亡くなることもあります。
だからこそ、今この瞬間に余命宣告を受けても「私はやるべきことはちゃんとやりました」と言い切れるよう、一日一日を全力で生きることが大切じゃないかなと思っています。また、自分ひとりで出来ることにも限界はあります。社内のメンバー、ユーザー様、プラットフォームに参画いただく専門家の皆様、多くの方への感謝を忘れず、世の中に貢献できる仕事をしたいと感じています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
各都道府県でユーザーの上限を2%と定めていますので、まずはその数字を埋めることをKPIとして定めています。しかし、それ以上に、日本の中小企業が元気になることが重要だと考えています。
日本企業の99.7%は中小企業なので、ここが元気にならなければ経済全体は良くなりません。中小企業がしっかり儲かれば、そこで働く人たちの年収も上がり、日本の経済全体が活性化すると思っています。一方で、弊社は毎年中小企業経営者にアンケートを取得していますが、「相談相手がいない」と答える社長が多いのも事実です。そのためにも、社長の横につく優秀な伴走者の存在が非常に重要だと感じています。
日本には現在、約100万人を超える保険営業職がいます。その2%にあたる2万人が一人で100社の企業をサポートできれば、200万社に支援が行き届きます。336万社のうち200万社を支援できれば、中小企業の黒字比率も上がり、日本経済も健全になるのではないでしょうか。
「信頼できる経営相談相手がいない」と悩む中小企業経営者に寄り添い、DeepでWetな関係を築けるのが保険代理店だと思います。そういった弊社の想いに少しでも共感いただける保険代理店の皆様と一緒に仕事がしたいと思っています。

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
自分達が作ったサービスが認知されていく過程を見るのは、何とも言えないうれしさがあります。自社サービスが市民権を得ていく感覚や、血が通っていく感覚は、会社員時代にはなかなか味わえませんし、自分たちの仕事が誰かの役に立っていることを実感できる瞬間でもあります。
それに、仮に起業に失敗したとしても、一度自分でトライした経験のある人の方が、人としての深みも出ると思っています。もし私が人を採用する立場であれば、何もチャレンジせずに傷一つない綺麗なキャリアの人よりも、たとえ結果が出なかったとしても、想いと勇気をもって何かにチャレンジした傷だらけのキャリアの人と一緒に働きたいと思うと思います。
ただ、失うものもあるかもしれないので、やるならしっかり準備して取り組むべきだと思いますし、ノリや想いだけで起業するものでもないと思います。サービスが広がる分、関わる人も増え、責任も増します。最終的な責任は自分に返ってきますから覚悟と責任感をもって真摯に尽くすことを忘れずにいたいと常に思っています。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:浅山 裕紀 氏
青山学院大学卒業後、メガバンクに入行。その後、外資系生命保険会社へ転職。株式会社SowZowを設立し、全国の保険代理店向けに収益最大化プラットフォームサービス『SowZow』を展開。
企業情報
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法人名 |
株式会社SowZow |
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HP |
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メールアドレス |
info@sowzow0.com |
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事業内容 |
保険代理店向けのプラットフォームサービスの提供 |
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