ATIRO株式会社 代表 織田 慎弥

かつては個人事業主として顧客企業のデータマーケティング支援を行っていた織田慎弥氏。顧客からの依頼が高度化・大規模化してきたことに伴い、現在は「ATIRO株式会社」を立ち上げて本格的なデータ分析とコミュニケーション支援の事業を手掛けています。今回は同社のサービス「Atiro code」の特徴や、現在開発中の「Quick Thinker」の展望について、織田氏に詳しくお聞きしました。

 

ユーザーとの最適化されたコミュニケーションで情報を収集し、より高度なデータ分析へ

事業の内容をお聞かせください

現在はコミュニケーション事業とデータマーケティング事業を手掛けています。

 

1つ目のコミュニケーション事業では、SMSを介してユーザーとのコミュニケーションを支援する「atiro code」を提供しています。

 

我々のコミュニケーション支援サービスが他社と違う点は、ユーザーが情報を欲しているタイミングで最適な情報を提供できる点です。「atiro code」は必ずユーザーの能動的なアクションを起点として情報を提供する仕組みになっています。

 

これによって、企業側から一方的に情報を送りつける場合と比較して、開封率が格段に向上します。

 

更に、リマインド機能も付いていて、数分後や数日後など、ご希望の間隔で再度メッセージを送ることができます。そのため最初のメッセージにはリアクションが無くても、再度のアプローチでは返信が得られるというケースもあります。

 

また「atiro code」のもう1つの特徴は、生成AIがユーザーからの問い合わせの意図を的確に企業側に伝えてくれることです。生成AIが間に入って解読することで、ユーザーと企業の行き違いを無くし、スムーズなコミュニケーションを実現します。

 

2つ目のデータマーケティング事業では、「Quick Thinker」というAIデータ分析ツールを提供しています。

 

「Quick Thinker」があれば、データサイエンティストがいない企業でも手軽に高度なデータ分析ができます。ノーコードで使用できるツールなので、プラグラマーや専門的な知識も必要ありません。

 

プロンプトジェネレーター機能も付いていて、欲しい分析結果を言葉で伝えれば、生成AIがそれを導き出すための的確なプロンプトを生成してくれます。

 

このプロダクトの最大の強みは、分析結果を実際の施策に落とし込むまでを一気通貫で実行できる点です。分析結果はパワーポイントやダッシュボードなどお好みの形でアウトプットできますし、抽出したリストをMAツールに流し込むことも可能です。

 

我々はこれらの2つの事業を相互に関連して顧客企業の課題解決に貢献することを目指しています。ユーザーとのコミュニケーションを最適化して情報を取得し、それをデータ分析に取り込むことで、有効な施策へとつなげていくことを目指しています。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

起業する前は、個人で顧客企業のデータ分析やデータを活用した広告配信のサポートなどを行っていました。

 

しかし、顧客からの要望は次第に高度化し案件の規模も大きくなって行きました。そしてデータ活用の分野には今後も非常に大きなニーズがあると確信があり、法人化することでこれらのニーズに応えたいと思うようになったのがきっかけでした。

 

国内の企業は、一般的にデータ活用において大きな2つの課題を抱えています。

 

1つがデータを分析したものの、それを具体的な施策に生かすことができていない点です。ほとんどのケースでは分析に注力しすぎてしまい、そこで力尽きてしまうという現状があります。

 

そしてもう1つの課題が、企業側がユーザーの真意やニーズを引き出せていない点です。ユーザーとコミュニケーションを取ろうとしても、多くの企業ではメールは開封されず、LINEはブロックされ、アンケートは適当な回答しか得られていません。

 

これでは何らかの施策を打とうとしても正しい判断を下すことが難しく、その要因としてデータ分析が施策に落とし込まれていないことが挙げられます。

 

これらの課題を解決するためには、開封率の高いSMSで確実にユーザーの情報を取得し、それをデータ分析に反映して施策に繋げる一連の流れが必要であると考えました。

 

この課題を感じたことも、現在のコミュニケーション事業とデータマーケティング事業立ち上げの背景となっています。

 

 

顧客に丁寧に説明して理解を得るという「顧客ファースト」

仕事におけるこだわりを教えてください。

私が自身の仕事の軸に置いているのが顧客ファーストの考え方です。

 

ただし、これは顧客の言うことに何でも従うという意味ではありません。私が考える顧客ファーストとは、サービスについて顧客に丁寧に説明し、きちんと理解していただくよう努めることです。

 

そして我々の側も、顧客の事業を深く理解するよう努めます。どこでマネタイズをするのかというビジネスの裏側の部分まで徹底して分析し、正しく理解したうえで自社のサービスがどのように貢献できるか考えます。

 

そのために顧客とのコミュニケーションを非常に重視しています。さらには、エンドユーザーのことを第一に考えるようにしています。

 

エンドユーザーにとってのサービスのクオリティをいかに担保するかが、最終的には顧客の利益に関わってくるかと考えているからです。

 

事業を運営するうえで、これらの方針を軸として日々取り組んでいます。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

これまでで最も苦労したのは、「Quick Thinker」の開発でした。特に難しかったのはAIにどのようなデータを渡すかという問題でした。

 

分析が必要なデータは基本的に企業の機密情報であるため、顧客側には当然ながらデータを渡したくないという心理的抵抗があります。そのためAIに顧客のデータを入力することなく、いかに正確な分析を実現するか考えなくてはなりませんでした。

 

この問題の突破口となったのが、AIと自社のアプリケーションの役割を分担させることでした。AIの役割は計算ロジックを考えることに限定し、AIの考えたロジックを用いて実際のデータを分析するのは自社のアプリケーションで実行するという方法に切り替えました。

 

これによってAIにデータを渡さなくても分析できるという顧客の安心を引き出すと共に、AIの作業を減らしたために結果が出るまでの速度も上がりました。

 

さらに当初はプロンプトによって結果が変わり、アウトプットが安定しないという課題もあったのですが、その課題も同時に解決することができました。

 

 

「このサービスを絶対に世に出したい」という思い

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

自分が考えたサービスは社会で役に立つのではないかという確信が、私の仕事のモチベーションになっていると思います。

 

「Quick Thinker」の開発には当初の予定よりも1年長くかかりましたが、このサービスを確実に世の中に出したいという強い思いが支えになり、乗り切ることができました。

 

心のどこかで「Quick Thinker」は必ずどこかの企業の経営課題解決に貢献すると信じていましたし、その信念がやり抜く力になりました。

 

実際に「Quick Thinker」は現在、大手の会社様の顧客アプローチに活用いただいています。このように自分たちが開発したサービスが社会で活躍しているのを見るのは嬉しいですし、その達成感が次の仕事のモチベーションにもつながっていると思います。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

現在、AIと会話をするサービス「Quick Talk」を開発中で、これを軸として新たな事業を構想しています。

 

この技術の土台となっているのは、人間同士の会話の間にAIが入って翻訳を行う三者間通話のサービスですが、「Quick Talk」では人間とAIの1対1の通話を想定しています。

 

このサービスによって目指すのは、音声だけで買い物ができる音声コマースの実現です。音声コマースであればブラウザを介さず、音声通話の通信領域だけで取引が完結します。

 

そのためユーザーは安全に商品を購入でき、テレフォンショッピングのような感覚で気軽に買い物を楽しめるようになります。

 

さらに「Quick Talk」は単独の利用だけではなく、既存のプロダクトと連携させることで、コミュニケーション・分析・購買行動までを連結させた一体型のサービスを視野に入れて開発しています。

 

「Atiroコード」がSMSによって音声コマースに至るまでのコミュニケーションを繋ぎ、さらに背後で「Quick Thinker」が顧客に何を提案するかの判断を行えば、より強力な販売支援のツールとなると考えています。

 

 

キャッシュフローの重要性を理解しておくこと

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

起業は社会人としての経験値になるため、絶対に起業した方が良いと思います。

 

自分で事業を運営すると様々な情報に触れることができ、経済の全体像が掴めます。この経験は経営者としてだけでなく、会社員としても大いに役立ちます。

 

特に副業が許されている会社に勤めている人には起業を強くお勧めします。

 

実際に事業を立ち上げる際は、まずキャッシュフローの重要度を理解しておいたほうがいいでしょう。起業は何においてもキャッシュが重要で、事前にどれだけ資金を調達できるかで成否が決まります。

 

そのため、最初は身の丈にあった形での起業を考えるというのも重要です。

 

その他の細かな経営のノウハウなどは、先に起業を経験している先輩たちから学ぶのが一番です。起業家が集まっているコミュニティなどで情報収集はできるので、そういった場で必要なことを勉強することはとても大切だと思います。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:織田 慎弥

 

企業情報

法人名

ATIRO株式会社

HP

https://www.atiro.co.jp/

設立

2023年03月08日

事業内容

  • コミュニケーション事業
  • マーケティング事業
  • コンサルティング事業
送る 送る

関連記事