【#547】留守中の家賃がかからない住まいの仕組み。日本に新しい暮らし方を根付かせる|代表取締役 近藤 佑太朗(株式会社Unito)

株式会社Unito 代表取締役 近藤 佑太朗
株式会社Unito(ユニット)は、「住む」と「泊まる」を掛け合わせた新しい暮らし方を提案しています。留守中の家賃がかからない「リレント」という独自の仕組みで、家具・家電付き賃貸やサービスアパートメントを全国116棟961室で展開しています。(2025年11月現在)
代表の近藤 佑太朗氏に、事業の背景や起業の経緯、そして「暮らしの最適化の追求」というビジョンに込めた思いを伺いました。

暮らしをもっと柔軟に。新しい住まいのかたち
事業の内容をお聞かせください
私たちは、「住む」と「泊まる」を掛け合わせた新しい暮らし方を提供しています。
具体的には、ホテルレジデンスや民泊など、住まいと宿泊を組み合わせたアセットタイプを全国で展開しています。また、家具・家電付き賃貸やサービスアパートメントのプラットフォームサイトを運営し、国内で最も大きな集客網を持つほか、その物件のプロパティマネジメントも自社で行っています。
特徴は、留守の日の家賃がかからない家賃システム「リレント」です。利用者が不在時に、当社が利用者の代わりに部屋を宿泊用として貸し出せる仕組みで、特許も取得しています。これまで、使っていない日も家賃を払うことが当たり前でしたが、当社では「使った日だけ支払う」という国内初の仕組みを実現しています。
現在は東京を中心に、札幌・名古屋・京都・大阪・福岡・沖縄などの主要都市で約1,000ユニットを展開しています。大手デベロッパーや国内外のファンドとも連携しながら事業を拡大中です。
利用者の多くは、国内外を行き来する経営者や出張が多いビジネスパーソンが多いです。家賃は10万円台後半〜20万円前後で、民泊として利用する際はビジネスのサブ拠点や、海外の方が日本の暮らしを体験するための宿泊拠点として機能します。
稼働率は常に9割を超え、24時間のサポート体制を整えることで、利用者にもオーナーにも安心して選ばれる仕組みを構築しています。
”新しい暮らし方”に着目したきっかけを教えてください
私たちが掲げているビジョンは、「暮らしの最適化の追求」です。
ユーザー側の暮らし方は、これからの30年で大きく変化していくと考えています。親世代のように、「週6出社して、家を買って、郊外で暮らす」という時代から、リモートワークや副業、週3勤務といった多様な働き方へと進化していきます。
そうした変化の中で、家具や家電をすべて揃えて長期で住むのではなく、ライフスタイルに合わせて柔軟に暮らせる選択肢を提供したいと考えました。一人ひとりに最適化された暮らしのかたちを届けたいとの想いがあります。
一方で、不動産の側にも課題があります。日本では人口減少によって空き家が増え、不動産の価値を維持することが難しくなっています。しかし、海外からの観光客は増加しており、そこに新しいチャンスがあります。
日本の不動産マーケットを持続的に成長させるためには、「宿泊」と「居住」を組み合わせることが必要だと考えました。それが、Unitoを立ち上げたきっかけでもあります。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
もともと学生の頃から会社を経営していました。当時は出張が多く、東京の自宅にいるのは半分くらいでした。隣の人は毎日帰ってきて同じ家賃を払っているのに、私は半分しか使っていなくても同じ金額を払っていることにもったいなさを感じたことが、今のUnitoの原点です。
学生時代にツアーガイドのアルバイトとして、観光客を案内する中で、日本の都市が持つポテンシャルを強く感じました。東京は、浅草、お台場、銀座、上野など、一日では回りきれないほど多様な魅力を持つ世界有数の都市です。
旅を通して人に感謝される喜びや、感情が大きく動く瞬間の多さが観光の魅力だと実感しました。日本の観光資源とユーザーの感動体験が交わる宿泊業の可能性に惹かれたことも、今の事業につながっています。
起業家を志したのはもっと前で、10歳のときに「2分の1成人式」で将来の夢を発表したことがきっかけです。なんとなく「社長になります」と言ったところ、周囲から社長と呼ばれるようになり、自然と「自分は起業家になるんだ」と意識するようになりました。それ以来、進学や就職よりも、自分で事業をつくる道を選んできました。

スピードがすべて。小さなチームで逆境を突破
仕事におけるこだわりを教えてください。
常にスピードを意識しています。これまで多くのビジネスパーソンと関わってきましたが、活躍している人でスピードが遅い人はいないと感じます。
頭の回転が速いとか、ビジネスセンスがあるといった抽象的な能力よりも、まず大切なのはレスポンスの速さです。レスが速い人は、必然的にアクションの量も多くなります。
どんなに打率が高くても、打席数が少なければ成果は出ません。一方で、スピードを意識してアクションを増やせば、多少打率が低くても結果的に成功の数は増え、3倍にも4倍にも広がっていきます。
理不尽な状況に直面することもありますが、それでもスピードが何より大切だと思っています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
海外の観光客を誘致する場合、災害、円安円高などの国際情勢に左右されやすく、私の力では解決できないことがあります。特に、一番大きかったのはコロナショックでした。
当社はローンチしたタイミングでちょうどコロナの影響を受けました。最初の物件は7,000万円ほど調達し、準備を進めていたのですが、2020年3月のオープン予定が延期になってしまいました。正直、どうしようかと思いましたし、この時が一番の壁でした。
その後も、2022年の3月まで赤字が続き、毎月50万円ほどのマイナスが出ていました。その中で、プラットフォームの新サービスを週1ペースでリリースし、条件を変えながら検証を重ねていきました。試行錯誤を続けるうちに、10個出したうちの2つがヒットして、なんとか乗り越えることができました。
この時もやはりスピードが活きましたし、小さなチームだったからこそ動けたと思います。少数精鋭だからこそ、機動力を最大限に発揮できたのだと思います。

暮らし方の文化をつくる挑戦。運を味方に走り続ける
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
結局のところ、どんな環境にあっても、運がいいと思える人が前に進み続けられるんだと思います。
基本的に、自分は幸運だと思うようにしています。ネガティブなことは起こりますが、根底で自分はラッキーだと思えるかどうかで、見える世界が変わります。
生まれた国や環境を考えると、日本で生まれて事業ができていること自体が幸運だと感じています。私自身は特別裕福な家庭ではありませんが、良い仲間や経営陣に恵まれ、今こうして挑戦できています。日本を代表する起業家の先輩方ともご一緒できるようになり、本当に運がいいなと感じます。
これからもポジティブマインドを大切に進み続けます。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
時価総額や売上も大事ですが、いちばん大切なことは、この暮らし方を文化にすることです。そのためには、ユーザー数を増やすこと以上に、物件の供給側を拡大していくことが重要だと考えています。
不動産業界では「AUM(運用資産残高)」という指標がありますが、私たちは2035年までにAUMを1兆円にすることを目標にしています。AUMが1兆円を超えたとき、この暮らし方が文化として根付いている状態になると思っています。
海外では、家具付き賃貸やサービスアパートメントが一般的で、学生寮や長期滞在型の物件も数多く存在します。一方で、日本では家具付き賃貸はまだ全体の2〜3%ほどしかありません。
だからこそ、「住む」と「泊まる」を組み合わせた新しい暮らし方を、日本にも根付かせていきたいと思っています。

やるしかない環境をつくり、チームとともに成長する
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
起業は、迷っている時間がいちばんもったいないと思います。意思決定のスピードがすべてです。
イメージで言うと、下り坂を重力で進む感覚です。もう止まれない、止まるほうがむしろ大変といった状況まで自分を持っていく。やるしかない環境に自分を追い込むことが大事だと思っています。
メンタルで頑張るのではなく状況で自分を動かせば、自然と前に進むしかなくなります。そしてその坂を、社員や仲間と一緒に登ったり下ったりしていく。大変な時間こそ、最も成長している時間です。
是非、自分が自然と成長する環境を作り、スピーディーに行動してみてください。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:近藤 佑太朗 氏
明治学院大学経営学部国際経営学科卒業。幼少期の3年半、父の仕事の都合上、東ヨーロッパのルーマニアで育つ。大学入学後、国際交流を軸に活動する学生団体 NEIGHBORを設立。在学中にクロアチア最高峰のビジネススクールZSEMZagreb School of Economics and Managementに留学し、観光学を学ぶ。帰国後、複数の旅行系スタートアップで修行し、2017年に当社設立。
東洋経済発表「すごいベンチャー100」2025年最新版選出。「Technology Fast 50 2024 Japan」10位受賞。日経クロストレンド「未来の市場をつくる100社 2021年版」選出。
⼀般社団法⼈シェアリングエコノミー協会幹事。Entrepreneurs’ Organization (EO) GSEA 日本統括。
企業情報
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法人名 |
株式会社Unito |
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HP |
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設立 |
2017年1月27日 |
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事業内容 |
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