株式会社タスクフォース 代表取締役 鳴川 光平

医療機関向け人材サービスの企業として長年の実績がある株式会社タスクフォース。同社が現在特に力を入れているのが、看護師業務をサポートする資格不要の職種「看護補助者」の派遣サービスです。医療現場でより多くの看護補助者が必要とされている今、これらの人材の採用や管理は専門会社に任せてほしいと語る、代表取締役の鳴川光平氏。今回は鳴川氏にその真意や、事業の展望についてお聞きしました。

 

100人規模の看護補助者の組織を一元管理!病院の負担を確実に軽減

事業の内容をお聞かせください

弊社は主にナースエイドと呼ばれる看護補助者の人材派遣を通じて、この国の医療インフラが抱える課題解決を目指しています。

 

現在、医療現場で働く弊社のスタッフは看護補助者が約900名、医療事務・医療クラーク等のスタッフが約400名で、いずれも資格を必要としない職種です。今の日本の医療現場では、こうした医師や看護師をサポートする働き手が多く求められています。

 

無資格で看護師の業務をサポートする看護補助者は、国としても注目している職種なのですが、実際には毎年その数が減少しているのが現実です。

 

多くの病院では、看護補助者の採用から管理まで自院で行うべきという考えが根強くあります。しかし、自院採用では採用チャネルが限定されることで、応募者層が限られてしまうケースもあります。

 

一方、私たちは人材派遣会社として幅広いお客様の案件を扱うため、その病院には直接的には応募してこなかった人材プールにもアプローチすることができます。

 

弊社のサービスはただ派遣するだけではなく、スタッフのための研修を実施し、正社員登用などキャリアパスの面でも働きがいを感じられるよう制度を整えています。看護補助者がしっかりと職場に定着するまで、丁寧にフォローできるのが強みです。

 

また、医療現場の管理者の皆様のご負担を軽減すべく、複数の業者に分散していた派遣外注体制を再構築し、看護補助者の組織を1社完結で統合的に運営できるモデルも展開しております。弊社のお客様の中では、最大で100名超の看護補助者を組織化してご提供している事例もあります。

 

 

タスクフォース社へ代表として就任することになった経緯をお伺いできますか?

学生時代から、社会課題の解決を通じて新たな仕組みをつくりたいという思いを抱いていました。医学部に進学しましたが、病院で実習を受けたときに定年まで働き続ける未来は、当時の私には想像しきれませんでした。

 

結果的に在学中にインターンシップに参加したことをきっかけに金融系の大手企業に就職することになり、その後、総合商社、プライベートエクイティファンドと、金融業界を中心に約15年間働いていました。

 

しかし、経験を積むほどに、金融業のみで世の中の仕組みそのものを変えることには限界があるという思いが強くなり、働き方を変えたいと思うようになり、独立を決意しました。

 

社会のインフラとして非常に重要な役割を担っており、尚且つこのままでは持続不可能である状況を変えるため医療業界で独立して動いてみようと決意しました。

 

日本は非常に安い価格で質の高い医療が受けられる、世界的にも珍しい国です。しかし、今後この水準を維持するためには、乗り越えなくてはならない課題が多く、そこにやりがいがあると感じました。

 

また、医学部時代の友人たちが医者として働いている姿を見て、業務に忙殺されて本来のポテンシャルを発揮できていないと感じ、彼らともっと何か新しいことが出来るのではないかと強く思ったのも一つの理由です。

 

このように医療インフラが抱える課題と、人材の問題を掛け合わせたとき、大きな変化を起こせそうだと考えたのが、最終的にタスクフォースの代表就任を決めた理由です。

 

自分の仕事に「大義」があるという確信

仕事におけるこだわりを教えてください。

私にとって仕事で大切なのは、大義と自律性の2つです。これらが揃っていれば、それで十分だと考えています。大義という観点では、自分がやっていることに意味があるのかを常に考えています。

 

その仕事をやる意味については、自分が納得できるかどうかを重視しています。人にどう思われるかは気になりません。しかし、自分の中で確信ができるというのは大切です。

 

そしてもう一つの自律性については、自分の考えに基づいて物事を動かせるポジションにいることです。元々サラリーマン時代の「最終的な責任が取れない状態」への不満や限界意識から独立を決意しているので、自分で意思決定できる環境にはこだわっています。

 

そして、それを理解してくれる人と、対等なパートナーとして一緒に仕事をしたいと強く思っています。

 

 

タスクフォース社への代表就任から今までの最大の壁を教えてください

企業組織として従業員のマインドセットをどう変えるかについては日々常に意識しながら動いています。

 

企業が成長する際に、従業員のマインドセットは非常に重要な要素だと思っています。過去の様々な体験を通じて、変革を起こそうとする際にビジョン及びその意義を十分にチームに訴求しきれていない事が数多くあり、いつも課題に感じていました。

 

弊社は昨年の2月末に株式会社メンタルヘルステクノロジーズの上場企業グループに参画する以前も強固な事業基盤を持つ優良企業ではありましたが、参画後はより持続可能な組織体となるべく成長レベルを上げていく方向性へと大きく変わりました。

 

この方針転換に伴って、企業体としての目指す姿や目標も大きく変化し、それに応じて長年培ってきた企業カルチャーにおいても意識改革が求められることになりました。

 

嬉しいことに、この1年半で従業員のマインドが目指す方向へ少しずつ変化してきたのを感じています。従業員にとっても大変な道のりだと思いますが、「企業体としての成長こそが社会における存在意義を高め、結果としてそこで働く従業員の幸せにつながる」と心から納得してもらえるよう、これからもその重要性を伝え続けたいと思います。

 

 

意義のあるゴールに向かっているという納得感

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

やはり、仕事に意義を感じられることが、自分のモチベーションの源泉になっていると思います。

 

日々の仕事で、歯磨きと同じように習慣になっていることなら、苦もなくこなすことはできます。ただし、それを続けた先に何かがある、どこかに向かっているという確信がないと、個人的にはモチベーションを維持できなくなります。

 

金融業界で働いていたときにも「自分がなぜその仕事をやるのか」という部分が段々と見えなくなってきて、一気にモチベーションを失ったことがありました。私の場合は、明確に見えていなかったとしても、何らかの意義あるゴールに向かっているという納得感がないと、長続きしないのだと思います。

 

今の事業であれば、医療業界で働く人たちが働きやすい環境を作ること、ひいては医療業界全体を健全な方向へ持っていくことという大きな目標がモチベーションとなり、日々仕事に意欲的に取り組めています。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

まずは、今後この国でもっと看護補助者という仕事の認知度を高めて、その担い手の数を増やしていかなくてはならないという課題があります。そのためには、まず弊社が安定したサプライヤーとして成長していくことが重要です。

 

また弊社で働く従業員への還元という点において、現在、人事制度などの整備・改善を日々行っているところです。看護補助者として働く人の数を増やすためには、看護補助者という働き方の意義や、このキャリアで何が実現できるのかを示す必要があります。そこで我々が今力を入れているのが、これまでは派遣として責任ある仕事をしてくれていたスタッフの正社員登用です。

 

派遣として医療現場でキャリアを重ね、リーダーの仕事を担うようになり正社員登用される事が我々が理想とする看護補助者のモデルケースです。こうして看護補助者という仕事のキャリアパスを整備することは、スタッフが働きがいを感じられるようにするために非常に重要です。

 

また病院側に対しても、単なる労働力の提供ではなく、生産性向上を目的としたパートナーシップのモデルをより広めていきたいと考えています。現状は派遣というサービスを「あくまでも穴埋め」と捉えている病院は多いため、我々としても正社員へのキャリアパスや充実した教育研修体制など、一般的な派遣会社とは違うとアピールできる強みを今まで以上に増やしていかなくてはなりません。

 

病院側からパートナーとして一目置かれるために、今後もさらなる改革に取り組んでいく予定です。

 

 

組織の外に出る不安を乗り越えること

独立しようとしている方へのアドバイスをお願いします

独立に興味があるものの、「組織を飛び出して本当にやっていけるのか」という不安を拭えない人は多いと思います。実際のところ、私自身もそうでした。独立する前はサラリーマンとしては破格の待遇をいただいていましたし、仮にそれを失ったときに家族や家のローンを抱えてどうやって生活していけるだろう、と本気で考えていたんです。

 

結果的に、私は組織を飛び出してみて良かったと実感しています。この社会の中で、我々のように独立してやってみようという人間が求められる場面は意外に多くあります。日々同じことをやり続けられる力があれば、いつかどこかで誰かがチャンスをくれますし、それを掴めば自分の力で食べていけるようにもなります。

 

以前の私のように組織のブランド力で生活している人で、なかなか勇気が出ずに組織を出られないという人もいると思いますが、思っていたよりも組織の外でもやっていけますし、ダメだったらダメだったで元に戻ってやり直すことも可能だと思いますので、実はそれほど不安を感じる必要はありません。

 

何より、独立の志がある人が飛び出していくのは、業界や社会にとって絶対にプラスになるので、思いきって飛び出してほしいと思います。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

代表経歴:鳴川 光平

大阪市立大学医学部を卒業後、JPモルガンや三菱商事、カーライル・グループ、ベイン・キャピタルなどで、M&Aや資源投資、企業投資といった金融・投資関連の業務に長年従事。2022年に独立し、医療・ヘルスケア業界で事業活動を開始。ここでの経験や出会いから生まれたナースエイド派遣事業の拡大を通じて人手不足に悩む業界を進展させたいという思いから2024年2月より株式会社タスクフォースの代表取締役に就任。現在は、医療機関向けにナースエイド等の人材サービスを提供する。

 

企業情報

法人名

株式会社 タスクフォース

HP

https://taskforce.jp/

設立

2001年2月

事業内容

  • 労働者派遣事業
  • 有料職業紹介事業
  • 業務請負業

 

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