【#553】AI時代に選ばれる広報支援。年間2,000件以上の実績で導く広報の内製化と育成|代表取締役 犬飼 奈津子(株式会社Wo-one)

株式会社Wo-one 代表取締役 犬飼 奈津子
年間2,000件以上の取材実績、15年以上の広報経験。株式会社Wo-one代表の犬飼奈津子氏は、豊富な実績をもとに、企業の伝える力を育てる広報内製化支援と担当者育成の伴走支援を行っています。AI時代において広報の価値が変化するなか、「人と企業のステージを上げる」広報の本質や事業内容について詳しくお伺いしました。
広報の力で企業と人のステージを上げる
事業の内容をお聞かせください
主に、企業の広報の内製化支援と、広報担当者の育成を中心に事業を展開しています。
大企業には広報部がありますが、スタートアップや中小企業では広報が存在しないケースも多く、どの部署に置くべきか、担当者は何をすればよいかといった課題が生まれます。そうした企業に対して、組織の中で広報機能を根付かせる仕組みづくりを支援しています。
私自身は、ジェイアール名古屋タカシマヤで約15年間、百貨店の広報としてメディアPRやSNS運用、危機管理、社内報などを幅広く担当してきました。その経験を活かし、現在は社内報アワードの審査員のほか、KADOKAWA主催の広報・PR講座の講師や中日新聞社主催のWEB社内報講座の講師も務めています。
広報・PR講座では、プレスリリースの書き方やメディアアプローチの方法、年間計画の立て方など、基礎から学べる内容を提供しています。受講後も継続的に学び、実践を積めるよう、受講生同士が案件を共有しながら成長できるコミュニティ「WO-ONE PR研究所」も運営しています。広報に携わる人が自立して活躍できるよう支援することが、当社の使命です。
さらに、行政や地域ブランディングの支援も行っています。自治体や地域ブランドのアドバイザーとして、地域資源の価値を発信し、関係人口の拡大や地域経済の活性化に貢献しています。
企業でも地域でも、広報の原点は、ステークホルダーとの関係づくりです。多面的に情報を発信し、「この人と仕事がしたい」「この企業の商品を選びたい」と思ってもらうためにも、適切な情報発信が重要だと考えています。

御社の強みや他社との違いについて教えてください
私の強みは、圧倒的な場数と経験です。前職の百貨店時代には、年間のテレビ取材は500件、新聞掲載は400件、ウェブメディアも含めると年間2,000件以上にのぼりました。机上の理論ではなく、実際の現場で培った知見と具体的な事例をもとにアドバイスできる点が他社との大きな違いです。
また、大企業の組織内で広報を経験してきたので、組織の中で「広報がどのように機能すべきか」「経営層とどう連携すべきか」など、実践的な立ち回りまで具体的にお伝えできます。経営層の方々からも「現場を理解した具体的なアドバイスをしてもらえる」「経験に基づいたリアルな声だから実践しやすい、落とし込みやすい」と評価いただくことが多いです。
私のコンサルティングでは、すべて自らが実践した事例をベースにお話しします。課題の乗り越え方を具体的に伝えられる点が、他社にはない大きな強みです。
近年はAIの発展により、広報を取り巻く環境も大きく変化しました。かつてはスマホもSNSもほとんど普及しておらず、情報発信の中心はテレビや新聞でしたが、今はAIの時代です。根本的な考え方は変わらないものの、アプローチの仕方や広報に対する意識は進化しています。
たとえば、以前はメディアに取り上げてもらうために出していたプレスリリースも、今では企業の一次情報として扱われ、AIにとっての重要な情報源になっています。会社にとっての情報資産であり、AIによる情報検索や解析においても、有益な情報として正しく認識されるよう、一貫性のある発信が求められています。
プレスリリースの価値は、メディア露出のためのツールから、AI時代における企業資産へと変化しました。これからは、広報を行う企業とそうでない企業の差がますます広がっていくと思います。真正面だけでなく、横顔や背景など多面的な情報を発信できる企業が、選ばれる時代になっていくと感じています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
前職では、通常2〜3年ごとにジョブローテーションが行われていましたが、当時、広告換算すると年間15億円を超える成果を上げており、社内でも「異動させるのはもったいない」と言っていただくこともありました。そのような状況もあり、結果的に約15年間にわたり広報業務を担当していました。
マネージャーとして広報チームを束ねる立場ではあったものの、会社からはさらに管理職として挑戦して欲しいと打診されていました。そして、広報から異動の話が出たとき、あらためて「私は広報の仕事を続けたい」と強く実感しました。
その理由の一つが、百貨店のチョコレート催事「アムール・デュ・ショコラ」での経験です。売上やブランド認知が大きく向上したことで、シェフの方々から「犬飼さんのおかげでステージが変わった」と声をかけていただきました。
そのとき、人や企業のステージそのものを変えられる力が広報の仕事にはあるのだと気付きました。この仕事にますます誇りを持つようになり、「広報の仕事を続けていきたい」という思いが強くなったことから、独立を決意しました。
もう一つ、起業を後押ししたのは発達特性のある息子の存在です。息子には「みんなと同じでなくていい。好きなことを見つけて頑張りなさい」と伝える一方で、私自身も親として好きなことを頑張る姿を見せたいと思いました。
管理職になって組織や世の中の期待に合わせて生きることは、息子への言葉に説得力がなくなるように感じました。だからこそ、息子にとっての道しるべとなれるよう、自分も好きなことを仕事にして生きていく姿を見せたい。その思いが、起業を決意した理由です。

心から良いと思えるものだけを伝える。結果にこだわる広報のあり方
仕事におけるこだわりを教えてください。
これまでの人生を振り返ると、私が後悔したことは、助けられるはずだった人を助けられなかったことや、全力を出し切れず結果を出せなかったことです。
同じ後悔をしないためにも、クライアントに対して常に本気で向き合う姿勢を大切にしています。中途半端に関わるのではなく、結果が出るまで徹底的に取り組むことを信条としています。
広報は「広く報じる」と書くように、クライアントの価値を社会に伝えていく仕事です。だからこそ、私自身が本当に良いと思える企業のお仕事しかお受けしません。たとえ条件の良い依頼であっても、心から人に薦めたいと思えないものは引き受けないと決めています。
自分が心から向き合い、全力で取り組み、そして「愛せるかどうか」。その気持ちを大切にしながら、目の前の仕事に真摯に向き合っています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
ありがたいことに起業当初から多くのご依頼をいただき、ロケットスタートの形で法人化まで進みました。その分、自分の身の丈に合っているのかというプレッシャーは常に感じていました。
会社員時代と違い、独立後は「犬飼奈津子」一個人として信頼をいただく立場になります。責任の重みがまったく違い、想定外の大きな仕事を任されることもあり、本当に自分でいいのだろうかと焦りを感じる時期もありました。
もう一つの大きな壁は、家族との時間の両立です。百貨店勤務時代は拘束時間が長く、繁忙期は夜遅くまで残業が続きました。子供たちに寂しい思いをさせているのではないかという不安や、家族への負担を強く感じていました。
家族との時間を増やしたいと思って独立したはずなのに、結果的には起業後の方が忙しくなり、何のために辞めたのだろうかと葛藤する日々が続きました。
それでも少しずつ体制を整え、現在は夫にも会社に加わってもらい、支えてもらっています。WO-ONE PR研究所のコミュニティメンバーも優秀な方ばかりで、私が受けた案件を安心して任せられる環境が整いつつあります。
一つひとつ壁を乗り越え、ようやく事業の土台を築けてきたと感じています。

息子の道しるべとして生きる。広報で人と社会に希望を届けたい
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
目の前の人をとにかく幸せにしたいと思っています。困っている人がいれば手を差し伸べ、知見を出し惜しみせずに届けたいと考えています。
広報は、人や企業のステージを上げる仕事です。関わる方が変化していく現場に携われることが、私にとっての喜びであり、原動力になっています。
もう一つのモチベーションは、息子の道しるべとなる太陽のような母でありたいとの思いです。息子たちが私の姿を見て「ママかっこいい」と言ってくれる言葉が、何よりの励みになっています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
現在は多くのご依頼をいただいており、すべてを受けきれない状況が続いています。起業当初から走り続けてきた分、まずは組織をしっかり整え、体制を強化していきたいと考えています。
また、起業の背景には、親としての思いもあります。息子がもし社会にうまく適応できなかったとしても、会社という形で何か残してあげたいとの気持ちがあり、新規事業の立ち上げも構想しています。
息子は以前、授業に集中できない子でした。しかし野球という好きなものを見つけ、そこで活躍して褒められるようになったことで自己肯定感が高まり、特別支援クラスを卒業しました。今では授業に集中し、手を挙げるまでに成長しています。その姿を見て「人は、信じてくれる人とふさわしい環境があれば必ず変わっていける」と実感しました。
この経験から、教育と広報はよく似ていると感じました。広報の仕事もまた、まだ知られていない魅力を見つけて伝えることで、企業が輝いていくサポートをするものです。
これまでは広報の立場で企業の皆さまのステージを上げてきましたが、これからはより多くの人が自分らしく輝ける場所をつくることにも挑戦していきたいと考えています。

流れに乗るのではなく、自分で選ぶこと
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
自分の価値観や、ありたい姿を描いたときに、私にとっての選択肢が「起業」でした。起業はゴールではなく、自分らしく生きるための選択肢の一つだと思っています。なんとなくの憧れや周りの流れに乗って起業しても、うまくはいかないでしょう。
大切なのは「なぜ起業したいのか」を自分の中でしっかり腹落ちさせることです。譲れない価値観があり、それを社会の中で活かしたいという思いがあれば、壁にぶつかったときも乗り越えられるはずです。
私自身、起業を決断するまでに5年ほどかかりました。何をやりたいのか、譲れない価値観は何か。その答えを掘り下げていくことに、一番時間を使いました。人生にブレない軸を持つためにも、自分の心の声に耳を傾けてみてほしいです。
世間の価値観や流れに左右されるのではなく、「自分はどうありたいのか」その気持ちを信じて進むことが、後悔のない人生につながるのではないかと思います。

本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:犬飼 奈津子 氏
名古屋駅の百貨店「ジェイアール名古屋タカシマヤ」で15年広報を担当。「日本一露出する百貨店」を目標に、テレビ取材を年間500件近くへと導く。バレンタイン催事「アムール・デュ・ショコラ」では、多数のメディア露出を通じて30億円の売上に貢献、店舗リピート率や顧客ロイヤリティ向上に寄与。独自の押しが強い広報スタイルが話題となり、情報番組出演時には「押しが強すぎると業界で話題」とテロップを出されたことも。著書「Passion Relations 真・広報PR術」
企業情報
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法人名 |
株式会社Wo-one |
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HP |
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設立 |
2023年6月6日 |
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事業内容 |
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