ヘレンベルガー・ホーフ株式会社 代表取締役 山野高弘

「ドイツワインの背景、感動を活き活きと伝え続け、最高の豊かさを創造し、社会に貢献します」を理念に掲げるヘレンベルガー・ホーフ株式会社。2024年に東京の営業拠点「TOKYO BASE」を開設、今年10月末には若手料理人に挑戦の場を提供し飲食業界への貢献を目指す「ヘレンベルガートア」をオープンし、ドイツワインの認知拡大に向けた挑戦を続けています。代表取締役の山野高弘氏に、新規事業の内容や経緯、今後の展望などを伺いました。

 

日本全国へドイツワインの素晴らしさを届ける輸入・卸事業

現在力を入れている事業をお聞かせください

素晴らしいドイツワインを日本全国の酒屋さんに卸す輸入・卸事業を行なっています。

 

大阪には倉庫があり、ワインの在庫管理や出荷を行っています。一方、2024年9月に開設したTOKYO BASEは、東京にある営業拠点です。事務所としての機能に加え、スペースの半分を業界関係者向けのサロンとして開放しています。

 

出荷業務や問い合わせ対応は一切なく、ここを拠点に関東エリアへ進出しています。可動式のカウンターを備え、常時数種類のワインを試飲でき、20人規模の試飲会やセミナーを開催できます。多い時には100人規模のイベントも行っています。

 

TOKYO BASEでは月1回程度、全国ではほぼ毎日のようにセミナーや試飲会を開催しています。その他には、営業、内勤、私のメンバーが各地を回り、ドイツワインの魅力を伝えています。

 

しかし、リアルイベントだけでは限界を感じていました。おそらく延べ1万人以上にセミナーを行ってきましたが、ドイツワインの認知度は十分ではありません。「ドイツワインってビールじゃないの?」と言われることがあるほどです。

 

そこでSNS、特にYouTubeとInstagramでの発信に力を入れています。全く知らない人にもどんどん情報を届けられる可能性を感じ、インフルエンサー向けの学校で学び、現在は飲食店向けにInstagramの学校を月1回開催しています。
リアルとデジタルの両面から、ドイツワインの認知拡大に取り組んでいます。

 

今年10月末にオープンした「ヘレンベルガートア」のオープン経緯について教えてください

この建物は江戸時代からの歴史があるのですが、かなり年季が入った状態でした。

 

最初はせっかくインポーターなのだから、キッチンを作って簡単な料理を提供し、みんなで楽しめる場所にしたいという小さな構想でした。

 

しかし、お肉やチーズを提供する機会が増える中、そろそろレストランの営業許可が必要なのではないかという声が社内から複数上がってきました。

 

ただ営業許可を取るだけではつまらないと考え、会社理念にある「社会貢献」を形にすることにしました。

 

日当をお支払し、事前に打ち合わせをして、ドイツワインに合う料理を考案してもらいます。最大15人程度の料理を提供でき、集客も当社が担当します。

 

若手料理人には貴重な経験の場を提供し、将来的に独立した際にはドイツワインを使っていただけるという好循環も期待しています。こうした取り組みがメディアにも取り上げられることで、業界貢献という社会活動につながると考えています。

 

 

この一年でのビジョンや目標に対しての進捗をお伺いできますか?

社員の成長と自走する組織への移行が大きく進展しました。

 

以前は私が営業や通訳のすべてを担当していましたが、2017年から社員に移譲する方針に転換しました。社員をフィリピンに1ヶ月留学させたり、ドイツに長期滞在させたりと、語学力向上のための投資を行ってきました。

 

社員全員がドイツに行く機会を持ち、生産者とLINEで繋がり、営業だけでなく内勤も連動してイベントに関わることで、「生産者の思いを届ける」という理念が浸透してきています。

 

また、給与面では業界の2割増しを目標とし、賞与も最大4ヶ月分を支給するようにしました。

 

月2回の面談を通じて行動目標をチェックし、4段階評価で成長をサポートしています。役員2名が普段の面談を担当し、私は年2回アルバイトも含めた全員と面談します。これらの取り組みで、社員の幸せ度は確実に上がっていると感じています。

 

 

社員が会社の理念に向かって成長することが喜び

一年前から現在までの期間で感じた困難を教えてください

特に大きな困難は感じていません。むしろ幸せな出来事の方が多かったです。

 

最も幸せだったのは社員の成長です。皆が生き生きと働いてくれていて、昨日のワインセミナーではお客様からさまざまな嬉しい声をたくさんいただきました。

 

特に印象的だったのは、社員が自らセミナーの最後に会社の理念を語ってくれたことです。3年前なら私が説明していましたが、今は社員が自分の言葉で伝えてくれるようになりました。

 

また、社員が作るワインリストも素晴らしいです。社員の近況報告やオリジナルキャラクター、生産者の人柄が伝わる内容など、他の輸入元では見られない工夫が詰まっています。アルバイトも含めた全員が顔を出し、思いのこもった内容になっています。
このように、社員が会社の理念に向かって成長してくれていることが、何よりもの喜びです。

 

起業からこれまで最も成功した体験を教えてください

広報活動に力を入れたことで、会社の認知度を高められたことです。

 

私は営業一筋で働いていましたが、手放して広報に注力する決断をしました。コロナ禍をきっかけに、YouTubeやInstagramを活用し、インフルエンサー向けの学校に通ったり、毎朝6時にインスタライブを配信したりと、輸入元の社長としては通常やらない活動を始めました。

 

今ではワイン業界で「ドイツワイン王子」として一定の認知を得られるようになりました。
私が入社した2000年頃、ドイツワインの人気が低かった時代で、会社もかなり厳しい状況でした。

 

しかし、この25年間でワイン業界において確実な認知を獲得することができ、本当に嬉しく思います。

 

 

認知度の向上により関わる全ての人を幸せに

この一年で最も成長したことについてお聞かせください

認知度が大きく向上したことです。

 

この1年で、ありがたいことに様々な場所で声をかけていただけるようになりました。業界の方々だけでなく、Instagramのフォロワーとの交流も深まり、イベントを開催すると足を運んでくださる方が増えてきました。

 

広報活動に力を入れた結果、新聞への掲載やテレビ番組に出演など、メディアに取り上げていただけるようになりました。

 

社員が営業でワイン業界へアプローチする一方で、私は別の角度から消費者の認知度向上に取り組んでいます。消費者の認知が広がれば、酒屋さんも営業担当者も売りやすくなり、最終的に関わる皆さんが幸せになるのではと考えています。

 

今後挑戦していきたいことはありますか?

3年以内に日本でドイツワインを再興させることです。

 

メディアへの露出などの広報活動によって、商談の成約率は格段に上がり、信頼度も大きく向上しました。特定のワインの売上が伸びるなど、目に見える成果も出始めています。

 

ワインを飲む層は主に40代、50代が中心で、若者のアルコール離れが課題となっています。しかし、私たちは「場」を提供しており、ドイツで文化として根付いているワインの楽しみ方を若い世代が体験すれば、必ず魅力を感じてもらえるはずです。

 

SNSやメディアを通じてそうした機会を広げ、人生を彩る素敵な飲み物としてワインを伝えていきたいと考えています。

 

若い社員たちも同じ課題意識を持ち、「若い人のアルコール離れを止める」ことを目標に掲げてくれています。世代を超えた発信で、ドイツワインの魅力を届けていきたいです。

 

 

1番楽しい仕事を社員に任せる

他の起業家へメッセージをお願いします

自分が1番楽しいと思っている仕事こそ、社員を信頼し任せてください。

 

私は以前、すべて1人でやっていました。しかし、社員を信頼して任せようと決断してから、大きく変わりました。営業や通訳は自分の得意分野でライフワークだと思っていたので、手放すのは怖かったです。

 

それでも思い切って任せてみたところ、自分に豊かな時間が生まれ、新しい事業に取り組めるようになりました。スタートアップの段階では自分でやるしかありませんが、ある程度の規模になって行き詰まりを感じている方には、ぜひ社員を信頼して任せてみてください。

 

人間の能力に大きな差はないと私は考えています。自分にとって1番楽しい仕事だからこそ、任せる価値があるのです。

 

大切なのは、任せる胆力を持つことと、次に自分が何をするのかというビジョンを明確にすることです。そうすれば事業は加速していきます。

 

採用する上で、どのような点を重視していますか?

ポジティブで素直な人を求めています。

 

ワインの知識や語学力については、現在のメンバーも入社時にはほとんど持っていませんでした。それよりも、新しいものに出会ったときに「いいな」「自分もやってみよう」と素直に思える感性を重視しています。

 

現在募集している営業職では、特にこの「心の素直さ」を求めています。

 

語学力については、入社後にフィリピンでの語学研修の機会もあります。日本の学校教育で、英語を学んだ基礎があれば、実践的なコミュニケーション能力を十分に習得できます。

 

実際、私自身も英語もドイツ語もまったくできない状態で入社しました。特に英語は本当に苦手でした。それが今ではドイツ語でコミュニケーションを取れるようになり、未だに「自分が話せている」ことに驚きを感じることがあります。

 

ゼロからのスタートだったからこそ、成長の実感が大きく、楽しみながら働けるのではないかと考えています。

 

▼採用情報の詳細はこちら
https://www.herrenberger-hof.co.jp/recruitment.html

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:山野高弘 氏

ワインインポーター ヘレンベルガー・ホーフ(株) 代表取締役社長。2001年より2年間ドイツ バーデンのベルンハルト・フーバー醸造所にて研修。主に畑作業に従事。2003年より1年間ドイツ ラインガウ地域のゲオルグ・ブロイヤー醸造所にて研修。醸造行程の全てをその手で行う一方、醸造所の営業マンとしてドイツのホテル等にてプレゼンテーション。ヨーロッパ滞在中にはドイツのほぼ全生産地を渡りあるき、見分を広める。ドイツ以外のフランス、イタリア等、西ヨーロッパのワイナリーも積極的に訪門。2004年より帰国。主に東京にてドイツワインの新しいイメージ普及のため、様々なシーンでセミナー等を行う。世界最優秀ソムリエでM.o.W.であるマルクス・デル・モネゴ氏や 来日中のドイツ醸造家の通訳を務める。現在も年に3回ほどはドイツを中心にヨーロッパを訪れ、最新情報を入手。

 

企業情報

法人名

ヘレンベルガー・ホーフ株式会社

HP

https://www.herrenberger-hof.co.jp/

設立

1982年10月15日

事業内容

ドイツワインの輸入卸

 

送る 送る

関連記事