
株式会社and Jam 代表取締役 三條 龍弥
株式会社and Jamは、戦略とクリエイティブの両軸で企業・社会の新しい価値をデザインするスタジオです。ブランディング・体験設計・アートプロジェクト・バーチャルヒューマンプロダクションなど、多様なアプローチで次世代の表現を追求しています。今回は代表取締役CEOの三條 龍弥氏に事業内容や今後の展望についてお話を伺いました。
アート×戦略で、創造の力を社会と暮らしに根づかせる
事業の内容をお聞かせください
弊社の事業は大きく3つあります。
1つ目はHuman Lab(バーチャルヒューマンのプロダクション事業)です。人間らしい個性と物語性を備えた“推せる”キャラクターを設計・育成し、アイドル/アーティストとしての活動や、広告・PRでのキャスティングを行います。
某ブランドのアンバサダーや他企業様からの広告起用などの実績があり、生活者に自然に受け入れられる存在づくりを重視しています。加えて、音楽やアーティストの嗜好に応じて刺さる層を設計し、実在のタレント同様のグループ運用も行っています。
広告代理店出身の強みを生かしたキャスティングで、事務所規約やスケジュール制約の影響を受けにくく、安定運用とコスト削減の両立を実現しています。
現在は広告・PRでの起用が中心ですが、弊社が目指すのは単なるコスト削減ではなく、新しい文化体験の創出です。バーチャルヒューマンが個人の孤独や悩みに寄り添うパートナーとして関わる存在を社会に実装することを目指しています。
2つ目はDesign Innovation(クリエイティブコンサルティング事業)です。
クリエイティブやブランドデザインのコンサルティングとして自治体や企業に入り、クリエイティブやアート視点から新規事業創出のサポートや経営課題にデザイン思考をどう取り入れるか、またクリエイティブ組織をどう構築するかなどご支援します。ブランディングやPR戦略の策定まで一貫して伴走します。
3つ目はExperiences(アート空間のなどの体験創出事業)です。現在はアーティストのライブ演出や、体験空間の創出施策などに携わっており、今後はバーチャルヒューマンに実際に「会える」体験空間だったり、街全体をアート空間にするなど人の可能性や創造性の拡張する新しい体験の構築を進めていきます。
デジタル/メディアアートの知見を生かし、リアルとバーチャルを横断する新しい体験価値を提供します。

事業を始めた経緯をお伺いできますか?
現在の事業を立ち上げたきっかけは、ニュージーランドでの起業経験にあります。当時から「日本発の新しいものを創り、海外に届けたい」という思いがあったので、日本での起業へとつながりました。
弊社は広告代理店出身者がベースとなっており、メンバー各々が培ってきたクリエイティブやアート文脈の経験が基盤になっています。
挑戦や失敗を重ねる中で「人間よりもバーチャルの方が自由に表現できる」と実感したことに過去のタレント活動経験が掛け合わさった結果、自然と「新しい体験空間」や「バーチャルヒューマン」という領域に行き着きました。
起業への強い執着はなく「自分のやりたいことを形にできればこだわっていない」という姿勢が根底にあります。
ニュージーランドへ渡った背景には、学生時代を過ごした札幌の環境があります。気候が似ていたことや北海道出身者が多かったことから親近感を持ち、現地で留学と起業を経験しました。
学生時代からアートを学んでいましたが、周囲に比べ劣等感が強く「自分の強みは何か」と模索する中で、ある方から「アートはテクノロジーと融合し発展する」という話を聞き、デザインやCG、エンジニアリングに触れていくことになりました。苦手意識こそが自分の原点であり、その後の方向性を定める大きな契機となりました。
私の強みは一つの分野に特化するのではなく、アート、デザイン、エンジニアリング、ブランディング戦略やクリエイティブ視点での経営戦略など多様な要素を掛け合わせることで独自性を生み出せることです。
要素の掛け算が増えるほど、自分らしさやアイデンティティがより鮮明になると感じています。「領域を越境すること」、今までも色々な方が言われてきていることではあるかと思いますがそれこそがこれからの時代に本当に必要なことだと考えています。

「おもしろい」を軸に、アイディア戦略で、面白さを追求する
仕事におけるこだわりを教えてください
譲れない軸は「おもしろいかどうか」です。
日本では仕事とプライベートを分ける文化がありますが、弊社では線引きをせず、案件を引き受ける際も「おもしろいかどうか」を基準に社内で判断することがあります。 同時に、自分たちが進みたい方向と一致しているかも重要な判断要素としています。
非常に自由な働き方を採用しており、社員が動けるときにプロジェクトへ参加したり、誰か一人が「やりたい」と声を上げたことにチームで動き出すことも多いです。
アートを基盤とする会社であるため、プロジェクトにアート的な要素が含まれるかどうかも「おもしろさ」に直結します。クライアントには幅広い提案を行うことが多く、要望が曖昧な場合は「本当に求めているものは何か」を探ることから始めます。そのうえで、自分たちが面白いと感じるアイデアを組み込みつつ、方向性に沿った提案を行っています。
提案の幅が制限されないときほどチームとしておもしろいことができるように気合が入るので、いい成果が生まれやすいため、「おもしろくなりそうかどうか」も大事な要素の一つですね。
起業から今までの最大の壁を教えてください
実を言うと、これまで「最大の壁」を感じたことはありません。仕事とプライベートの線引きをしていないこともあり、常に「おもしろい」と感じながら取り組めているからだと思います。逆に、おもしろくないものはやらないと決めていることもポイントかなと思います。
あえて挙げるとすれば、「人の感性の違い」かもしれません。アートの分野は非常に抽象的であるため、「これが良い」と感じる人と、そうは思わない人とで意見がはっきり分かれることがあります。
現在、弊社は広告代理店出身のメンバーで構成されていますが、以前はアーティスト出身の方々が多く在籍していました。私自身は代理店出身ということもあり、プロジェクトの目的や戦略を基軸に考える傾向がありますが、そうした視点とアーティスト側の感覚との間で、考え方に違いが生まれる場面もありました。
そのような背景もあり、「一緒に働く人をどのように採用するか」という点について、慎重に考える必要があると感じています。弊社にフィットするかどうか、そして感覚的なフィーリングが合うかどうかは、非常に重要な判断基準となっています。

アートの力で紡ぎ出す日本文化、その魅力を世界へ
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
私の最大のモチベーションは、日本のカルチャーをクリエイティブやアートを通じて海外に展開し、世界で日本の価値を再認識してもらいたいという思いにあります。
ニュージーランド滞在時、韓国や中国のエンタメ業界やカルチャーの勢いを目の当たりにし、アメリカでも他国のコンテンツが注目され、日本のコンテンツが減少していく状況を強く実感しました。
その経験から、日本のカルチャーの良さを再認識してもらうことで、グローバル市場の中心にしていきたいと考えるようになりました。
一方で、日本はゼロから創るより既存のものを丁寧に改善し発展させることを得意とする文化だとも感じました。だからこそ、自らがゼロから形をつくりあげる姿を示すことで「あいつができてるなら自分たちも」と思ってもらえる存在になりたいと考えています。
さらに、日本のコンテンツを幅広い層へ届けたいという思いがあり、特に伝統文化への敬意を背景に、テクノロジーやアートを活用してその魅力を広めています。この姿勢は、自治体が抱える「人にどう届けるか」という課題意識とも重なり、強い共感を持って取り組むことにつながっています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
私は日本が大好きで、世界で最も優れた国の一つだと考えています。だからこそ、より多くの日本人が世界の舞台で活躍できる場を広げたいと願っています。
自分にできることは、アートを通じた戦略やPR設計などクリエイティブ領域でのアプローチです。その中で海外で活躍する日本人クリエイターを増やし、自分がそのきっかけや土台をつくる役割を担いたいと考え、企業を経営し、アートやクリエイティブを通して、様々な方々と連携した社会的アプローチを行っています。
大きなテーマは、クリエイティブに関わる人の裾野を広げ、価値観に理解のある人を増やしていくことです。
現在はデジタル空間でのバーチャルヒューマンプロダクションを通しての、“存在の表現”を探求、メディアとの連携に注力してきましたが、今後は体験そのものをメディアとして、人と世界の関係を広げるという挑戦をしていきます。
and Jamは、“新しい価値観に出会う体験”を社会に生み出していきます。具体的には、デジタルアートに触れられる場や、バーチャルヒューマンと握手・会話できるリアルとバーチャルの融合体験を構想しています。
これらを通じて、アートやクリエイティブの価値を社会に広げることを企業のテーマとしています。

挑戦を恐れず、想いに一直線。「失敗」ではなく、成功の道を拓く
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
まずは「やってみること」が何よりも大切です。起業という選択肢に対して、多くの方が一見ハードルが高いと感じているかもしれませんが、個人的にはそうは思っていません。
自分のやりたいことに対して真っ直ぐに行動していれば、共感し、力を貸してくださる方々に出会えます。だからこそ、まずは挑戦してみるべきだと思います。
私の中には「失敗」という概念は存在していなくて、物事には無数の可能性や選択肢があって、その中から自分に合う道を見つけていくプロセスだと捉えています。
大切なのは、結果を恐れずにまず行動してみることです。もし思った通りにいかなかったとしても、その時にまた考えて、違う方法で進めばいいだけです。恐れる必要はなく、一歩を踏み出すことで新しい出会いや可能性が見えてくるはずです。
興味の扉を開き、多様な知識を自分の力に
貴社に興味をお持ちの方へメッセージをお願いします
空間の活用にご興味がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
弊社は”新しい体験”を創ることを得意としており、主にアートやクリエイティブを通したものが多いですがメディア戦略や経営戦略なども行なっております。
ビジョンやブランディングがまだ明確でない段階からでもご一緒させていただき、戦略の立案やPR、コミュニケーション設計まで幅広くサポートが可能です。
私たちは、「どう社会に浸透させていくか」「人々の意識や環境をどう変えていくか」といった部分までを見据え、共創させていただいております。
「なんとなく面白いこと、新しいことをやってみたい」「今ある空間やブランドにもう一歩広がりがほしい」といったお気持ちをお持ちの方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度気軽にお話をお聞かせいただければ幸いです。
ご一緒に、まだ見たことのない体験や価値を創り出していけることを心より楽しみにしております。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:三條 龍弥 氏
アート系広告制作会社をニュージーランドにて共同創業し売却。その後、帰国し大手通信会社にてAI開発に従事すると同時に、大手芸能プロダクションにて芸能活動を行う。2018年には株式会社博報堂アイ・スタジオにてテクニカルアーティストとして国内外大手企業のプロジェクトを推進。2021年には楽天グループ株式会社にて、三木谷浩史氏、佐藤可士和氏直下で全社のブランディングやアート系施策のクリエイティブディレクションを担当し、2024年に株式会社and Jamを創業。
企業情報
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法人名 |
株式会社and Jam |
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HP |
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設立 |
2024年3月12日 |
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事業内容 |
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