【#562】ChatGPT時代の課題解決型DXで、「社会の非効率を最適化する」|代表取締役 河﨑 太郎(株式会社Spakona)

株式会社Spakona 代表取締役 河﨑 太郎
「世界を最適に設計する」をミッションに掲げる株式会社Spakona。IT技術を駆使しながら顧客の課題解決に取り組み、業務の本質的な最適化を実現しています。代表取締役の河﨑太郎氏に、事業の原点や仕事へのこだわり、今後の展望を伺いました。
現場の「最適解」を導く
事業の内容をお聞かせください
事業内容は大きく2つあります。1つは、伴走型のコンサルティング事業、もう1つは、自動化のソリューション事業です。
伴走型コンサルティング事業では、お客様の課題を丁寧にヒアリングし、ITシステムやAIを使って解決に導きます。やりたいことはあってもシステム開発ができないなどの悩みを持つお客さまに対し、課題の抽出・整理から具体的な施策の立案まで、一貫してサポートします。
もう一つの事業である自動化のソリューション事業では、ITシステムやAIを用いて業務の効率化や最適化を実現します。AI技術は業種を問わず応用できるため、取引先の業種は小売、金融、製造、電子部品、自動車関連など多岐にわたります。
当社の強みは、技術そのものではなく課題解決力にあります。私たちが使う技術はオープンソースであり、ChatGPTなどは基本的に誰でも使えるものです。それでも当社が選ばれるのは、単なる技術提案にとどまらず、お客様の課題を本質的に解決するところまでやりきる姿勢にあります。
たとえばシステムの開発自体はある程度どの会社でもできますが、企業ごとのネットワークやセキュリティ制約を考慮する必要があります。しかし、多くの企業はその最後の一歩まで手が回っていません。
また、どこにAIを導入すべきかを見極めることも非常に重要です。現場ごとの制約や運用ルールに合わせ、最も効率的な方法を設計することが現実的な解決策となるのです。
そこで当社は、現場の状況やコスト、運用面を踏まえ、最適なシステムを設計します。安価でスピーディー、かつメンテナンスしやすい解決策を導き出すことが、当社の最大の強みです。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
きっかけは高校生の頃に遡り、小さな電気工事会社を経営してた祖父に、会社を始めたきっかけを聞いたことでした。
大企業の子会社で営業を担当していた頃に、良い売上成績をあげても給料は上がらず、腹が立ったので思い切って30歳で独立したそうです。
実際には祖母に猛反対されたそうですが、「自分の人生は自分で決める」と言って、祖父は意に介さなかったそうです。人生は一つずつステップを踏んでいくものだと思っていましたが、やりたいからやるという祖父の生き様に感銘を受け、いつか自分も起業したいと思うようになりました。
ChatGPTが登場する前に、大学院でAIに携わっていましたが、威力を肌で感じ、この技術はビジネスに向いていると確信したことも大きな転機になりました。

小手先のDXではない、本質的な改革を
仕事におけるこだわりを教えてください。
技術から入らず、課題から入ることです。エンジニア出身の方は、自分の使いたい技術をお客様に提案してしまいがちですが、私たちは常にお客様の課題を出発点に考えます。
大切なのは技術的な完璧さではなく、お客様の求めるレベルを見極め、それを確実に満たすことです。
当社のミッション「世界を最適に設計する」にも、この考えが反映されています。最適とは最高性能を指すのではなく、メンテナンス性や使いやすさ、コストなどを踏まえて現場に最も合った状態を指します。
世の中には、過剰な機能や知識不足による非効率なシステムが多く存在します。私たちはそうした仕組みを見直し、あるべき姿に作り直すことを使命としています。
当社が最終的に目指すのは、単なるアナログからのデジタル化ではなく、業務を本質的に最適化することです。
起業から今までの最大の壁を教えてください
正直に言うと、大きな壁はありません。起業して以来、営業活動を通じてゼロから顧客を開拓し、少しずつ成長してきました。
そこで今後課題となりうると考えているのは、採用です。これまでは紹介が中心でしたが、多様な方法で優秀な人材を採用する必要があると感じています。
弊社が求めるのは、単にプログラムを書けるエンジニアではありません。お客様の要望を正しく理解し、課題を整理して提案できる人です。
今後は生成AIの進化によって、単にプログラムが書けるだけでなく、考える力や伝える力を備えた人材がより重要になっていくのではないでしょうか。

社会の「非効率」をなくす
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
企業にはびこる「非効率な状況」を変えたいとの思いが、根底にあります。
地方の企業では、昔から付き合いがある会社にシステム開発を任せてきた結果、古いシステムをそのまま使い続けているケースも少なくありません。
少し工夫すれば簡単に改善できるようなことでも、長年の慣習の中で放置されていることも多いです。
AIを使えばすぐに解決できることもありますし、コストパフォーマンスの良い方法はいくらでもあるのに、お客さまにその選択肢が提示されていない現状にもどかしさを感じます。
だからこそ、我々はお客様の立場に立ち、本当に必要な解決策を提案したいですし、その気持ちが一番のモチベーションです。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
社会全体のシステム化のレベルを底上げすることが、現在の私たちの大きな目標です。学生の頃、私は世の中の仕組みがほとんど最適化されていると考えていました。
しかし、実際に社会に出てみると、その現実は私の想像とは大きく異なっており、最適化が進んでいない分野や手作業が多く存在することに驚かされました。このギャップを埋め、より効率的で透明性の高い社会システムを築くために、私たちは新たな挑戦を始めました。
また、この会社を立ち上げた背景には、システムがしっかりと構築されていて、ものづくりができる環境を提供し、さらに技術的にも面白いことに挑戦できる会社を作りたいという強い思いがありました。
私たちは、ただのビジネスを超えて、社会全体を改善するためのインフラを提供し、持続可能な成長を実現することを目指しています。そのため、今後も現在の会社の体制をさらに理想的なものへと進化させていくつもりです。
さらに、今後の展望としては、国内だけでなく、海外への進出も視野に入れています。プログラミング技術は言語や国に依存しないため、日本で開発したシステムをそのまま海外に展開することが可能です。
すでにいくつかの海外企業との取引があり、また、日系企業の海外拠点にも導入が進んでいます。このように、国際的な市場でも展開することによって、グローバル規模でのシステム化を進め、社会全体の効率化をさらに加速させたいと考えています。

考えるより、動く
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
とにかく、まずはやってみてください。完璧な事業計画書を作らなくても大丈夫です。実際に私は、起業する際に事業計画書を作成しましたが、結局それを一度も使うことはありませんでした。
正直に言って、計画通りに進むことなんてほとんどありません。最初から完璧な計画を立てることにこだわる必要は全くないと感じています。
特に、サラリーマン経験がある方は、つい最初に細かい事業計画を立てたがりますが、その時間を営業活動やお客様の獲得に使った方が、はるかに効果的です。完璧を目指すあまり、動きが遅くなってしまっては意味がありません。
ざっくりとした方向性があれば十分です。細かいことを気にして立ち止まるよりも、まずは実際に動き始めることが大事です。
その第一歩を踏み出すことこそが、事業成功のカギだと私は強く信じています。最初からすべてを完璧にする必要はありません。重要なのは、行動し続けて学び、試行錯誤を繰り返して成長していくことです。その過程こそが、事業を軌道に乗せる一番の近道だと思います。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:河﨑 太郎 氏
横浜国立大学理工学部を卒業後、東京大学大学院新領域創成科学研究科に進学。深層学習を使い、衝撃波検知を従来より高速化する研究を行った。大学院卒業後はソフトバンク株式会社に入社。Beyond AIプロジェクトに携わり、AIに関する共同研究及び研究成果の事業化に従事した。2020年8月にDaedalus株式会社を設立、CEOを務める。※2024年に株式会社Spakona(スパコナ)に社名変更。
企業情報
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法人名 |
株式会社Spakona |
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HP |
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設立 |
2020年8月7日 |
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事業内容 |
画像処理AI・3次元処理AI・数理最適化などAIソリューション事業 |
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