【#581】事業承継で組織をより強く!半世紀の歴史で技術を積み上げた試作メーカー|代表取締役 渡邊 悠一(株式会社渡辺製作所)

株式会社渡辺製作所 代表取締役 渡邊 悠一
関西で老舗の試作メーカーとして実績を誇る株式会社渡辺製作所。現在は創業者の息子である渡邊悠一氏が事業を引き継ぎ、企業としてさらなる進化を遂げるべく、意欲的な組織改革にも取り組んでいます。今回は同氏に、2代目として事業を受け継いだ経緯や、これから事業を承継する立場の人へのアドバイスなどをお聞きしました。
小ロット・短納期にも対応できる、試作専門メーカー
事業の内容をお聞かせください
弊社は主に試作開発を手掛けるメーカーです。樹脂の切削加工において50年の歴史があり、自動車部品、医療、産業機械から航空にいたるまで、世に出回っているプラスチック部品のほとんど全てに関わってきました。
試作開発がメインで、発注は小ロットや単品が基本です。量産ができない分、価格は安くはありませんが、製作のスピードと技術力には自信があります。
お客様から受け取った図面データに基づき、毎日違う製品をオーダーメイドで製造できます。自ずと技が磨かれていき、また素材に関する知識も日々蓄積されていきます。
特に樹脂素材には何百もの種類があり、それぞれに最適な加工法を探し出す必要があります。そのノウハウは数をこなしてこそ身につくもので、創業から50年の歴史がある弊社だからこその強みといえます。
また製造ラインが固定化されていないことで、臨機応変で柔軟な対応も可能です。たとえばお客様から早急な納品を希望された場合、その日のうちに対応させていただくこともあります。
そしてもう一つ、高く評価していただいているのが、我々の提案力です。開発段階の製品というのは、お客様にとっても初めての試みですから、成功しないケースも少なくありません。
そのようなときに、我々からどのように改善すればいいのかという点について提案を行い、製品化に漕ぎつけるようにお客様と一緒に作り込んでいけるのも、弊社の強みです。

事業を始めた経緯をお伺いできますか?
私は今、創業者だった父親の会社を継いで経営者となっていますが、最初はまったく別のメーカーに就職しました。元々は兄が会社を継ぐことになっていたので、自分自身がやがて経営者になるとも思っていませんでした。
私の価値観が大きく変わるきっかけとなったのは、家業を継ぐ予定だった兄を亡くしたことでした。兄は長く病と向き合っており、回復が難しい状況となった際、兄と二人で話す時間がありました。
そこで兄は、これからは会社のことを任せたいと言葉をかけてくれました。その一言を受け、私は自然と自分が会社を支えていく立場になるのだと心に決めるようになりました。
それ以降、経営について学ぶ時間が増えていきました。書籍を読み、セミナーにも参加しながら、自分自身の考え方や向き合い方を少しずつ見直していきました。現場での経験を積んだ後、事務部門へ異動したことをきっかけに、会社の将来を見据えた取り組みにも携わるようになりました。
そうした日々の積み重ねを、従業員の皆さんが見守ってくれていました。父が事業承継について慎重な姿勢を示していた際も、周囲から「安心して任せられるのではないか」という声が上がり、その後押しもあって、承継が進むことになりました。
二代目としての立場には難しさもありますが、時間をかけて現場との信頼関係を築いてこられたことは、大きな支えとなっています。ともに歩んでくれた従業員の存在に、今も心から感謝しています。

従業員がお客様を守り、自分が従業員を守る
仕事におけるこだわりを教えてください。
私自身には仕事に関するこだわりというのは特にありません。敢えて言うのであれば、絶対に会社を潰さないという経営者としての決意です。
もちろん、従業員にはお客様のニーズを解決することを絶対的な使命として伝えています。ただ、私に言われるまでもなく、弊社の従業員はお客様のために必死に動いています。
だからこそ、お客様を守ることについては、従業員に任せて大丈夫だという認識があります。
お客様のことは従業員が守り、従業員とその家族のことは私が守ります。今では全国に約70名いる従業員すべての生活を守り、より豊かな暮らしができるようにしたいということだけを考えて仕事に臨んでいます。
事業継承から今までの最大の壁を教えてください
今こうして振り返って特に大変だったと思うのは、やはり先代が定めたルールを変えなくてはならないときでした。
引き継いだ当初は不公平な慣習が蔓延していました。私が事業承継したことを機に、何としてもこうした問題を是正していく必要がありました。
しかし、先代のやり方を大きく変えれば、社内からの反発は必至です。これは2代目の経営者のほとんどがぶつかる壁だと思います。
特に報酬体系を見直すというのは、必然的に従業員のお金に手をつけることになるので、簡単には受け入れられないと思います。それでも、急激に改革するのではなく、従業員の生活に支障が出ない範囲で少しずつ、公平で透明性のある制度へと変えていきました。
そうした改革は一歩ずつ着実に進んではいますが、それでも私には未だもどかしく思うことがあります。従業員は、私のやり方を信じて今懸命に頑張ってくれています。
そんな風に頑張っている従業員に対して、報いたいけれど、それができないというのが、経営者として非常に苦しい障壁になっています。
この壁を打破するためにも、1年前から「未来創造プロジェクト」という新たな施策を始めました。会社のビジョンを従業員に示し、そのビジョンに対してそれぞれがどうやって進んでいくのかを自ら考えてもらうというのが、このプロジェクトの主旨です。
個別に目標を立てて、上司との定期面談で進捗を確認し、目標達成の成果に応じてインセンティブが支払われる仕組みになっています。
また資格取得制度も設けているので、頑張って勉強して、業務に必要な資格を取得した従業員には手当もつきます。
「未来創造プロジェクト」はまだ始まったばかりですが、個々の頑張りに少しでも応えられるよう、組織内で定着していってほしいと思います。

従業員とその家族の生活を守るという使命感
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
私の中に絶対的なものとしてあるのは、経営者としての純粋な使命感だと思います。言い換えれば従業員とその家族の生活を守らなくてはならないという責任です。
この責任を果たすためには、利益を上げること、そしてその利益を従業員に給与という形で還元していくことが必要です。
一人ひとりの給料が増えれば、それだけ使うお金も増えて、経済は自ずと回っていくはずでしょう。結果として地域社会への貢献にもなります。
そのためにも、私は経営者として利益を出すこと、それによって従業員の生活を豊かにするという使命を掲げて進み続けています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
弊社は現在全国で6つの拠点を持っていますが、今後は主に中部エリアを強化したいと考えています。
静岡県にある浜松の営業所は、長年固定のメンバーで運営してきましたが、静岡といえば愛知や三重を見据えて、まだまだ営業エリアを拡大していく余地があります。私としてはこの地域の人員を増やして、今後はもっと営業力を高めていきたいと思っています。
また、長年人の入れ替えが無かったのは、浜松の営業所だけではありません。技術職においてもベテランの従業員が長年同じ工程を担ってくれているため、業務は完全に属人化しています。
もしもその人がいなくなってしまったら、同じ業務を担える人材が社内にいないということなので、これは組織が抱える大きな課題として捉えています。
今後はこれらのノウハウを組織全体の資産として共有できるように仕組み化していくつもりです。
「維持ではなく、発展」という覚悟
事業を承継しようとしている方へのアドバイスをお願いします
事業を受け継ぐのであれば、相当の覚悟が必要だと思います。
まったく新しく会社を立ち上げるときには、もちろん創業者としての確固たる理念が必要でしょう。しかし、2代目として継ぐ人間も、それをそのまま受け継ぐだけでは決して成功できないのです。
事業を継いだときは、維持するのではなく、さらに発展させるという覚悟が必要になります。何としてでも、従業員から先代のときよりも、2代目のときのほうが会社が良くなったと言われるようにするという、強い思いで取り組んでほしいと思います。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:渡邊 悠一 氏
企業情報
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法人名 |
株式会社渡辺製作所 |
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HP |
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設立 |
1983年1月 |
|
事業内容 |
製品開発段階における部品の試作 |
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