
株式会社トドケール 代表取締役CEO 野島 剛
オフィスに届く郵便物や配達物の管理を、デジタルで一元化するサービスを提供する株式会社トドケール。人の記憶や紙の台帳に頼りがちだった業務を仕組み化し、企業の業務効率化やガバナンス強化を支えています。一見すると地味な領域に見えても、現場に深く入り込むことで確かな価値を生み出しています。今回は代表の野島剛氏に、事業への思いや仕事におけるこだわり、今後の展望について話を伺いました。
オフィスの日常を支える配送管理の仕組み
事業の内容をお聞かせください
弊社はオフィスにおける郵便物や配達物の発送から受け取りまでを一元管理できるアプリケーションを提供しています。
社外から届く郵便物や荷物、社内から発送する書類や配達物に対して、スマホで撮影するだけで、すべての履歴が一覧として残る仕組みです。誰がどこに何を送ったのか、いつどのような物が届いたのかといった情報を、写真とあわせて管理できます。
郵便物や配達物の管理、発送業務は企業活動を支える重要な業務ですが、これまで専用の仕組みが少なく、現場ごとの運用に委ねられてきました。
当社のサービスでは、いつ、どのような物が届いたのか、あるいは発送したのかを写真付きで記録でき、受取人への自動通知や受領確認、発送管理にいたるまでの全工程をデジタルデータで一元化します。あらゆる配送物の「誰がどこに何を発送したか」「いつ誰の手元に届いたか」という情報を、一括してリアルタイムに把握することが可能です。
オフィスに常駐していなくても、届いた物や発送状況を確認できるため、リモートワークが進む現在の働き方にも対応しています。
また、郵便物には個人情報や契約情報など、重要な内容が含まれるケースも多くあります。発送と受け取りの履歴を一つのアプリで管理できることで、業務の把握がしやすくなります。
多くの企業が抱えている課題の一つが、会社宛てに届いた郵便物が誰のものか分からないことです。社名だけでは判断できず、長年勤務している担当者の経験や勘に頼って仕分けが行われているケースも少なくありません。そのような状況では、特定の人が離れた瞬間に業務が成り立たなくなるリスクがあります。
記録が残っていないことで、郵便物が届いていないと判断されていたものが、実際には社内で紛失していたと分かるケースもあります。契約書などの重要書類において、このような状況はガバナンス上の大きな課題です。
当社のサービスを使うことで、届いた事実や社内での取り扱いが可視化され、管理体制を見直すきっかけになった企業も多くあります。
また、メール室業務が障がい者の方の働く場として機能していることに気づきました。
オフィス縮小やリモートワークの影響で、これまでのような物理的な移動を伴う作業が難しくなる中、仕分け作業をシステムが支援することで、作業の幅が広がっています。効率化やガバナンス強化にとどまらず、結果として社会的な価値を生み出している点は、当社にとっても新たな気づきでした。
我々のサービスは、企業活動を支える基盤として、確かな役割を果たしている事業だと感じています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
私はもともと公認会計士としてキャリアをスタートしました。財務会計の分野を専門とし、特に金融系の企業を中心に担当していましたが、次第に会計士として独立したいと考えるようになりました。
独立に向けた視野を広げるために海外の大学院へ進学したところ、現地では起業家が高く評価される文化があり、学びの中心でも起業について学ばざるを得ない環境でした。その影響もあり、私自身もスタートアップで挑戦したい気持ちが芽生え、現地のスタートアップで働く選択をしました。
金融のバックグラウンドを生かして不動産投資ファンドに入り、物流施設への投資業務を担当しました。物流施設の高度な自動化に触れる中で関心を持つようになり、その後、宅配ロッカーを扱うスタートアップに移りました。
そこで、物流が人の生活に直結するインフラであると実感し、現場に関わることで、人の役に立っている手触りを強く感じるようになりました。日本に目を向けても、物流は今後さまざまな課題が顕在化していく分野だと感じました。
当初は資金もなく、DX関連の業務委託を請け負いながら試作的な仕組みを作っていました。その中でランディングページを作成したところ、大手企業から問い合わせをいただき、本格的なプロダクト開発に踏み切りました。
物流は日本でも巨大なマーケットです。今後さらに重要性が高まると考え、この領域で事業に取り組みたいと思い、現在のビジネスを立ち上げました。

収益性と社会性を両立する、シンプルな事業づくり
仕事におけるこだわりを教えてください。
主に3つあります。
1つ目は、きちんと収益を生み出すことです。スタートアップであっても、収益性を確保できることを常に念頭に置いて事業に取り組んでいます。
2つ目は、本当に世の中の役に立つものを提供することです。一時的な期待や不安を煽るのではなく、使い続けることで価値を実感できるサービスを作りたいと考えています。
物流は人の生活や経済活動を支えるインフラであり、実際に使われることで社会全体に波及効果をもたらします。生活の向上に資する事業でありたいと思っています。
3つ目は、できるだけシンプルにすることです。構想を大きくしすぎず、まずは人が最も困っている点に絞って形にします。UIや操作性も極力分かりやすく設計し、頻繁な変更は避けています。
特に現場で使われる業務システムでは、使い慣れた操作を維持することが重要だと考えています。表側はシンプルに、裏側は簡単に真似できない仕組みを作るという姿勢を大切にしながら、現場で使われ続けるサービスを目指しています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
人材を確保することに苦労しています。私が起業したのは30代後半で、周囲には家庭を持つ人も多く、学生時代のように気軽に声をかけられる環境ではありませんでした。
日本では起業へのハードルも高く、スピード感を持って仲間を増やす点では難しさを感じてきました。
資金面でも綱渡りの時期がありました。アクセラレーターに挑戦してもなかなか評価されず、自分の資金で進める覚悟を決めたこともあります。
そうした中で目にしたアクセラレータープログラムに、最小限の準備で応募したところ採択され、業務委託の仕事を全て辞めて事業に集中する決断をしました。結果として資金が底をつきかける場面もありましたが、ここまで事業を続けてきました。

責任を原動力に、事業の幅を広げる
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
最初の動機は、起業家に対する憧れだったと思います。一人で業務委託の仕事を続けていると、どれだけ収入があっても、社会の中で評価されている実感を得にくくなっていきました。
そこから、社会の一部として貢献できる事業を作りたいと考えるようになりました。会社を立ち上げ、人が集まり、給料を支払う立場になると、事業を伸ばさなければならない責任感が生まれます。そうした責任を背負う中で、会社員時代には感じられなかった緊張感や手応えを得られるようになりました。
モチベーションは一つではなく、ステージごとに形を変えていくものだと思います。新しい挑戦を通じて責任が増え、自分の役割が広がっていきます。その変化の中にこそ、仕事を続ける面白さがあると感じています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
現在はオフィス向けの荷物管理システムとして提供していますが、物流事業者との連携も進んでおり、今後は実際の物流業界に踏み込んでいくフェーズに入る予定です。
中長期的には、海外との接点を広げていく構想があります。すでに商社経由で海外発送に関わるケースもあり、今後は海外の物流事業者との連携によって、国境を越えたビジネスが自然に生まれる可能性も感じています。
組織づくりの面でも、最近は海外出身のメンバーを迎え入れ、社内では英語が飛び交う場面も増えています。国内だけに閉じた組織ではなく、多様性を持ったチームで事業を進めることが、結果的に事業の広がりにつながると考えています。

人生は思ったより短い。起業するなら今
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
アメリカでインターンとして働いていたとき、当時の社長から「起業したいなら、今すぐやった方がいい」と言われました。
人生は思っているより短いこと、これまで積み上げてきた経験や資格が、一度の挑戦で失われることはないこと、そしてたとえ失敗したとしても残るのは成長と実績だけだと教わりました。
私からお伝えできることも、基本的にはその言葉に尽きます。やりたいと思っているのであれば、今すぐに始めたほうがいいです。そこにあるリスクは本当に高いのかを考えたうえで、実際にやってみると、想像していたほどではないかもしれません。少しでも背中を押すきっかけになれば嬉しいです。
採用にあたり、どのような人材を求めているか教えてください
当社は現在、エンジニア組織の国際化を進めており、エンジニアの半数以上が英語話者です。日本語と英語が混ざる環境で、文化や考え方の違いを乗り越えながらチームをまとめていくフェーズにあります。こうした環境で挑戦してみたいエンジニアの方には、大きな成長の機会があると思います。
また、当社はエンタープライズ領域の企業に向けてプロダクトを提供しており、大企業を相手にスタートアップのサービスを提案し、導入まで伴走する経験ができます。
大きな組織に対して価値を届ける営業に挑戦したい方にも、ぜひ来ていただきたいと考えています。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:野島 剛 氏
早稲田大学法学部を卒業後、PricewaterhouseCoopersでコンサルタントとして10年勤務した後、University of California, Irvine, Merage SchoolにてMBA修了。卒業後は、カリフォルニアの投資ファンド及び宅配ロッカースタートアップにて勤務。帰国後に株式会社トドケールを創業。公認会計士・税理士・日本証券アナリスト・応用情報技術者・運行管理士(貨物)。
企業情報
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法人名 |
株式会社トドケール |
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HP |
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設立 |
2018年7月 |
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事業内容 |
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