【590】企業と自治体とのオープンイノベーションで、インパクトとリターンの両立へ「官民共創型」のプラットフォームで社会課題を解決|代表取締役 伊藤 大貴(株式会社ソーシャル・エックス)

株式会社ソーシャル・エックス 代表取締役 伊藤 大貴
株式会社ソーシャル・エックスは、企業と行政のオープンイノベーションを支援する企業です。自治体と企業の出会い方をプロデュースし、新規事業の立ち上げから社会実装まで一気通貫でサポートしています。代表取締役の伊藤大貴氏に、事業内容や今後の展望なども含めて詳しくお聞きしました。
企業と自治体の出会い方をデザインする
事業の内容をお聞かせください
企業やスタートアップと自治体との出会い方をプロデュースし、インパクトとリターンの両立する新規事業開発を一気通貫で支援しています。
最大の特徴は、オープンイノベーションの枠組みに行政を組み込んでいる点です。従来のオープンイノベーションは、大企業同士、大企業とスタートアップ、あるいは企業と大学といった民間側だけで組まれていました。しかし、この枠組みに行政が加わることでビジネスが大きく伸びると私たちは考えています。
具体的には、企業やスタートアップと自治体との出会い方をデザインし、プロジェクトを組成してコンサルティングを行っています。
中でも当社の「逆プロポ」というサービスは、新規事業で収益だけでなく社会的インパクトも出したい企業向けに提供しています。多くの企業が社会的インパクトをどう生み出せばいいかわからない中、私たちは自治体を新規事業開発のチームに組み込むことで実現を支援しています。
従来は企業が一方的に行政にアプローチする形でしたが、私たちは自治体が何を望んでいるかを把握した上で、企業と自治体の双方のニーズから、事業の成長と自治体の政策的アウトカムが実現するプロジェクトをデザインします。
対象となる社会課題は、交通、スポーツ、福祉、教育、障害者雇用、漁業、農業など幅広いジャンルに及びます。また、当社は全国の自治体とのネットワークを持っていますが、熱意を持ち、スピード感を共有できる自治体とマッチングすることで、確実に成果を出すことを重視しています。
さらに、「共感で経済を回す」といった考えのもと、場のデザイン、意思決定のデザイン、お金のデザインという3つの要素を一気通貫でサポートできる体制を整えています。起業する段階から、サービスが社会に価値を提供するまで、どのフェーズでも支援できることが私たちの強みです。
加えて、ソーシャルXアクセラレーションで発掘・育成したインパクトスタートアップへの投資も行っています。半年から1年かけて支援してきたスタートアップの中から、成長が期待できる企業に対して資金を提供し、社会課題解決と事業成長を後押ししています。
▼VCに関するインタビューはこちら
https://venture.jp/news/2026/01/14/19911/
当社のサービスを利用した企業側のメリットは、自社のサービスが生み出す社会的インパクトを実感できる点で、マーケティングコストや営業コストを抑えながら、効果的に事業を成長させられることも特徴の一つです。
自治体側のメリットは、どこにどのような企業やスタートアップが存在するのかといった情報を得られることです。それに加え、企業のサービスがどのような政策的アウトカムをもたらすかも検証できます。これらは自治体の予算を使わずに試すことができるのが最大のメリットでもあります。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
横浜市議会議員として活動していた10年間の経験が、きっかけになりました。2007年から2017年まで横浜市議会議員を務めていましたが、横浜市は全国の自治体の20年先を走っている自治体でした。
現在、日本の自治体の中で企業と連携して新しいことに取り組む動きが始まっていますが、まだごく一部の自治体に限られています。ですが、横浜市は20年前から実践していたのです。
私は当時日本の将来に必要な仕組みだと感じ議員の立場で取り組んでいました。たまたま横浜市長選挙に挑戦することになったので、横浜市長になったら、官民共創をさらに推進し、また、横浜市が積み上げたノウハウで、全国の自治体の官民共創の支援をしていけたらと考えていたのですが、それを政治の世界ではなく、ビジネスの世界から実現しようと考えたのです。
ただ、2018 年に最初のスタートアップを立ち上げた頃には、官民共創という言葉は検索してもなかなかヒットせず、各所にやりたいことをプレゼンしても、「それでビジネスになるの?」という回答が返ってきたりなど、散々でした。
しかし、自分としては、企業と自治体とのオープンイノベーションは、これから世の中が間違いなく進んでいく方向で、社会に必要な取組であることを確信していましたので、粘り強く取り組んできました。
そのような中で、2つ目のスタートアップを経営していた際、「逆プロポ」の構想を思いつき、ソーシャル・エックスを創業しました。

まず、価値を出すこと
仕事におけるこだわりを教えてください。
私たちは、まだ世の中にない価値を社会に提供している会社です。形がないことには、なかなか理解がしてもらえないため、まず最初に価値を出し、それを体験して頂くことを大事にしています。その結果、現在では、ありがたいことに、営業しなくても仕事の依頼が集まるようになっています。
また、小さな失敗はいくつもありましたが、失敗を恐れすぎることなく、どんどんとチャレンジを重ねるポジティブさが、自分の長所でもあり、大切にしたいことです。
起業から今までの最大の壁を教えてください
起業して最も大きな壁は、コロナ禍における事業の存続危機でした。
コロナの頃は2つ目のスタートアップを創業したばかりで、過年度の実績がなかったため売上減少を証明できず、政府支援の対象外となりました。売上は一時的にゼロとなり、事業運営が極めて難しい状況に直面しました。先行きが不透明な中で、どのように事業を継続させるかが大きな課題となりました。
転機が訪れたのは、新しいクライアントとのご縁から重要な案件を受注できた時です。この出会いは、まさにチャンスが重なった瞬間でした。
先行きが見えにくい状況の中で、「今できることは何か」「どのように価値を届け続けるか」を考え続ける時間が続きました。そうした試行錯誤の中で、新しいクライアントとのご縁が生まれ、重要な案件を任せていただく機会に恵まれました。
紆余曲折を経て受注につながり、事業は再び成長軌道へ戻りました。この経験がその後の案件獲得にも広がりをもたらしました。
この出来事を通じて、どんな状況でも挑戦を続ける姿勢の大切さと、機会を掴む準備を続けることの重要性を強く実感しました。私が「逆プロポ」の仕組みを思いついたのも、ちょうどその頃でした。

「行政と民間企業が協力して新しい価値を創造すること」が当たり前の社会に
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
明治維新から続いてきた社会システムが変革の時期を迎えています。私たちの挑戦は、今後50年続く社会の新しいシステムを作っていることだと考えています。
そういった思いが、困難を乗り越え、価値を創造していくモチベーションに繋がっているのだと思います。私たちは、様々なセクターを超えて、共に歩めるパートナー探しを行っています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
今の会社をしっかりと成長させていくことを第一に考えています。ただ、行政と民間企業が協力して新しい価値を創り出すといった世界観は、日本ではまだまだ浸透していません。
だからこそ、この世界観を社会にしっかりと根付かせていきたいと考えています。そして、その過程で、私の志や当社が取り組んでいることを、私以上に発展させてくれる若い世代がたくさん出てきてくれることを期待しています。

チャレンジすることが評価される時代になる
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
起業を目指している方には、ぜひ積極的に挑戦してほしいと思います。
現在、誰もが結果を予測できるビジネスはすでに仕組み化され、既存企業が担っています。一方で、まだ取り残されている領域もあります。特に社会課題の解決が求められる分野には多くのチャンスが残されています。本来、行政が担ってきた役割も、今は行政だけでは対応しきれず、起業家の視点やスピード感が必要とされる時代になっています。
また、これまでは挑戦して結果が出なければ「失敗」と見られ、再チャレンジが難しい風潮がありました。しかし今は、挑戦しないことの方がリスクと捉えられる時代です。
上場やM&Aのような目に見える成功に至らなくても、挑戦の過程で得られる学びや成長そのものが評価されるようになっています。挑戦すれば必ず前進があり、むしろ行動しないことの方が損失につながると感じています。
もちろん、起業に不安を抱く方も多いと思います。それは、まだ成功事例やロールモデルが十分に知られていないためです。今後は、起業が特別な選択ではなく、たとえうまくいかなくても次のキャリアにつながるという認識が社会に広がっていくことを期待しています。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:伊藤 大貴 氏
2002年早大大学院(理工学)修了後、日経BP。2007年より横浜市議会議員3期10年。2017年横浜市長選立候補後、2018年に官民共創のコンサルティング会社million dotsを創業。2020年に「逆プロポ」を発明し、ソーシャル・エックスを起業。数々の新規事業を生み出す。2025年よりソーシャルXインパクトファンドの投資責任者。事業性と社会性を両立した新規事業開発を得意とする。
著書:『ソーシャルX』『スマートシティ2025』『日本の未来2021-2030』『5Gエコノミー総覧』『日本の未来2019-2028』(いずれも日経BP)。
対外活動:文科省「DX人材養成プログラム開発・実証事業」有識者。虎ノ門ヒルズインキュベーションセンターARCHメンター他。
企業情報
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法人名 |
株式会社ソーシャル・エックス |
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HP |
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設立 |
2021年11月 |
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事業内容 |
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