ソーシャルXインパクトファンド 投資責任者 伊藤 大貴

ソーシャルXインパクトファンドは、インパクトスタートアップに特化したVCです。社会性と事業性の両立するインパクトスタートアップに投資し、企業と行政とのオープンイノベーションで成長を支援します。私たちが運営するソーシャルXアクセラレーションで、インパクトスタートアップを発掘・育成。自治体との共創により事業成長を加速させ、社会的インパクトと事業性の両立を実現しています。伊藤 大貴氏に、事業内容や今後の展望なども含めて詳しくお聞きしました。

 

休眠預金を活用した日本初「官民共創型インパクトファンド」

貴社の特徴や、起業家に提供できる価値をお伺いできますか?

ソーシャル・エックスは、企業と行政とのオープンイノベーションで、社会課題を解決する起業家・事業の創出から社会実装まで一気通貫で支援する企業です。

 

最初は「逆プロポ」という企業が自治体を公募するプラットフォームから始まったのですが、そこから、企業の力を借りて社会課題を解決したいというニーズの高い自治体への支援事業「コンシェルジュ」サービスが生まれました。

 

また、「逆プロポ」は大企業に活用頂く事が多かったのですが、スタートアップにも裾野を広げたいと考え、2年前にアクセラレータープログラム「ソーシャルXアクセラレーション」を立ち上げました。現在、東京都、内閣府、群馬県、三菱UFJ銀行がオーナーとなり、スタートアップの成長を後押ししています。

 

このプログラムを通じて、スタートアップの発掘、成長支援、自治体とのオープンイノベーションを活用した社会実装支援という3つの機能が揃いました。そして、この活動が実質的にインパクトスタートアップのデューデリジェンスになっていることに気づきました。

 


たまたまご縁のあった北國銀行の投資子会社であるQRインベストメントの浜野社長と意見交換を繰り返していたところ、JANPIAという休眠預金の活用団体が、インパクトファンドの運営事業者を探しているという情報が入り、協力してファンドを起ち上げる事になりました。

 

2023年の休眠預金等活用法の改正を受けて、休眠預金がインパクトスタートアップへの投資に使えるようになり、その第一号ファンドとして私たちを選んで頂いたのです。休眠預金を活用できる制度があることを知りました。これを使えば、そこからも資金を集められると考え、協力してファンドを立ち上げることになりました。

 

現在、ソーシャルXアクセラレーションで半年から1年間支援してきたスタートアップの中から、資金調達を必要とする企業を選んで投資しています。2025年には、株式会社チャイルドサポートというスタートアップに、我々のファンドの第一号案件として投資を行いました。

 

他にも、いくつかの企業と協議を続けていますが、その対象は、社会課題解決にフォーカスしている企業です。ジャンルは幅広く、さまざまな分野のスタートアップを支援しています。

 

 

自治体との共創、社会的インパクトと収益を実現

「官民共創型」インパクトファンドとお聞きしました。どのような特徴があるのでしょうか?

ソーシャルXインパクトファンドの特徴は、投資先スタートアップと行政とのオープンイノベーション(官民共創)によって、社会課題を解決するビジネスの成長を支援する点にあります。

 

チャイルドサポートが社会的に有用で、ビジネスとしても成り立つことを証明するには、自治体の協力が大きな後押しとなります。

 

なぜなら、離婚する際の唯一のタッチポイントを持っているのが自治体だからです。離婚届を受け取るのも、提出を受け付けるのも自治体です。自治体が離婚届を受け取る際に公正証書を結んだかどうかを確認するだけで、養育費を確実に受け取れる親が増えます。

 

自治体にとっては、予算をかけずに養育費をもらえず困っている親を減らすことができます。一方、スタートアップにとっては、自治体の協力により、養育費回収を必要とする親との接点が得られ、ビジネス機会を得ることができます。

 

この構図は離婚問題だけでなく、教育、福祉、医療、スポーツなど、社会課題解決型の分野で、BtoBやBtoCのビジネスモデルに行政を組み込むことで実現できます。ただ投資するだけでなく、投資先のスタートアップが、自治体との共創を通して、自治体の社会課題を解決しながら事業成長できるよう支援していくのが、当ファンドの特徴です。

 

日本ではじめて休眠預金を活用しているファンドだと拝見したのですが、具体的な取り組みを教えてください

当ファンドは、資金を運用する側(GP)と、資金を提供する側(LP)という二つの役割で構成されています。QRインベストメントと当社はGPとして、優れたスタートアップを発掘し、お預かりした資金で投資・運用を行っています。そしてLPには、休眠預金が組み込まれている点が大きな特徴です。

 

休眠預金は、日本国内で年間約600億円発生していると言われています。2年前の法改正により、これまで単年度の補助金として交付されていた休眠預金を、投資目的にも活用できるようになりました。従来の補助金は交付後のモニタリングが難しいという課題があり、今回の法改正には大きな意義があります。

 

ただし、休眠預金を投資に用いるには条件があり、対象は社会課題の解決に取り組むスタートアップに限定されています。休眠預金を管理するJANPIAは、「社会課題に真正面から取り組む意思を持つGPに資金を託したい」と考えています。

 

その中で私たちが選ばれた理由は二つあります。 一つは、社会課題解決への強いコミットメントを持っていること。もう一つは、行政との共創でインパクトスタートアップを成長させるための具体的な仕組みやアセットを保有し、ソーシャルXアクセラレーションで確かな実績を上げてきたことです。

 

これらの取り組みが評価され、休眠預金を活用したファンドの組成が実現しました。

 

VC業界に入ってから今までの最大の壁を教えてください

ファンドを立ち上げてまだ1年ほどなので、大きな壁にはまだ直面していません。

 

アクセラレータープログラムを通じて優れたスタートアップを多く見つけられているため、投資先が見つからないといった悩みもありません。

 

むしろ、良いスタートアップがたくさん見つかっている状態なので、どの順番で投資していくかという嬉しい悩みを抱えています。

 

 

社会課題解決とビジネスを両立できる起業家を増やしたい

今後どのような起業家と出会いたいですか?

社会課題の解決に真剣に取り組んでいる起業家と出会い、投資していきたいと考えています。

 

例えば、当社が支援しているある起業家は、専門職として十分な収入を得られる立場にありながら、役員報酬を取らずに社会課題解決の事業に取り組んでいます。こうした姿勢は本当に尊いものです。しかし、起業家が適正な対価を得られる状態であるべきですし、その先にいる困っている人たちも救われる必要があります。

 

社会課題に向き合い、課題を解決しながらきちんと稼いでいる状態が理想です。社会課題を解決しているのに稼げていない状態は、望ましくありません。社会課題解決とビジネスを両立できる起業家を増やしたいと思っています。

 

基本的には、社会課題に取り組むスタートアップであれば投資対象になります。ただし、ソーシャルXアクセラレーションを受けていただいた方は、私たちも事前にさまざまな支援ができるため、プログラムへの参加をおすすめしています。

 

 

「社会課題に貢献したい」という思いを重視

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

ソーシャルXアクセラレーションは社会課題を解決したいという強い思いがあればサポートできるプログラムです。ぜひ積極的にエントリーしてください。

 

BtoBやBtoCのビジネスモデルを持つスタートアップが対象ですが、実は多くの起業家が自社のビジネスで社会的インパクトを生み出せることに気づいていません。

 

起業した時は社会課題を考えていなかったけれど貢献したいと思うようになった方、あるいは自分たちのサービスが社会課題に貢献できるかもしれないが、何から始めたらいいかわからない方は、ぜひソーシャルXアクセラレーションを通じて支援を受けてください。

 

また、社会課題解決型の事業を立ち上げたいけれど、どのような課題があるのか、どの程度深刻なのかわからないという声を多くいただきます。

 

当社では社会課題データベース「逆プロポVoice」というプラットフォームを運営しており、自治体から直接集めたリアルな課題を閲覧できます。

 

これまでは新聞などから情報を拾うしかありませんでしたが、このデータベースを活用することで、具体的な社会課題を知り、事業のヒントを得ることができます。社会課題解決に取り組みたいけれど方向性に迷っている方は、ぜひご活用ください。

 

▼詳細はこちら「逆プロポ Voice」
https://voice.gyaku-propo.com/

 

スタートアップ支援プログラムの詳細を教えてください

当社では、社会課題解決に取り組むスタートアップを支援するプログラムを複数展開しています。

 

起業前の方を対象とした「ソーシャルXスタジオ」は、自治体が抱える社会課題を起点にビジネスを考えるプログラムです。東京都TOKYOSUTEAMの協定事業者として実施しています。

 

すでに起業されている方には、「ソーシャルXアクセラレーション」があります。このプログラムでは、政府や自治体からの支援を受けながら、スタートアップの事業成長を支援します。プログラムで組成された実証実験には、ふるさと納税を活用した寄付金が集まる仕組みも整えています。

 

また、当社のプログラムでは、スタートアップの発掘から事業成長、自治体とのオープンイノベーションによる社会実装、そして投資まで一気通貫で支援しています。ぜひ、プログラムへのエントリーをご検討ください。

 


▼ソーシャルXスタジオ:https://stu.socialx.inc/

▼ソーシャルXアクセラレーション:https://sac.socialx.inc/

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:伊藤 大貴氏

2002年早大大学院(理工学)修了後、日経BP。2007年より横浜市議会議員3期10年。2017年横浜市長選立候補後、2018年に官民共創のコンサルティング会社million dotsを創業。2020年に「逆プロポ」を発明し、ソーシャル・エックスを起業。数々の新規事業を生み出す。2025年よりソーシャルXインパクトファンドの投資責任者。事業性と社会性を両立した新規事業開発を得意とする。

著書:『ソーシャルX』『スマートシティ2025』『日本の未来2021-2030』『5Gエコノミー総覧』『日本の未来2019-2028』(いずれも日経BP)。

対外活動:文科省「DX人材養成プログラム開発・実証事業」有識者。虎ノ門ヒルズインキュベーションセンターARCHメンター他。

 

企業情報

法人名

ソーシャルXインパクトファンド(株式会社ソーシャル・エックス)

HP

https://fund.socialx.inc/

設立

2025年3月

事業内容

日本初「官民共創型」インパクト投資ファンド

 

送る 送る

関連記事