株式会社ソラメド 代表取締役 古石 至章

予定手術早期実施支援クラウド「オペプロ」を展開するソラメドは、手術室のポテンシャル解放を支援するスタートアップ。23年にわたる現場知見をもとに、ブラックボックス化していた手術までのワークフローを可視化。空き枠という「未利用の経営資源」を最適化することで、病院の収支改善と患者の手術待機期間短縮の両立に挑んでいる。ローンチ直後から基幹施設への導入を実現させ、手術室空き枠の有効活用を実現している同社代表取締役の古石至章氏に、プロダクトに込めた「良き伴走者」としてのこだわりと、その先に見据えるビジョンを聞いた。

 

手術室が本来持っているポテンシャルを解放するSaaSの提供

事業の内容をお聞かせください

日本の病院の約70%が赤字、大型自治体病院の約95%が赤字という現状において、病院経営の心臓部である手術室の稼働率は、存続を左右する最重要指標です。 しかし、現場には特有の構造的課題があります。

 

手術室は本来、各診療科の手術依頼を安全に完遂する「受け身」の立場になりやすく、空き枠や急なキャンセルが発生しても、手術室側から主体的に空き枠を有効活用する打ち手を持てませんでした。この「機会損失」が、病院の収支を圧迫し、患者様の手術待機期間を長引かせる要因となっているのです。

 

この構造的なジレンマを打破するために私たちが提供しているのが、予定手術早期実施支援クラウド「オペプロ」です。 「オペプロ」は、単にスケジュールをデジタル化し、手術室の利便性を高めるだけのツールではありません。私たちの真の強みは、手術室の課題を「病院経営全体の課題」へと引き上げる力にあります。

 

手術室のポテンシャルを最大限に引き出すためには、手術室の中だけを見ていても不十分です。

 

  • 情報の民主化: 医師、看護師、医事課、そして経営層。これまでブラックボックス化され分断されていた情報を「オペプロ」というプラットフォームで共有・可視化します。
  • 多部門の巻き込み: 多くの部署や複雑な情報を統合し、全方位的な調整を可能にします。これにより、一診療科の都合に左右されない「病院全体にとって最適」な意思決定の土壌を作ります。
  • 経営改革としての実装: 手術室の空き枠を「未利用の経営資源」として定義し直し、患者様には「より早い手術」を、病院には「収益の向上」をもたらす具体的な機能を複合的に提供します。

 

私たちは「オペプロ」を通じ、手術室の空き枠という「未利用の経営資源」を、一人でも多くの患者様へ繋ぐための架け橋となります。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

私は前職の医療機器メーカーで23年間にわたり、手術医療機器の販売、手術室の収支計算や稼働率の算出に携わってきました。多くの現場を分析する中で、常に直面し続けてきたのは、ある深刻なギャップでした。 数ヶ月先まで手術を待つ患者様が溢れている一方で、国内の手術室の平均稼働率は60%程度。

 

医療の最前線にあるこの「空白」に対し、有効な打ち手を持てない手術室や経営者の医療現場の苦悩をどうにかして解決したい。その強い想いが、私の原点となりました。約15年前になりますが、最初は学会カレンダーなどを手作りして、手術枠を使わない日を全診療科で情報共有できるようにしていたりしていました。

 

これまで、自分は大企業という安定した環境に身を置きながらも、この既存の仕組みでは、この閉ざされた業界の構造的課題を打破できないことを痛感していました。誰かがこの壁を壊さなければ、病院の収支改善も患者様の手術待機期間短縮も実現されません。 元々は起業や経営に一切の関心はありませんでしたが、「誰もやらないのなら、自分がやるしかない」という使命感が、私を未知の道へと突き動かしました。

 

起業を模索していた折、YouTubeの、とある番組でDeNA創業者・南場智子さんの言葉に触れ、強く共感しました。「この方と一緒に、医療の課題を変えていきたい」――その直感に従い、南場さんが立ち上げた独立系ベンチャーキャピタル、デライト・ベンチャーズの起業支援プログラム(https://builder.delight-ventures.com/vship)に応募しました。

 

20年以上組織に守られてきた身としての不安もありましたが、洗練されたプログラムの中でビジネスモデルを徹底的に磨き上げるにつれ、「この事業は必ず医療の役に立つ」という確信が芽生えました。

 

 

すべては患者さんのために

仕事におけるこだわりを教えてください。

22歳でヘルスケア業界の門を叩いてから今日まで、私は「すべては患者様のために」と心掛けています。 私たちソラメドが直接患者様と接することはありません。しかし、医師や看護師、病院職員の方々を支えることを通じて医療に貢献する以上、現場の皆様と同じ目線、同じ熱量を目指し、課題に向き合うことは不可欠です。いかなるプロダクトもサービスも、その最終的な受益者は患者様であるべきだと考えています。

 

「すべては患者様のために」という目線を持つことは、単なる理想論ではありません。それは、手術室の複雑な課題に向き合い、病院の皆様を伴走支援する上で、最も重要な「判断基準」でもあります。

 

  • 「この機能は、医師の負担を減らし、結果として手術を待つ患者様を一人でも多く救うことに繋がるか?」
  • 「この収支改善は、病院の存続を支え、地域の医療インフラを患者様のために守り抜くことに繋がるか?」

 

常にこの問いを自分に投げかけながら、目の前の課題解決に取り組んでいます。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

23年間、一貫して同じ組織に身を置いてきた私にとって、起業という環境変化は想像以上に高い壁でした。大企業では組織の一員として、自らの専門領域に全力を注げばよかったです。しかし、ベンチャーの世界では、慣れないあらゆる業務をすべて自ら完遂しなければなりません。専門外の荒波に揉まれ、己の無力さに立ち止まりそうになったことも一度や二度ではありませんでした。

 

その困難な時期を支えてくれたのは、デライト・ベンチャーズのベンチャー・ビルダーという「良き伴走者」の存在でした。彼らは単なる机上のアドバイスに留まらず、私の抱える課題に真摯に目線を合わせ、時には力強く進むべき道をリードしてくれました。

 

そこで学んだのは、「真の伴走者とは、相手のポテンシャルを信じ、ともに汗をかきながら未来へ導く存在である」ということ。この原体験こそが、現在の私の経営哲学、そしてソラメドの根幹となっています。

 

だからこそ、私たちソラメドもまた、医療現場にとっての「良き伴走者」であり続けたいと強く願っています。 病院経営がかつてない苦境にある今、現場の業務を深く学ぼうともせず、机上の空論で「効率化」や「経済合理性」を押し付けたり、自社都合の提案は現場にとって「Noisy(騒音)」でしかありません。

 

手術室には、患者様の利益を最優先に考え抜かれた、複雑で繊細なオペレーションの積み重ねがあります。私たちは、その現場の知見やエビデンスを最大限に尊重しながら、同時に手術室のポテンシャルが解放される未来へと、静かに、しかし確実にリードする存在でありたい。 今度は私たちが、命の最前線で戦う皆様を支える「良き伴走者」として歩み続けます。

 

その歩みは今もなお、新しい学びと高い壁に直面する毎日の連続です。

 

 

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

私の仕事の原動力は、極めてシンプルです。それは「目の前で困っている人たちの力になりたい」という一点に尽きます。 23年間、医療の世界にいる私にとって、現場の先生方や職員の皆様は、単なるビジネスパートナーではなく、共に歩む大切な存在です。

 

私たちソラメドが、患者様に直接治療を施すことはありません。しかし「オペプロの導入によって、手術を数週間早めることができた」という報告を現場からいただいた時、私たちの仕事が、巡り巡って一人の患者様の人生、そしてそのご家族の未来に貢献できたことを強く実感します。

 

医師を支え、手術室を支えることが、結果として患者様の未来を救うことに直結する。この「善の循環」を確信できる瞬間こそが、私にとっての最大の報酬です。

 

採用を開始されているそうですね。募集されているポジションを詳しく教えてください。

はい。冒頭でお話しした通り、いま日本の病院経営は非常に苦しい状況にあります。私たちはその現状を『オペプロ』で変えていきたい。そのために、現場の伴走者となる営業とカスタマーサクセスの仲間を募集しています。

 

医療業界の経験は、一切問いません。私自身、毎日お会いする医師や看護師といったプロフェッショナルの皆さんに比べれば、医療知識は遠く及びません。だからこそ痛感しているのは、現場で本当に求められているのは、知識や経験よりも『医療現場の課題に向き合う姿勢』だということです。

 

あなたの『誰かの役に立ちたい』という真っ直ぐな想い。その想いこそが、命を預かる現場の方々の熱意と、何よりも強く共鳴(シナジー)すると信じています。

 

少しでもピンときたら、まずはカジュアルにお話ししませんか? 手術室という場所、実は知れば知るほど、驚くほど面白い世界ですよ!

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

「オペプロ」の本質は、手術室の課題を「病院経営全体の重要課題」へと引き上げることにあると考えています。 院内に点在するデータを集約・可視化することで、これまで一部の職員だけが抱えていながら、有効な打ち手が打てなかった手術室の課題を共有し、手術に関わる多くの職員のベクトルを一つに合わせることが可能になります。

 

現在は、このデータを活用して空き枠を最適化し、経営の健全化と待機患者様の解消に全力を注いでいますが、これはまだ第一歩に過ぎません。今後はこの「最適化の輪」を院内全体へと広げ、病院が持つ本来のポテンシャルを余すことなく解放していきたいと考えています。

 

さらにその先に見据えているのは、病院という組織の枠を超え、医療を支えるすべての方々を巻き込んだプラットフォームへの展開です。 地域のクリニックと基幹病院の円滑な連携、あるいは医療資材や物流を支える関連企業の皆様との高度な協力体制。

 

データが「共通言語」として正しく循環することで、医療インフラを支えるすべての人が、より効率的に、そして何より「情熱」を持って働ける環境を創り出したい。と考えています。

 

 

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

私自身の限られた経験から言えることは僅かですが、もし今、解決したい社会課題を抱え、起業への一歩を踏み出そうとしている方がいれば、私は自信を持ってデライト・ベンチャーズの起業支援プログラムにチャレンジすることをお勧めします。

 

デライト・ベンチャーズは、「起業家ファースト」の精神が徹底されており、そのスピード感と起業家目線のサポートは、シード・アーリー期の不安定な時期において、何よりも心強い支えとなります。

 

デライト・ベンチャーズの起業支援プログラムは単なる資金提供の場ではありません。ビジネスモデルを徹底的に磨き上げるプロセスから、起業前後の泥臭い実務に至るまで、まさに「良き伴走者」として共に歩んでくださる場所です。20年以上組織に守られてきた私が、迷いを確信に変えて今日ここに立っていられること。

 

そして既に「オペプロ」を導入した施設において、空き枠を活用し、予定よりも早く患者様へ手術をお届けできていること。これらの成果は、間違いなくこのプログラムの支援があったからこそ、生み出せたものです。

 

年に数回の募集があります。もし、解決したい課題がありながら最初の一歩に不安を感じているのなら、ぜひ活用してみてください。素晴らしい伴走者との出会いが、あなたの志を、社会を変える確かな事業へと昇華させてくれるはずです。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:古石 至章

広島修道大学人文学部人間関係学科教育学専攻卒業。第二新卒で医療機器メーカー入社。2025年1月株式会社ソラメドを設立。

 

企業情報

法人名

株式会社ソラメド

HP

https://www.soramed.jp/#company_info

設立

2025年1月

事業内容

医療用システム開発、運用、保守

採用サイト

https://www.wantedly.com/projects/2237515

 

送る 送る

関連記事