【#601】衛星データ×AIで地球の変化を可視化。宇宙を使いこなす時代を切り拓く|代表取締役 金本成生(株式会社スペースシフト)

株式会社スペースシフト 代表取締役 金本成生
衛星データをAIで解析し、地球全体の変化を可視化する技術を開発する株式会社スペースシフト。500基以上の衛星が地球を周回する現代、膨大な衛星画像から情報を抽出する独自のAI技術で、災害対応から都市開発、安全保障まで幅広い分野にソリューションを提供しています。代表取締役の金本成生氏に、事業内容や宇宙ビジネスの未来について詳しくお聞きしました。
衛星データで、見えなかった世界を可視化
事業の内容をお聞かせください
衛星データを解析するAIの開発を行っています。
衛星にはさまざまなセンサーが搭載されています。Google Mapのようにカラー画像を撮影する光学衛星に加え、曇りや夜間でも地表を捉えられるレーダー衛星もあります。
今では、世界中どこからでもインターネットに接続できる環境ができています。それと同じように、日常的に衛星データを活用し、社会課題の解決につながる事業を展開しています。
衛星データの画像から意味のある情報を抽出し、活用可能なデータへ変換することが、私たちの技術です。
街は日々変化しており、車の量や建物の増減、人の活動量は昨日と今日で異なります。こうした変化を継続的に比較し、自動的に抽出する技術を開発しています。
この技術により、災害発生前後の被害状況の把握や、都市開発の進行状況、経済活動の活発さなどを定量的に捉えることができます。
毎日何万枚もの衛星画像が取得されていますが、その多くは十分に活用されていません。地球全体の変化を日々捉えられるようになれば、人間の活動をこれまでにない視点で把握できるようになります。
インターネットの普及により、人類の活動の約4割はサイバー空間上で行われていると言われています。一方で、残りの約6割はインターネット上には存在していません。このリアルな空間での活動を捉えられる唯一の手段が、衛星データだと考えています。
インターネットが社会に与えた影響を踏まえると、この6割の活動がデータ化されたとき、社会にどのような変化が起こるのかは、まだ誰にも分かっていません。
私たちは宇宙を活用し、これまで見えなかった人類の活動を可視化することで、社会をより最適な形へ導くための道具をつくっています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
インターネットが一般に普及する以前から、この分野で事業に携わってきました。当時は、現在のようにSNSやスマートフォン、オンライン決済が社会に浸透する姿は想像されておらず、手紙やファックスに代わる通信手段として捉えられていました。
しかしその本質は全く異なり、情報を瞬時に伝えられるようになることは、経済の仕組みや人の行動そのものを大きく変える力があります。
そうした変化を長く見てきた経験から、同じ構造が宇宙分野でも起こると直感しています。
子供の頃から宇宙が好きだったこともありますが、ソフトウェアエンジニアとしてのバックグラウンドを活かせば、ロケットや衛星を作る側ではなく活用する側として貢献できると考えました。
人脈を開拓し、独学で衛星データ解析の研究と開発を始めました。2009年に会社を設立する際には、JAXAで働いている大学時代の同級生の力も借りて、宇宙業界への一歩を踏み出すことができました。

認識の壁を超え、宇宙を当たり前にする
仕事におけるこだわりを教えてください。
基本的には、自分で動き、自分で学び、情報を集めるスタイルを大切にしています。その上で自分にしかできないことに取り組みたいと思っています。
今は専門家の力を借りて事業を進めているため、私はもうプログラミングの現場には立っていません。
一方で、新しいアイデアを考えたり、何かを試したりする初期段階では、必ず自分自身で情報を吸収し、理解した上で動くことを心がけています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
宇宙分野では、何が正解か分からない状態の中で、まだ十分に理解されていない技術を使ってもらう必要があります。この点は、起業以来ずっと向き合ってきた最大の壁だと感じています。
かつてのインターネットも、黎明期には同じ状況にあり、ある時インターネットがなければ世の中が成り立たないと多くの人が気づきましたが、宇宙分野ではまだその転換点が訪れていません。
多くの人にとって、宇宙はまだ旅行や未知のロマンといった「遠い存在」かもしれません。しかし、実務で使える衛星データ解析技術はすでにここにあります。この心理的な距離を埋め、宇宙を日常のインフラとして捉え直してもらうことこそが、今乗り越えるべき課題です。
インターネットが世界を書き換える瞬間を間近で経験してきたからこそ、人類が宇宙を自在に使いこなす時代がすぐそこまで来ていると確信しています。

宇宙を使いこなし、次の社会をつくる
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
誰も取り組んでいないことを成し遂げたいという思いがあります。人類の活動には多くの無駄があり、その結果として環境問題や食糧問題など、様々な課題がうまれています。
こうした課題を、これまでにない方法で解決できる可能性に魅力を感じています。
私の子どもたちやその世代はこれからの未来を生きていきます。子孫に素晴らしい未来を残すことは、私たちの責任だと考えています。16年という歳月をこの事業に捧げてきましたが、私の挑戦はまだ終わっていません。これからも決して諦めることなく頑張っていきます。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
まずは衛星データを使いこなす時代をもたらすことです。当社の事業は、技術的な探究心と社会へのインパクトを同時に追求できる点が特徴です。
新しい技術やアイデアを試す知的な面白さと、それによって社会全体が最適化されていくことに、やりがいを感じています。
一方で、個人的な野望として宇宙そのものへの根源的な問いがあります。幼い頃からなぜ宇宙は存在しているのかと疑問を持ち続けてきました。現在の科学でも、その答えはまだ分かっていません。
その問いに近づくための象徴として、空間や時間を超える技術に注目しています。もしこの技術が実現すれば、人類がまだ触れたことのない領域に到達できるかもしれません。
その可能性を信じ、AIをはじめとする技術とともに、挑戦を続けていきたいと考えています。
衛星データ事業共創プログラム「SateBiz」について教えてください
宇宙はすでに「使う時代」に入っています。これから本格的に活用が広がっていく分野だからこそ、今関わることで、誰もが第一人者になれる可能性があります。
そのために立ち上げた取り組みが「SateBiz(サテビズ)」です。衛星データと、さまざまな企業が持つ知識やデータを組み合わせ、新しいビジネスを生み出していくことを目的としています。
私たちは、農業や林業、金融といった各分野の専門家ではありません。一方で、衛星データという視点を通じて情報を補完し、新しい観点を加えることができます。だからこそ、業界や分野を越えたコラボレーションを重視しています。
例えば保険分野では、災害発生時の被害状況を迅速に把握し、保険金の早期支払いにつなげる活用が進んでいます。不動産分野では、土地の変化や流動化の動向を捉える取り組みが行われています。
大手企業の活用事例をきっかけに、参加企業同士の横のつながりも生まれ始めています。
SateBizは、宇宙産業も含めた、すべての企業に向けた、誰でも参加できる取り組みです。宇宙をどう使えるのかを考えるところから、ぜひ参加してほしいと考えています。

考える前に行動を。失敗から学ぶ方が早い
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
起業したいと相談を受けることは多いですが、私の答えは今すぐやるべきだと伝えています。実際に動いてみなければ、自分に何ができて何ができないかは分かりません。
やったことがないから自信がないのは当然です。多くの人が、失敗したら周囲にどう思われるかを気にし過ぎてしまいます。
しかし、どれだけ準備を重ねても、実際に始めれば必ず失敗はあります。それなら、できるだけ早く失敗し、そこから学んだ方が次につながります。
何も起こさなければ、何も始まりません。まず一歩を踏み出してほしいと思います。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:金本成生 氏
1975年鳥取県米子市生まれ。神戸大学工学部情報知能工学科卒。小学校2年の頃にハレー彗星に興味を持ち天文学者を志す。同時にコンピューターにも興味を持ち、大学在学中にITベンチャーを起業。その後音楽業界、IT業界を経て2009年、宇宙ベンチャー「株式会社スペースシフト」を起業。代表取締役に就任。「宇宙xAIで世界をひもとく」をテーマに事業を展開。衛星データ解析ソフトウェア開発、非宇宙企業への宇宙ビジネスコンサルティングなどを手掛ける。総務省「宇宙×ICTに関する懇談会」「宇宙利用の将来像に関する懇話会」構成員などを歴任。
企業情報
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法人名 |
株式会社スペースシフト |
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HP |
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設立 |
2009年12月 |
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事業内容 |
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