
株式会社Recho 共同創業者/取締役 白 寧杰
株式会社Rechoが提供する、エンタープライズ向けの音声AIエージェント。ほとんど人間と区別がつかない自然な会話で、尚且つ精度の高い情報のやり取りができることが特徴となっています。今回は共同創業者/取締役の白寧杰氏に、事業立ち上げの経緯や今後の展望についてお聞きしました。
「自然な会話」と「精度の高さ」を両立したAIエージェント
事業の内容をお聞かせください
我々の事業は、コールセンター向けに特化したAIボイスエージェントの開発です。
現在、音声対話型のAIサービスは増えつつあります。その中でも我々はモデルを独自開発することによって、他社のサービスとの差別化を図っています。我々のサービスの強みとなるのが、「人間らしい自然な会話」と「精度の高さ」の両立です。
AIモデルの開発において、スムーズな会話と内容の精度はトレードオフの関係になりがちです。人間らしい会話を重視すれば、どうしても間違った情報の生成を起こしやすく、AIが生成する内容を正確に制御することは困難とされていました。
しかし我々のプロダクトは、この2つを両立させることを可能にしました。現在、我々のコールセンター向けのAIボイスエージェントは、SBI新生銀行など、複雑な情報のやり取りを必要とする金融系の問い合わせ窓口にも活用していただいております。導入に際しては企業様ごとにカスタマイズもしており、それぞれの現場に合わせた柔軟な対応が可能です。
このようなソリューションを提供している背景には、コールセンターの運営の構造的な問題があります。コールセンターには繁忙時と閑散時の波があり、人員配置を最適化するのは非常に困難です。
ピーク時に合わせて人を配置するとコストが増大するため、企業は採用人数を調整せざるを得ません。結果としてピーク時の入電をすべて拾うことができず、顧客を待たせることになります。
また、労働人口の減少に伴って、コールセンターの人材確保も難しいのが問題です。日本はサービス品質に対する要求水準が高く、カスタマーハラスメントなどを理由としたコールセンターの離職率も依然として高いままです。
このような問題を解決する手段として、AIエージェントの活用はまさに理想的といえます。ユーザーは電話口で待たされることが、企業側は問い合わせの取りこぼしや人員確保の問題で悩まされることが減り、生産性向上に大きく貢献できると確信しています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
学生時代に個人プロジェクトとして始めた通販事業が学内で評判を呼び、さらに学外でも顧客を獲得することができました。その結果、資金も得られたため、就職をせず、そのまま起業の道を選ぶことに決めました。
事業はその後も好調で、2、3年継続しました。しかし、改めて自分の生きる意味を考えた時、このまま通販事業だけを続けていていいのかと疑問を感じるようになりました。
私は、「自分が存在する世界と存在しなかった世界の差分をどれだけ大きくできるか」が人生における自分の存在意義だと考えています。生きている間に社会にどれだけのインパクトを与えられるかという視点で考えたとき、通販の事業には限界があると思いました。
当時はちょうど、ChatGPTが世に出始めたタイミングでした。情報や機械学習を専門で学んでいたこともあり、生成AIの領域であれば、限られた人生の中で最も大きなインパクトを与えられると考え、思い切って事業転換を決意しました。
コールセンター向けAIに注目したきっかけは、自分自身のネガティブな体験です。そこからコールセンターの抱える課題に注目し、この課題をAIで解決できれば、従来よりも優れたソリューションを生み出せると考えて今の事業を始めました。

同じ満足でも、120点の満足を目指す
仕事におけるこだわりを教えてください。
最も重要なのは、お客様の期待値を超え続けることだと思っています。
どの市場でも良い商品やサービスを作れば、必ず真似をする人が出てきます。市場の競争の中で生き残るには、自分たちが誰よりもお客様を満足させていることが大切です。
良いプロダクトを作ることも、そのための組織を作ることも、結局は手段に過ぎません。ビジネスの本質は、お客様のニーズを満たすことです。そしてニーズを満たすと一口に言っても、それが60点の満足か120点の満足なのかという違いがあります。
もし120点の満足が得られたならば、お客様は喜んでその対価を払ってくださるでしょう。だからこそ期待値を超え続けることが重要になると考えています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
最初に大きな壁にぶつかったのは、コールセンター向けAIの試作の時です。
当時は、自分たちにお客様が満足するプロダクトを作れるのかどうかもわからない状態でした。初めてのお客様からいただいた試作品の評価は「30点」です。
そこから半年間、毎月改良を繰り返し、何度も評価していただきました。そのお客様から90点の評価をいただくまでの道のりが、我々の事業の最初の壁だったと思います。
正直なところ、営業的な視点で言えば、60点の商品でも売ることは可能です。しかし、商品としての高い評価があって初めて、本質的な価値が生まれます。
そのため、その半年間は1社のお客様とだけお付き合いさせていただき、プロダクトをひたすらブラッシュアップしていきました。大手のAPIの利用に限界を感じて自社で独自にモデルを開発する方針に切り替えたのもこの時期でした。
その後は、徐々にお客様が増え、現在は約十数社に弊社のAIエージェントが導入されるまでになりました。今後は、さらに多くのお客様に喜んでいただくためにはどうすればいいかという新たな課題があります。
10社のお客様を満足させるのに必要な能力と、100社、1,000社のお客様を満足させるために必要な能力は別物です。100社のお客様に喜んでいただくために、プロダクトの設計や組織の能力をいかに高められるかというのが、次に乗り越えるべき壁になると考えています。

諦めなければ、信じる未来に必ず辿り着ける
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
進み続けられるのは、自分が信じる2つのビジョンへの執着があるからだと思います。
一つは、生成AIは産業革命であるということ。もう一つは10年以内に、現在人間が対応している電話の9割はAIが対応するようになるということです。
困難にぶつかったときに、それでも諦めずに進み続けるかどうかは、こうした自分の中のビジョンを信じるか否かにかかっています。もしも前提が間違っていたとしたら、今の自分たちの方向性も間違っているということですし、何の意味もない仕事をやっていることになってしまいます。
ですが、私は先ほどの2つのビジョンについて確信を持っています。10年後にはこうした未来が必ず来ると信じているので、諦めなければ自分もそこに辿り着けるはずだと信じ、事業に取り組んでいます。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
今後の計画としては、3年・5年・10年と段階的に目標を立てて、事業を成長させていきたいと考えています。
まず3年以内に国内のコールセンターAIエージェントでナンバーワンになること、そして5年以内にはグローバルでも、カスタマーサポート領域のトップ企業を目指します。その後はカスタマーサポート以外にも事業を展開していく予定です。
今後AIエージェントの市場は大きく拡大していくので、我々も様々なジャンルのAIエージェントを開発し、この先10年で特化できる領域を増やしていきたいと思います。
これらの目標を達成するための鍵となるのが、品質と効率です。他社よりも高品質なAIエージェントをより効率よく開発しなければ、市場での競争には勝てません。そのため、現在は優秀なエンジニアと導入コンサルタントを中心として、採用に力を入れています。
求めるのは、弊社の3つのバリュー、「Output > Expectation」「Team-First」「Continuous Feedback」を理解してくれる人材です。
「Expectation」とは、お客様はもちろん、一緒に働く仲間や関わるすべての人の期待値を指します。その期待値を常に超えられるアウトプットを目指しています。
そして、一人ひとりが優秀であることを前提として、最終的には組織としてのアウトプットを最大化するのが「Team-First」の考えです。
最後の「Continuous Feedback」では、違和感を覚えたら誠実さと敬意を大切にしながら、お互いにフィードバックし合うというスタンスを重視しています。そしてそのフィードバックを継続することが、組織やプロダクトを磨く最短ルートだと信じています。
これら3つのバリューを指針として、「生成AIで経済活動を加速し、人類の生産性を10倍にする」というミッションに共感してくれる人と一緒に仕事がしたいと思っています。ご興味を持っていただいた方は、ぜひご連絡ください!
▼採用情報はこちらから

「どのような未来を信じているか」という自分への問い
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
起業を志すのであれば、どのような未来を信じているのか、そしてその未来は何故自分たちにしか達成し得ないのかという二つの問いを、納得いくまで自分に問い続けてほしいと思います。
スタートアップが成功すること自体、一つの奇跡です。そのため、他の人が信じていないような未来を自分だけは信じ抜いて、諦めずに突き進む覚悟が必要でしょう。
私も人間に代わってAIが電話対応する未来を強く信じているからこそ、走り続けることができています。同じように、他人に何と言われようと絶対に信じられる未来を見つけることが大切なのではないでしょうか。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ: 白 寧杰氏
東京大学理学部情報科学科卒業。在学中はレコメンドシステムの研究に取り組み、機械学習の理論と社会実装の双方に関する知見を深めた。2021年12月、株式会社Rechoを共同創業。エンタープライズ向け音声AIソリューションの開発を推進し、金融機関や官公庁など高いセキュリティ要件を持つ顧客にサービスを提供。現在、約80名のチームを率い、日本発のグローバルVoice AIカンパニーを目指す。
企業情報
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法人名 |
株式会社Recho |
|
HP |
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|
設立 |
2021年12月 |
|
事業内容 |
Voice AIプラットフォーム及びVoice Agentの開発・運営 |
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