株式会社パスライト 代表取締役CEO 原 崇嗣

株式会社パスライトが提供するSaaS「PathLight」は、組織力学の観点から営業戦略を考えるための、まったく新しい自動生成型パワーチャートです。代表取締役CEOの原崇嗣氏は長年エンタープライズ営業に従事。その経験から、大企業特有の意思決定プロセスに沿った戦略の重要性についてイベントなどで発信しています。今回は原氏に「PathLight」活用の意義や、事業の展望をお聞きしました。

大企業の意思決定ラインを可視化するパワーチャート

事業の内容をお聞かせください

我々は、大企業から大型案件を受注したいBtoB企業向けに、エンタープライズセールスに特化したSaaS「PathLight」を提供しています。大手企業では通常、営業の提案を受けてから10名以上のステークホルダーが関与し、それぞれの部門が異なる評価軸でジャッジします。

 

事業部門はROIを、財務部門はコストを、情報システム部門は運用負荷を見ている。全員の合意を取り付けるのは、提案の質だけでは解決できない構造的な難しさがあります。「PathLight」は、こうした関係者の立場や力関係を可視化し、意思決定の実態に即した攻略ルートを設計するためのツールです。

 

これまでも、こうした組織力学や意思決定構造を手作業で管理しようとした企業は多くありました。しかし、パワーポイントやExcelで運用しようとすると更新コストが高く、現場に定着しないまま形骸化するのが実態です。

 

「PathLight」は、既存のSFAやCRMと連携することで、攻略すべきルートを明確に示したチャートを自動生成します。属人的な勘に依存せず、チームで再現できるエンタープライズ営業を実現します。

 

加えて、従来のエンタープライズ営業では、ターゲット企業の情報や人脈が担当者の頭の中にしか存在しないという問題がありました。ゴルフや会食の場で得た情報こそが受注の鍵を握るにもかかわらず、そうした情報はCRMに入力されません。

 

「PathLight」では、営業担当者が戦略的に動きながら自然と情報を蓄積できる設計にすることで、営業の属人化を防ぎ、組織としてエンタープライズ営業を強化していきます。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

大学卒業後、一貫してエンタープライズ営業に携わってきました。その現場で繰り返し直面したのが、大企業の意思決定構造という壁です。エンタープライズ営業では、目の前の担当者を動かせても、それだけでは受注に至らない。

 

組織の中に複数の意思決定者がいて、それぞれが異なる評価軸で判断を下す。2022年のMatthew Dixonの調査でも、B2B営業において提案を受け入れてもらえなかった案件の約60%は、競合に負けたのではなく、顧客が意思決定を回避した結果だと明らかになっています。提案の質の問題ではなく、構造の問題です。

 

大手企業に新しいシステムを導入しようとすれば、事業部門はROIを、財務部門はコストを、情報システム部門は運用負荷を見る。それぞれがリスク回避の判断をした結果、「現状維持」に収まる。もはや個々の問題ではなく、組織の構造として起きていることです。

 

私はそこに着目し、提案をブラッシュアップするのではなく、組織全体を攻略することに特化した営業支援が必要だと考えて起業しました。AIの普及で提案の品質は誰でも一定水準に達する時代だからこそ、大企業特有の意思決定構造を可視化し、攻略ルートを設計できるかどうかが差別化の核心になると考えています。

 

 

「PathLight」は打ち出の小槌ではない

仕事におけるこだわりを教えてください。

「PathLight」を売ることではなく、顧客を成功に導くことです。ツールを導入すれば営業が変わるという発想は危険で、実際には戦略と運用がセットでなければ成果は出ません。短期的な売上に囚われない人のほうが弊社のカルチャーには合うと思います。

 

高度な業務をAIが代替できる時代だからこそ、自分の専門領域を深く持ちながら、隣接領域にも目を向けられる人材が強い。知的好奇心があり、新たな可能性を自ら見つけにいける方をお待ちしています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

開発初期、1つの機能を完成させるのに3か月から半年かけても、リリース後に市場から全く反応がなかったことがあります。

 

一生懸命作ったものが受け入れられない。経営者として、リソースの再配分を迫られながら精神的な負荷も大きかった時期です。この経験を経て、以降はアジャイル開発に切り替えました。

 

まずプロトタイプで市場の反応を確認し、問題がなければ本格開発に進む。足りない機能はその都度追加し、小さく始めて徐々に拡大していく。それによって1回あたりの開発期間は大幅に短縮でき、市場とのミスマッチを早期に潰せるようになりました。

 

 

尽きることない試行錯誤の面白さ

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

事業が社会に与えるインパクトを信じていることです。大企業の意思決定構造を攻略できる組織が増えれば、日本のエンタープライズ市場全体が動きやすくなる。そのためのインフラを作っているという感覚が、続ける原動力になっています。

 

加えて、試行錯誤そのものが面白いと感じています。うまくいかない理由を構造的に解明し、打ち手を変えて検証する。このサイクルに飽きがこないのは、自分に合っているのだと思います。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

直近では、AIを活用したマネジメント支援の強化を考えています。受注までのリスク分析や担当者へのフィードバックをAIが担えるようになれば、「PathLight」は単なる可視化ツールを超えて、営業成果に直結するシステムになります。

 

中長期では、国内の大企業の変革に貢献したいと考えています。現状維持という選択肢に陥りがちな大企業の文化を変えることで、その周辺のエンタープライズ企業の事業成長、ひいては日本の産業競争力の回復につながると信じています。

 

壮大な計画よりも、まず一歩踏み出す行動力

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

最初から壮大な計画を描く必要はありません。何年もかけて計画を練ることに時間を使うより、一歩を踏み出すことの方が圧倒的に価値があります。

 

私自身の経験から言えば、起業のきっかけは「計画」ではなく「構造への気づき」でした。日々の業務の中で何度も同じ壁にぶつかるとしたら、それは個人の問題ではなく構造の問題です。「なぜこの壁は何度も現れるのか」と問い続けることが、事業の種を見つける最短ルートだと思います。

 

アイデアの検証も、全リソースを投じる前に顧客候補にぶつけてみることから始められます。ニーズを確認してから事業化する、その順番を間違えないことが重要です。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ: 原 崇嗣

新卒で株式会社ワークスアプリケーションズに入社し、大企業向けERP営業において1年間で数億円の売上を5期連続達成し、マネジメント面から営業組織拡大に貢献。株式会社ビットキーに創業期から参画し、営業統括として事業拡大を牽引。その後、株式会社パスライトを創業し、エンタープライズセールス向けアカウントプラン・組織攻略に特化した研修・コンサルと、それらのノウハウを実装したパワーチャートSaaS「PathLight」を提供している。

 

企業情報

法人名

株式会社パスライト

HP

https://pathlight.co.jp/

設立

2023年5月

事業内容

  • パワーチャートSaaS「PathLight」
  • 組織攻略/アカウントプランニング のハンズオン支援

 

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