【#621】複雑な症例に30秒でエビデンスを届ける。医師の情報収集を劇的に効率化する臨床支援AI|CEO 安藤 孝太(ニヒンメディア株式会社)

ニヒンメディア株式会社 CEO 安藤 孝太
ニヒンメディア株式会社は、医師向けの臨床支援AI「MedGen Japan(メドジェン ジャパン)」を開発・提供している企業です。膨大な医学文献の中から信頼性の高いエビデンスを瞬時に検索し、医師の臨床判断を支援することで、より質の高い医療の実現を目指しています。今回はCEO の安藤 孝太氏に、事業内容や起業の経緯、今後の展望などを詳しくお聞きしました。
医師の臨床判断を支える、エビデンスベースのAI
事業の内容をお聞かせください
当社は、医師向けの臨床支援AIを開発しています。医師が外来や病棟で診察している際、患者さんの治療をどうすればいいか分からない時に使うツールです。
これまで医師が医学的なエビデンスを探そうとすると、英語の医学文献を論文ポータルなどで検索しなければならず、非常に大変でした。何十個も出てくる論文を一つずつ確認し、症例に合っているか、信頼できるジャーナルか、引用数は十分かなどを判断する必要があり、1時間以上かかることも珍しくありません。多忙な医師にとって、この作業を毎回行うことは現実的に難しい状況でした。
そこで私たちは、AIを活用してこのプロセスを効率化しています。ベテランの医師がどのように文献を選別するかを学習したAIが、関連度や信頼度をスクリーニングし、外来の合間などわずか30秒から1分ほどで必要な情報を見つけられるようサポートしています。これにより、1時間以上かかっていたリサーチを大幅に短縮することが可能になります。
最終的な判断は医師の方が行い、回答そのものよりも、ソースとその選別理由の透明性に価値があると考えており、全ての論文へのリンク、研究手法、引用数などもその場で判断できるようUXを工夫しています。医師が主体的に決められる仕組みが重要だと考えています。
導入されている医師の方からは、やはりリサーチの圧倒的な速さを評価いただいています。また、ChatGPTなどでは信頼性に欠ける部分がありますが、我々のツールは医師の選別方法を学習しているので、クオリティの面でも信頼して使っていただけます。
さらに、情報収集の頻度が上がったという声も多いです。今までは「帰ってから2時間勉強しよう」という時しかできませんでしたが、今は病棟を回っている合間にサッと調べることができます。医学論文は1分間に2本ほど出ていると言われており、とても追いきれるものではないのですが、情報のキャッチアップ頻度が格段に上がったと評価いただいています。
もう一つの事業として、製薬会社向けの営業・マーケティング支援も行っています。元々、私と共同創業者は製薬専門のコンサルティング会社で働いており、新薬の情報を医師にどう届けるかという課題に向き合ってきました。
新薬が発売されると、その有効性や適応患者に関するエビデンスを正しく伝えることが重要ですが、現状では、新薬に関する情報はメールマガジンなどで一方的に大量配信されることが多く、忙しい医師にとっては目を通す時間がなく、十分に活用されていないという課題があります。
そこで私たちは、医師の臨床現場での情報ニーズを最も把握している企業の一つとして、医師主導で「必要な医師に」「必要なタイミングで」「必要な情報が」届けられる仕組みづくりを製薬会社と協業して構築しています。
このように、医師向けサービスと製薬会社向け支援が有機的につながっている点が、当社の強みにもなっています。

事業を始めた経緯をお伺いできますか?
事業を始めたきっかけは、コンサルタントとして働いていたときに感じた課題です。製薬業界の支援を行う中で、医療情報がうまく現場に届いていない現状を目の当たりにしました。しかし、コンサルという立場では提案はできても、根本的な仕組みまでは変えられないと感じていました。
本当に課題を解決するには、医師が日常的に使うプラットフォームそのものをつくる必要があると考えました。医師が普段使うツールの中に、正確で信頼できる情報が自然に届く仕組みをつくることができれば、医療情報の流通を根本から改善できるはずだと思ったのです。
また個人的にも、「提案する側」にとどまるのではなく、自ら組織をつくり、プロダクトを開発し、売上を生み出す挑戦がしたいという思いがありました。お客様と直接向き合い、成果を出す面白さを知ったことも大きな動機です。またこの医療業界で、自分たちの手で変化を起こしたいと強く思うようになりました。
もともと学生時代から起業を目指していたわけではありませんが、コンサルとして働く中で業界の課題と可能性を深く理解し、「自分たちなら変えられる」という確信を持てたことが、起業を決断した理由です。

医師一人ひとりの顔を見て、実用性を追求する
仕事におけるこだわりを教えてください。
私が仕事で大切にしているのは、「実際にどれだけ医師に使っていただけているか」という点です。高度なAIモデルをつくることよりも、現場で本当に役立つかどうかを重視しています。
医師は非常に多忙です。どれだけ精度が高くても、使いにくければ選ばれません。そのため、スピードやアクセスのしやすさ、読みやすさといった細かなUXに徹底的にこだわっています。医師がどんな場面で、どんな情報を求めているのか、どうすれば最短で答えにたどり着けるのかを常に考えています。そうした現場目線の積み重ねこそが、私たちの強みだと考えています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
起業当初は「どうやってプロダクトを作るか」が最大の壁でした。それをクリアすると、次は「どう100人、1000人に届けるか」という壁が現れます。そして今度は、より多くの医師に使ってもらうためのマーケティングやセールスが大きなテーマになっています。解決するたびに、次の課題が高度化していくのです。
ですが、壁があるということは、まだ成長の余地があるということだと思っています。その前向きな捉え方が、継続的に挑戦を続ける原動力になっています。

医療への思いと、ビジネスへの探究心
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
医療を良くしたいという思いはもちろんベースにあります。医師の方々がより良い医療を提供できる環境を作ること、それによって患者さんの健康や命を守ることに貢献できるというのは、何にも代えがたいやりがいです。
同時に、ビジネスとして大きくしていくことへの探究心も大きいです。100億円のビジネスを作っている先人たちが見ている景色を、自分も見てみたい。そこに対してオールインして挑戦している感覚があります。
医療という社会的に重要な分野で、テクノロジーを使って課題を解決し、それを持続可能なビジネスとして成長させる。この両立こそがスタートアップの醍醐味だと感じています。社会的な意義とビジネスの成長は矛盾するものではなく、本当に価値のあるものをつくれば、結果として事業も伸びていくと信じています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
まず、臨床支援AIを全ての医師が当たり前に使うものにしたいです。5年後には使っていない先生はいないという状態を目指しています。現在は一部の医師にご利用いただいている段階ですが、これを医療現場の標準にしていくことが目標です。そのために、機能の改善やユーザー体験の向上、そして認知拡大に取り組んでいきます。
二つ目はアジア展開です。医療情報へのアクセスの難しさは、日本だけでなくアジア全体に共通する課題です。英語の医学文献を調べるハードルは多くの国で高く、私たちのサービスはその壁を下げることができます。アジア全体の医療の質向上に貢献していきたいと考えています。
さらに将来的には、情報収集の基盤を活かして、保険制度や電子カルテなども含めた医療全体の仕組みをより良くしていきたいと考えています。医療情報の流通は、医療システム全体の一部です。私たちのツールから得られる知見やデータを活用することで、より広い領域での改善にもつなげていきたいと思っています。

考えすぎず、まず始める
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
起業を考えているなら、まずは一歩踏み出してみることをおすすめします。準備や勉強よりも、実際にやってみた後の学びの方が遥かに大きいです。
私自身、コンサルでの経験は確かに役立ちましたが、起業してから学んだことの方が圧倒的に多いです。顧客との向き合い方、資金繰り、採用、プロダクト開発、マーケティング。全てが実践の中での学びです。本で読んだ知識と、実際に自分の会社で経験することは、全く違います。
もちろん、リスクはあります。でも、そのリスクを過度に恐れて動けなくなるよりは、小さく始めてみることをお勧めします。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:安藤 孝太 氏
東京大学法学部卒業。外資系コンサルティング企業ZS Associatesにて、世界最大級の製薬企業をはじめとして、5年ほどで20社以上のヘルスケア企業をサポート。データ分析を活用した経営判断や、AIによる大規模なデジタルトランスフォーメーションを支援。2023年にニヒンメディア株式会社を創業。
企業情報
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法人名 |
ニヒンメディア株式会社 |
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HP |
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設立 |
2023年6月21日 |
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事業内容 |
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