
SpAce株式会社 代表 三村 迅雅
「香りで人の心を動かす」を理念に掲げ、オーダーメイド香水の製作や空間の香り演出を手がけるSpAceは、香りというアートを通じて人々の記憶と感情に寄り添う事業を展開しています。今回は代表の三村迅雅氏に、香りへの情熱、事業にかける想い、そして今後の展望についてお話を伺いました。
香りはアート。一人ひとりの物語を形にする
事業の内容をお聞かせください
当社が手がけているのは「フレグランス事業」で、香りの専門家として活動しています。個人のお客様向けには、オーダーメイドの香水やお家の香りを1から作るサービスを提供しています。一人ひとりの個性や好み、大切にしている価値観をヒアリングしながら、その方だけの特別な香りを創り上げています。
法人のお客様に対しては、オフィスや店舗、劇場、ライブ会場などの空間の香り演出を行っています。空間に適した香りを提案することで、その場所に訪れる人々の体験をより豊かなものにすることを目指しています。また、インフルエンサーの方やアパレル会社様向けのOEM事業として、ブランドオリジナルの香水やフレグランス製品の開発・納品も手がけています。
当社の製品は、広告を出していないため、基本的にはご紹介のみで広がっています。1本1本を1から作るオーダーメイドという性質上、1ヶ月にこなせる数はせいぜい30〜50人ほどです。広告を出しても対応しきれないという事情もありますが、何より1人ひとりに直接お会いして、どういう思いで香りを作っているのかを説明した上で提供したいというこだわりがあります。香りは単なる商品ではなく、その人の人生や物語と結びついたアート作品だと考えています。
ブランド名「SPACE」に込めた理念は「香りで人の心を動かす」です。香りは記憶や感情との結びつきが非常に強く、例えば実家の畳の香りで懐かしさを感じたり、街中で誰かの香水の香りで昔の恋人を思い出したりすることがあります。これは脳への反射的な反応によるものです。私はアートが好きなのですが、香りはまさにアートそのものだと感じており、その信念を軸に事業を展開しています。
特に印象的だったのは、事業を始めて半年くらいの時のエピソードです。あるお客様が私の作った香りを嗅いで涙を流してくれたんです。その方が「これ(香り)は私が死んでも残りますね」とおっしゃった言葉が、すごく心に刺さりました。香りにはお金に代えがたい価値があり、生きた証として残るものなんだと実感した瞬間でした。
尾田栄一郎先生の言葉を借りれば、「人が死ぬのは忘れられた時」ですが、香りが残っていれば忘れられない。その人の存在が香りとともに記憶され続ける。その価値の大きさに気づいてから、この仕事に対する覚悟が一層深まりました。香りを通じて人の心を動かし、人生に寄り添える存在でありたいと思っています。

事業を始めた経緯をお伺いできますか?
物心ついた時から香りへのこだわりが強くありましたが、当時は自分でもそれを特別なこととは思っていませんでした。ある時、友人から「本当に香りにこだわってるよね」と言われて初めて自覚しました。振り返ってみると、確かに日常生活の中で香りに対して人一倍敏感だったのだと思います。
3年半ほど前にお線香を自作し始めたのが、本格的に香りと向き合う最初のきっかけでした。香りと記憶、感情の結びつきについて勉強していく中で、自分が中学生の頃から憧れていた「アーティスト」に、香りの分野でならなれるんじゃないかと思いました。音楽や絵画のように、香りも人の心を動かし、記憶に残る作品を生み出せる。その可能性に気づいた時、これが自分の進むべき道だと確信しました。
一人ひとりと向き合い、本質的な価値を届ける
仕事におけるこだわりを教えてください。
最も大切にしているのは、「香りは想いを届ける手段」であるという信念のもと、一人ひとりのお客様と直接向き合い、その方の想いや背景を深く理解した上で香りを創り上げることです。効率やスピードを優先して大量生産することもできますが、それでは香りが持つ本質的な価値を届けることはできません。
オーダーメイドの香水を作る際には、必ずお客様と直接お会いし、どのような想いでその香りを求めているのか、どんな記憶や感情と結びつけたいのかを丁寧にヒアリングします。そのプロセスを大切にすることで、単なる商品ではなく、その方の人生や志、実現したい未来に寄り添う香りをかたちにしています。
たとえば、香水はトップノート、ミドルノート、ベースノートと、時間の経過とともに香りが移ろいながらも、それぞれが影響し合ってひとつの世界観を構成します。その特性を活かし、過去に暗い経験を持ちながらも前向きに歩もうとされている方には、第一印象では明るく軽やかさを感じさせつつ、奥にほのかな深みや陰影を忍ばせるなど、各要素に役割を持たせた調合を意識しています。
また、広告を出さずにご紹介のみで事業を広げているのも、このこだわりの表れです。一度に対応できる人数には限りがありますが、その分一人ひとりに全力で向き合うことができます。香りは記憶や感情と深く結びつくものだからこそ、作り手の想いや情熱が伝わることが重要だと考えています。

起業から今までの最大の壁を教えてください
日本において香りの市場規模があまり大きくないなかで、香りに付加価値を付けていく難しさを感じています。目に見える製品や数字で表せる成果とは異なり、香りの価値を言葉で伝えることは簡単ではありません。理解してくださる方には深く響きますが、そうでない方には伝わりにくい現状です。その壁を乗り越えるために、SNSの強化や香水の本場フランスでの実績構築に向けた計画を進めています。
香りと共に生きた証を残し続ける
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
一番のモチベーションは、直接対応したお客様に香りをお渡しした瞬間、その香りを味わいながら浮かべる表情を見ることです。そして、その感動の瞬間を自分自身が生み出せているという達成感に、大きなやりがいを感じています。
だからこそ、今後も個人のお客様に向けたオーダーメイドの制作を続けていきたいと考えています。香りを通じて人の心を動かし、その方の人生にそっと寄り添える存在でありたいと考えています。

今後やりたいことや展望をお聞かせください
6月頃、香水の本場であるフランスで、日本の文化、例えば浮世絵などとコラボレーションしたアート作品として香りを提案し、実績を作りたいと考えています。日本の美意識や文化的背景を香りで表現し、国際的な舞台で評価されることを目標としています。さらに私が目指しているのは、横の軸として「普及」を、縦の軸として「富裕層向けのオートクチュール」を極めていくことです。
そのための新しい試みとして「香水の自動販売機」を大阪のクラブなどに設置する準備を進めています。1プッシュ150円で気軽に試していただけるようにし、商品としては3000〜4000円程度の価格帯を想定しています。これにより、誰でも気軽に「SPACE」の香りに触れられる機会を作りたいと考えています。
また、自動販売機のような気軽に香りに触れられる入口を作る一方で、一人ひとりに寄り添った最高級のオーダーメイドサービスも追求していきます。この二つの軸を両立させることで、より多くの人に香りの価値を届けながら、本質的な価値を求める方には最高の体験を提供していきたいと思っています。
最終的には、香りを通じて人々の人生に寄り添い、記憶と感情に深く刻まれる体験を提供し続けることで、「香りと言えばSPACE」と言われる存在になることが目標です。香りの持つ無限の可能性を追求し、アートとしての香りを極めていきたいと考えています。
諦めなければ道は開ける
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
一言で言えば「諦めるな」に尽きます。私も何度も自分に負けそうになりましたし、今でもそういう瞬間はあります。でも、諦めなければ必ず誰かが手を差し伸べてくれたり、新しい道が見えたりします。それが人生の厚みになると思っています。
起業は決して楽な道ではありません。思うように事業が進まなかったり、人が離れていったりすることもあります。そんな時こそ、その状況を「成長するための気づき」と捉えることが大切です。辛い経験や失敗も、後から振り返れば必ず意味があったと思える時が来ます。

本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:三村迅雅 氏
物心ついた時から香りへの強いこだわりを持ち、3年半前にお線香の自作をきっかけに香りの世界へ本格的に足を踏み入れる。「香りで人の心を動かす」を理念に掲げ、SpAceを設立。オーダーメイド香水の製作や空間の香り演出を通じて、香りというアートで人々の記憶と感情に寄り添う事業を展開している。
企業情報
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法人名 |
SpAce |
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HP |
※準備中 |
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設立 |
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事業内容 |
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