【#630】動物病院の調剤業務をサポート。”ペット専門薬局”が変える、ペット医療の新常識|代表取締役 石原 玄基(株式会社12薬局)

株式会社12薬局 代表取締役 石原 玄基
株式会社12薬局(わんにゃんやっきょく)は、動物病院向けの調剤薬局サービスを運営する企業です。動物病院からオンラインにて処方箋を受け取り、薬を調剤して飼い主の自宅に配送します。医薬品在庫リスクの解消や調剤業務のサポートなど、動物病院が抱える課題を解決しながら、ペットと飼い主が安心して治療に向き合える環境づくりに貢献しています。今回は代表取締役の石原 玄基氏に、事業内容や今後の展望なども含めて詳しくお聞きしました。
ペットと飼い主の負担を大幅に減らす、動物病院向けの調剤薬局サービス
事業の内容をお聞かせください
動物病院向けの調剤薬局サービスを運営しています。
現在、多くの動物病院では診察後に院内で薬を調剤し、飼い主に渡すのが一般的です。しかし薬の粉砕や分割などの調剤に時間を要するため、診察後の待ち時間が30分〜1時間かかることも珍しくありません。
体調の悪いペットを抱えながら、他のペットと同室で待ち続けるのは、飼い主とペットにとって大きな負担です。スタッフにとっても、調剤業務に追われることで本来向き合うべきペットや飼い主との時間が削られてしまっています。
そこで私たちが調剤を代わりに担います。病院からオンラインで処方箋を送ってもらい、薬剤師が薬を調剤し飼い主のご自宅まで配送しています。
関東では午後5時までの注文であれば当日出荷し、翌日にお手元に届きます。オペレーションの効率化と物流パートナーとの連携によって実現しているスピードは、私たちの強みの一つです。
病院の規模ごとに異なる悩みに対し、最適なソリューションを提供できるのもこのサービスの魅力です。
小規模な病院では、不良在庫のリスクや人材採用の難しさが大きな悩みです。在庫リスクを避けるために代替薬で治療せざるを得なかったり、スタッフが足りずに細かい調剤加工ができなかったりするケースがあります。私たちが介在することで在庫リスクがなくなり、治療の選択肢を広げられます。
一方で大規模な病院では、スタッフが多い分、在庫管理のコストや残業時間のコントロールが難しくなります。また、抗がん剤など危険性の高い薬の調剤を外注したいといったニーズもあります。
さらに、3月や4月などの人員交代の時期に、調剤品質が下がることへの懸念もあります。治療や診断に直接影響するだけに、品質を一定に保つことが重要です。こうした課題に対して、加工が難しい薬を中心にアウトソースしていただくことで、高い品質を安定して提供できる体制を整えられます。
現在約340件の病院に導入いただいており、学会や展示会への出展、獣医師会との連携、そして紹介によって着実に広がっています。
今後は処方箋対応にとどまらず、病院経営やスタッフの業務負荷軽減に繋がるシステムのアップデートといったDX化のサポートも進めていく予定です。

事業を始めた経緯をお伺いできますか?
元々は、ペット保険のグループ会社で新規事業を担当していました。検査事業の立ち上げや動物病院約50院の事業承継プロジェクトに携わる中で、現場スタッフの声を直接聞く機会が多くありました。
そこで見えてきたのが、「調剤が面倒」「会計をやりたくない」という悩みです。会計はキャッシュレス決済の普及によって解決が進んでいましたが、調剤を解決する方法は存在していませんでした。このニーズを汲み取れる事業を作れないかと考えたことが、起業のきっかけです。
ペットと飼い主が幸せになるサービスを提供し続ける
仕事におけるこだわりを教えてください。
ペットと飼い主の双方にとってプラスになるものを作り続けることです。
ペットの市場は、飼い主がペットのすべてを理解した上での選択ができません。飼い主が良いものを与えたいと思っても、ペットが喋れない以上、本当に合っているかどうかは確かめようがないからです。だからこそ、ペットにも飼い主にも喜ばれるサービスを作ることを大切にしています。
薬の新しい調剤手法の開発についても、同じ姿勢で取り組んでいます。ペットは子どもよりも投薬が難しいため、治療から脱落するケースが多いです。飲ませやすい薬や投薬回数を抑えた薬があれば、ペットの負担が減り、治療も継続できて、飼い主も安心できます。そういったソリューションを提供し続けることが、私がやり続けるべきことだと考えています。
飼い主が迷わず薬を使えるような、分かりやすい情報提供にもこだわりを持っています。
薬の袋には、ペットの名前と用法・用量を必ず記載しています。複数のペットを飼っている場合には、あげ間違いのリスクがありますし、朝と夜で内容が違う場合に飲ませたかどうかわからなくなることもあります。
また、薬の説明書にも力を入れています。動物病院では忙しい中で調剤しているため、薬の詳しい説明まで伝えきれないことがあります。獣医師と飼い主の間には知識の差があり、口頭で説明を受けても帰宅後に忘れてしまうこともあります。だからこそ、きちんと紙に残してお互いが納得できる形で情報提供することを大切にしています。

起業から今までの最大の壁を教えてください
新規事業であるからこそ、サービスの理解度を上げることが最大の壁なのだと思います。
壁を乗り越えるために意識しているのは、サービス内容をしっかり説明すること、相手に応じた情報提供をすることです。導入を決めるのは院長などの経営者ですが、実際に使うのは看護師や獣医師といった現場のスタッフです。見えている景色が違うからこそ、コスト面なのか業務効率面なのか、相手が何を求めているかに合わせてメリット・デメリットを伝えています。
診療に集中できる環境を作る
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
「ペットのためになることをしたい」という思いです。
動物病院の先生をはじめ、看護師やスタッフの皆さんも、ペットにより良い診療を届けたいといった思いで仕事を選んでいます。ですが実際には、会計や調剤といった本来の診療以外の業務が積み重なり、やりたいことに集中できない環境になっていることが多いです。
そういった業務を取り除いて、診療に専念できる環境を作ることが私たちが提供したいものです。それが実現できていると感じられることが、一番のモチベーションになっています。

今後やりたいことや展望をお聞かせください
私たちのサービスを国内の動物医療におけるスタンダードにすることです。
アメリカでは約8割の動物病院が、すでにオンライン薬局を利用しており、日本でも将来的に同じような利用率を実現したいと考えています。そのために、飼い主と病院側、双方の声をしっかり聞きながら、サービスを着実に広げていきたいと考えております。
加えて、ペットに薬を飲ませやすくする調剤手法の開発も進めていきます。新しい調剤手法の開発は私自身が手がけており、動物のサイズや薬の吸収特性に合わせることはもちろん、「ペットがどんな味が好きか」といった視点も大切にしています。現在は、動物ごとの好みに合わせた味付きシロップの開発を進めています。
予測不可能なことを楽しむ
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
起業は、思い通りにいかないことの連続です。ただ、その壁を解決していくこと自体を楽しめるかどうかが、自分で事業をやる醍醐味だと思っています。
地道な作業も多く、不測の事態に直面することも多々ありますが、そういうものだと受け止めながら、むしろその予測不可能なところを楽しむくらいの気持ちで取り組んでみてください。
採用を強化されているそうですね。どのような人材が理想でしょうか?
現在、事業拡大の真っ只中にあります。調剤を担う薬剤師、動物病院の経営をサポートする営業マンはもちろん、特に力を入れているのが病院と提携した薬局の新規展開で、各地への出店を積極的に進めています。
この事業開発を担う人材を募集しています。仕事の内容は、病院のニーズをしっかり汲み取りながら、店舗の設計・要件定義・人材採用まで、一つの事業を組み上げていくものです。大変な部分もありますが、やりがいも大きいポジションです。
求めるスキルや経験は特に問いません。コミュニケーションを取ることが好きな方であれば、ぜひご応募ください。
▼採用情報はこちら
https://12pharmacy.co.jp/recruitment/
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:石原 玄基氏
アニコムホールディングス㈱ 経営企画部 部長
アニコム先進医療研究所株式会社 取締役
アニコムキャピタル株式会社 取締役
㈱日本医療機器開発機構 事業開発Mgr.
㈱ブーリアン 取締役CEO
研究所の設立、ペット向け検査事業の事業化と研究開発をリード(論文18報、特許2件)。大学発シーズの事業化に関する行政PJTにて事業プロモーター、メンターを担当。NEDOプログラムの最優秀賞を獲得(2022 TCP)。動物病院のM&Aや運営経験から、健康と救命に専念したいが、雑務に追われる獣医師をサポートしたいと考え、業務負担の高い調剤業務に対し、薬局サービスを展開。
企業情報
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法人名 |
株式会社12薬局 |
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HP |
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設立 |
2023年5月 |
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事業内容 |
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