【#642】太陽光発電の自家消費率を2倍に。AIを活用した蓄電池制御サービスで、電気代削減と脱炭素社会の実現に貢献|代表取締役 西尾 仁志(グリッドシェアジャパン株式会社)

グリッドシェアジャパン株式会社 代表取締役 西尾 仁志
グリッドシェアジャパン株式会社は、AI技術を活用した蓄電池の最適制御サービスを提供する企業です。太陽光発電と蓄電池をAIで自動制御し、自家消費率を30%から70%超へ引き上げることで、電気代削減と脱炭素社会の実現に貢献しています。代表取締役の西尾 仁志氏に、事業内容や今後の展望なども含めて詳しくお聞きしました。
太陽光発電を無駄なく使う「AI×蓄電池制御サービス」
事業の内容をお聞かせください
戸建て住宅で太陽光発電をお持ちの方が蓄電池を導入する際に、AIが最適な充放電を行う「グリッドシェア」というサービスを提供しています。
太陽光発電を設置するとご自宅が電気を生み出す発電所になりますが、発電した電気を余すところなく使うには、電気を貯めるための蓄電池が必要になります。
また、太陽光から出た電気を蓄電池に貯めて夜に使えますが、天気の影響や平日と週末での生活習慣の違いにより、電気の使い方が異なります。
そこで弊社のサービスのAIが、お客様の電気の使い方や太陽光の発電量を自動で予測し、電気料金メニューなども参照し、最適に充放電を制御します。
太陽光だけの場合、発電した電気の約30%しか家庭で使えません。蓄電池がないと電気を貯められず、昼間しか使えないためです。
しかし、蓄電池とAI制御を使うことで、自家消費率を70%以上まで高めることができ、電気の購入を3割程度に抑えられるため、大きなコスト削減につながります。
現在、様々な蓄電池に接続しており、日本全国で約4万台と連携しています。蓄電池の場合、太陽光の発電量やお客様の電気の流れを全て蓄電池側で取得し、クラウド接続でAIにデータが上がってきます。そのデータに応じてAIが計算し、最適な指示を出す仕組みです。
導入された方々からは「AIに全てお任せ」で管理の煩わしさから解放されたという声を多くいただきます。
AIがない場合、蓄電池の運転モードや手動で充電や放電を設定する必要があります。例えば、天気予報で翌日が雨だとわかれば、太陽光であまり発電できないため、夜間電力を多めに貯めて昼間の放電に使う設定にする必要があります。
逆に翌日が晴れなら、太陽光で発電できるため、昼間の太陽光を貯める設定に変更しなければなりません。
当社のAI「グリッドシェア」を導入することで、こうした手間が一切なくなります。AIが自動で24時間365日制御してくれるため、完全にお任せできるのです。このように、利用者の方々からは、AIが最適な形にしてくれる便利さを評価いただいています。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
学生時代、システム科学を専攻し、数理モデルを用いて現象をシステム化・最適制御する、AI研究を行っていました。研究職への道も考えましたが、学んだ技術を社会実装する経営者になりたいという想いがあったのです。
そのため、ビジネスの現場を知るために大手商社へ入社し、新規ビジネス開発や投資業務に関わり、MBAで経営を体系的に学びました。
転機となったのは2017年にイギリスのスタートアップ企業と出会ったことです。彼らが、蓄電池のAI制御技術をイギリスで展開していることを知りました。その頃日本でも当時販売に携わっていた蓄電池「Smart Star」シリーズはある程度の売上が出始めていた時期でした。
一方で、太陽光発電の住宅用の固定価格買取制度が2009年頃に始まり、10年間の買取期間が終了する人が2018〜2019年に60〜70万人出ることが予想されていました。そういった動きから、自家消費を高めるために蓄電池とAI制御が必要になると考えていました。
当時、蓄電池は販売していましたが、AI制御は導入していませんでした。また、製品にはライフサイクルがあり、成熟期に入っていくため、次のサービスとしてサブスクリプション型のビジネスモデルへ転換する必要性も感じていました。
そこで社内で、イギリスのスタートアップ企業のAI制御技術を、「Smart Star」シリーズへ導入するプロジェクトを立ち上げました。この事業が発展し、現在のグリッドシェアジャパン株式会社となっています。

社会貢献に繋がるビジネスに取り組む
仕事におけるこだわりを教えてください。
単にお金を稼ぐだけでなく、社会貢献ができる仕事を重視しています。
太陽光発電と蓄電池、AI制御、エコキュートを組み合わせることで、太陽光から作られた電気を家庭でより多く使っていただけます。化石燃料で作った電気ではなく自然エネルギーが使われることで、脱炭素社会の実現に繋がります。
日本政府も2030年頃に脱炭素電源をメイン電源にする目標を掲げており、国への貢献にも繋がると考えています。ビジネスとして収益を出すことは当然ですが、同時に社会を良くしていく社会的なミッションを果たせることを常に意識しています。
また組織管理でも同様に社会に貢献することを最も重視しています。
会社全体でビジョンを共有して、様々な施策を全員で検討し、最終的には当方が経営判断をして、各担当者や業務委託先などの関係者の皆様に業務をアサインして、進めていくトップダウン型のマネジメントスタイルをとっています。
社員や関係者の皆様は、担当いただいている業務をしっかり遂行していただいており、組織としていいチームワークができていると思っています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
ステークホルダーとの合意形成と、次なる成長への体制構築が最大の壁でした。
グリッドシェアサービスを単独の事業から、より公益性の高い社会インフラへと進化させるためには、強力なパートナーシップが必要です。
直近で資本ラウンドをおこなって、オムロンソーシアルソリューションズ株式会社、九州電力株式会社、中部電力ミライズ株式会社、東急不動産株式会社、Lunar Energy, Inc. の5社が2025年11月28日に新たな株主として参画いただきました。
実現に際して、各社との調整やデューデリジェンスを受ける立場として進めることは大変でしたが、2025年11月に資本ラウンドを実施し、業界を代表する各社に新たな株主として参画いただけました。
これにより、既存の電力会社のシステムと調和しながら日本の脱炭素社会に向けてサービスを提供できる体制が整いました。まだ道半ばですが、本体制を作り上げられたことは大きな挑戦であり、同時に次のステージへのスタートラインだと捉えています。
加えて、サービス開始当初は、販売店の方々にAIの価値を理解していただくことや、サービス料金の設定方法で苦労しました。
最初はオプション形式にしたため、製品説明とサービス説明の2段階になり販売現場の負担が大きく、その後製品代に組み込む形に変更するなど試行錯誤を重ねました。

日本の脱炭素社会の実現に挑む
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
学生時代の好奇心が、今の経営につながっていると実感できていることです。
学生の頃に研究していた、AIやシステムの知見を活かしたいと思い商社に入りました。当初は研究を活かす場面はありませんでしたが、投資やM&A、マーケティングといった経営のノウハウを学び、今の土台を築きました。
そして現在、学生時代の技術的な知見を生かしながら事業を展開しています。こうして自分で立ち上げた会社でサービスを提供し、経営できていることに、大きなやりがいを感じます。
さらに、事業を通じた社会貢献も大きなモチベーションの一つです。かつて数式やモデルの中で追い求めていた最適解が、今はリアルな電力データを用いたAI制御サービスとして可視化され、社会の役に立っています。
今回参画いただいた株主の皆様と共に、日本の脱炭素社会の実現に挑めることが、何よりの原動力です。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
新たな株主の皆様とのシナジーをしっかりと作っていくことが、第一の目標です。特に電力会社や大手不動産会社や機器メーカーなど、電力事業を展開されている企業は大きな顧客基盤をお持ちです。
その顧客に対して電力メニューとセットになった太陽光発電、蓄電池、エコキュートをAIで制御していくサービスモデルを構築し、より普及させていきたいと考えています。
そのために、蓄電池のラインナップを増やすことが重要であり、つながる分散型電源機器ライナップとして近日中にエコキュートへの制御サービスも開始する予定です。蓄電池、エコキュート、そして将来的にはEVと、グリッドシェアにつながる分散型電源機器を拡大していきます。
分散型電源が増えていくことで、統合制御したデマンドレスポンスなどのVPPサービスや市場取引を本格化させ、日本の脱炭素社会に貢献していきたいと思っています。
日本の家庭用太陽光発電や蓄電池の普及率は、世界トップレベルです。将来的には、日本市場で培った高度なエネルギーマネジメントモデルを海外へと展開し、世界の脱炭素化をリードする存在になることを目指しています。
実際に、イギリスやアメリカのパートナーと話を進めており、将来的なアメリカやアジアへの展開を実現させていきたいと思っています。

今までの経験を信じ一歩踏み出してみる
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
自分がやりたいと思うことを信じ、挑戦してください。
私はもともと研究職を目指していた理系出身者ですが、商社を経て現在は経営に携わっています。人生には様々な選択肢があり、一見遠回りに見える道も、後になって意味を持つものです。
私自身、学生時代の研究が、25年を経た今、事業として活かされていますし、社会に出てからの経験が全て今の事業につながっています。
自分のバックグラウンドや強みが、社会のどんな課題とリンクするか。その接点が見つかった時、ビジネスは大きく動きます。ぜひ、ご自身の経験を信じて一歩を踏み出してください。
貴社のサービスに興味がある企業へのメッセージをお願いします
グリッドシェアサービスをお使いいただくことで、太陽光をお持ちのお客様に蓄電池を導入し、AIで制御することが可能になります。脱炭素社会の実現にも繋がるサービスです。
特に戸建てのお客様をお持ちの電力会社様やハウスメーカー様には、非常に良いサービスになると考えております。ご興味やご要望がございましたら、いつでもお伺いいたしますので、お気軽にお声がけください。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:西尾 仁志 氏
1997 千葉大学工学部卒業
1999 東京工業大学大学院総合理工学研究科修了
1999~ 伊藤忠商事株式会社
2011 ミシガン大学経営大学院(MBA)修了
2023~2025 TRENDE株式会社代表取締役CEO
2025~ グリッドシェアジャパン株式会社代表取締役社社長
企業情報
|
法人名 |
グリッドシェアジャパン株式会社 |
|
HP |
|
|
設立 |
2018年5月16日 |
|
事業内容 |
AI技術による蓄電システム最適制御サービスの提供 |
関連記事
RANKING 注目記事ランキング
- 【#631】最終面接の涙から生まれたサービスと、生まれた時からのクラブへの愛。ABABAが描くスポンサーシップの新常識|代表取締役社長 久保 駿貴(株式会社ABABA)スポンサーインタビューインタビューその他インタビュー

- 【#544】保護犬・保護猫の命をつなぐ。福祉と仕組みづくりで、寄付に頼らず築く持続可能な社会|CEO / 代表取締役 伊東 大輝(株式会社ANELLA Group)起業家インタビューインタビュー

- 【#634】現役大学生起業家が挑むAIエージェントですべての人が熱狂できる世界へ|代表取締役CTO 橋本 大河(株式会社ZIKUU)起業家インタビューインタビュー

- 【#363】お金いらずで寄付ができるECサービス、世界を救う第一歩に|代表取締役 藤本 巴(株式会社ギバース)起業家インタビューインタビュー

- 【#186】日本の漫画やアニメを世界に広め、「生きる希望」を与えていく|代表取締役会長 保手濱 彰人(株式会社ファンダム!)起業家インタビューインタビュー
