株式会社やまやま 代表取締役 猪原有紀子
2022年8月に法人化したばかりの株式会社やまやま。3人のお子さんを育てながら、移住先で一から土地を開墾して子連れ限定観光農園を作るなど、パワフルな同代表の猪原氏にお話を伺いました。
事業の内容を教えてください。
高野山のふもとにある和歌山県かつらぎ町で、捨てられたフルーツや耕作放棄地を活用するアップサイクル事業に取り組んでいます。
現在は無添加おやつ事業の「無添加こどもグミぃ〜。」と子連れ限定の観光農園/キャンプ場「くつろぎたいのも山々」の2つの事業を展開中ですが、どちらの事業も子育てのストレスに悩むお母さんが少しでも笑顔になってくれて、結果として「子どもにとっていい社会をつくる」というゴールに向けて始めた事業です。
現在の事業を始めた経緯を教えてください。
元々は大阪で10年ほどマーケティングの会社で会社員をしながら子育てをしていたんですが、都会での子育てってとてもストレスフルでした。
当時子どもに安心して食べさせられるおやつが見つけられなくて、カラフルで甘くて天然素材を使ったおやつがあればいいのにと思っていたんです。そこで、自分で作ろうと企画していました。
その時ちょうど移住を考えていて、訪問したかつらぎ町で捨てられている柿を見たのが始まりです。
かつらぎ町って全国で串柿の生産NO.1なんですけど、オレンジのきれいな柿が捨てられているのを見て「これだ!」と思いました。
ここから始まったのが「無添加こどもグミぃ〜。」です。
移住後、グミぃ〜。の開発を大阪市立大学と進めている最中に、かつらぎ町の自然に触れる中で、子連れでも疲れない観光農園を私だったらつくれるのではないか?と思いました。
ちょうどかつらぎ町にはたくさんの耕作放棄地があったので、廃棄フルーツだけではなく、これも活用できるとなったわけです。
ただ、私は大阪、夫は広島とかつらぎ町は縁もゆかりもない土地だったので、観光農園にできそうな土地を探すところから始まりました。
私が思いを実現するために作っていたプレゼンブックなどを見たママ友はみんな応援してくれて、この800坪という広大な観光農園の土地もママ友が人づてに紹介してくれたんです。
段ボールで作ったプレゼンブックには、私が実現したい観光農園の理想像をネットなどで見つけて貼り付けた写真で埋め尽くされているのですが、ここに描いていていた内容はすべて実現することができました。
最近法人化されたそうですが、法人化のきっかけは何でしたか。
2022年の8月に法人化したばかりです。
2021年に「みんなの夢AWARD12」でグランプリを受賞したんです。
「みんなの夢AWARD」というのは、起業家や後継者、新規事業担当者等を対象としたビジネスコンテストで、グランプリは賞金以外に最大2,000万円の出資交渉権をもらえるんです。
それまでは「時期がきたら法人化しよう」くらいに考えていたのですが、出資交渉権を得ることができたので、法人化しようということになりました。
仕事におけるこだわりを教えてください。
得ることより残るものを重視しています。
あれもこれもやりたいってなるんですが、最近は何をやめて何を残すか考えながら、後世に残るものを手に取っていくようにしています。
目先の利益ではなく、自分が死んだ後に「残る」かどうかという判断でお仕事を選ぶこともあります。
オフィスに関するこだわりも教えてください。
自宅兼オフィス(https://www.akatsuchi.net/works/182i/)は観光農園の斜め下にあるんですが、ジャングルのようなところから開墾して今に至ります。
「全部がこだわり」というくらいこだわっているので、建設会社もたくさんお断りした経緯もあります。何社もの中から最終的に今の会社に決まったくらいなんです。
あえて言うなら「非日常」というのが最大のこだわりです。モルタルの壁でカーテンもないですし、毎日大きな窓から山々が見えるという絶好の環境です。
今までのお話をお聞きすると、楽しんで仕事してらっしゃるのが伝わってくるのですが、起業を決めてから今までで最大の壁があれば教えてください。
資金調達ですね。
観光農園はオープンさせるのに莫大なお金がかかるため、使えるものは無いか色々と制度を調べました。その結果、新規就農支援で借入をすることを考えたんです。
ところが、借入をするためにはまず地元の農業委員会やベテラン農家などで構成される審査会を通過しなければいけないんですね。
その書類審査で落ちてしまったんです。
委員の方からは、女性で子どもが3人いて農業経験もなく、ネットで集客するなんて本当にできるのかという意見がありましたね。
養液栽培システムという私みたいな農業未経験者でも、成功確率高く栽培できるシステムを購入して既に農業をスタートさせていたのですが、時間をお金で買うというビジネス的な感覚は農業界では皆無でした。(笑)
それでも諦めずに農林水産省に電話をして審査の要件に当てはまっていない審査結果だということを証明したり、再審査を3時間も要求したりして、「そこまで言うなら、頑張りなさい」と最後は応援してくださいました。
大変なご苦労があったんですね。こうした中で前に進み続けるモチベーションは何でしょう。
死ぬ前に後悔したくないという思いですね。
プライベートでは3兄弟からママの子で良かったと言ってもらうこと、仕事では山に登るためにやれることをすべてやることという2つの視点で毎日自分に問いかけています。
結果的に、その山に登れていなかったとしても、その途中でやれることを全部やっているのかどうかというのが日々の問いかけです。
他には、人に聞いてもらうというのも自分にプレッシャーをかけるという点で大切にしています。
例えば2027年にIPOを目標にするということを言っているんですが、
日付まで意識して、人に宣言するということがとても大切です。
考えているだけでは何も実現しませんから。人に宣言することで実現できることってたくさんあると思います。
先ほどもご紹介したように、プレゼンブックでこうやりたいという思いを頭の外に出すことで、みんなが助けてくれて実現したというのは良い例です。
人に語ることで、「やらなきゃ!」と自分に負荷をかけるんです。そうでもしなかったら、きっと今頃ベッドの中でゴロゴロ漫画とか読んでるんじゃないですかね(笑)
それでは起業をしようとしている方へのメッセージをお願いします。
やりたいことがあるなら今日始めてください。
「ゴミ箱の理論」というのがあるんですが、目の前にゴミ箱があったらすぐにポイポイ投げるのに、起業となると途端に、ゴミ箱までの距離を測ったり、投げるのが上手な人を探したりする人が多いです。
そうではなくて、入らなくてもいいからポイポイ投げることが大事なんです。投げなければ何も入りませんから。
私も入らなかったゴミは山ほどあるんですよ。人生において失敗しないなんて、これほど勿体無いことはないと思ってます。失敗は全て学ぶ体験ですから。
失敗からしか、改善なんて生まれません。その繰り返しが、起業家の仕事だと思います。
ですので、起業を目指す方には一緒にポイポイ頑張っていきましょうと言いたいです。
お子様が3人もいらっしゃってこれだけパワフルな活動をされている理由は、原動力がお子様にあったからなのだということがよくわかりました。ありがとうございました!
起業家プロフィール
同志社女子大学卒業。
マーケティングの会社員として赤字会社に出向し、通販事業部を立ち上げる。月商0円から3千万円までに育てて黒字化を実現。三男出産後に和歌山県かつらぎ町に移住し、新規就農者として認定を受ける。「子どもにとって いい社会をつくる」をテーマに地域課題のアップサイクル事業に取り組み、2022年8月株式会社やまやまを設立。
企業情報
法人名: |
株式会社やまやま |
HP: |
https://nou2c.com/ |
設立 |
2022年8月 |
事業内容 |
子連れ限定キャンプ場運営 規格外フルーツの無添加おやつの企画、販売 |
沿革 |
2019年 個人事業主として事業開始 2020年 ママのおやつストレスを解決をするため「無添加こどもグミぃ〜。」を開発 / 発売 2021年 子連れのお出かけストレスを解決するため、ユニバーサルトイレや授乳スペースが完備された「くつろぎたいのも山々」OPEN 2022年8月 株式会社やまやま設立 |
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