起業する際には、助成金や補助金を利用することで資金繰りを安定させやすくなります。助成金や補助金には様々な種類があり、知らずに損をしている場合も多いです。
ただ、助成金や補助金を利用する際の注意点を理解していないと、かえって資金繰りが厳しくなり想像してしまう恐れもあります。
今回は、起業に役立つ助成金や補助金の種類だけでなく、利用時の注意点についても解説します。起業を考えているなら、対象となる助成金や補助金があるかどうかを確認しておくことが大切です。
Contents
起業に役立つ助成金・補助金とは?
補助金・助成金とは、これから起業する人やすでに起業している人の中で追加資金が必要な人が利用できる資金調達方法のことです。補助金や助成金は、政府だけでなく非営利団体や教育機関、その他の組織から調達できます。
補助金と助成金の主な違いは「資金の目的」です。補助金は、特定のプロジェクトや研究への資金提供を目的とし、助成金は事業運営に必要な経費の補助を目的としています。
また、助成金は返済の必要がないのが一般的ですが、補助金は返済が必要な場合があります。さらに、助成金には特定の資格基準がある場合が多く、補助金はあらゆる規模の企業を対象としている場合が多いです。
起業時に助成金や補助金を利用するメリットデメリット
助成金補助金の利用は、メリットだけではありません。デメリットもあるため、利用前に必ず確認しておくことが大切です。起業時に助成金や補助金を利用するメリットデメリットは、下記表を参考にしてください。
助成金や補助金を利用するメリット |
助成金や補助金を利用するデメリット |
|
|
補助金や助成金を利用する最大のメリットとしては、返済義務がないものがあることが挙げられます。返済義務がなければ、資金の足しにできるため事業を安定させやすくなります。また、助成金や補助金を利用するためには審査に通る必要があり、審査に通れば社会的信用度を上げられる可能性が高いです。
ただ、補助金や助成金のデメリットとして、競争が激しく、条件も厳しいことが挙げられます。また、基本的には後払いとなるため、計画的に利用しなければ資金繰りに困ってしまう恐れがあるため注意が必要です。
起業で使える助成金・補助金の種類
起業で使える助成金・補助金の種類としては、下記4つが挙げられます。
- 経済産業関連の助成金・補助金
- 厚生労働省関連の助成金・補助金
- 各地方自治体関連の助成金・補助金
- 行政以外の助成金・補助金
資金調達先によって、目的が異なるため理解しておきましょう。また、条件や審査難易度も異なるため、検討している助成金や補助金について理解しておくことが大切です。
経済産業関連の助成金・補助金
経済産業関連の助成金・補助金としては、下記の4つが挙げられます。
- ものづくり補助金
- IT導入補助金
- 事業再構築補助金
- 小規模事業者持続化補助金
経済産業関連の助成金・補助金は、起業家育成、地域活性化、女性・若者支援、中小企業支援、技術開発支援などを目的としています。採択率は補助金によって異なり、低いものでは数%、高いものでは90%にもなることもあります。さらに、年度をまたいで申請した場合、年度初めの方が採択率が高くなることが多いため覚えておきましょう。
ものづくり補助金
ものづくり補助金とは、中小企業や法人の「サービス開発」「試作品開発」「設備投資」などのイノベーションを資金面で支援する補助金です。
ものづくり補助金を利用する際には、資本金または従業員数が下記表の数値以下でなければいけません。
引用:公募要領
ものづくり補助金の支給額については「ものづくり補助金公募要領」を参考にしてください。
IT導入補助金
IT導入補助金とは、生産性向上のためのIT機器の導入に対する補助金です。最大で450万円まで補助されます。
企業のDXの推進には費用がかかるため、躊躇している企業も多いです。しかし、IT導入補助金の適用範囲は広いため、ITツールの導入を検討している企業にとって、非常に魅力的なものとなります。
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、1兆円という巨額の予算と1億円という上限が特徴の補助金です。上限が1億円となっているため、他の補助金と比較しても採択される可能性が高いです。
新たな事業にも挑戦してみたいと考えている方は、積極的に利用してみることをおすすめします。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金とは、規模事業者等が継続的な経営計画のもと、販路の構築や事業性の向上を図るための取り組みに対する補助金です。小規模事業者持続化補助金を利用することで、企業は最大200万円の補助(2/3負担)を受けられます。
また、商工会議所による企画・実行の指導・支援も受けられるのもメリットです。
厚生労働省関連の助成金・補助金
厚生労働省関連の助成金・補助金は、下記の3つです。
- キャリアアップ助成金
- 雇用調整助成金
- 人材確保等支援助成金
厚生労働省関連の助成金・補助金は、仕事の高度化や技能の向上などを目的としています。最大の特徴は、応募資格を満たせば確実に採用されることです。
厚生労働省関連の助成金・補助金は「雇用」に集中しているため、起業時に人材確保を考えている場合は、事前に調べておくことをおすすめします。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金とは、企業内の有期契約社員や時給制社員、業務委託社員などの「非正規社員」の職業能力開発を奨励する補助金のことです。内容に応じて、下記6つのコースに分かれています。
- 正社員化コース
- 障害者正社員化コース
- 賃金規定等改定コース
- 賃金規定等共通化コース
- 賞与・退職金制度導入コース
- 短時間労働者労働時間延長コース」
具体的な申請手順や申請様式をダウンロードしたい方は「厚生労働省のHP」から確認してみましょう。
雇用調整助成金
雇用調整助成金とは、景気の悪化や産業構造の変化により、休業や転職、職業訓練に従事する従業員の給与や報酬の一部を助成するために活用される助成金のことです。雇用調整助成金の特例措置は、コロナ事件の影響により売上が減少した企業のために設けられていました。
しかし、極端な企業条件に耐えている企業に対しては、限定的な一過性の便宜が与えられます。対象範囲としては、2020年1月24日から2022年11月30日までに「雇用調整助成金」のコロナ休職特例を利用したベンチャー企業に限定されています。
人材確保等支援助成金
人材確保等支援助成金は、魅力的な雇用環境を創出するために労働環境を改善する企業や協同組合が対象です。魅力的な求人情報を形成することで、人材の獲得と定着を図ることを目的としています。
受給可能金額や条件はコースによって異なるため、詳しく知りたい方は「厚生労働省のHP」を確認してみましょう。
各地方自治体関連の助成金・補助金
各地方自治体関連の助成金・補助金の代表例は、下記の2つです。
- 東京都の場合:創業助成事業
- 大阪府の場合:大阪起業家グローイングアップ事業
市や町のような地方自治体は、各地方自治体を活性化するために、助成金や補助金を提供することがあります。地方自治体によって内容は大きく異なり、助成金や補助金制度に積極的な地方自治体もあります。
資金繰りを安定させるためにも、起業しようとする地域の制度について調べ、利用可能な資金援助があるかどうかを確認することが大切です。
東京都の場合:創業助成事業
創業助成事業は、東京都内で新たに貿易事業を開始する方や事業開始後5年未満の方、新規に事業を開始しようとする方を対象としています。家賃や人件費、広告宣伝費などの運営費に対して「最大300万円(補助率2/3以内)」が交付されます。
申請時期は4月と10月の年2回のため、利用を検討しているなら早めに書類を準備しておきましょう。
大阪府の場合:大阪起業家グローイングアップ事業
大阪起業家グローイングアップ事業は、大阪府内に所在するまたは大阪府内で創業を予定している企業が対象の補助金です。創業または事業拡大に必要な経費として「最大100万円(50%償還)」が交付されます。
行政以外の助成金・補助金
国や地方自治体のような行政機関以外でも、助成金や補助金を設けていることもあります。具体的には、大企業や政府系銀行、複数の慈善団体などが挙げられます。
ただ、行政機関よりも審査や条件が厳しく設定されていることが多いです。行政機関以外の助成金や補助金を受給するためには、行政機関よりも明確かつ将来性のあるビジネスプランを立てることが大切です。
起業時に助成金や補助金を利用する際の注意点
助成金や補助金が交付されるのは、交付決定後すぐではなく、早いもので2〜6ヶ月程度、遅いもので1年半程度かかります。通常の融資や出資であれば、すぐに入金されることが多いため勘違いしてしまう人が多いです。
しかし、助成金や補助金が交付されるまでは自己資金や創業融資で賄わなければいけないため注意しましょう。
例えば、何の目的もなく人を雇ったり、必要ない業務を外注したりすることが挙げられます。当初の計画を大幅に超える出費は、大きな経済的制約をもたらす可能性があるため注意が必要です。
助成金や補助金を利用すれば資金面の負担が減る
助成金や補助金をうまく活用できれば、資金面での負担が減り、今まで以上に事業を安定させやすくなります。また、社会的信用度も上がることで融資も受けやすくなり、事業を拡大できる可能性が高いです。
ただ、助成金や補助金を利用するデメリットや注意点を理解していなければ、資金繰りに困ってしまい倒産する恐れもあります。
「どうすれば助成金や補助金を受給できるのか」だけを考えるのではなく、受給タイミングについても理解しておくことが大切です。
関連記事