普段、納税している所得税がどのように算出されているのか知らないという方も多いのではないでしょうか?

 

所得税は、所得がある限り納税が義務付けられており、所得金額によって税率が異なります。所得税の算出方法を知っておくことで、確定申告をする前に納税金額を把握できることや、日本の税金の仕組みへの理解も深まるなどのメリットがあります。

 

そこで本記事では、所得税の計算方法や納税方法を詳しく解説します。また、確定申告が必要な人の特徴や、確定申告をしない場合のリスクも紹介するので、参考にしてください。

 

確定申告で納税する所得税が決まる

会社員や個人事業主は、1年間(1月1日〜12月31)の所得金額に対して、納税する所得税が決まります。所得税を決めるために、所得を申請する手続きを確定申告といいます。

 

現在の日本では、申告納税方式が採用されており、収入は自分自身で税務署へ申告し、納税するために確定申告の実施が義務付けられています。ただし、会社員のように年末調整を行う場合は、確定申告の実施は不要です。

 

所得税の計算方法

確定申告を行うことで、所得税が決まると解説しましたが、所得税はどのような手順で計算されるのでしょうか。

 

この章では、所得税の計算方法である、以下3つの手順について詳しく解説します。

 

  1. 所得金額を算出する
  2. 課税所得金額を算出する
  3. 所得税を算出する

 

所得税の計算方法を理解しておくことで、確定申告をする前に、所得税の概算を把握することが可能です。納税金額を早めに把握し、資金を確保しておきたい場合は、自身で計算してみてください。

 

手順①所得金額を算出する

 

所得金額とは、収入から経費を差し引いた金額のことを指します。

例えば、300万円の収入があるものの、仕入やその他経費として50万円を計上する場合、所得金額は250万円となります。

 

手順②課税所得金額を算出する

 

課税所得金額とは、 収入から必要経費などを除いた所得から、基礎控除や配偶者控除などの各種控除を指し聞いた金額のことを指します。

一般的に所得から差し引ける控除の一例には、以下のようなものがあります。

 

控除の種類 内容 控除額
生命保険料控除 期間内に支払った生命保険料や個人年金保険料 保険会社にて算出された金額(証明書が発行される)
社会保険料控除 本人、配偶者、扶養家族が支払った健康保険料、国民健康保険料、国民年金保険料など 支払った金額全額
小規模企業共済等掛金控除 小規模企業共済、確定拠出年金などの掛金 支払った金額全額
医療費控除 期間中に支払った医療費(上限200万円) 規定の方法により算出された金額

 

控除については、上記表以外にもさまざまなものがあります。漏れなく控除を申請することは、節税対策となるため、どのような控除があるのか把握しておくことをおすすめします。

 

手順③所得税を算出する

 

手順②で算出した課税所得金額に対して以下表の税率を適用し、控除額を差し引くことで納税する所得税が決まります。

適用される税率や控除額は、国税庁によって決められています。以下の表から読み取れるように、日本では、課税所得金額が多くなるにつれて税率が上がる「累進課税制度」が採用されています。

 

課税所得金額 税率 控除額
1,000円 から 1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円 以上 45%

4,796,000円

出典:国税庁|所得税の税率

 

上記の表を元に、所得税の計算例を紹介します。

 

(例)課税所得金額が600万円の場合

600万円×20%(税率)-427,500円(控除額)=772,500円(納税する所得税)

 

ただし、すでに収入から源泉徴収され所得税を納税している場合は、支払い済みの納税額から差し引いた金額を納税します。もし、算出された所得税よりも支払い済み納税額の方が多かった場合は、確定申告後に払い過ぎた分が還付されます。

 

所得税の納付方法

 

基本的に、確定申告の申請期間は2月16日から3月15日までです。さらに確定した所得税は、毎年3月15日までに納税する必要があります。納税方法は、自分自身の都合に合わせて、以下から選択可能です。

 

  • 金融機関または税務署の窓口で納付する
  • ダイレクト納税(口座振替)
  • クレジットカードで納付する
  • コンビニで納付する

 

納税額が30万円以上の場合は、コンビニ納付が選択できないため注意しましょう。

 

納税額が15万円を超える場合は予定納税が必要

 

確定した所得税の納税額が15万円以上であった場合、次年度で予定納税が必要となります。予定納税とは、所得税を前もって納付する制度のことをいいます。

 

予定納税で支払う所得税は、その年の5月15日時点で確定している前年度分の所得から、その年の所得税額を算出した金額です。

 

対象者には、税務署から通知書が届きます。通知書に記載の納税期限までに支払いできない場合は、延滞税が課せられるため、速やかに支払いましょう。ただし、その年の収入が極端に減っている場合は、税務署に予定納税の減額申請をすることができます。

 

予定納税を行うことで、所得税の分割納付が可能となり、納税にかかる負担を減らすことが可能です。また、税務署側は、所得税の未回収リスクを防ぐことができるため、双方にとってメリットがある制度です。

 

確定申告をする必要がある人

所得税の計算方法や納税方法について説明しましたが、そもそもどのような人が確定申告を行う必要があるのでしょうか。

 

この章では、確定申告をする必要がある人の特徴を紹介します。

 

  • 個人事業主(パート、アルバイト含む)
  • 副業をしている会社員
  • その他

 

基本的に個人事業主は必ず確定申告をする必要がありますが、年末調整をする会社員の場合でも確定申告が必要なケースがあります。

 

個人事業主(パート、アルバイト含む)

 

開業届を提出している個人事業主や、勤務先で年末調整をしていないパート、アルバイトの人は必ず年末調整が必要です。

 

ただし個人事業主、パート、アルバイトともに課税所得金額(所得-控除)が、ゼロになる場合は確定申告不要です。課税所得金額がゼロの場合は、所得税が発生しません。

 

副業をしている会社員

 

基本的に年末調整をしている会社員の場合、確定申告は不要ですが、副業をしている場合は確定申告が必要となります。副業をしている会社員で、確定申告が必要な条件は以下の通りです。

 

  • 副業の所得が年間で20万円以上の場合
  • 2ヶ所以上から給与を受け取っている場合

 

副業の所得とは、収入から経費を差し引いた金額のことです。仮に副業で年間50万円の収入を得ていたとしても、経費で35万円使っている場合所得は15万円となります。この場合は、確定申告は必要ありません。

 

その他

 

個人事業主(パート、アルバイト含む)や副業をしている会社員以外に、以下のような場合も確定申告をする必要があります。

 

  • 公的年金を受け取っている人
  • 退職金を受け取っている人
  • 年末調整で控除できない控除をしたい人

 

公的年金を受け取っている場合でも、所得が48万円以下(65歳未満:受給額108万円以下、65歳以上:受給額158万円以下)の場合は確定申告不要です。

 

源泉徴収されていない退職金を受け取る場合は、確定申告が必要です。日本の企業の多くは退職金から源泉徴収していますが、外資系企業は退職金から源泉徴収しないケースがあります。

寄付金控除や雑損控除、医療費控除は、年末調整で控除できないため、年末調整をしている場合でも、これらの控除を受けたい場合は別途確定申告が必要となります。

 

確定申告をしないリスク

確定申告をしないリスクには、以下の2点が挙げられます。

 

  • 無申告税が発生する 
  • 延滞税が課せられる

 

納税の義務があるため、所得がある限り確定申告は必須です。確定申告をしなければ、最悪の場合重いペナルティを受ける可能性があるため注意が必要です。

 

無申告税が発生する

 

無申告税とは、確定申告書を3月15日までに提出しなかった場合に発生する税金のことです。本来支払うべき所得税に上乗せして、無申告税を支払う必要があります。

 

無申告税として加算される金額は、本来支払うべき所得税の金額によって異なります。

 

納税額 加算される割合
50万円以下 15%
50万円以上 20%

 

3月15日の期限が切れているものの、税務署からの調査を受ける前に確定申告を済ませた場合は、納税額に関係なく5%が加算されます。

このようなペナルティを受けないためにも、確定申告は期限内に速やかに行うことが重要です。

 

延滞税が課せられる

 

延滞税とは、納税期限である3月15日までに所得税を支払わなかった場合に課せられる罰則的な税金のことです。延滞税は納税期限の翌日から、納付するまでの日数分に課せられます。

 

延滞税の税率は、年度によって異なり、自分自身で計算するものではなく国が計算します。納税期限に遅れて支払う場合は、金融機関または税務署の窓口に納付書を持参し、現金での支払いが必要です。延滞税は、確定した所得金額の支払いだけではなく、予定納税にも適用されます。

 

また、支払いが遅れた日数が長くなると、延滞税の税率が上がります。余計な税金の支払いを抑えるためにも、所得税は期限を守って納税するようにしましょう。

 

確定申告を行い期限内に速やかに納税しよう

確定申告を行うことで、支払う所得税が決まります。所得税の税率や、所得控除は、国によって定められており、それぞれの課税所得金額によって異なります。

 

所得ごとの税率や控除額を把握することで、自分自身でも所得税の算出が可能です。自身で所得税を算出することによって、支払うべき資金の確保を事前にできる他、税金に関する知識もつくため節税対策などに役立てることもできます。

 

確定した所得税は、納税期限までに速やかに支払うことが重要です。もし、納税期限に遅れてしまった場合は、ペナルティとして延滞税が課せられるため注意しましょう。

 

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