【#039】安心して子育てできる環境を。看護師の強みを活かした寄り添うサービス｜代表取締役　横山 佳野（株式会社Medi Blanca）

株式会社Medi Blanca　代表取締役　横山 佳野

「看護師として輝ける環境をつくりたい」「子育てしやすい社会を実現したい」という使命感を持って、日々奮闘する横山氏。とても快活で、仕事にもポジティブに向き合っているように見受けられますが、もともと看護師ということもあり、経営に関しては素人の状態から事業をスタート。さまざまな壁を乗り越えてきた横山氏に、事業をはじめた経緯やモチベーションの保ち方、これからのビジョンなどについて詳しくお伺いしました。

親や子供、看護師がより良い人生を歩めるように

事業の内容をお聞かせください

私たちは「すべての子どもとその家族、そして看護師が健やかに生きられる社会をつくる」というビジョンを掲げて、活動しています。健常児だけでなく、障がい児・医療的ケア児（※）を持つご家庭にも、看護師を派遣する訪問看護サービス「Soi Nurse（以下、ソイナース）」を提供しています。

現在、医療的ケア児は全国に約2万人いるとされ、ソイナースでは一般の訪問看護サービスでカバーできない領域までサポートしており、自治体（千代田区・三鷹市）との取り組みも開始しています。また、医療保険に加えて、公的な助成制度を活用してサービスを利用することも可能です。

共働き世帯が増えている昨今。だからこそ、子どもを授かってからも、親が自分らしく働けるような社会を作っていきたいと思い、日々奮闘しています。

現在カバーしているエリアは東京都23区が中心。23区外も、少しずつではありますが進出し始めています。

看護師が訪問するので、医療的な関わりをすることは大前提です。ただし、もともとうちの会社はベビーシッター事業から始まったということもあり、心と身体が健やかに、豊かに育まれていくような関わり方をとても大切にしています。

※医学の進歩を背景として、NICU（新生児特定集中治療室）等に長期入院した後、引き続き人工呼吸器や胃ろう等を使用し、日常的にたんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが必要な児童のこと。

事業を始めた経緯をお伺いできますか？

看護師として勤務していた時に、「看護師の働く環境をより良いものにしていきたい」と感じたことが1つのきっかけです。

また、障害を持っていたり、医療的ケアを必要としたりする子どもを取り囲む環境についても、考えさせられたことがあります。私が看護師として働いていた時に、面会に来ていたご家族が疲弊している姿が、ずっと心に残っていました。

そこから、看護師にとって働きやすいような環境作りができること、子育てと関われること、という2点を軸に事業内容を考えました。その結果、「看護師は、さまざまな状態の子どものサポートができる」という強みを生かす方向でスタートしました。

実は、私はもともと母親に勧められたことがきっかけで看護師になりました。「資格をもっていたら、安定するから」と。

しかし、看護師の中には自分の夢を叶え、やっとの思いで看護師になったという人がいます。それなのに、看護師の労働環境が過酷という現実が突然立ちはだかるのはあんまりだと思ったんです。

実際に看護師の現場を経験したからこそ、「看護師が輝ける、新たな環境をつくりたい」と心から思いましたね。

子供の成長を感じられるこの仕事には幸せがたくさん

仕事におけるこだわりを教えてください。

仕事をしている間も幸せで、健やかでいることです。

当たり前のことですが、健康でいなければ、仕事はできません。また、プライベートも楽しめなくなります。健康でいるためには、適度に運動することを大切にしています。

また、気持ちの面では、マイナスの方向に向かわないようにしています。

生活が不規則なので、どうしても考え方がネガティブに傾きそうになることも。仕事を通じて、肯定的な考え方が身についていきましたが、最初からできた訳ではありません。

ただ、訪問看護の現場というのは、様々なドラマがある場所だと思っています。もちろん、毎日いろいろなことがありますが、子どもの成長する過程を見ていると、感動することが多いんです。「こんなにも変わるんだ！」と驚きます。幸せをたくさん感じることのできるお仕事ですね。

起業から今までの最大の壁を教えてください

訪問看護事業を立ち上げた、2021年9月のことです。

売り上げがあるのに、資金がショートしそうになりました。医療保険を使うと、お金が入ってくるまでタイムラグがあるのです。

人件費や事務所の維持費などのために、資金繰りが大変でしたね。看護師として働いた時の経験しかなかったので、経営に関する知識は無く、とても苦労しました。

関わってくれている人たちの存在がパワーの源に

進み続けるモチベーションは何でしょうか？　

働いてくれる看護師さんや、社員などの存在です。事業の在り方についても、アドバイスをくれる方がいて、とても有り難く感じています。

また、サービスの利用者様に、「生活が変わった」と言っていただけることが嬉しいです。子どもの成長を感じられることも、私の生きがいになっています。「できるようになった！」と話しをしてくれると、こちらも元気をもらえますね。

関わってくれている方たちからいただく、1つ1つの言葉が日々の活力になっています。みなさんに感謝です。

今後やりたいことや展望をお聞かせください　

子どもだけでなく、子育てをする親御さん、看護や医療を提供する人々も健やかに過ごせる社会をつくるために、事業を展開していきたいです。

何が必要なのかということは、進みながらも常に考えていきたいですね。

夢をもっている方はぜひ実現して欲しいです

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

人生1度きりです。ぜひ起業をしてチャレンジして、夢を叶えて欲しいなと思います。

特別良い大学を出ている訳ではなく、看護師という専門的な仕事を続けてきた私でも、新しいことにチャレンジできたんです。お客様も少しづつ増えてきています。

私にできたので、きっと他の方も同じようにできます。

私は、もともと、「看護師が働きたいときに働ける場所をつくりたい」というミッションを1つ掲げていました。そして、実際に、うちで働いてくれた看護師さんが子どもと接する仕事にやりがいを感じ、正職員として復職し活躍されているという方もいます。

看護師としての働き方で悩んでいる方や、看護師資格を活かして社会復帰したいなという方、子どもと関わるお仕事に興味のある方と、今後も夢を一緒に叶えていきたいと思います。

本日は貴重なお話をありがとうございました！

起業家データ：

大学の看護学部で看護師と保健師の資格を取得。その後、大学病院の腎臓内科やICUを経て、転職後はオペ室、内科・外科混合病棟を経験。看護師としてのキャリアを8年間にわたり積んだ横山代表取締役。退職後は看護師をベビーシッターとして派遣する会社を設立するため、小児科クリニックとベビーシッターを経験。2019年に会社を設立し、現在は約1900名の登録看護師を抱える訪問看護サービス「Soi Nurse（ソイナース）」を運営。すべての子どもとその家族、看護師が健やかに生きる社会を目指し、看護のあり方を変えようとしている。

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