株式会社ドリームマネージャー COO 金村 秀一

アスリートとファンと地域が繋がる新しいファンコミュニティ/ファンクラブサービス「ASFAN」を2023年2月にリリースした株式会社ドリームマネージャーの金村秀一氏。セカンドキャリアに悩むアスリートの収入を安定させ、多くのファンにスポーツの感動を伝えつつ地域活性化をも実現する、正に「ドリーム」をマネジメントするサービスを立ち上げました。COOである金村氏に、業務内容やASFANを始めたきっかけとその特長、仕事におけるこだわり、起業を目指す方へのアドバイスなどを伺いました。

 

親が子に「食べていけないからスポーツはダメ」と言わなくていい未来を

 事業の内容をお聞かせください

「ASFAN(アスファン)」はプロスポーツ選手やアスリートを応援する、SNSのように簡単に使えるファンクラブです。

 

アスリートは自分のファンクラブを手軽に作成できますし、ファンはASFANに登録(アスリート1名につき月額980円/税込)すれば選手の投稿や日常の写真、練習中の動画など、登録者しか見ることができないコンテンツを多数楽しめます。

 

もちろん気に入った投稿にリアクションを送ったり、お気に入り登録で投稿を保存したりすることも可能です。またギフト機能で応援したいアスリートを支援したり、仕事の依頼をしたりすることもできます。一言で表現するなら、ファンの応援がアスリートの勇気と活動資金になり、スポーツ界の未来を作るサービスです。

 

サービス開始時は2021年東京五輪フェンシング男子エペ団体の金メダリスト・見延和靖(みのべかずやす)選手、陸上10種競技日本記録保持者でありリオ五輪日本選手団旗手の右代啓祐(うしろ けいすけ)選手、山形ライフセービングクラブ所属フィンスイミング/ライフセービング日本代表/マスターズ世界記録保持者の平野修也(ひらの なおや)選手の3名に参加いただきました。

 

登録アスリートは有名選手から新進気鋭の若手選手まで幅広く増えており、今後も多くのアスリートに登録いただく予定です。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

プロアスリートと聞くと、海外や国内で華々しく活躍するリッチなトップ選手を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実際のところ、そんな選手はごく一部です。

 

ほとんどのプロアスリートは、実力があっても資金不足に悩まされ、引退後もビジネスのノウハウ不足や社会経験の少なさなどから、アルバイトで生計を立てる方も少なくありません。

 

私自身、息子が小学生だった10年ほど前に、こんな経験をしました。息子はサッカーチームに入っていたのですが、小5の夏に監督から「このままサッカーを続けるか、塾に行くか」と尋ねられたのです。

 

詳しく聞くと、「アスリートになっても生活できないから、この時期になるとどちらか優先してもらっている」と言われ、強い違和感を覚えました。

 

勉強はもちろん大事ですが、スポーツから学べることも非常にたくさんあるじゃないですか。だから子どもからスポーツという環境を取り上げたくはないけれど、わが子に苦労をさせたくない親心も理解できる……。

 

この経験から、親が子に「食べていけないからスポーツの道は諦めろ」と言わざるを得ない世の中を変えていきたいと、ずっと考えていたのです。

 

ASFANが世の中のスタンダードになれば、アスリートが生き生きと活躍できる。その姿を見て、私たちファンは勇気をもらい、仕事や家事・育児などを頑張れる。そうなれば、親はプロを夢見る子どもたちを、喜んで望む道へ進ませてあげられるはずです。

 

「推し」アスリートの支援とファンとの交流、さらに地域の活性化も実現

ASFANと他のスポーツ系ファンクラブの違いについて教えてください

小規模スポンサーを集めているのがASFANの大きな特長です。例えば「予算は月5万円程度だけれど、ASFANのコンセプトに共感するからぜひスポンサーをやらせてほしい」と手を挙げてくださるスポンサーと組んでいます。

 

また地方出身のアスリートと連携しつつ、その地方に活気をもたらすお手伝いを意識している点も、他のファンクラブとは大きく違う点ですね。

 

そういうコンセプトで活動をすると、志を持つ企業が集まる上に、やみくもに規模を広げる必要がなくなります。例えば予算は10万円だとしても、10社がスポンサーになってくだされば年間1200万円です。弊社の手数料を別にして、約1000万がアスリートに入るという計算です。

 

アスリートからは、対価として子どもたちにスポーツ指導をしたり、その地方の中小企業でスポーツに関する講演をしてもらったりします。

 

活躍していた地元出身の選手が故郷に戻ってきて、次世代を作っていく子どもたちのために何かをやってくれるというのは、本当の地方創生になりえると思うのです。

 

長くなりましたが、ASFANはファンクラブだけでなく告知スポンサー、パートナー会員などから成り立っていることは、この業界の中で相当な強みだと自負しています。

 

「推し」アスリートへの支援が、地方創生にもつながるのですね

本当にその通りです。推しといえばアイドルやタレントですが、アイドル・タレントにはいわゆる「投げ銭」などファンが金銭的に支援できる「場」がたくさんあるけれど、アスリートに対しては「頑張れ」という言葉だけで終わりがちですよね。

 

投げ銭の場がないアスリートにも、それができる場を作ろうということで始まった事業なので、しばらくはASFANを認知してもらうことに注力しなければと思っています。

 

ライバルが出てくるくらい、ポピュラーな仕組みにしたいですね。

 

他にはどのような特長があるのでしょうか?

今年から、教師の働き方改革によって、中学校の部活が民間の外部委託に変わりました。民間といっても、専門教育を受けた人が指導者になるとは限りません。つまりコンテンツのノウハウがないのですね。

 

そこに注目して、パートナー会員1社につき5団体50人に無料アカウントを配布し、プロアスリートのノウハウを学べる仕組みを作りました。

 

例えば、ライフセービングでマスターズ世界記録保持者の平野修也選手にパートナー会員が1社つくとします。すると、そのエリアで選ばれた中学・高校に無料アカウントが配付され、平野選手の練習方法やアドバイスなどが、ASFANで見られるようになっています。それを指導に活かしていただくことができるのです。

 

また、プロアスリートがその地方を年に1、2回訪れて、リアルに触れ合える機会も設けています。

 

素晴らしいコンセプトですが、なぜ「今」だったのでしょうか?

理由は2点ありまして、まず1つはサブスクが一気にポピュラーになったことです。ASFANでも月額980円というハードルが、この3~5年でかなり下がりました。それは時代的なタイミングだと思います。

 

もう1つは、コロナ禍や災害などによってCSRや地域貢献がさらに重視されていることです。さらにいえば出生数が少ない、つまりシングルやダブルインカムの家庭が増えたことによる余裕といいますか、「誰かを応援したい」という人も一定数いると思っています。

 

アナログな「想い」とデジタルな「システム」の融合で、他社には到達できない地点へ

仕事におけるこだわりを教えてください

「凡事一流」です。「誰にでもできることを、誰にもできないくらいやる」という意味です。例えば挨拶なんて誰にでもできることなのですが、弊社は挨拶を大きな声で、誰に対してもしっかり行うことを意識しています。

 

そんなことぐらいで……と思われるかもしれませんね。でも実際、名刺交換をした経営者の方が、弊社の挨拶を聞いて「うちでもこういう社員を育てたい」とお客様になってくださることも珍しくありません。

 

一事が万事、「凡事一流」を貫いた結果、弊社は社員の平均年齢が26歳という若さでありながら、粗利において1人当たりの人時生産性2400万を実現しました。

 

誰にでもできることを、誰にもできないぐらいやれば結果が出せるという仕組みを作ってきた結果だと思っています。

 

また別事業の経営コンサルタントとしては、クライアントであっても、間違っていれば「社長、ここは違いますよ」ときっちり伝えることにこだわっています。中小企業の利益を上げたいのはもちろんですが、だからこそ中小企業の経営者や社員の皆さんに、もっと勉強していただきたいと思っての行動です。

 

なぜなら、まず大人がしっかりした考えを持って実行しなければ、その子どもたちによい環境を残せないと考えているからです。未来の子供たちに環境であったり言葉であったり、よりよい考え方を残すというところを軸としてやっています。

 

コンサルティングによって培ったロジカルな部分と、パーソナルな想いが融合しているのですね

そうですね。考えてみれば「凡事一流」もアナログですが、その想いにASFANで活用しているデジタルなシステムを融合させている点も、他社との差別化につながっていると思います。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

会社を倒産させかけたことですね。過去に人材派遣会社もやっていまして、2年間で5.5億円と急成長したのですが、2008年のリーマンショックの影響で、翌年は1.6億円まで落ち込みました。

 

本社移転もしましたし、テレビドラマの中だけの出来事だと思っていたリストラもしました。会社存続のためあらゆる手を打った上で、もう無理だということになったのです。会計事務所に清算手続き依頼の電話をするという、本当に崖っぷちのところまでいきました。

 

当時の担当者の方が「お茶でも飲みながら話しましょう」と、事務所まで来てくれたのです。お茶を飲みつつ辞める理由を説明し終わると、その方が「なぜ今、辞めるのですか」とすごい剣幕でおっしゃるのです。

 

「今まで苦労されて、財務もめちゃくちゃなのはわかっています。ただ、どう考えても底は抜けていて、良くなる未来しか見えないのになぜ今なのですか。どうせなら2、3年後に辞めるべきです」と。

 

その時は「100年塾」という経営コンサルの種まきをしていたこともあって、その発言につながったのでしょう。

 

普段はそんな言い方をされる方ではないので、びっくりして「はい」と言ってしまいました。実際に2、3年後に良くなってきたのですが、この経験が一番大きい壁でしたね。

 

そのご経験をどう活かされたのですか?

この件を含め、私は21歳から現在まで29年にわたり社長業をやってきた中で、非常に数多くの失敗をしています。それらの実体験を、「それはやらない方がいいですよ」という、クライアントへのアドバイスにつなげています。

 

クライアントから「コンサルから『やった方がいい』というアドバイスはたくさん受けてきたけれど、『やらない方がいい』とか『今じゃない』という言葉は初めて聞いた」と、非常に感謝されます。

 

その結果、経営コンサルタントとして、ありがたいことにお客様満足度が92.6%と、大きな信頼や支持をいただいてきました。

 

そう考えると、人生は何があっても無駄じゃないなと思います。とはいえ、もう二度とそんな失敗はしたくないですけどね(笑)。

 

 若い社員たちが活躍できる「ASFAN」であり続けるため、グループ経営を強化する

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

 

先日、ある有名な経営者のインタビューを読んでいて、「成長エンジン」という言葉が目に入りました。組織や団体に成長エンジンを持つ人がいると、その人から出た火の粉が周りに飛び、集団で成長路線を歩み始めるのだそうです。

 

それを読んで思ったのですが、私は成長エンジンの塊と呼べます。考え方としてはシンプルで、「できない理由にもできる理由にも根拠がないのなら、できる方に賭けよう」というものです。

 

なぜみんなできない方を信じるのだろう?と不思議に思います。私は常にできる方にベットしてきた人生で、やってみて駄目だったらやめるという繰り返しでここまで進んできましたから。

 

社員との約束である「中期5ヶ年計画」で立てた目標も射程距離に入ってきましたし、この先にいろいろなことができる未来が待っていると思うと、ワクワクが止まりません。

 

きっと私のモチベーションの源は、社員と共通の明るい夢があり、高い成長率があることが、進み続ける成長エンジンとなっているのでしょうね。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

 

高収益事業を展開することでキャッシュリッチな構造をつくり、社内ベンチャー制度などを通じて、毎年3000万~5000万円で運用するグループ構想を実現していくことです。

 

私は65歳で社長を辞めると社員たちに宣言しているので、あと15年間でグループ会社を3~10社、作ることが残された仕事かなと考えています。

 

若い子たちがどれだけ活躍できるかという視点で、事業を広げたいですね。

 

例えばASFANの可能性をさらに広げることも、その1つです。ASFANはファンクラブとしてはもちろん、マネジメントや出版にもつながりそうで、広がりは多岐に渡ります。

 

またアスリート向けにファイナンシャルプランナーを招いた授業も必要ですし、やりたい社員がいたら芸能方面にも入っていっていいと思います。

 

ASFANの可能性を広げるために私ができることは、良いアイデアが出た時に、それを実現できるだけの資金を調え、グループ経営を強くしておくことです。

 

「すぐにやってみる」「何事も徹底する」、シンプルだけれど大切なこと

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

私は本当にシンプルな人間なので、何事も徹底すること、すぐにやってみること、この2つですね。

 

例えば、私は365日、毎日朝4時に起きています。4時と聞いた人はみんな驚きますが、本当にすごいのは、4時起きするために毎晩8時半に寝ているところです(笑)。起きる、寝るに関しても、徹底するとそれだけできますよ。

 

すぐにやってみることについては、起業する方のほとんどは考えて、考えて、考えて、考えてからやってみる、というタイプでしょう。

 

でも、考えてもうまくいかないことの方が多いですからね。だから、小さくてもいいからすぐにやってみる。そうやってトライ&エラーを繰り返し、改善していくのです。

 

ASFANもせっせとお客様のところに行って話を聞く中で、どんどんビジネスモデルが変わりましたよ。変えれば変えるほどいいサービスになっていっています。本当にありがたいですね。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ

 

お名前

金村 秀一

役職

COO

経歴

株式会社ウィルウェイ 代表取締役

経営塾『100年塾』塾長

一般社団法人ドリームマネージャー協会 代表理事

ASFAN COO

弱冠 21 歳で学生創業し、企業の顧客管理、マーケティング、飲食業界、 人材派遣業界など会社の成長ステージに合わせて事業を展開し、創業社長 として今期 27 年目を迎える。

『記録×手帳』のドリームマネージャーのメソッドを法人だけではなく個人にも活用してもらいたいとサブ手帳 『ドリームマネージャー手帳』を開発。さらに、夢をもって働く大人の姿を 見ている子供たちも夢を持つことができる社会を 目指したいとの強い思いでこの協会を設立。

 

企業情報

 

法人名

株式会社ドリームマネージャー

HP

https://asfan.jp/

設立

2022年1月1日

事業内容

ASFANの運営/アスリートマネジメント

 

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