株式会社アーラリンク 代表取締役 高橋 翼
携帯電話を契約できないことで自立や社会復帰が困難な「通信困窮者」と呼ばれる方々を救うため、格安でスマートフォンを提供している株式会社アーラリンク。
「日本を下から支える」をミッションに掲げ、立場の弱い方々を救う仕組み作りに邁進しています。目指すのは、1人でも多くの人が尊厳を持ちながら自立できる社会の実現です。
同社の代表取締役を務める高橋氏に、事業を始めたきっかけや今後の展望を詳しく伺いました。
クレジットカード不要で契約できる「誰でもスマホ」
事業の内容をお聞かせください
弊社は、格安スマホサービスを提供しています。
いま、世の中に1700社ほどの格安スマホサービスが存在していますが、その中で我々は特殊なポジションを取っています。
弊社はさまざまな事情で契約審査が通らず、他社の携帯電話を契約できない人でも利用できる「誰でもスマホを」という格安スマホサービスを展開しています。
クレジットカード不要で契約できることが大きな特長です。
何らかの事情で携帯電話を持てなくなった人に、社会復帰のきっかけを提供したいという想いでこの事業をしています。社会復帰しようにも、携帯電話がなければさらにハードルが上がりますから。
そのため弊社では、反社チェック以外の審査は設けていません。
コンビニ決済に対応しているのも弊社の特長です。スマホ料金をコンビニで決済できるのは、弊社を含めて2社ほどでしょうか。
また、格安スマホサービスの多くは実店舗がないため、申し込みをWEBからしなければなりません。しかし、弊社のサービスを利用してくださる方の多くは、インターネットに定期的にアクセスできません。申し込み手続きを簡易化するために、FAX経由や郵送経由でも申し込みを受け付けています。
お客さまがどのように弊社のサービスを知るのかと言うと、7割位がWEB、3割位が自治体からの紹介です。紹介してもらえる仕組みを我々が作っている、と言ったほうが正しいかもしれません。
たとえば、生活保護を受けていた方が生活保護から外れて自立する際に、自治体から弊社のサービスを紹介していただけるよう、ネットワークを作っています。
日本全国の自治体と関係を構築しているのは弊社の強みですね。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
起業したのは25歳の時でした。当時は社会に対しての高い志というより、自分の生き様に対して強い想いがありました。
大学時代に通信会社の営業代行としてマンションに飛び込み営業をしていたのですが、正直、仕事の意義を感じられませんでした。
もしその通信会社の本社で働いていたら「日本中に安定した通信を供給している」「社会のデジタル化に貢献した」と実感できたからかもしれませんが、代理店では基本的に契約件数の数字しか追いません。
意義を感じられなかったものの、大学を卒業したらその会社で働こうと漠然と考えていました。そんな中、東日本大震災が起こり会社が潰れてしまったんです。
そこで自分の人生をしっかりと考え直しました。振り返ってみると、私はもともと一生懸命生きるのが好きだったなと、改めて気付いたんです。
小学生の時に「いい大学に入ろう」と自分で決めて、一生懸命勉強して早稲田の付属高校に入学しました。田舎住まいの平凡な家庭から、自分の意思と努力で人生のステージを変えられたこの経験は、私の原体験になっています。
会社が潰れてこれからどうしようかと迷っていた時、その経験が後押しとなり「意義のある活動をしよう」「高みを目指して生きよう」と決意しました。
雇われていた時は、会社の愚痴をこぼしたり環境のせいにしたりして、まったく本気になれていなかったんですね。そこで本気で生きるために、自分で会社を経営することにしました。
起業すると決めたのは良かったのですが、事業内容は全然決まっていませんでした。ですが、営業代行で学んだ経験を活かして、お客さまとの関係を継続できること、月額料金を設けること、お客さまから来ていただけるようなサービスを作ること、この3点を意識しました。
そんな中、たまたま携帯電話のレンタル業を営んでいる知人がいまして、その方の代理店となることになったのです。当時はお金がなかったのですが、それでも始められるということですぐに決めました。
携帯電話のレンタル業をする中で、何らかの事情で携帯電話を持てない人を支援する仕組みを作りたいという想いが大きくなっていきました。
以前も通信業界で働いていたので2013年頃から大手の規制が厳しくなり、携帯電話を持てない人が一定数いるのは薄々知っていました。
そこで、人を支援したいという想いと、他の人がやらないことをやりたいという想いが相まって「誰でもスマホ」を立ち上げることにしました。
大切にしている3つのこだわり
仕事におけるこだわりを教えてください。
人がやらないことをやることでしょうか。すでに社会に存在している事業やサービスを私が真似してやったところで、社会にとって本当に価値があるのかと疑問に思います。
私にとって「それをやる意味があるのか」という問いがすごく重要なんです。そして、意味があることが何なのかというと、人がやらないことをやることです。
こだわりの軸になっているのは「人がやらないことをやる」「意味があることをする」「社会のためになることをする」の3つですね。
社内のこだわりとしては、従業員が成長できる機会を増やすことを意識しています。
日本経済は長い間、ダウントレンドですよね。国民一人ひとりが成長しないと、世界と戦えないのではないでしょうか。
そのため、まずは従業員それぞれの成長を考え、彼ら/彼女らの暮らしを良くしていきたい。暮らしを良くするとはどういうことなのかと言うと、それはシンプルに給料と休暇です。
特に、リーダーとして働いてくれているメンバーには業務内容に見合う報酬を支払いたいと思っています。休みに関しては皆が休みたい時に気兼ねなく休めるようにし、働きやすい環境を整えたいと思っています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
これまで色々と大変なことはありましたが、壁だとは捉えていません。致命傷になるような出来事もなかったと思います。
私が好きな経営者の言葉に「予定として起こることは、予定と思っておけば辛くない」という言葉があります。
たとえば、社員が辞めることや契約が無くなってしまうことは、ある程度予測できますよね。そうした出来事は残念ではありますが、自由がある中で各自が下した選択なので仕方がないのかと。
予測できることに対応できなかったとしたら、リーダーである私の実力不足なだけだと思っています。
目指すのは、50歳で1,000億
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
リーダーシップを取り続けることがモチベーションの源になっています。いま目標に掲げているのは、50歳で1,000億円の売上を作ることです。それを実現するには、今後12年で売上を50倍にしなければなりません。
やはり性格的にも、高みを目指したい。それは子どもの頃にレベルの高い学校に行こうと早稲田を目指した時から変わっていません。
何を目指すかは結局、決めの問題なんです。
とてつもなく高く感じる1,000億という数字ですが、それくらい高い目標があったほうが自分の人生がより艶やかになり、幸せを感じられると感じています。
社会に貢献したいという想いからも、100億ではなく、より大きなインパクトを残せる1,000億を目指します。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
我々がなぜ格安スマホを販売しているのかと言うと、スマホは人が自立する上で絶対に必要な物だからです。より多くの人の自立を支援したい、自分で食べていける人を増やしたいという想いで、この事業に取り組んでいます。
今後も事業を通じて、自立支援に携わっていきたいと考えています。具体的には再就職や社会復帰が困難な人を対象にした就労支援や、支出を減らすことを目的とした共同生活のサポートを考えています。
1人暮らしだと膨らむ生活費も、何人かで集まって暮らすとスケールメリットを得られます。皆で集まり、安価で暮らせる仕組みを作っていきたいと構想しています
あと、自立するには資金管理も大切です。人生100年時代ですから、社会保証に頼らずできるだけ長く現役で居続けるためにも、1人ひとりが貯蓄や資金管理能力を培う必要があります。そういった領域での支援も考えています。
いずれは格安スマホサービスが他の事業への呼び水となればいいですね。
人生の最後まで多くの人が尊厳を持ちながら自分の足で立てるよう、我々が伴走し続けるのが目標です。
起業する前に内省を
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
まず整理した方がいいのが、起業したいのか、個人事業主やフリーランスになりたいのか、という点です。
選択肢が本当に起業しかないのかを自問自答してみてください。起業するのがかっこいいから、または、何となくやりたいからという理由では身体もお金も長く続かないでしょう。
起業する目的を最初にハッキリさせておくのが大切だと思います。
私はサラリーマンとして守られた働き方では、本当の意味で一生懸命になれないことを自分で分かっていました。なので、構造的に社長にならざるを得なかった。
起業してから辛いと思ったことがないのは、自分でしっかりと考えて選んだ道だからだと思います。大きな責任を背負い込んででも経営者になろうと覚悟を固めていましたので、後悔はありません。
起業を考えている方は、起業する前にしっかりと内省してみてください。自分を知ることが大切です。
たまに起業の相談に乗ることがあるのですが「それは起業しなくてもできるのでは?」と思うことも少なくありません。
自分の人生で何をしたいのか、意義・目的は何なのか、起業という手段を何のために取るのかといったことを一度じっくりと考えてみてください。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
■ 採用情報
株式会社アーラリンクは、事業拡大につき積極採用中です。ご興味のある方は、下記のURLをご確認ください。
URL :https://www.ala-link.co.jp/recruit/newgraduate/
起業家データ:高橋 翼氏
2011年早稲田大学社会科学部卒業。
在学中に大手通信会社の商材を販売する代理店にて営業職を経験。通信事業の将来性と、貧困救済の必要性を感じ、2013年にアーラリンクを創業。
2020年/2021年のベストベンチャー100に選出。
困窮問題に取り組む経営者として朝日新聞・読売新聞などのメディアに多数掲載。
企業情報
法人名 |
株式会社アーラリンク |
HP |
|
設立 |
2013年1月24日 |
事業内容 |
1. 電気通信事業 2. 電気通信設備の貸与、又は販売 3.通信機器及び周辺機器に関する企画、開発、販売、貸与、運用び保守 4. 上記各号に附帯関連する一切の業務 |
沿革 |
2013年 株式会社アーラリンク設立 個人向けレンタル携帯サービス「A’sas」始動 2016年 10月:法人レンタル携帯サービス「alalink」始動 2019年 10月:一般社団法人リスタート・ケータイ設立 11月:契約者数3000人突破 2020年 3月:モチベーションチームアワード2020受賞 2020年度ベストベンチャー100受賞 7月:大阪営業所を開設 11月:厚生労働省と「生活困窮者等へ携帯電話等サービスを提供し ている事業者リスト」を共同制作 12月:同ビルにオフィス増床 ミッション/ビジョン/バリューの改訂 2021年 3月:2021年度ベストベンチャー100受賞 |
関連記事
RANKING 注目記事ランキング
- 【#063】すべての人に目標達成の喜びを伝えたい|代表取締役 李 佑記(イ・ウギ)(株式会社Humans)起業家インタビューインタビュー
- 【#055】顧客満足度世界NO.1の営業支援会社となる|代表取締役社長 鈴木 徹(株式会社アイランド・ブレイン)インタビューその他 インタビュー
- 【#176】継承と革新―給食サービスの家業を守り、進化させる3代目の挑戦|専務取締役 荻久保 瑞穂(株式会社東洋食品)インタビューその他 インタビュー
- 【#197】人財を大切に、介護業界で1兆円規模の企業を創る|代表取締役 山下 和洋 (株式会社ヤマシタ)起業家インタビューインタビュー
- 【#200】4Dで思い出を残す革新的なSNS「TAVIO」でパラダイムシフトを。めざすのは日本発「GAFA」|代表 渡邉 晃司(OpenHeart)起業家インタビューインタビュー