株式会社スマートショッピング 代表取締役・共同創業者 志賀 隆之/林 英俊

株式会社スマートショッピングは、モノの重さや数を感知できる画期的なマットを使いモノの実在庫や流れを見える化、DXを進めるためのソリューション「スマートマットクラウド」を提供しています。BtoBで順調に事業を拡大し、今後は世界進出を狙う同社。順風満帆そうに見えますが、共同創業者の志賀 隆之氏と林 英俊氏は「ここまでの道のりは平坦ではなかった」と話します。いくつもの壁を乗り越えて、現在の事業形態に辿り着いた道のりとは。お二人に詳しくお話を伺いました。

 

モノを上に置くだけで重さ・数量を検知するマット

事業の内容をお聞かせください

林氏:弊社は、企業の在庫管理を自動化できる、モノの流れを見える化し工程カイゼンを進めるための「スマートマットクラウド」というプロダクトを提供しています。

「スマートマットクラウド」の上にモノを置くと、マットがモノの重さや数を検知し、どのマットに何がいくつ乗っているのかという情報がクラウドに送られる仕組みです。リアルタイムで在庫データを取れるため、これまで人がおこなっていた在庫確認作業を自動化できるだけでなく、無くなりそうな在庫の発注作業も自動化できます。

 

顧客の40%が製造業、30%が医療関係、残りはホテルやサービス業がメインで、製造業からの需要が最も高いため、将来的には製造業にさらに力を入れていくつもりです。

 

また、今後は在庫管理だけでなく、工場の中でどのラインが詰まっているのかをこのマットを通じて可視化できるようにする話も進んでいます。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?  

林氏:前職はAmazonで定期購入プログラムのオーナーをしていたのですが、当時「世の中にある定期購入サービスの多くは、適切な配送頻度をまったく予測できていない」と感じていました。

 

定期購入は割引が付くため利用する人も多いのですが、定期購入した商品がちょうどいいサイクルで配送されることはほぼありません。そこで、なぜ配送頻度がこんなにも当たらないのかを真剣に考えたことがありました。

 

出た答えは「そもそも消費者が、普段使っている物をどれくらいの期間で使い切っているのかを把握していない」ということです。

 

たとえば、シャンプーを何カ月で使い切っているのかを知っている人は少ないのではないでしょうか。消費者自身があらゆる生活用品の消費速度を把握していないため、定期購入の際に適切な配送頻度を選べず、結局、配送が早すぎたり遅すぎたりする訳です。

 

そこで、普段使っている生活用品の消費量がわかる仕組みがあればいいのではと考え、今のプロダクトに辿り着きました。

 

オンラインで何かを購入する際、購入自体は何クリックかで終わるため手間はかかりません。しかし、シャンプーや洗剤など日常的に使う物の在庫が今どれ位あって、いつ買い足すべきなのかをいちいち覚えておくのはストレスが大きい。そういった在庫の確認作業が消費者にとっては手間なのだと気付いたんです。

 

「消費の見える化」を実現する我々のプロダクトは最初、一般消費者に役立つと考え、BtoCで展開していました。しかし、蓋を開けてみるとBtoBからの需要の方が大きかった。その後、ピボットを決断し、今は完全にBtoBで展開しています。

 

志賀氏:製造業は作業工程の多くを機械化していますが、実際に現場に足を運んでみると改善の余地が大きくあると感じました。大企業ですらアナログな方法を未だに続けています。そういった現場で我々のプロダクトを使用していただくことで、モノがより滑らかに流れるようになると考えています。

 

会社のコアバリューに反映させた、譲れない考え方 

仕事におけるこだわりを教えてください。

志賀氏:会社を経営するに当たり、MVV (ミッション・ビジョン・バリュー)を作りました。

 

その中でも仕事における譲れない考え方として、5つのコアバリューを軸に置いています。その5つとは「すごくいいやつ」「インサイドアウト」「大胆チャレンジ」「カスタマーへの発明」「コラボで進化」です。採用や社内評価も、これらのコアバリューがベースとなっています。

 

2つ目に挙げた「インサイドアウト」は、まずは自ら動く、という能動的な姿勢のことです。仕事で結果が出ない時、多くの人は他責しがちですよね。しかし、相手に求める前にまずは自分ができることを探して動く。そういった姿勢を大切にするという意味です。

 

林氏:我々2人で考えたこだわりが、会社の価値観にダイレクトに反映されています。

起業から今までの最大の壁を教えてください 

林氏:これまで、本当に多くの壁がありました。真っ直ぐな道のりでここまで来た訳ではありません。

 

創業当初は日用品・食品通販の価格比較サイトを運営しており、今のようなハードウェアを提供することは全く考えていませんでした。

 

最初の事業では機械学習を活用して、ユーザーの購買履歴から購入頻度を予測し、定期購入を最適化するサービスを試みたのですが、結局うまくいきませんでした。

 

適切なサイクルで商品を届けられたら定期購入がより使いやすいサービスになると思ったのですが、配送頻度の的確さよりも消費者側でネックとなっていたのは、日々使っている物の残量を一つずつ確認して周る作業でした。

その気付きを活かして、リアルな在庫数や残量を自動で図る仕組みを構想し始めました。しかし、2年がかりでプロダクトを施策したにもかかわらず、当初ターゲットにしていたBtoCのお客さんには深く刺さりませんでした。

 

そこで、勇気を出してBtoBにピボットした訳です。営業活動もまた一からのやり直しです。これまでピポットの連続で、大胆にこけてきました(笑)

 

私は、世間でよく知られている「リーンスタートアップ」は嘘だと思っています。リーンスタートアップは、小さく事業を始めて失敗と改善を繰り返しながら、より良いサービスを開発していくという考え方ですが、私自身の経験からある程度の規模感で大胆にこける経験をしなければ、本当に価値のある資産は得られないと感じています。

 

我々も最初の事業を立ち上げた時、結構な時間と労力をかけた後に方向転換すべきだと気が付きました。事業規模が小さいうちは、得られる気付きや資産も限定的だと思います。

 

日本発の企業として、インターネットで世界を獲る

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

志賀氏:弊社のミッションに掲げている「日常に永遠のイノベーションを」の通り、我々は皆さんの日常を大胆に変えていこうとしています。より多くの人と産業にイノベーションをもたらすため、今後はグローバル進出を見据えています。

 

我々が提供しているのは世界を変えられるプロダクトだと自負していますし、海外に進出するにあたって、脅威となる競合は現在いません。グローバル進出を達成し、さらに多くの人に我々のプロダクトを届けることが、今の大きなモチベーションになっています。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

林氏:日本発の企業として、我々がインターネット事業で世界を獲りたいですね。これまで日本企業は、この領域で負けっぱなしなんです。

 

日本発で世界的な知名度があるのは、食やアニメなどのコンテンツ、製造、エンタメが代表的ですが、それらを抜いてインターネットだけで世界で勝負しようとすると結構、手強いんです。

 

とくにシリコンバレーには高い給料で世界中から引き抜かれたスーパーエンジニア達がいますから、同じ土俵で日本企業が戦うのは不利なんです。実際、これまで多くの日本企業が苦戦してきました。

 

しかし、我々は今、いい立ち位置にいると感じています。なぜなら、ハードウェア自体は中国産ですが、日本人が手掛けているプロダクトのため「高品質に違いない」というイメージを海外の方に持ってもらえるからです。

 

しかも、海外でも有名な日本の製造業で我々のプロダクトは使われている。日本のトップ企業の在庫管理やモノづくりのノウハウを知っていて、日本の良さが詰まったハードウェアを提供している会社として、弊社は認知され始めています。

 

将来的にはこの事業を軸に、世界で勝つことが野望です。この領域で世界的な成功を成し遂げた日本企業はまだ存在しませんが、やはり日本人として勝ちたい(笑)。Amazonで働いていた時から、GAFAと戦える日本企業があってもいいのにと思っていましたから。

大胆に「こける」経験が大切

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

志賀氏:人にアドバイスするのはおこがましいように感じますが、1つ言えるとしたら「大胆にこける」ことですかね(笑)。

 

事業計画をしっかりと立てていても、こける可能性は十分にあります。我々が最初こけたのは、何も考えていなかったからではありません。

 

散々時間をかけて考えて「これが一番だ!これで成功できる」と思って行動に移した結果、こけたのです。そうした経験から、考えることに時間をかけるより、大胆にやってみて早く「こける」ことが大切だと実感しています。

 

林:私は、自分のまったく知らない領域で起業するのはおすすめしません。やはり、事業内容が浅くなりがちですから。

 

起業する際は、仕事の中で感じた課題や学生時代から胸に秘めていた世の中に対する理不尽さなど、原体験から派生した想いをカタチにした方がいいと思います。原体験を持っていない人が持っている人に同じ事業で勝つのは実際、難しいものです。

 

また、起業したからといって、真っ直ぐな道のりが用意されている訳ではありません。我々のようにピボットを繰り返して、自分が行きたかった所に辿り着くケースの方が多いでしょう。

 

事業をやる原動力がないまま起業したものの、いつしか目的を忘れてスタートアップではなく中小企業のような事業をしている企業を実際よく見かけます。

 

「世の中で話題になっているから、この事業をやる」のではなく、自分の原体験に紐づいたテーマで起業する方が持続性もあると思います。

本日は貴重なお話をありがとうございました!

【採用情報】

(株)スマートショッピングは、採用を強化中です!ご興味のある方は、ぜひ下記URLより詳細をご確認ください。

 

志賀氏・林氏コメント:スキルより、弊社のMMVに共感してくださる方かどうかを重要視しています。いまは会社の空気感や”らしさ”を築いているフェーズなので、皆で一緒に会社を作っていく感覚で働けるのが特長です。一人ひとりの裁量権が大きく、手を挙げたらやりたいことができる環境が整っています。

 

URL:https://corp.smartshopping.co.jp/recruit/index.html

起業家データ:
  • 志賀隆之 氏

京都大学大学院情報学研究科修了後、2005年にUBS証券会社投資銀行本部に入社。国内外の事業会社の外務戦略立案、M&A、資金調達のアドバイザリー業務に従事し、史上最速でディレクターに昇進。2011年に株式会社サイバーエージェントに入社し、広告事業、ソーシャルゲーム事業の立ち上げに携わる。CyberAgentAmerica, Inc. Vice President及びAMoAdInternational, Inc. President & CEOを歴任し、2014年に林と共に株式会社スマートショッピングを設立し、共同代表に就任。

 

  • 林英俊 氏

京都大学大学院情報学研究科修了後、2005年に株式会社ローランド・ベルガーに入社。幅広い業界に対して成長戦略やマーケティング戦略、経営体制整備、海外進出支援などのプロジェクトを経験し、史上最速でシニアコンサルタントに昇進。その後、IE Business SchoolへMBA留学。2012年にアマゾンジャパン株式会社に入社し、プロダクトマネージャーとして様々なサービスの立ち上げやマーケティング等に従事し、日本のeコマース史上を開拓。その後、2014年に志賀と共に株式会社スマートショッピングを設立し、共同代表に就任。

 

企業情報

法人名

株式会社スマートショッピング SmartShopping, Inc.

HP

https://smartshopping.co.jp/company

設立

2014年11月

事業内容

  • SaaSゼロクリック在庫管理発注プラットフォームの開発
  • ECゼロクリックショッピングアプリの開発

沿革

2014年11月、創業

2018年10月、IoT在庫管理ソリューションSmartMat Cloudを開始

2020年10月、IoTスマートホームデバイスSmartMat Liteを開始

 

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