Upmind株式会社 代表取締役CEO 箕浦 慶

「日本にマインドフルネスを広めたい」という想いで、心に余白をもつ習慣を実践できるマインドフルネスアプリ「Upmind」を開発した箕浦 慶 氏。インド・ゴアでメディテーション(瞑想)を経験したことをきっかけに起業。今回は、「本当にやりたいことや自分がどうありたいかを意識してほしい」と語る箕浦 慶 氏に、具体的な事業内容や事業を始めたきっかけ、今後の展望や起業する方へのアドバイスなどを伺いました。

 

心に余白をもつ習慣を実践できるマインドフルネスアプリ

さっそくですが、事業内容をお聞かせください。

Upmindという心に余白をもつ習慣を実践するためのマインドフルネスアプリを開発、提供しています。

 

Upmindでは、「マインドフルネスの実践」や「自律神経の状態をカメラで計測」、「改善につながる習慣を提案」、「入眠サポート」、「自律神経の傾向を把握」といった、日常生活で心に余白をもつために役立つ様々な機能が利用できます。

 

「マインドフルネス」は、脳科学の発展とともにさまざまな効果が科学的に実証され、心に余白をもつための習慣として西洋を中心に普及しており、瞑想などの手段で実践することが多いです。身体の呼吸や感覚など内側に意識を集中させることで、脳が休まるだけでなく、内受容感覚も高まり、ストレス耐性や生産性などを向上させる効果が期待できます。

 

Upmindでは、マインドフルネスの第一人者である吉田昌生氏と梅澤友里香氏の監修のもと、瞑想のほかにヨガなどのコンテンツも揃えています。2分間で実践できる内容もあるので、忙しい生活の中でも取り組むことが可能です。

 

また、「自律神経の状態をカメラで計測」することで、自分自身がどの程度心に余白をもっているかを把握することができます。自律神経には心身が活発な状態で働く「交感神経」と、リラックスしている状態で働く「副交感神経」があります。自律神経を数値化すると、どちらの働きがいま優位にあるのか判断することが可能です。

ストレスを抱えている方は自律神経のバランスが崩れている可能性があります。就寝前などに計測することで、交感神経が高くなっているなど、自分自身の状態を客観的に知ることができます。

 

ただし、自律神経のバランスが崩れていることを把握することだけがUpmindの機能ではありません。解析結果をもとに「改善につながる習慣を提案」することで、本質的にマインドフルネスを実現することを目指しています。そうして日々の利用により蓄積されたデータは、「自律神経の状態の傾向」を教えてくれる根拠になります。

 

Upmindでは、瞑想やヨガなどのやり方を詳しく説明してくれるので、初めての方でも簡単に取り組むことができます。最初から長時間瞑想するのは難しいと思うので、1~2分でできるものも多数用意しています。

 

仕事や家事、学校生活などで不安やストレスを抱え心に余白をもてていない方や、より整えた心の状態で日常生活を過ごし生産性を上げたい方にぜひ利用してもらいたいです。

 

マインドフルネス(瞑想)の効果を具体的に教えてください

1番大きい効果は、脳が休まることです。私たち人間は、普段何も考えていないつもりでも、日頃の不安な気持ちや過去の記憶など、「今」以外のことをつい想像してしまって、脳のエネルギーを大量に消費しています。

 

そのような雑念を鎮め、「今」だけに集中できるような精神状態を意識的に作っていくことがマインドフルネスであり、その手法として「瞑想」などが用いられています。マインドフルネスの実践を習慣化できれば、無意識のうちに疲れさせている脳を休めることができるのです。また、内受容感覚が高まることで、EQと呼ばれる心の知能指数を高め、感情の抑制が上手くなる効果もあるとされています。

 

また、弊社は東京大学と2022年から3年間にわたる中長期で共同研究を計画しており、2022年10月に最初の共同研究を実施しました。Upmindを用いたマインドフルネス瞑想を、1ヶ月間習慣的に行うことで、どの程度の効果がもたらされるのか検証するための取り組みです。

社会に出て働いている方を中心に被験者を集め実践いただいた結果、労働生産性が約17%向上し、怒りやすいと自己認識のある方の怒りやすさが14%減少することが確認できました。

 

日常生活において、メールやSNSを使用したり就寝前に動画を視聴したり、脳が休まる時間を設けていない方がほとんどだと思います。Upmindであれば、5~10分の短い時間で頭を休めることができるので、ぜひ試してみてほしいです。

 

インドで経験したメディテーション(瞑想)が今の事業につながっている

現在の事業を始めた経緯を教えてください。

もともと自分の裁量で自由に仕事をするために、30歳までに起業したいと考えていたので、2年前の29歳の時に起業しました。

 

会社に退職することを伝えたときは事業内容を決めていなかったのですが、10年前にインドのゴアという場所を訪れた際に経験したメディテーションが強く印象に残っていたのが事業に選んだきっかけとなりました。

 

ヨガ文化が根付くインドではヨガのクラスがいたるところで開催されています。そこで参加したクラスで現地の先生にヨガのやり方を教えてもらいました。朝に30分間ヨガをして、その後30分間メディテーションをしたのですが、心身ともに休めた感覚があったのです。

 

私たちの生活は、朝何を食べるか何を着るかなど常にたくさんの選択の機会があります。メディテーションをしたことで思考の余裕が生まれ、メディテーションをした後の一日は、自分にとって本当に必要かを慎重に考えて選択できるようになりました。

 

自分の心に余白があればイライラすることもなく、周りにいつもより優しく生きられます。誰もが忙しなく働き、何かに追われ余裕を失いがちな現代だからこそ、世の中に広めたいと感じ、マインドフルネスを取り入れた事業を行っています。

 

仕事におけるこだわりや譲れない軸を教えてください。

長期的な目線で物事を考えることです。海外ではメディテーションのアプリが流行っていたり、カウンセリングが一般的だったり、体だけでなく心も含めて自身をケアするという考え方が定着しています。しかし、日本では特に心の面に関してはケアするという考えが一般的ではないので、広めていくには時間がかかると思っています。

 

だからこそ、この事業においては継続が大切ですし、継続するためには私自身も健康でなければなりません。目先の利益にとらわれずに長期的な目線をもち、無理をせず楽しめる範囲で継続していきたいです。

 

日本にマインドフルネスの習慣を広めたい

起業から今までの最大の壁を教えてください。

マインドフルネスという、目に見えない価値を提供するサービスであることですね。日本ではマインドフルネスの習慣がありませんし、心の健康まで考慮したアプリはなかったので。「どのようなアプリだったら使用してもらえるのか」ということを考えることが大変でした。

 

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

日本にマインドフルネスの習慣を広めたいという気持ちです。

 

日本人は社会人になると仕事中心になり、本当にやりたいことや自分がどうありたいかを意識する機会が少ないように感じます。また、頑張る方ほど体調を崩してしまいがちです。

 

そのため、マインドフルネスで休む習慣を身に着けることで生き方を考えるきっかけを与えたいですし、頑張りたい方が体調を崩すことなく働ける健康状態をつくりたいなと思っています。そういった気持ちが私のモチベーションです。

 

今後の展望をお聞かせください。

マインドフルネスを広めたいので、Upmindのダウンロード数を増やすのはもちろんのこと、法人様と提携して従業員の方にマインドフルネスを実践してもらうといったことを進めたいと考えています。

 

今後、オフィスビルの中にリラクゼーションスペースを設ける取り組みを東京建物さんと始める予定です。その他、法人向けにマインドフルネスの習慣化をサポートするプランも展開し始めました。

 

これらのサービスや仕組みを通して、皆さんが手軽にマインドフルネスを実践できる環境を作っていきたいと思っています。

 

休息する時間を長期的に取り組んでもらいたい

起業しようとしている方へのメッセージをお願いします。

やりたいことがあるなかで一生懸命頑張ることも大切ですが、頑張りすぎると体調を崩して結局やりたいことができなくなることもあると思います。そのため、無理をせずに休息する時間をとり、万全な健康状態のなか長期的に取り組んでもらいたいです。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:箕浦 慶 氏

1991年9月18日、オーストラリアのパースにて生まれる。 3歳の時に、日本の神戸に戻り、灘中・灘高を卒業し、2010年に東京大学に入学(文科二類)。大学入学当初から当時まだ150名程度であったチームラボにてインターンを開始。 その後、2017年にアメリカ(外資系)の戦略コンサルティングファームであるBain&Company(東京支社)に転職。2019年にはドーハ支社への転勤などを経て、4年間経営コンサルタントとして働く。2021年5月にUpmindを創業。

 

企業情報

法人名

Upmind株式会社

HP

https://upmind.co.jp/

設立

2021年5月26日

事業内容

日常生活でのマインドフルネスの実践を目指したアプリ『Upmind』を開発・運営。心拍変動解析の技術を用いて、ユーザーの自律神経のバランスをスマホのカメラで計測することが可能。東京大学との共同研究で科学的な検証を元にアプリを継続して改善。直近では、法人プログラムにも注力を開始

沿革

2023年9月 累計40万ダウンロードを突破
2023年5月 マインドフルネス実践アプリ「Upmind」のAndroid正式版リリース2023年5月 AppStoreランキングのヘルスケア/フィットネス領域で1位を獲得

2022年11月 セーブ・ザ・チルドレンへの寄付活動を開始

2022年4月 東京大学との共同研究を開始

2021年11月 マインドフルネス実践アプリ「Upmind」のiOS正式版リリース
2021年7月 マインドフルネス実践アプリ「Upmind」のiOSβ版リリース
2021年5月 創業

 

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