株式会社Pictors & Company 代表 水口 史椰
リゾート会員権をオンライン上で売買できる場所を提供する「Neut」や、リモートワークの普及によって減少した出社頻度に合わせた曜日契約のオフィスサービス「WEEK」など、不動産に関わる分野で新たな視点からサービスを展開している株式会社Pictors & Company。
代表の水口 史椰氏は、ライフスタイルの要素である衣食住のうち、気分や都合で簡単に決められない「住」を柔軟に選択できる世の中にしたいと語っています。今回はそんな株式会社Pictors & Companyの代表である水口 史椰氏に、事業内容や起業した経緯、今後の展望などを詳しく伺いました。
「neut」や「WEEK」など不動産に関わる分野でさまざまなサービスを展開
さっそくですが、事業内容をお聞かせください。
当社では、「Neut」というリゾート会員権をオンラインで売買できるプラットフォームを提供しています。これまでアナログな対応が必要だったリゾート会員権がオンラインで自由に売買できたり、会員として簡単に施設を利用できるサービスです。会員権はNFTというブロックチェーン上で取引が記録されているため、他通貨を利用している方にも便利です。
不要になった会員権や使用する予定のないチケットは、仲介業者へ依頼する手間や余計な手数料もなく好きなタイミングで売却できるため、より気軽に購入できます。
販売から予約までNeut上で行えるため、ホテルが既存の予約管理の運用と併用して会員権のビジネスモデルを導入できることが強みです。
このサービスであれば年間182日は貸し出して、残りの182日は売買システムを運用するといった使い方も可能です。
その他の事業として、曜日で借りることができるオフィスサービス「WEEK」を運営しています。コロナウイルスによって普及したリモートワークは、コロナが落ち着き逆に出社回帰になる流れもあり、各社の出社形態が多様化しました。その中で、曜日を限定して借りる契約形態を可能にし、必要なときだけオフィスに集まるという今の時代に沿った就業体制の構築をサポートしています。
リモートワークを導入しているケースが多いIT業界や、プロジェクトで集まる機会のある大企業からの利用が多いです。
会員権の取引がneut上で行われることの販売者側のメリットを教えてください。
販売側はNeutを使うことで在庫連携を行えるようになっています。これまでは会員権を運用するだけで名簿や予約の管理や権利手続きなどに手間がかかっていました。しかし、NeutはNFTというブロックチェーンを利用しているのでプラットフォーム上ですべてを管理できることがメリットです。
neutやWEEKを展開していった理由をお聞かせください。
サービスに共通する軸として「住」を柔軟に選択できる世の中にしたいという思いがあります。
なぜなら、ライフスタイルの要素を構成する衣食住のうち、衣食はそのときの気分で自由に取捨選択ができますが、住に関しては選択が重く、その時の自分のニーズにフィットした選択をする上でハードルが大きいからです。
人の生活の基盤となる住に関して選択肢が広がれば、より豊かなライフスタイルを実現できると考えています。
起業した経緯を教えてください。
自分で事業を始めることにために、もともと興味があり、起業は小さいころから考えていました。若手で活躍されている方の多くがIT分野で事業を興していたことから、大学生の時に独学でプログラミングを勉強しました。
しかし、自分1人で学習しているだけでは成長できません。そこで家電量販店のインターンをしてた時に社内システムの開発に携わったり、スタートアップのサポートを行うなど、学生のうちからエンジニアとしての実務経験を積むことを意識しました。
その後やりたいことが決まり、大学4年生のときに友人と今とは異なる不動産事業の会社を一緒に立ち上げました。
社会の役に立っているかを長期的な目線にたって考えることが重要
仕事におけるこだわりや譲れない軸を教えてください。
事業を始めるからには、社会の役に立っているかを長期的な目線にたって考えることが重要だと思います。
私は短期的に儲けることには興味がありませんし、やるからには社会に価値を提供することでなければ魅力を感じません。また、時間がかかることに取り組んだほうが事業としても優位性がつき、差別化もできます。大変ですがそのぶん大きな結果を得られると思うため、その思いを大切にしています。
起業から今までの最大の壁を教えてください。
起業当時は事業をピボットすることもあり、その都度やることが変わりました。その結果、創業当初のメンバーが去り、資金が底をつきかけた時期もありました。そうした状況の中で、企業としても精神的にも崩壊寸前になったことがあります。
そのときの私は視野が狭まり、短期的な成功のみを追い求める思考に陥っていました。毎日絶え間ない危機感に駆られ、何かを成し遂げるための戦略や長期的ビジョンを見失っていました。
そんな時心掛けていたのは自分が起業した理由を常に思い出すことでした。最初に抱いた熱意と目標を忘れないようにするためです。シンプルながら、どんなに難しい状況にあってもモチベーションを保つ最も大きな要因になったと思います。
現在の事業では「住」に着目していると思いますが、そのきっかけは何かあるのでしょうか?
事業をピボットしていくなかで次の事業を考えたときに、サービスの価値が最も分かりやすいライフスタイルに関わるところを手掛けたいと感じていました。サービスの普及による影響もわかりやすいですし、誰かの人生に深く関わっているという実感を得やすかったからです。学生時代も空間に関わるイベントを運営していたため、建物・場づくりには特に関心を持っていました。
また、衣食住のうち、「住」の領域は他の「衣食」以上にアナログな領域が多く、ITを経験していたことを活かせると思ったことも理由です。
小学生時代は大金持ちならぬ大折り紙持ちに
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
実は小学生の頃のあだ名が社長でした。小学生時代はカードゲームが流行っており放課後に友人と集まって遊んでいたのですが、持ち込み禁止である学校でもやりたくなるため自分たちでオリジナルカードを作ったのです。
折り紙でつくったオリジナルカードを6枚入り1パックにして、折り紙3枚を対価に販売し、絵が得意な友人に6枚分描いてもらって対価として折り紙1枚渡していました。折り紙で原価や人件費を計算し、経営のようなことをしていたのです。
そのオリジナルカードが流行したこともあり、結果的に大金持ちならぬ大折り紙持ちになったのです。その当時から、自分がつくったものが喜んでもらい、サービスを提供する立場でい続けることにモチベーションを感じていたと思います。
今後の展望をお聞かせください。
今手掛けているNeutは不動産の選択肢をカジュアルに広げ、ライフスタイルを多様化させることを目的としています。会社としても主たる住居よりは、既存の不動産を利活用するようなセカンドハウスを重視しており、これからも力を入れていきたいですね。
現在5拠点あるWEEKも、デベロッパーさんとの共同事業のため当社の一存では決められませんが、今後も拠点を増やしていきたいと考えています。
採用にも力をいれていく予定です。「不動産開発のプロセスを分散化し、誰もが参加できるようにする」というミッションのもと、ブロックチェーンを利用した分散型プロトコルを開発するエンジニアを募集しています。私の思いに共感してくれる方がいましたら、ぜひ一緒に働きましょう。
周囲から認められなくてもチャレンジし続けてほしい
起業しようとしている方へのメッセージをお願いします。
私が起業するうえで大切だと思うことは2つあります。1つは「人」です。事業をピボットしたときに人が離れてしまった経験があるからこそ強く感じるのですが、仮に好きじゃないことに取り組まなければならない局面でも、気の置けない仲間と一緒であれば、案外楽しめるものです。何をやるにしても、まずは誰とやるかが重要です。
その次に、その仕事に「夢中になれるか」どうかです。私は今不動産業が好きで夢中になってやれているのですが、困難な状況に直面したときでも乗り越えられるのは好きでやっているからです。信頼できる仲間と、夢中になれることを見つけてほしいですね。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:水口 史椰 氏
慶應義塾大学経済学部卒。学生時代はソフトウェアエンジニアとして活動しており、複数のスタートアップでアプリ開発や株式会社じげんの子会社の立ち上げに参画。2015年8月に株式会社Pictors & Companyを創業。トータルコーディネートされたお部屋を借りられる「qube(キューブ)」、曜日単位で借りられるオフィスサービス「WEEK(ウィーク)」など、不動産関連のサービスを運営。2023年6月、リゾート会員権NFTプラットフォーム「Neut (ニュート)」をリリース。
【企業情報】
法人名 |
株式会社Pictors & Company |
HP |
|
設立 |
2015年8月 |
事業内容 |
リゾートホテル会員権販売プラットフォーム「Neut」、曜日ごとの契約できるオフィスサービス「WEEK』を運営。人と不動産を柔軟に結ぶことを目指した不動産事業を展開。 |
沿革 |
2015年8月 株式会社Pictors & Company創業 2020年6月 曜日単位で借りられるオフィスサービス「WEEK(ウィーク)」をリリース |
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