ワークログ株式会社 代表取締役 山本 純平
システム開発や業務のDX化を支援する、ワークログ株式会社。大学、不動産、人材ビジネスを始めとした「本当に意味のあるシステム開発」を求める、さまざまな業界から絶大な評価を得ています。新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化し始めた2020年には、神奈川県と提携し医療機関の予約代行システムを構築するなど、自治体のDX支援も手掛けています。今回は代表取締役の山本純平氏に事業内容や今後の展望、また同社が採用したい人物像についてなどを詳しく伺いました。
結果を出すための「提案力」を武器に、企業と自治体のDX化を支援
事業の内容をお聞かせください
弊社はIT・DX分野のコンサルティング及び企画開発を行っています。ここ3年は公共事業のプロジェクトも手掛けており、省庁や自治体との仕事も増えています。
また、私が以前働いていた不動産管理会社での気付きを活かして、不動産DXにも携わっています。
不動産管理は非常に業務量が多く、解約の後は物件のリフォームや営業活動を行い、新規の契約が決まった後は契約手続き、修繕の対応、督促などさまざまな業務に対応しなければなりません。
業務量が多いものの利益率は高くないため、不動産管理会社は人件費をいかに削減できるかが勝負です。そこで我々がITの知見を活かして、業務フローの改善と仕組み作りを支援しています。
たとえば業務管理をすべてエクセルで行っている会社があったのですが、入力方法や更新の仕方に問題があり、どのファイルが最新なのかがわからない状況でした。そうした業務を整理し、効率化を上げるために仕組み化するのが我々の仕事です。
さまざまな業界で実績を積み上げられてきた貴社の強みを教えてください
我々の強みは提案力だと思っています。
通常の受託開発では、お客さんから「こういう仕組みを作ってください」と指示があり、それに従って作業します。最初から仕様が決まっているため、どのエンジニアが担当しても結果は同じです。
しかし私は、誰がやっても同じ仕事はつまらないと思うのです。AIでもプログラミングができる時代にあえて人間が入る価値は「提案力」にあると考えています。
お客さんが求めている仕様が本当に正しいのかを切り込んで追求するのが、我々のやり方です。ざっくりとした要望や実現したいことをヒアリングし「こういう仕組みはどうですか?」と提案し、さらに一度の提案では終わらず開発途中に何度もお客さんと話し合い、改善を重ねていきます。
こうした提案型の要件定義をスムーズに実現するために、弊社ではコンサルタントとエンジニアを同じチームに配属しています。
弊社がコンサルティングのみ行い、自分たちの手は動かさないというやり方では最善の結果は得られないと思うのです。コンサルとエンジニアが同じチームで一緒に動き、ITコンサルとSIerとしての価値を一緒に提供しているのが弊社の特徴です。
*10自治体限定でノーコードツールを使ったデモアプリ開発を無料で提供されたようですが、それはどのような理由からでしょうか?
自治体の多くは、大きな予算をいきなり動かすことに抵抗感を持っています。
そこでまずは無料で我々のサービスを使っていただき、導入のハードルを下げようと考えました。使っていただかないことにはアプリの利便性や使い心地は伝わりませんから。
もし各自治体にアプリの良さを実感してもらえたら、次年度からはアプリ導入の予算を確保していただけると期待しています。
また、神奈川県の葉山町では弊社が企業版ふるさと納税を活用することでDXプロジェクトを立ち上げました。とにかくきっかけがないと自治体のDX化は進みません。
無料施策を始めたのもきっかけ作りの1つです。
ノーコードツールを活用し「神奈川モデル」を構築
自治体と仕事をするようになったのは、どのような経緯からなのでしょうか?
最初のきっかけはコロナでした。
2020年3月に神奈川県内で新型コロナウイルス感染症対策本部が立ち上がった際、統括官を務めていた方からご連絡をいただきました。
「緊急事態だからとりあえず来てくれ」と言われ、何をするのかもわからなかったですし、私は医療の知識も全くない状態でした。しかし、緊急事態だということは理解していたのでとりあえず行ってみることにしました。
対策本部で最初に取り掛かったのが、商業施設や飲食店などの感染対策がひと目でわかるシステムの構築です。このシステムは「感染防止対策取組書・LINEコロナお知らせシステム」と名付けられ、万が一従業員やその場にいた方の陽性が確認された場合、事業者側が周知できる機能も備えています。
それだけではなく、医療機関の予約代行システム、宿泊療養の管理、自主療養証明の申請・発行、下り搬送調整支援システム、抗原検査キット配布事業、クラスター管理など、10を超えるプロジェクトを手がけました。神奈川県は早々にノーコードツールのキントーンを導入することを決めていたので、それを活用して仕組みを作っていきましょうと我々が提案して骨子を作り、プロジェクトを進めていきました。
現在も神奈川県との取り組みは続いており、2023年7月からDX推進アドバイザーとして業務のDX化を支援しています。
起業された経緯をお伺いできますか?
私は以前、IoT事業を行う会社でコンサルタントとして働いていました。その時に一緒に働いていたエンジニアと一緒に独立し、会社を設立したのが経緯です。
私はコンサルタントとしての経験があり共同創業者は開発の知見があったため、これまでの経験を活かせるIT分野で独立しようと考え、今に至ります。
公共事業に関しては神奈川県との取り組みがきっかけとなり広がっていき、これまでに大阪府、三重県、葉山町、旭川市からもお声掛けいただき、一緒に仕事をしたことがあります。
現在は自治体との仕事が増えてきていますが、最初からそれを計画していたわけではありません。そもそも私は自治体が行っている仕事をよく理解していませんでした。
その分、パンデミック中に神奈川県の方々と一緒に働いた際、ある意味大きな衝撃を受けたんです。県民の命に対して本気で向き合っている人たちがこんなにもいるのかと。自治体の方々は定時に帰るイメージが強かったのですが、私が一緒に働いた際には、緊急事態が起こると皆で深夜まで仕事をしていました。
また、コロナに限らず自然災害などの緊急事態が起きたら幹部が即座に登庁するフローになっていることにも驚きましたね。そうした働き方を目の当たりにして、自治体に対するイメージが180度変わりました。
自治体には仕事に真摯に向き合っている方が多いからこそ、業務効率化に向けたDXを我々が支援したいと強く思うようになりました。
差別化の要因は提案力
仕事におけるこだわりを教えてください。
こだわっているのは提案力です。先ほどの話と被るのですが、私は提案力こそが他社と差別化できる大きな要因だと考えています。
私は人の言いなりになるのが好きではありませんし、自分の意見を普段からハッキリと伝えるようにしています。正直に意見を言うと嫌われるのではないかと最初は思っていましたが、相手から信頼されることのほうが多いと気付きました。
強気で主張しても案外嫌われないことに私自身が驚いています(笑) 。
もう1つのこだわりは、一緒に仕事をする相手を選ぶことです。これまで私は、不動産業界や人材紹介事業などさまざまな仕事をしてきましたが、一緒に仕事をしたいと思う人がいる会社を常に選ぶようにしていました。
独立した今は、一緒に働く人をさらに厳選しています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
弊社は現在6期目なのですが、社長は私が2代目です。
前職で一緒だった同僚と3人でこの会社を立ち上げた際は、私は代表にはならず2番手だったのですが、前代表が他の会社に引き抜かれる形で突然退職することになったんです。
私はもともと独立したいという気持ちが強くなく、どちらかというと元同僚と一緒に仕事がしたいという理由でこの会社を一緒に立ち上げることにしました。
社長というとキラキラしたビジョンを掲げて人を惹きつける人といったイメージがあり、当時は性格からして自分は社長タイプではないと思っていました。
私は現実的に物事を考えるため、予測できない10年後や20年後に向けてビジョンを描くより、来年や再来年のことを見据えて現実的な計画を立てるほうが好きなんです。
しかし初代の代表が退職することになったため、代わりに私が代表に就任しました。その時は会計や登記も全部見直し、これからどうしようかと不安でかなりしんどかったですね。神奈川県とのコロナ対策プロジェクトを立ち上げた時もしんどかったのですが、私は体力的にタフなのでその時は意外に大丈夫だったんです。
当時は使命感のようなものに突き動かされて、とにかく必死で働いていましたね。
1社目での成功体験と神奈川県との取り組みが大きな自信に
これまで働いてきたなかで、大きな成果ややりがいを感じた瞬間はどのような時でしょうか?
今パッと思い出せることが2つあります。
1つ目は新卒で入社した会社でのエピソードです。当時は残業が多く、会社のカルチャーも特異で教育勅語を唱和できないと試用期間が終わらないという決まりでした。
会社の文化が自分には合わないとすぐに感じたのですが、入社して3ヶ月間営業をした後に突然、社長室に配属されることになったのです。しかも社長室に配属されたのは私のみで、毎日社長に叱られ続けた結果、異動になりました。
その時は挫折感と悔しさでいっぱいでしたが、早く結果を出せるように毎日必死に働いたら入社から1年ほどでマネージャーに昇格できたんです。
あの環境で昇格できたことは私にとって大きな自信になりました。これからどの組織に行ってもやっていけると思えるのは、あの時の成功体験があるからです。当時の私には辛い環境として捉えていましたが、改めて今思えば現在の自分の成長に繋がっている部分もあるので、そういった意味ではとても感謝しています。
もう1つは、私のキャリアの中でも最もチャレンジングだったといえる、神奈川県と行ったコロナ対策です。当時、弊社や私のことを知っている人は先方にいませんでしたし、私も自分が何をするべきなのかがよくわからない状況で単身乗り込みました。しかも最初は契約書もない状態だったため、本当に契約に繋がるのかや、どれくらい契約が続くかは未知でした。
しかし、ここで私の力量を測れると思ったんです。これまでベンチャーで働いてきて、ある程度評価もされてきましたが大企業でも自分は通用するのだろうかとモヤモヤもありました。
だからこそ、自治体との仕事はベンチャー以外の場所で自分がどれほど通用するのかがわかる良い機会になると考えたんです。
あれから3年半が経った今も神奈川県との仕事は続いています。ここでも私は通用すると、胸を張ってもいいのかなと思えましたね。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
今後はさらに自治体との取り組みを増やしていきたいと思っています。
神奈川県のDXを支援するにあたり、少し前に市町村を周ってヒアリングをしたのですが「DXって何からスタートしたらいいの?」といった反応が返ってくることがほとんどでした。
未だに紙で文書を管理している所が多いのが現実です。業務効率を上げるためにも、DX化が必要だと強く感じました。
自治体には災害時に本気になれる方が多くいらっしゃいます。そうした方々がスムーズに業務を行えるようしっかり支援していきたいですし、特に高齢化が進んでいる小規模の市町村を支援できると一層やりがいを感じます。
誰と一緒に仕事をするのかが大切
起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします
結局大事なのは、誰と仕事をするかだと思います。
以前私は、農家向けのプロダクトを作ったことがあるのですが全く売れませんでした。
売れなかったのはマーケティングの問題もありますが、それ以前に農家さんからの信頼を得られなかったことに大きな原因があると思っています。農業経験がない私は農家さんの良い相談相手にはなれませんでした。
そういった経験もあり、誰と一緒に仕事をするのかを強く意識するようになりました。
何より、周りの人から一緒に仕事がしたいと思われる人に自分がなることが大切です。人から信頼されていれば、大抵の仕事は上手くいくのではないでしょうか。
たとえ仕事がない時でも、信頼さえあれば他の人が新たに仕事を作ってくれるものです。
私自身、有り難いことに以前働いていた不動産管理会社を独立した元同僚から仕事をもらっていますし、元同僚で採用担当者や公認会計士になった人には、パートナーという形で弊社の経営を支援してもらっています。
私のキャリアは一本道ではありませんでしたが、2社目と3社目の元同僚との縁も続いていることを考えると、人という観点では1つの軸で繋がっています。
どのような事業で起業するとしても、これまでの人脈や信頼関係は活かせますし、もっというとその2点を大事にする人であれば何をやっても上手くいくはずです。
また、起業は若い人のほうが有利だと思われがちですが、そうとも限りません。実際に20代で起業した人の多くは会社を閉じています。むしろ、実績を積んだ30代以降の人が起業したほうが、会社を存続させられる可能性が高いのではないかと感じます。
年齢を重ねると保守的になる人が多く起業する人も減ってくるのですが、年齢を重ねたからこその知識の深さや業界に対する知見が武器になると私は思います。
採用強化中!実力があれば見た目は自由
採用を強化されているそうですね。採用したい人物像を教えていただけますか?
金髪か坊主の人に入社してもらいたいです(笑)。なぜかというと、金髪か坊主の人は間違いなく仕事ができる人だと思うからです。仕事ができて周りから信頼されているからこそ、見た目について何も言われないのでしょう。
モード系ファッションを身にまとっている人やロン毛でちょんまげにしている人もそうですが、仕事ができるから見た目が派手でも奇抜でも許されている人がたまにいるんです。
ぜひそういった人に入社していただきたいですね。
私の理想はキャラクターが尖った社員が有名になり、その受け皿に会社があるという形です。その方が個人のキャリア形成にも有利ですから。それぞれのキャラクターが伝わるよう、弊社のHPには役員の顔写真と前職からのキャリアも載せています。
キャラクターが尖った人であればあるほどいいですし、将来的に起業したい人や副業をしている人も大歓迎です。彼ら彼女らのキャリア形成に役立つような仕事を会社として用意し、社員の成長を後押ししたいと考えています。
採用の詳細はこちらから:URL https://www.worklog-inc.com/recruit/
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:山本 純平氏
1987年生まれ。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科を修了後、司法書士を目指し受験するも不合格。その後、不動産管理会社・人材紹介会社に就職し、不動産業・人材紹介業だけでなくマーケティング・新規事業・支店立ち上げなど幅広い業務に携わる。株式会社ウフルではコンサルタントとして主に大手製造業のIoT新規事業企画に参画。2019年6月にワークログ株式会社を立ち上げ、2020年10月より代表取締役に就任。2023年7月より神奈川県庁DX推進アドバイザーを兼務。
企業情報
法人名 |
ワークログ株式会社(Worklog, Inc) |
HP |
https://www.worklog-inc.com/ |
設立 |
2019年6月 |
事業内容 |
コンサルティングおよびシステムの受託開発・ ITサービスの提供 |
沿革 |
■ 2019年6月 創業 ■ 2020年3月 神奈川県新型コロナウイルス感染症対策本部 参画 ■ 2022年9月 年間売上1億を達成 ■ 2023年7月 代表山本 神奈川県DX推進アドバイザー就任 |
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