LAETOLI株式会社 代表取締役 武藤 弥


LAETOLI株式会社は、不動産投資クラウドファンディングサービス「COZUCHI(コヅチ)」を主に運営する不動産投資会社です。ミッションに掲げているのは、得意領域である「不動産」と「建築」を中心とし「フェアエコノミー」を構築すること。

スマホを使って1万円から不動産投資にチャレンジできる「COZUCHI」は瞬く間に人気を集め、累計調達額は約603億円に到達しています。(2023年12月時点)

 

代表取締役として同社の成長をけん引しているのは「投資家ファースト」を経営方針に掲げる、武藤 弥氏です。

今回は武藤氏に事業内容や仕事のこだわり、また今後の展望などを詳しくお聞きしました。

 

オンライン完結で誰でも参加可能な、不動産投資クラウドファンディング

早速ですが、事業の内容をお聞かせください         

当社のメイン事業は「COZUCHI」という不動産クラウドファンディングサービスです。

我々は不動産特定共同事業法に基づく免許を取得しています。この法律自体は20年ほど前からあるのですが、ここ10年以内で法改正がされました。

従来の不動産投資では、出資を募る際に対面で投資家さん1人ひとりに内容を説明していましたが、法改正がなされたことでインターネットで資金を集められるようになりました。

参入障壁が下がったため免許を取得する会社が徐々に増えているものの、不動産投資クラウドファンディング業界にはまだ数十社ほどしか存在していません。

当社はいち早くクラウドファンディングを取り入れ、投資家さんはどこからでも、いつでもオンライン完結で不動産投資を始められるビジネスモデルを作りました。

我々が提供する「COZUCHI」は、累計調達額が業界ナンバーワンの実績を誇るサービスに成長しています。

 

どのような経緯で不動産投資とクラウドファンディングを掛け合わせた事業を始めようと思われたのでしょうか?         

私はもともと20年近く不動産業界で働いた経験があり、その大半の期間は不動産投資に関わるものです。そのため、「COZUCHI」のビジネスモデルはクラウドファンディングありきで考えた訳ではなく、どちらかというと不動産投資ありきで構築しました。

最近は若い世代でも投資をする人が増えてきましたよね。その流れもあり、インターネットで自分の好きなブランドや人を応援できるクラウドファンディングの人気も高まっています。そこで、私が得意とする不動産投資とクラウドファンディングを結びつけて、若い人たちが少額で不動産に投資できるスキームを作ろうと考えました。

投資の世界には株や債券などもありますが、その中でも不動産は非常に規模が大きく、投資対象の柱といえる存在です。そのため、不動産投資とクラウドファンディングを結びつけたら、その親和性の高さからマーケットが大きく広がっていくだろうと考えました。

これまでの不動産投資では、投資家さん自身がリスクを取り、銀行から借り入れをして物件を購入するのが一般的でした。そうした不動産投資では数千万または億単位の金額が必要です。

それを1万円ほどの少額資金で投資できるようにしたのが、クラウドファンディングを活用した当社のサービスです。

 

また、同じように小口で不動産投資ができるスキームに、REIT(リート)があります。REITは、Real Estate Investment Trust の略で、投資家さんから集めた資金で不動産を購入し、物件から生まれた収益を分配する金融商品のことです。

我々のサービスは小口投資ができるという点でREITに似ているのですが、REITは東京証券取引所に上場している銘柄がほとんどで、売買は証券会社を通じて行われます。

一方で我々が扱っている不動産は上場しているわけではなく、よりプライベートなものです。そういった意味では、我々は投資家さんに新たな小口投資の選択肢を提供できているといえます。

 


起業された理由を詳しくお聞かせください  

LAETOLI株式会社は私が創業したのではなく、数年前にM&Aした会社です。

前身企業は1999年の創業で、25年の歴史がある会社なんです。創業者は佐藤カズオさんという方で、不動産特定共同事業法の法律が作られた際に活躍された方でした。

昔は、不動産事業者が主体的に直接お金を集められる仕組みはありませんでした。不動産を買う時は銀行からお金を借りるしかなかったんです。

しかし、バブル崩壊を受けて銀行がお金を貸さなくなったことから、不動産の価格が一気に下がってしまった時期がありました。結果的に市場が急激に収縮し、多くの不動産会社が倒産しました。

 

こうした状況を前に佐藤さんは「もし銀行に頼らずに自分たちでお金を集める方法があれば、もっと市場は正常化したのではないか」と考えたんです。多くの不動産会社も倒産を免れたのではないかと。

 

そこで、投資家さんから小口で直接お金を集める仕組みを作ろうと佐藤さんが立ち上げたのが、弊社の前身となる会社です

ただ、不動産特定共同事業の免許を持っている会社が100社ほどしかなかったため、市場も事業も思ったほど伸びませんでした。しかも対面営業をしていましたから、会社のコストは膨らんでいくばかりです。

 

しかし、ここ最近はITのお陰で対面営業をしなくても投資家さんと繋がれるようになりました。

 

不動産の小口投資は投資家さんにとっても事業者側にとってもメリットがある、という佐藤さんの信念をようやくカタチにできる世の中になってきています。

現在は第二創業期として佐藤さんが描いた理想を引き継ぎつつ、不動産の新しい投資スタイルを世の中に広めていこうと邁進しています。

 

投資家ファーストの姿勢を徹底

仕事におけるこだわりを教えてください                        

 

仕事では常に「投資家ファースト」の姿勢を忘れないようにしています。これは社員にも普段から伝えていることです。

現在、COZUCHIには約55000人の投資家さんがいらっしゃいます。(2024年1月時点)対面営業はしませんから、我々は投資家さんたちの顔を知っている訳ではありません。そして、一回の投資金額は50万円〜100万円のケースが大半です。一般的な不動産投資の規模からしたら小さく、不動産投資会社によっては投資家さんの対応をいい加減にしてしまう事業者もあるかもしれません。

しかし、我々は投資家さんの存在があるからこそ事業が成立していることを絶対に忘れず、仕事に取り組んでいます。投資家さんのお陰で我々は物件を購入でき、不動産運営を行え利益を生み出すことができるのです。
仮に、ものすごく儲かりそうな物件があったとしますよね。この場合、自分たちの利益を最大化するために投資家さんからの出資を募らず、より金利コストの低い銀行からお金を借りて自分たちだけで投資をすることだってできるわけです。しかし、我々はその選択肢を取りません。どの投資案件も投資家さん達と共有します。

 

もうひとつ例を挙げます。

想定年利5%の案件があったとします。それが予想より高く売れて、10%の配当を配れることになったとします。しかし、もともと約束していた利益は5%ですから、他の事業者の多くは、その分のみお支払いをしています。もちろんお約束した配当をすればいいという考え方もありますが、我々はきちんと儲かった分も追加で10%配当します。

投資家さんとの関係性において、フェアであることが我々の基本的な姿勢ですので、利益もきちんとシェアします。常に投資家さんのことを考えているからこそ、これまで元本毀損は一度もありません。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください

「COZUCHI」をローンチした時は、クラウドファンディングで本当にお金が集まるのかといつもドキドキしていました。

我々はインターネット上で直接投資家さんからお金をお預かりしています。第三者が入っていませんから、我々が嘘をついてお金を持ち逃げすることだってできるわけです。

そうした中で新しい会社かつ、まだ社会的な信用もない我々が本当にお金を集められるのだろうかと当時は不安でした。

 

しかし、結果的に最初のプロジェクトでは3億円を集めることができました。

そして、不安を抱えながらも挑戦し続けたら、1案件で36億円を調達できました。当時のクラウドファンディング業界では異例といえるほどの大きな数字です。

不動産を購入する際は、買う約束を先に売主さんと交わさなけばなりません。後になって「購入するお金が集まらなかったので、やっぱり買えません」とは言えないのです。

したがって、決済までに我々がお金を集めきらないと、決済できずに手付金を没収される可能性もあるわけです。そうした不安を抱えながらの挑戦でしたが、36億円を集めきったことで大きな壁をまず一つ超えられたという達成感があります。

36億円の次は70億円に挑戦し、こちらも成功させました。現在はさらに大きく1案件で110億円の資金調達を達成しました。

大きな調達を次々に達成できたのも、我々が「投資家ファースト」の姿勢を持っていたからだと思います。

当社は大手でもなければ上場もしていません。投資家さんからの信用を得られるわかりやすい材料がない中で、真摯に信用の構築につながるように徹底した情報開示を大切にしました。

「COZUCHI」のWEBサイトでは、不動産に関する情報をかなり細かく公開しています。なるべくわかりやすい言葉で詳細な情報開示をすることが、信用を獲得する上で大変重要だと考えているためです。

それだけでなく、四半期に一度は必ず各物件の進捗状況を投資家の皆さんに送っています。そうしたことの積み重ねが少しずつ信頼構築に繋がっていくのだと思います。

 

市場の経済状況に左右されない不動産投資市場をつくる

進み続けるモチベーションは何でしょうか?             

不動産投資クラウドファンディング市場を今後さらに伸ばしていくことが、モチベーションになっています。

現在、不動産クラウドファンディング市場に参加している投資家さんは約10万人くらいだと思っています。ですが、株式投資の証券口座を持つ人は約4,000万人に上ります。この差は、不動産クラウドファンディングに大きな成長のポテンシャルがあることを示しています。

 

日本の不動産市場は数千兆円にも上る規模です。もしクラウドファンディングをこの市場に上手く組み込めたら、たとえ市場の10%を占めるだけでも、200兆円規模の市場に成長する可能性があります。

前身企業の創業者である佐藤さんと同じく、私は金融機関に依存しない不動産市場の存在が必要だと考えています。

 

バブル崩壊やリーマンショックの時のような金融危機がまた起きる可能性は否定できませんよね。そういったことが起きた際、銀行は融資を停止せざるを得ません。

しかし、クラウドファンディングが普及していれば、市場が不安定な時でも投資家さんは不動産を購入できます。金融機関の姿勢に左右されずに好きな時に投資できるのです。

 

また、銀行が扱わない物件を我々がクラウドファンディングで扱うことで、結果的に街づくりや地域創生にも繋がると考えています。クラウドファンディング市場をさらに伸ばすことは、そうした社会的意義のある活動にも繋がっています。 

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

不動産投資の流動性を高めていきたいと考えています。

 

不動産資産は流動性が低く、明日現金化したいと思っても難しいのが現状です。一方で、株のように流動性が高い投資は比較的早く現金化できます。

不動産は安定的な資産ですが、流動性が低いため必要な時にすぐに現金化できません。

しかし、我々が流動性の高い不動産投資の仕組みを作れたら、投資家さんからの大きな需要も見込めると考えています。

極端にいうと、投資した100万円を明日現金化したいと思ったらそれが実現する仕組みです。

実はすでに実験的に施策をおこなっています。

具体的にいうと、投資家さんが1年前に投資した商品を半年後に現金化したい場合、我々が一度買い取って保有しておき、しばらくして売り出します。

するとその案件に投資したい別の投資家さんが現れます。もともと1年スパンの投資だったのが期間が短くなったわけですから、見かけ上の利回りがものすごく上がることもあって人気が高まり、投資家さんからの応募率も大きく伸びました。

最終的な理想はCtoCの仕組みを構築し、売りたい人と買いたい人を直接マッチングすることです。

強みを知り、自分が提供できる価値を分析することが大事

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします  

もし明日起業したいと思ったら、挑戦した方がいいと思います。もちろん大変なこともありますが、それは当然のことです。重要なのは、「まずはやってみる」というチャレンジの精神ではないでしょうか。

また、自分の強みを明確にすることも大切です。

たとえば我々の強みは、他のクラウドファンディング事業者と比較したときに、案件に特徴があります。

他の事業者さんは、新築マンションなどクラウドファンディングを活用しなくても資金調達ができる物件を扱っている事が多いです。

しかし、我々は、、権利関係が複雑物件、築年が経過している物件など、金融機関が手を出しにくく、クラウドファンディングでなければ資金調達が難しい物件を扱える点にあります。

何かしら課題を抱えている物件を、安く購入して、ひと手間ふた手間かけてバリューアップして、高く売却する。

これができるプレイヤーは国内にほぼ存在しません。


不動産業界はレッドオーシャンですが、この領域だけブルーオーシャンだったわけです。

起業を考えている人は自分の強みを見極め、自分の能力やアイデアが会社の方向性や社会的意義に合致する領域をぜひ見つけてみてください。

 

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:武藤 弥


2001年早稲田大学理工学部建築学科修士課程了。同年リクルート創業者江副浩正氏が経営する不動産ディベロッパーにて開発業務等に従事。その後独立し、2003年家具ブランドIDEEとともに、アールプロジェクト株式会社を設立し、取締役就任。リノベーション事業や商業施設の開発事業等を行う。2009年株式会社シェアカンパニー設立、代表取締役に就任。シェアハウスやシェアオフィス、ホテルの開発運営を行う。同時期2011年株式会社TRIAD設立、取締役副社長に就任。機動的な投資資金を運用し、様々な不動産投資案件を手掛ける。不動産投資分野に豊富な経験とネットワークを有する。

 

企業情報

法人名

LAETOLI株式会社

HP

https://laetoli.jp/

設立

1999 年 5 月 20 日

事業内容

不動産投資型のクラウドファンディング「COZUCHI」の運営WEB3、ブロックチェーンといったテクノロジーを使った領域にも事業展開

沿革

  • 1999年   

 5月:株式会社サタスインテグレイト設立

 10月:宅地建物取引業(東京都知事第 77822 号)登録

  • 2005年

 3月:不動産特定共同事業(東京都知事第 60 号)登録

  • 2008年

 3月:不動産特定共同事業法に基づく投資商品『ゆうゆう俱楽部』ローンチ

  • 2018年

 9月:社名を株式会社SATASに変更

  • 2019年

 9月:第二種金融商品取引業(関東財務局長(金商)第 740 号)登録

 9月:不動産特定共同事業における電子取引業務ライセンス取得

 9月:インターネットを活用した不動産小口化商品クラウドファンディングサービス『WARASHIBE』ローンチ

  • 2021年

 8月:社名をLAETOLI株式会社に変更

 9月:サービス名称を『WARASHIBE』から『COZUCHI』へリニューアル

  • 2022年

 6月:COZUCHI累計調達額 100 億円突破

 9月:COZUCHI累計調達額 200 億円突破

 

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