オルガノン株式会社 代表取締役 櫻井亮太氏

「すべての女性に、より豊かで、より健やかな毎日を」をビジョンとして掲げるオルガノン株式会社。

 

世界140カ国以上で展開するグローバルヘルスケア企業Organon & Co.の日本法人として、避妊薬や不妊症治療薬などウィメンズヘルス領域の製品を提供する他、循環器、呼吸器、皮膚、中枢神経系疾患領域の医薬品をお届けしています。

 

今回はオルガノン株式会社の代表取締役の櫻井亮太氏に事業内容や会社設立の経緯、今後のビジョンについてお伺いしました。

 

ウィメンズヘルスの領域で「すべての女性に、より豊かで、より健やかな毎日を」届けたい

事業の内容をお聞かせください

私たちの親会社であるOrganon & Co.は、女性の健康に注力するグローバルなヘルスケア企業で、医薬品・医療機器の製造販売が弊社のコア事業となっています。ウィメンズヘルスは大手の製薬企業も注力していなかった領域で、この前人未到の領域でパイオニアになることを目指して創業しました。

本社はアメリカのニュージャージー州にあり、全世界では約1万人の従業員がいます。ウィメンズヘルスを標榜する企業としては最大規模です。日本法人では約100人の社員が働いており、冒頭でお話ししたように、さまざまな疾患領域にわたる製品に加えて、ウィメンズヘルス領域では現在、避妊薬や不妊症治療薬を取り扱っています。

 

事業を始めた経緯をお伺いできますか?

オルガノンは、元々は非常に大きなアメリカの製薬会社の事業再編の一環として会社分割をしたところからスタートしています。現在、グローバルな医薬品業界は様々な再編が進んでいます。会社の母体が大きくなると企業分割することによってそれぞれの強みを生かした事業展開をしていくことが多いです。私自身もオルガノンの前身である会社の日本法人に勤めており、直前は会社を分割するプロジェクトにて、オルガノンを創立するための仕事をしてきました。

 

当初、「オルガノンをどういう会社にするのか?」といった具体的なプランは母体側からはありませんでした。会社を創立するための準備期間は長期にわたりましたが、あくまでそれは会社としての仕組みや組織をつくる為に必要な期間だったと思います。

 

ニューヨークの証券取引場に上場した2021年の6月以降、本格的に始動し「オルガノン」としてウィメンズヘルスを目指して事業を展開していく事が出来る様になりました。それにあたって「すべての女性に、より豊かで、より健やかな毎日を」というビジョンを掲げました。

 

全てのスタッフが「ファウンダー」であり、オルガノンを創っていくのは自分達ひとりひとり。

仕事におけるこだわりを教えてください。

オルガノンの日本法人を設立するにあたって、70名程のスタッフと20製品の医薬品を前の会社から引き継いでスタートしました。それらの多くはウィメンズヘルス領域の製品ではありませんでしたが、私たちの製品を使用している患者様は多くいらっしゃいます。製品を必要としている人に安定的にお届けするため、この部分はしっかり引き継いでいます。

 

元々は国内で3000人程のスタッフがいた環境から一転して、オルガノンはリーンな組織になりましたが、やらなければならない事は減るわけではありません。だからこそひとりひとりの役割が重要になってきます。このような環境の変化の中で、弊社が目指す将来に対し、各自が強い信念を持って、従来のやり方にとらわれず新しい仕事のやり方に挑戦したり、役割分担があいまいな中でも誰かが率先して行動したりするようなカルチャーをつくることに注力しています。

 

オルガノンの価値観、バリューはユニークなものになっています。

Be real(本物であれ)、

Own it (責任を持つ)、

Rise together (共に成長する)、

Keep Moving (一人ひとりが主役)、

Bring your fire (情熱を持つ)、

We all belong (常に前進する) の6つです。

 

オルガノンがオルガノンらしい企業になっていく為には、前身の会社や業界他社とも全く違うカルチャーをつくらなければいけません。このユニークな6つのバリュー前社から移ってきた方や新しく入社する方とも共有し、ひとりひとりの力を引き出してオルガノンを創り上げていく過程が私にとって一番面白い所です。

 

ちなみに、弊社は全てのスタッフを「ファウンダー」と呼んでいます。これは創業者という意味です。グローバルCEOもファウンダーですし、もちろん私も、明日入社してくる方もファウンダーなのです。オルガノンをつくっていくのはファウンダーである皆さんひとりひとりなのだと機会があるごとに社員に向けてメッセージとして発信しています。

 

起業から今までの最大の壁を教えてください。

ウィメンズヘルスの領域で会社をやっていく点に関して社内外で「本当にウィメンズヘルスでやっていけるのか?」といった懐疑的な声もありました。弊社は明確なフラグシップ製品や技術があって「これを売れば誰が見てもウィメンズヘルスの会社になれる」というような製品を最初から持っていたわけではありません。

 

しかも、薬事規制が厳しい医薬品領域はすぐに製品が出せるわけではないため、ウィメンズヘルスのリーディングカンパニーへの道のりは平坦なものではありません。また、ウィメンズヘルスは社会のニーズがあるにも関わらず、日本での認知度はまだまだ足りていないことも壁の一つです。

 

会社分割をしたときには一つもパイプラインがありませんでしたが、今年はウィメンズヘルスの製品を一つ発売する予定になっていますし、それ以外にも複数の製品の準備を進めています。自分たちの手掛けた製品が市場に出てくると社内的、社外的に見てもちゃんと会社として一歩一歩進めているなと見てもらえると思います。

 

また、目下注力しているのは企業カルチャーの醸成で、成長や変化に対するポジティブなマインドセットを社内で共有してもらうことです。会社のビジョンやバリューに対するひとりひとりの向き合い方にも差異があります。これを解決するためにまだまだ社内変えていく必要があります必ずしも明確な答えがない中でも模索しながら取り組んでいます。

 

失敗や思考錯誤の中でも「つくって、進み続けていく」事がモチベーション

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

「つくっていく」過程が私にとって最大のモチベーションです。

 

私は、日本のウィメンズヘルスの領域でやっていくことの必要性を強く信じてオルガノンの代表になりました。チャレンジは多いですが、誰かがレールを敷いてくれたわけでも、プロセスを作ってくれたわけでもないです。目指すビジョンに向かってどのようにチームを作り、マインドセットを作り、同時に製品やサービスを作っていくか。この過程が私にとって最大のやりがいです。

 

勿論、二歩進んで一歩下がってしまうなど、全てが上手くいくわけではないです。ですが、その試行錯誤も含めて諦めずにチャレンジを続けていく事で何かしらの反応があります。

 

実際に製品が患者様の手元まで届き、マイルストーンが達成できたときは、それまでの努力が報われたと思います。大きな企業になると、そこまで手触り感のある達成感が得られないと思うので、失敗や試行錯誤をしていく中で「つくって、進み続けていく」、この点も私のモチベーションです。

 

今後やりたいことや展望をお聞かせください 

第一に、ウィメンズヘルスの領域で価値ある医薬品や医療機器、それに関連するサービスを続々と展開していきたいと考えています。私たちの会社はまだスタートアップの段階にあり、世の中から見私達の会社が何をしている会社なのか、なぜウィメンズヘルスの領域に注力しているのかが十分に理解されていないと思います。ですので、一歩ずつ、歩を進めながら、製品や会社、そして、ウィメンズヘルス自体の認知を高めていく努力をしていきます。

 

もう一点は、ウィメンズヘルスの領域を開拓していく上での事業環境をつくっていきたいです。今までの医薬品の研究開発は男性視点で進められていたと言われており、現状として、医療の世界ではジェンダーギャップが非常に大きいです。

 

女性特有の疾患はもちろんですが、女性と男性で症状の出方が違う疾患もありますし、女性に多く症状が出る疾患もあります。これまで性差に関する研究はあまり進んでいませんでしたが、世界ではヘルスケアにおけるジェンダーギャップに対する問題提起が活発になりつつあり、関連する論文や声明なども非常に多くなってきています。

 

一方、日本はウィメンズヘルスを推進する環境としてはまだまだ社会の認知が足りていないと感じています。政治、経済の中では無意識に男性主体に物事が進んでいくこともまだ少なくないのではないでしょうか。私たちオルガノンは、ヘルスケアの領域でジェンダー平等を進めるウィメンズヘルスソリューションを提供していきたいです。

 

起業しようとしている方へのアドバイスをお願いします

「ビジョンの力」は非常に強いと私は思います。オルガノンはウィメンズヘルスの会社としてのビジョンである「すべての女性に、より豊かで、より健やかな毎日を」を持って進み、ブレない軸があります。

 

事業は上手くいかない事もあります。ですが、ビジョンやそれを支える企業カルチャーがあればうまくいかないときにもそれがどういう形でビジョンに繋がっているのかを立ち戻って考えられます。ビジョンをつくったらそこからブレない姿勢が大事です。また、起業家の方にとってはそれがコアになると思います。

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:櫻井亮太氏

職歴:
1994年   監査法人トーマツ
1999年   米国Deloitte & Touch LLP
2004年  デロイトトーマツFAS株式会社
2005年  日本GE/GEヘルスケア
2011年   MSD株式会社  事業開発部門統括
2015年   MSD 株式会社
     ワクチンビジネスユニット ワクチン事業部長
2020年    MSD株式会社 執行役員
                会社分割・新会社設立プロジェクト統括
2021年2月    オルガノン株式会社(グローバル会社分割前)
                      マネージングディレクター
2021年6月   現在     オルガノン株式会社 代表取締役社長 

学歴:
早稲田大学 政治経済学部 経済学科 卒業

資格:
公認会計士(日本・米国)

 

法人名 オルガノン株式会社
HP

https://www.organon.com/japan/

Instagram: https://www.instagram.com/organon_japan/

LinkedIn: https://www.linkedin.com/company/organon-japan/

設立 2021年3月31日
事業内容 医療用医薬品輸入製造販売
沿革 米国メルク社から会社分割によって2021年に設立された医療用医薬品企業です。"すべての女性に、より豊かで、より健やかな毎日を。”というビジョンの下、ウィメンズヘルスのリーディングカンパニーを目指しています。ウィメンズヘルス領域では、避妊薬や不妊治療薬を取り扱っています。

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