株式会社we& 代表 小茂鳥 雅史

株式会社we&は、起業家の成長をサポートする「起業家プラットフォーム」を運営しています。起業家同士が勉強しあえる環境の提供や、資金調達の手伝い、経営コンサルなどを行っています。今回はNPO法人も運営するなど幅広いジャンルで事業を展開する株式会社we&の代表 小茂鳥 雅史氏に、具体的な事業内容や強み、今後の展望について伺いました。

 

起業家の成長をサポートする「起業家プラットフォーム」を運営

さっそくですが、事業内容をお聞かせください。

当社は自分たちのことを「起業家プラットフォーム」と呼んでいますが、最初に立ち上げた会社は「スパルタ英会話」でした。スパルタ英会話は3ヶ月という短期集中の英会話教室です。

 

そこから事業展開していき、保育園への英語講師派遣事業などを行う「Sodatu Lab」や、マーケティングが上手くいったことで企業のDX化における課題を解決する「Tech Family」という会社など、さまざまな事業が生まれていきました。

 

多岐にわたって事業展開していくなかで、僕たちの立ち位置が1つひとつの事業を生み出していく起業家から、起業家たちが起業しやすいプラットフォームとして動いていこうというふうに2年前くらいにピボットしました。そこからは当社の事業内容を「起業家プラットフォーム」としています。

 

パーパスは「仲間とともに無限の可能性を追及する航海を続ける」であり、たくさんの仲間が集まって起業しやすい当社のプラットフォームにおいて、起業してもらうというイメージを持っています。

 

起業家プラットフォームでは具体的にどのようなことをしているのでしょうか?

大きく3つに分けられます。1つ目は、起業家同士が勉強しあえるような環境を提供しています。また、ベンチャー企業を無料で支援するプラットフォームも運営しています。上場企業の社長が30名ほど登録してくれているので、上場企業の方々ともコンタクトを取りやすいのが特徴です。

 

2つ目は「協創(きょうそう)経営」の提供です。これはwe&側も手を動かすもので、協力して創る経営と書きます。例えばコーポレート部門ですが、資金調達の手伝いや経営コンサルなどをさせてもらっています。

 

「Bizアクセス」という名目のサポートでは、人脈形成に近いことを行っています。先ほどお話したような上場企業の社長とつなぐことや、当社ともつながりを持ちながら事業が上手くいくようなサポートをしています。

 

3つ目は、「教科書経営」です。「星野リゾートの教科書」は僕が聖書と呼ぶくらい重宝している本です。他にも「ビジョナリーカンパニー」といった本もあります。教科書経営とは、経営者同士が同じ会社のなかで同じ本を読んだうえで、会社の課題について話し合って、乗り越えていこうとするものです。

学校でディスカッションするときも同じ本を読むことで「〇ページに答えが書いてあるよね」、「この課題は〇ページのほうじゃない?」などと同じ目線で課題に向き合えます。また、言葉の定義や現状把握にズレがでません。

 

自分が自信を持って決断できるようになりますし、先輩にも改善案を力強く提案できます。そうすると学びの成長が加速し、周りからも認められやすくなります。そういうサイクルを実行することによって、何も分らずに起業するのではなく、しっかりとどこに向かうべきか分かった状態で起業することが可能になります。

 

僕の起業経験だけで話してしまうと時代が変わってきます。しかし、例えば100年前に書かれた本だとすると、時代という名のふるいにかけられても生き残れるくらい優秀な本といえます。そういった本を選んで教科書経営をするのが基本です。

 

これまではスパルタ英会話、Sodatu Lab、Tech Familyなど1つひとつの事業を別々に運営していましたが、これらを完全にプラットフォーム化して、グループ会社全体で事業家のサポートをしているのです。

 

夢を叶えていけるような会社をつくりたい

現在の事業を始めた経緯を教えてください。

大学1年生のときに起業し、2年ほど経営し売上もあったのですが、大学の体育会に力を入れるために会社をストップしました。

 

慶應義塾大学院卒業後は外資系証券会社モルガン・スタンレー証券に2年間ほど勤めたあと退職して、再び起業しました。

 

さまざまな事業を展開していくなかで、本当にやりたいことは何なのかを役員と話し合ったときに、世の中の事業は「マイナスをゼロにする事業」、「ゼロをプラスにする事業」、「マイナスをプラスにする事業」かの3つに分けられるという考えがあがりました。

 

健康でない人を健康にするのはマイナスをゼロにする事業ですし、ディズニーランドなどの遊び場はゼロをプラスにする事業だと思います。僕たちはそういうゼロをプラスにするような仕事がワクワクするし得意だよねという話になりました。

 

起業家は「こういうビジョンを達成したい」「こういう商品・サービスを提供したい」などの夢があるので、その夢を叶えられる「起業家プラットフォームをつくろう!」という経緯です。

 

起業を2回もしていますが、起業のコツなどはありますか?

僕だけで起業するのは難しいので、補完しあえる仲間がいるかどうかが大切だと思います。当社の役員は3名いるのですが、それぞれが補完しあっている関係性です。

 

役員には、商品やサービスの内容を分かりやすくお客様に伝えて売る方や、ニーズを把握することを得意としているマーケター、実際に売り始めたときのクレーム対応や意見を拾ってスピード感を持って改善してくれる方がいるので、それらの人材がいると起業しやすいですし上手くいきやすいと思います。

 

仕事におけるこだわりや譲れない軸を教えてください。

こだわりや譲れない軸は、「ワクワクすることをやる」に尽きます。起業にフォーカスを当てて話しますが、起業する社長は色々な考えを持っていて「お金稼ぎたい」や「自分の時間を自由に使いたい」、「社会課題を解決したい」、「より良い商品・サービスを提供したい」などあると思います。

 

起業家である自分自身も商品・サービスを開発しながらワクワクしたいという考えを持っています。そうすればお客様だけでなく僕も社員もハッピーになれるので、ワクワクする起業家を当社の「起業家プラットフォーム」では育てていきたいと思っています。特に、お金を稼ぐためだけに動かないように気をつけています。

 

お金はエンジン・目標はビジョン

利益目的で稼がないことと経営面での衝突はありませんでしたか?

おっしゃる通り、とても悩んだ時期がありました。これは僕なりの考えですが、上から順に重要だと思っていて、まず「ビジョンの達成」が会社の存在意義だと思っています。例えば、 世界初の実用的電話を発明したベルさんは、色々な方と距離関係なく話したいというビジョンがあったと思うのです。

 

しかし、現代はインターネット社会なので、世界中の人とつながることをビジョンにはしません。それはベルさんによってビジョンが達成されているからだといえます。

 

ベルさんが生み出したビジョンは達成できているから、電話という機能からiPhoneが出ていますけど、起業家としては最高の成功事例です。したがって、ビジョンの達成が経営者として一番大切なことであり、それに向かっていく道中は一緒にいる仲間の自己実現のために必要だと思います。

 

例えば、英語が話せないお客様のために頑張りたい社員がスパルタ英会話に集まってきているわけで、お客様から「話せるようになりました」と言われることは、社員の自己実現にもつながるといえます。

 

ビジョンの達成に向かっているときは自己実現を達成できる状態でもあります。これを達成するために必要なのが「売上」や「利益」です。その次に、バリュー(ミッション達成に向かい続けていくための合言葉)が大事で、例えば社内のバリューを「ポジティブでいる」とすると、それだけで一体感が出ます。

 

そうすると「社内から承認されているな」、「社会的に安全なチームといえるな」という考えが自然と生まれ、そこが大事だと思っています。これらは全部「マズローの五段階欲求」と共通します。

 

一段階目が生理的欲求、二段階目が安全欲求、三段階目が社会的欲求、四段階目が承認欲求、五段階目が自己実現欲求、これらすべてを達成するのが経営者としての役割だと思っています。

 

つまり、「お金はエンジンとして必要だけど向かっていく先はビジョンである」というイメージで乗り越えました。

 

新型コロナウイルスを通して、支え合いを実感

起業から今までの最大の壁はありますか?

新型コロナウイルスは壁でした。通常の店舗ビジネスは、2ヶ月売上がゼロでも保てるようなキャッシュを用意しておくことを推奨されていて、そのくらいは用意してあったのですが、さすがにスパルタ英会話の売上が滞ると緊張しました。

 

新型コロナウイルス禍のときは社員全員に「命と給料だけは守る。だからそれ以外は何もできない」と伝えました。例えば、みんなで飲み会を開くこともできないですし、昇給・給与改定だとかは考えられない、だけど命と給料はどうにかしてでも守るから協力してくださいと伝えましたね。

 

現在は黒字に戻ったので、社員みんなの夢を実現できるような社風に戻したり、昇給・給与改定なども検討したりできています。こういう風に赤字と黒字で、社内制度の切り替えを生み出しました。

社員の反応はいかがでしたか?

コミュニティごとに反応が異なりました。当時スパルタ英会話は2店舗だったのですが、新宿校のメンバーは「怖いからオンラインだけにしたいです」と言っていて、銀座校は「新宿校閉めてもいいです、私たちがオフラインを守ります」と言っていました。守りますと言ってくれたところは心強いですし、一方はそのぶん別のアイデアを提案してくれたので、支えあえているなと感じましたね。

進み続けるモチベーションは何でしょうか?

モチベーションは2つあります。1つ目は、日常生活が苦手なのです。同じことが続くと辛くなってしまうのですが、新型コロナウイルスのときはそういう意味で一番モチベーションが高かったです。

 

コロナウイルスに負けないぞという強い気持ちを持っていて、朝起きたら「今日もコロナウイルスに勝つ!」と言っていました。3〜4ヶ月くらいで新型コロナウイルスの終息をみて、生き残れることを確信しました。僕は危機に強く、むしろモチベーションが上がるようです。

 

2つ目は、新しいことを思いついてしまうし、それを実現したくなってしまうワクワク心です。人を巻き込みたくなりますし、巻き込んだらさらにやる気になってしまうので、進むたびにモチベーションが上がるタイミングがあります。

 

ゲームのイベント期間のようにモチベーションが上がるタイミングがいくつかあって、そのおかげで維持できている感じです。

 

起業家プラットフォームの基盤を構築し、ビジョナリーカンパニーの排出を目指す

今後の展望をお聞かせください。

いくつかありますが、事業再生ファンドを行いたいと思っています。すでにVC(ベンチャーキャピタル)ファンドを行っていて、ベンチャー企業やスタートアップ起業に投資しています。

 

そうしたなかで、協創体制やコーポレートのバックオフィス、ベンチャーキャピタルというお金を持ってきて出資する機能などが必要であり、そこはwe&の「起業家プラットフォーム」でカバーできます。

 

次に、さまざまな企業のうち100社あったら経営不振や経営破綻になりそうな企業がいくつか出てくると思うので、解決するための再生ファンドが必要になると思うのです。

 

現段階では事業再生ファンドの種を植えておいて、3年後4年後に事業に困っている企業が30社40社と増えていったときに、その起業家を救えるノウハウを蓄えておきたいなと考えています。

 

また、海外に進出したいという気持ちもあります。僕はプラットフォームを提供していくうえで、ここがダメなときはここでカバーしようという感じで、バランスがとれる事業を作らなければならないと思っています。

 

数十年先のビジネスモデルはどのようにお考えですか?

起業家が集まってくるとどうなるのかというと、we&は起業プラットフォームなのでビジョンやバリュー、販売戦略などの代表が各企業から選定され、ファミリー内で助け合えるようになります。

 

社内だけでなく社外にも同じような価値観を持った方々と関われるので、事業に対して共感したり一緒にやりたい方が集まりやすくなったりします。そうすると新規事業のアイデアが生まれたり、成功したりする可能性がさらに高まると思うのです。

 

起業家同士が支え合えば事業成長のスピードがあがりますし、we&にも余裕が生まれます。そうするとまた次の事業を生み出せるようになるので、この循環を続けていくうちに、より起業しやすい環境ができ、より起業家が日本に増え、夢も叶っていき、日本経済も回復していくという状態がつくれるというのが僕たちがやろうとしていることです。

 

今後10年かけて20社100億円の売上を達成するのが目標です。その後は基盤が構築され、僕たちの経営方針が確立された状態になっていると思うので、ビジョナリーカンパニーの排出を目指したり、ビジョナリーカンパニーが排出できるような大学を創設したり、海外進出したりするなどを行っていきたいと考えています

 

起業しようとしている方へのメッセージをお願いします。

行動するのが一番大切です。行動すれば何かしら始まるので、とにかく行動してほしいです。僕は大学生に向けて講演をする機会があるのですが、そのとき学生さんにやりたいことを聞いたら「総理大臣に会いたいです」と言っていました。

 

僕は、総理大臣に手紙を書くことを提案しました。大学生が総理官邸に365日手紙を贈ったら最初の50〜100通はカットされるかもしれません。しかし、100通を超えたところから秘書室などで話題にあがる可能性があります。

 

さらに200通を超えたら総理大臣本人にも話しがいくと思うのです。そういう学生パワーを使えるうちに使ったほうが良いと思っていて、僕は行動し続ければ結果は出ると信じています。

 

当時回答してくれたその子は総理官邸に40通くらい手紙を贈ったそうです。手紙を贈るという行為を実際に行動に移せる方は少ないと思うのですが、そういう行為を続けていくことで一握りの成功者になれると考えています。

 

また、最短3年間で上場できるので、上場したい方が20歳だったら60歳になるまでに数十回チャンスがあると思うのです。ケンタッキーの創業者のカーネル・サンダースは60歳になるまでたくさん起業しています。

 

たしか、小さなカフェを併設したガソリンスタンドを経営しているときに、カフェで提供しているフライドチキンが繁盛したことでガソリンスタンド事業をやめ、カフェ一本で事業を進めています。

 

数年のうちに大きなレストランになっていきましたが、第二次世界大戦後のアメリカでは高速道路の建設が盛んになり、サンダースのカフェの前にあった国道の利用者が高速道路に流れたことで売上げが落ちていき、最終的に店をたたむことになり、全財産を失ったそうです。

 

その当時のサンダースは60代でしたが、諦めることなくフライドチキンのレシピが武器になると信じ、レシピを売り歩いたのです。そういう経緯があって僕たちが知っているケンタッキーがあるので、いくつになっても挑戦できると心強く思っています。

 

失敗を前提に挑戦できれば何も怖くないので、こういう考えを念頭において起業するのもいいかもしれません。

本日は貴重なお話をありがとうございました!

起業家データ:小茂鳥 雅史 氏

慶應義塾大学院卒業後、外資系証券会社モルガン・スタンレー証券に入社。退職後、NPO法人JAVO(ボランティア証明書発行機関)を発足。2年後、語学教育事業 株式会社スパルタ英会話を立ち上げる。会社規模を拡大させ、世界を一つのビックファミリーにという想いのもと、語学、グローバルコンサルティング、起業スクール、ITなど6つの会社を束ねる株式会社We&を設立。

 

【企業情報】

事業内容

新規事業開発・起業推進

法人名

株式会社We&

HP

https://we-and.com/company/

沿革

2014年

株式会社スパルタ英会話を小茂鳥雅史・矢口貴久が創業

新宿御苑校がオープン

2016年

新宿御苑校2校目をオープン

マーケティング部署設立

CMO松岡入社

2017年

マツコ会議・日テレnews・Presidentなどメディア出演が急増

株式会社we&を株式会社スパルタ英会話の親会社として設立

2018年

株式会社スパルタにて法人向けローバル・コンサルティング事業を開始

大手ITベンチャー企業や大手SI企業へ英会話・コンサルティングを提供

大手交通グループ会社やグローバル製造メーカーなども取引先となる

マーケティング事業部が分社化し、株式会社TECH FAMILYを設立

2019年

TECH Community設立

事業拡大

TechFamily構想

新サービスリリースに向けて開発中

設立

2014年12月25日

 

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