【#131】不動産領域に関連する、あらゆるビジネスのDX化にチャレンジし、「テクノロジー×人」の力で社会課題を解決する。|代表取締役 大江 洋治郎(TRUSTART株式会社)
TRUSTART株式会社 代表取締役 大江 洋治郎
不動産のビッグデータ提供と不動産調査のアウトソーシングを提供しているTRUSTART株式会社。今まで多くの時間と手間が必要だった煩雑な不動産調査を「テクノロジー×人」で効率化し、不動産業務にかかる時間・コストを大幅に削減しています。
今回は代表取締役を務める大江洋治郎氏に、事業内容や起業の経緯、今後のビジョンについてお伺いしました。
国内最大級の不動産情報データベース企業を目指して
さっそくですが、事業の内容をお聞かせください
大きく2つの事業を展開しています。1つ目は不動産のビッグデータ提供、2つ目は不動産調査のアウトソーシングです。
1つ目の不動産のビッグデータ提供では、まず全国の不動産データを集めることから始まります。方法は全国の役所・国にしかないような紙ベースの不動産の登記情報を収集し、OCR(手書きや印字された文字を読み取り、文字コードに変換する技術)というテクノロジーを使ってテキストデータ化しています。OCR化できない書類は手入力をしながらデータベース化しています。
そのデータベースをお客様の不動産営業担当者様に提供しています。営業担当者様はそのデータを利用して、富裕層を開拓したいとか、投資目的の不動産を探したいとか、オフィスを貸したいなどと考えているその先のクライアント様を探すことに寄与しています。弊社のサービスがピンポイントのお客様を探すようなデータベースツールになればいいなと考えています。
イメージとしては企業情報データベースを保有する、各社様の不動産バージョンのような感じです。それらの会社では法務局が出している商業謄本などをもとに企業情報を取りまとめています。そのようなまとまった情報が不動産業界には全くないので、不動産業界におけるデータベース会社を目指しています。
2つ目は不動産調査のアウトソーシングです。不動産は貸すにしても売るにしても、事前に調査が絶対に必要になります。現地に行って写真を撮ったり、役所に直接行き登記情報を見たり、莫大な時間がかかります。こういった時間や手間がかかる部分を、弊社が代わりに行います。もちろん、本サービスはお客様と打ちあわせし、契約書を作り、お引き渡しするところまで行います。
不動産の営業担当者は忙しい方が多いので、どうしてもミスが出やすくなります。また書類作成などが得意ではない方もいます。弊社は調査から契約書作りまでを一括して行うサービスを提供し、そしてお客様には営業に専念してもらうという、アウトソーシングを展開しています。
アナログの不動産情報をデータ化する大きな理由は何でしょうか?
データを集める理由は不動産の情報がインターネット上に全く公開されていないからです。例えば、港区で先月不動産がどこで売買されたかもわからないのです。また相続で誰から誰に権利移転しているかもわからないですし、オフィスが誰から誰に渡ったということもインターネットには出ていません。
しかし法務局に行き開示請求をかけると、売買が発生した情報の一覧を知ることができます。しかしながら、役所に足を運び、申請書を書かないといけません。つまり手続きがアナログで結構な手間になります。
その面倒なことを全不動産会社、全金融機関など不動産に携わる方、皆がしています。私自身がアナログな手続きが面倒だった経験もあり、同じ情報を見られるのだったら、弊社が全部取りまとめてデータベース化し、お客様に安価に利用してほしいというのが大きな動機です。
データ化するのはやはり人手もかかるので大変な作業です。情報をとりに行かないといけませんし、手書きの書類ですと、コツコツ入力するしかありません。人がいないと進まないため、データ化する課題として人材確保は大きな課題です。
事業を始めた経緯をお伺いできますか?
私は三菱UFJ信託銀行で働いていました。銀行はお金を貸す時に、お相手の自宅やオフィスなどを担保にします。その審査のために不動産調査が必要です。また信託銀行では不動産売買のお手伝いもしています。例えばお客様が不動産売りたいと相談を受けたら、どのくらいで売れるか査定する仕事です。
銀行員の頃は現地や役所に出向くなど、とても忙しかったです。今は銀行員もだいぶ働き方が改善されたと思いますが、当時は朝から晩まで働いていました。なぜそんなに忙しいのか考えてみると、やはり不動産調査に非常に時間を取られている実態がありました。もし1ヶ月かかる業務が1日で終われば、残りの29日をお客様のために使えます。もっと時間を効率的に使える方法を自分が提供できたら、不動産会社様や金融機関様にも貢献できると思ったことが、きっかけです。
不動産と関わりない人は、世の中でほとんどいません。買うなり借りるなりして家に住んでいます。現在は不動産のアナログな業務でかかった1ヶ月分の人件費は購入費や賃料に上乗せされています。そこで弊社がインフラ整備をして、不動産の業務効率化ができれば、皆さんの費用を抑えることができます。日本中の衣食住の「住」の部分にインパクトを与えたいという発想で事業を始めました。
始めは出向企業として起業されたそうですが、メリットを教えていただけますか?
弊社の場合は三菱UFJフィナンシャル・グループの出向企業から始まりました。大手企業とスタートアップのよさの両方をもつ形態です。
大手企業のメリットは、例えば大手銀行やトヨタ自動車などは誰もが信頼できますし、お金もあり、人もいてリソースが潤沢です。しかし一方で組織が大きすぎるため意思決定に時間がかかります。各部署に了承して進めないといけないですし、品質をしっかりと高く維持しないといけない面が強いです。そのためスピーディーに新しいことをやるには大企業は向いていません。
一方でスタートアップ企業はほぼ代表が決めたらその通りに動きます。毎日アップデートして進めるためスピード感は速いです。しかし信頼度はそこまで高くありません。初めて会いたい方に問い合わせしても、「トヨタ自動車の者です」と名乗れば皆さん会ってくれると思います。しかし「TRUSTARTです」と伝えても本当に実在する会社かどうか疑われるところから始まります。
けれども出向企業の形であれば、親会社である大企業に所属しながら、スタートアップの立ち位置も取れます。弊社の場合は三菱UFJフィナンシャル・グループの新規事業としてやっていることが信用につながりました。
また一般的に起業したては当然お金もないですし、創業時で数百万から2000万円くらいの資金です。
しかし、弊社は最初から資金も1億円ほど支援をいただきました。スタートアップと大企業のいわゆるいいとこ取りでビジネスの立ち上げができるのが出向企業のよさだと思います。
今はスピンアウト(親会社との資本関係を解消し、新会社として完全な独立企業になること)しています。
起業を意識し始めたのはいつ頃だったのでしょうか?
新入社員のころは考えもしていませんでした。
入社時はプライベートバンクのような個人の富裕層向けのコンサルティング営業担当への配属になりました。
その後は法人営業として代表様向けの融資などをやっていました。
例えば、お相手が新工場を建てたり新規事業を立ち上げたりする等の、お金を必要としている時に融資するのが流れです。銀行の姿はお客様の新規需要のために、一緒にアイデアを考え、そしてお金を貸して事業を支えることです。
その後の様々な経験から、ゼロからイチを作れる人になりたいと思うようになりました。
やはり自分で起業してスピーディーにやったほういいですし、人生一回きりで1つの事業を作るのに何年もかかっていたら、失敗できる回数もますます減ってきてしまいます。そのような経緯で起業を意識しはじめたのは、20代後半ぐらいですね。
やったことがないからこそ、やってみる
事業において意識していることを教えてください
弊社のミッションとして位置づけている5つを意識しています。
1つ目は社名にも使っている、「トラスト」(信用)で一番根幹を成す要素になります。しっかりと信頼関係を大切にすることです。「嘘をつかない」は誰でもわかってはいても、いざ仕事をするとお客様には良いことを話し、一方で社内では違うこと言っている人もいます。その場しのぎならいいのですが、当たり前になってくると、社内での信用がなくなってくるため長くは続かないです。しっかりと信頼関係を持って、お客様とも社内のメンバーとも関係を築いていくところを大事にしています。
2つ目は「アジリティ」(チームの動きをスピーディーに察知して機敏に反応するスキル)です。例えばコミュニケーションにおいて、すぐレスポンスが来たら「ちゃんと見てくれているな」と印象よく感じると思います。しかし返答に2週間かかっていたら、相手は優先順位が低いと感じ、他の人や会社に変更してしまうでしょう。信頼も作れず、機会も損失しかねないため、スピード感をもって行動することを大事にしています。
3つ目は「チャレンジ」です。何か新しいことをしようとした時に、過去にやったことがあるかどうかの話になると、すでに差別化はできません。やはり新しいことにチャレンジすることが大切になります。過去にやったことがないからやめておくのではなく、やったことがないからこそやるべきと考え、「チャレンジ」を大事な価値観として意識しています。
4つ目は「チームワーク」です。自分ひとりで稼げる売上は2億円ぐらいが限界になります。しかし数百人、数千人集まったら数百億円、数千億円を稼げます。社内を最適化するためには、やはりチームワークが大事です。売ってくる営業さんだけが職場の価値が高いわけではなく、社内の事務や総務や人事の担当も大切な仕事をしています。チームとして働いているためどちらも価値があります。お互いが歩み寄り、価値を1+1が3や4になるような「チームワーク」を非常に大事にしています。
最後の5つ目は「ファクト」(事実)を重要視しています。勘や経験で意思決定をする人が不動産や金融業界には多いです。経験値はもちろん大事ですが、誰でもわかる事実として集積していくことも大切です。その人だけにしか分からないやり方だと結局その人に依存してしまい、その先輩が辞めてしまった後、どうやって稼いだか分からなくなります。
また例えばWEBサイトのPV(Webサイト内の特定のページが表示された回数)がいくらになるのか把握していないと、今後の意思決定が全く変わります。ですので「ファクト」をちゃんと集めて「事実」かどうか確認するところは意識しています。
起業から今までの最大の壁を教えてください
あまり壁や失敗を感じにくい性格です。強いて言うと、さきほど話したように始めは完全なスタートアップではなく、出向会社だったため、「失敗しても大企業に戻れるだろう」と思われていたことが壁に感じましたね。人によっては中途半端だと思われていました。例えば資金調達にしても他の起業家さんは人生をかけています。もちろん私も人生をかけていますが、他の方からみたら、「保険がきいたマインドセットで本当にやりきれるのか」という言い方をされたこともありましたね。
将来の選択肢を広げるために、日々チャレンジをしていく
進み続けるモチベーションは何でしょうか?
スタートアップは自分で全部決められますし、影響は自分で決めただけ大きくなるところがモチベーションですね。人生一回きりなのでマーケットや社会にインパクトを残したいと思っています。大企業は企業として影響力がありますが、その中で働いていると色々な人が関わるため自分自身が影響している認識は正直少なかったですね。そのため自分の影響力を感じられることにやりがいを感じています。
今後やりたいことや展望をお聞かせください
将来的には選択肢というオプションを増やしたいです。例えば、お医者さんの知り合いがいたら、病気になったときに、聞いたり情報をもらったりできる選択肢があります。しかし知り合いがいなかったら、ひとりで悩んでインターネットで調べて終わるように、選択肢が狭まってしまいます。このようにできるだけ選択肢というオプションを広げておきたいですね。
そのために、今やるべきことは、他の人よりもチャレンジする回数を増やし、影響力を広げるために繋がりをたくさん作っておくことを日々重ねてやっていくことだと思っています。
アイデアだけでは価値がない。今すぐ行動に移そう。
起業しようとしている方へのメッセージをお願いします
あまり偉そうなことは言えませんが、やろうと思ったら今すぐに行動した方がいいですね。ビジネスアイデアのみでは価値がないのです。何も生まれないですし、マーケットからのフィードバックはもちろんありません。思いついたらすぐ起業するのが一番です。
もし、事業がうまく行かなくなっても、またどこかに就職すればいいですし、バイトでもいいと思います。そういった意味ではリスクはほとんどありません。ですので、すぐなんでも行動した方がいいですね。
「不動産×テクノロジー×人」の力で社会課題を解決する仲間を募集中です。
TRUSTART株式会社では採用に力を入れています。変革を起こすためにはテクノロジーだけではなく「人」が必要です。当社は「Trust・Agility・Challenge・Teamwork・Fact」の5つのバリューで、最高の組織を創り、個人と組織の成長を通じて、お客様、スタッフあらゆるステークホルダーとともに社会に貢献していきましょう。
「起業するまでの勇気は今ないけど、チャレンジはしてみたい」と考えている方も、私たちと一緒に仕事をしましょう。ご応募お待ちしております!
■採用URL:https://www.trustart.co.jp/recruit/
■Wontedly:https://www.wantedly.com/companies/trustart
本日は貴重なお話をありがとうございました!
起業家データ:大江 洋治郎 氏
2010年に三菱UFJ信託銀行入社。
リテール営業、法人営業に従事後、新規事業開発部署にて
ローン商品の組成や社内ビジネスアイデアコンテストの企画・運営を経験。
2020年に不動産テック領域の事業開発を行うTRUSTART株式会社を創業。代表取締役に就任。
企業情報
法人名 |
TRUSTART株式会社 |
HP |
|
設立 |
2020年5月28日 |
事業内容 |
不動産調査事業、不動産ビッグデータ提供事業 |
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