株式会社真面目 平川アズサ氏

株式会社真面目は「この1本で誰かの人生を変えていく。」をミッションに掲げ、映像制作を軸にしたコミュニケーション設計をプランニングしています。映像を最初から最後まで視聴してもらえなくとも、絶対に見てほしい”最初の数秒”に魂を込めるのです。

そう語る株式会社真面目の代表取締役である平川アズサ氏に、具体的な事業内容や事業を始めた経緯、今後の展望について伺いました。

映像を軸にしたコミュニケーション設計をプランニング

さっそくですが、事業内容をお聞かせください。

当社は、立ち上げ当初は映像制作メインの事業を行っていました。テレビ番組やドラマ、バラエティ、映画などの長編ものは手掛けておりません。短いもので15秒のCM、1分のインフォマーシャル、5分のアーティストMV、10分の企業VPやブランディング映像などをコンテンツとして制作していました。

 

その後、5、6年ほど前に企業イベントを開催するリクルートさんのコンペに呼んでいただく機会がありました。映像のみを制作して納品していたところ、リクルートさんから、リクルート用語で「真面目さんは確動性が高いですね」と言ってもらえました。(※確動性:確実に実行する性質のこと)

 

「もしよければ来年行われる企業イベントの企画制作に参加してみませんか?」とのお誘いを受けたので、翌年参加して提案したところ、意外なことに企画が通りました。そこから、仕事の引き合いや売上もアップしました。

 

それまで映像制作のみを請け負っていましたが、その経験を機に、「映像を軸にしたコミュニケーション設計をプランニングする」というところに事業の幅を広げていきました。

最近はSNS用の動画をコンサルする企業も増えていますが、そのあたりも着手しているのでしょうか?

SNS用の動画に関わる事業は行っていません。

 

当社には「この1本で誰かの人生を変えていく。」というミッションがあります。SNS用の動画コンサルが利益につながるとしても、このミッションの実現に至らないものに着手する必要はないと考えているからです。

 

そもそも映像と動画は、似ているようで違います。社内でも話題にあがりますが、1番の違いとして、動画制作にはディレクターが存在しません。

 

映像制作ではディレクターがいて、絶対に見てほしい「1コマ」「ワンカット」「数秒」があります。たとえ全てを視聴してもらえなかったとしても、絶対に見てほしいその数秒に魂を込めるのです。

 

動画は大量生産したものを露出し、その中からPDCAをまわすという形をとっています。つまり、種類として制作しているもの自体が異なるのです。もちろん映像だけでなく、動画も誰かの人生を変えるきっかけになると思います。しかし、私たちが掲げるビジョンにも適していません。

 

先ほどミッションを紹介しましたが、当社には3つのビジョンも存在します。

 

それは、「私たちは、感動を人生の糧にする社会をつくります。」「私たちは、何もなかった日常に彩りをもたらす社会をつくります。」「私たちは、ひとりひとり意志を持って生きていける社会をつくります。」です。

 

人の心を動かすことは動画でもできますが、私たちは約12年間、SNSよりも時間と費用をかけた映像制作に特化してきました。フリーでも作れる動画はたくさんあるので、そこにあえて私たちが進出する必要性はないかなと考えています。

 

もちろん自社宣伝用に公式インスタやX(旧Twitter)などを利用することはありますが、仕事を受注するという形では手掛けていません。

10代で始めた仕事を辞め26歳で制作会社へ入社、その後フリーの映像ディレクターに

現在の事業を始めた経緯を教えてください。

編集スキルがないことで苦労した経験がきっかけです。

 

私は昔、ファッションや商品などの広告塔としてメディア露出のある仕事をしていました。芸能界は人と違うことをしなければ生き残れない世界なので、続けるのは大変です。

 

私がしていたお仕事は、力をつけていくとタレント、女優という具合にステップが上がっていきます。仮に女優が最高峰だとすれば、その女優さんが映画に出演することが最高峰の仕事だと私は考えました。

 

そこで、「映画の脚本が書ける女優さんであればニーズがあるのでは?」と考え、Wordを使って脚本を書き始めました。その時のインスピレーションは、ロケバスから外を眺めていたときに見た高校生2人組の姿でした。

 

彼女たちの後ろ姿を見て、物語の大部分がイメージとして浮かんできました。その後、2年半かけて実体験を加えながら脚本を完成させました。

 

映画を制作したいと思う方や脚本を書きたい方は多いでしょうが、実際にそれを成し遂げることには満足感や達成感があります。

 

その脚本を持って当時仲の良かった監督やプロデューサーに「いつか映画化してみたいです」と相談したところ、「今やろう」と言われました。「なるほど、この情熱のまま突き進んでしまおう」と考え、私は25歳のときに出資者を募るための企画書を作成し、350万円を集めました。その資金は機材費や撮影時の食事代などに充てられました。

 

1年ほどかけて、私たちは1本の映画を完成させました。勢いのみで脚本、演出、出演も達成することができましたが、唯一編集がうまくいきませんでした。

 

そのため、編集のプロの仕事場に付いていって、指示を出すことになりました。「そこのカットをもう少し短くしてください」「さっきの映像に戻してください」「この部分を緑色っぽく加工したいです」など、さまざまな要望をお願いしました。

 

しかし、約90分の映像編集に何度も口を出されるのは大変だったのでしょう。編集さんからため息をつかれることもありました。そこで、「もし自分で編集できたら、どれだけ作品にこだわれただろうか」という疑問が湧き上がりました。それをきっかけに、26歳で制作会社に入社し、新たな挑戦を始めました。

私は10代からメディア露出のある仕事をしており、大学に行っていません。そのため、学歴不問でも入社できる少ない選択肢の中から選んで、制作会社に26歳で初めて入社しました。

 

仕事を長く続けるための武器を模索していたら、その武器から今後自分が仕事にしていきたいものを見つけられたという形です。会社には1年ほどの短い期間しかいませんでしたが、自ら積極的に学びにいきました。

 

最初はアシスタントディレクターであったにも関わらず、1年でセブンイレブンさんのCM監督にまでなれたので、ある程度の編集技術や知識は得られたと思います。また、その会社はテレビ番組やアーティストのMVも制作する会社でした。実際にアーティストのMV制作に携わっていくと、MVのみを制作したいと強く思うようになりました。

 

そして、27か28歳くらいのときに会社を辞めてフリーの映像ディレクターになりました。仕事がなくなったら他の制作会社に入ろうと考えていたのですが、意外と人が1人生きていけるほどの報酬があり、どこかに入社することはありませんでした。

 

ただ、30歳になったときに大きな転機が訪れました。私としては映像制作のお仕事がとても好きでずっと続けられているけれど、この先も現状のままでよいのかなとふと考えたのです。

 

そのとき同業の経営者をしている友人がいたので、このままでいいか相談しました。自分の好きなことと社会貢献をつなげたいと伝えたところ、友人から起業することを勧められました。

 

起業と社会貢献がつながるロジックが分からなかったのですが、一発目に思い浮かんだのは「責任を背負わなければならないことを考えると厳しい」ということでした。しかし、私は人生の選択に軸を持っていて、「この選択、行動がかっこいいかどうか」と考えたのです。

 

責任もありますがなんとなくかっこいいと感じたので、友人に起業の仕方を教えてもらったところ、案外簡単に起業できることが分かりました。そこから2、3ヶ月後に実際に会社を立ち上げました。それがちょうど2013年2月です。

ミッションやビジョンを体現できる行動か

仕事におけるこだわりや譲れない軸を教えてください。

こだわりや譲れない軸はとてもシンプルです。ミッションやビジョンを体現できる行動か否か、それが実感できているか、メンバーも実感できているかです。

 

メンバーが誰1人やりたくない仕事はしなくていいですし、誰かの心が疲弊するような仕事は案件として受注しなくてもよいと思っています。そのため、やらないことを決めることにこだわっているのかもしれません。

 

立ち上げ当初は来るもの拒まずで一生懸命やっていました。しかし、3期目くらいのときに美大インターン生1名が当社に入ってくれたのですが、その子から「ミッション・ビジョンはありますか」と聞かれました。

 

「ミッション・ビジョンのない会社ってどうなのでしょう」と言われたことがショックで、そこから何のために働いているのかという問いに私自身真摯に向き合うようになりました。

 

立ち上げ当初は単純に「お金を稼ぎたい」という思いがありましたが、10年という長い期間経営していると、それなりにもっと上を目指すこともできますが、それが人生で得たいものではないような気がしました。

 

「自分が立ち上げた会社にたまたまご縁があって集まってくれたメンバーの幸福度を最大化したい」、私にとっての答えはこれだと思いました。そのためにはミッションやビジョンを掲げて、メンバー全員が同じ方向を目指せるようにしなければならないと思いました。

 

ビジョンにもありますが、メンバーの1人ひとりが意志を持ってくれるようにという思いも込めて、「作りたい社会につながっている行動なのか」にこだわって仕事をしています。

メンバーに対しても積極的に関わる姿勢をお持ちなのですか?

新しく入ったメンバーも驚くくらいの風通しの良さで、隠し事とかがないですね。20名くらいいて、メンバーの親とも仲が良いです。Slackには一部メンバーの家族も入っています。毎年メンバーのご家族にお歳暮と、最終出社日の忘年会の写真が載った年賀状を送っています。

 

こちらがお歳暮を贈ると、みかんや芋などの地元のものを届けてくださるので、そこで交流がとれて、会社としてこういう文化をこれからも大事にしたいなと改めて思わされています。

起業から今までの最大の壁を教えてください。

これといった大きな壁も挫折も経験していません。ただ、すごく大切にしてきた採用メンバーが卒業するときは辛いですね。未来永劫一緒にいられない時代ではありますが、それは何度経験しても慣れないことです。

 

「この子がいなかったらもう会社が成り立たない」と思うような子が卒業したあとは、会社が崩れる心配をしているのですが、その不安が現実になったことはありません。誰かが抜けて壊れるような会社ではないのだなと思ってからは、目に見えない強固なカルチャーがあることを実感しています。

人の人生を「場所」で変えたい。ブランドづくりの最大の壁は資金調達

今後壁になりそうなことはありますか?

11期目から第二創業期として新規事業を立ち上げています。自分たちのブランドを作ることが目的です。土地を買ってホテルをつくりたいと思っているのですが、50億円必要になりそうで、その資金調達が大きな壁だと感じています。

 

既存事業で銀行からお金を貸せないと言われたことはないのですが、新規事業は実績がないため融資を受けることが容易ではありません。投資会社の方には実績のあるオペレーター会社を入れることを提案していただいたのですが、自分たちのやりたいオペレーターだったり、人の人生を場所で変えたりしたいという軸があるので難しいですね。

 

私はこれまで映像で人の人生を変えてきて、空間(イベント)でも変えてきて、今後HOWの部分を変えて人の人生を変えるにはどうしたらいいだろうと考えました。私は子どもがいて、その子の誕生日には毎年海外に行っています。

 

海外にいるときに考え事をすると、人生を変えるきっかけになるなという実体験があります。なので、そういう場所をブランドとして今後10年かけて作っていきたいです。

 

まずは行動してみるのが私のやり方なので、上手くいかないときはそれが壁だったと話すときがくるのかもしれません(笑)。

進み続けるモチベーションはありますか?

私は会社とメンバーが好きです。会社に来て大笑いしない日がありません。作業効率は悪いかもしれませんが、その環境があるから続けられているのだと思います。

 

また、娘が生まれたことも大きいです。これからどんどん女性の働き方が多様化してくると思います。私は主婦業をほとんどしていませんが、そのようなスタイルの母親もいるよという背中を見せたいです。

 

経営を10年もしていればある程度お金も持てるようになるので、自分のしたいことは大概何でも実現できるよということを背中をもって娘に見せ続けていきたいと思っています。

起業家へのメッセージをお願いします。

私は起業するなら少なくとも仲間と始めたいです。1人で始める方ももちろんいると思いますが、自分のためだけに炎を燃やしつづけるのは難しいのではないかと考えています。それでもずっと頑張っている方もいると思うので、私の個人的な意見にすぎません。

 

しかし、仲間と会社を立ち上げたり、あるいは立ち上げ後に誰かを雇用したりすることは、頑張る理由になると思います。自分1人だったらいつでも辞められますが、人の人生を背負っているという責任感が自分を強くしてくれます。

 

また、経営者の器になれたのは、稼ぎ方ではなく仲間を持てたからだと思います。私は美大生と立ち上げましたが、共同創業者を見つけることを勧めているのではありません。雇用形態も、必ずしも正社員でなくてもよいと思います。

 

守れる誰かと常に一緒に働くということは、やりたいことだけをやり続けるための燃料切れのときに、踏ん張れる強い要素になると思います。

 

お金儲けのためだけに始めても続かないので、賛否両論あると思いますが、稼ぐことが第一の目的であれば起業はおすすめしません。

 

大学を卒業して、学生起業家として活躍している方も少なくないでしょう。ただ、人脈がないまま世の中に出ていきなり起業をすると、挫折する確率のほうが高いのではないかと思います。

 

20代でしか学べないことは経営以外にもあるはずなので、まずは会社に入社して、そのあとに起業することを私はおすすめします。

 

現在会社員として働いていて起業を検討している方へもメッセージを送らせていただけるとすれば、現在の年収を下げたくない方は起業しないほうがよいと思います。身を削るタイミングはどうしてもあります。パートナーが100%応援していて、身を削っても大丈夫という方に起業は向いていると思います。

映像コンテンツの制作は株式会社真面目にお任せください!

当社では、採用ブランディング、事業ブランディング、この会社は何のために社会に存在しているのか(CSR)を映像コンテンツで制作することも得意としています。

 

あらゆる企業がそれぞれのミッションやビジョンを掲げていると思いますが、それらを含めて映像化していくことに自信があるので、そういった映像制作の依頼先を探している方はぜひお任せください。

 

また、企業の節目ごとのイベントプロデュースも手掛けています。当社も10周年記念のときにオリジナルMVを制作しました。アーティストさんに楽曲を作っていただき、映像は当社で制作したので、そういったことを依頼していただくことも可能です。

 

会社でセレモニーを開催する際に映像コンテンツが必要であれば、ぜひお声がけください。

本日は貴重なお話をありがとうございました!

 

起業家データ:平川アズサ 氏

岩手県盛岡市出身。岩手県立不来方高校外国語学系卒業後上京しモデルになる。華やかなモデル業の中で撮影現場の裏方であるディレクターに憧れ映像制作会社に入社。その後独立し2013年株式会社真面目を設立、代表取締役に就任。

 

企業情報

法人名

株式会社真面目

HP

https://majime.jp/

設立

2013年2月

事業内容

映像を基軸に、新たな体験を創出するクリエイティブエージェンシー

沿革

2013年2月、渋谷区東のクリエイティブシェアオフィスで、株式会社真面目が創業されました。当初は美大インターン生1名と共にスタートを切りました。2014年6月には、渋谷区猿楽町にヘッドオフィスを移転し、社員数は5名にまで拡大。2018年2月には、渋谷区神山町にヘッドオフィスを再度移転し、社員数は10名に増加。2020年5月には、中国深センにブランチオフィスを開設し、更なる事業の拡大を図りました。2024年2月で創業12年目を迎えます。

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